2024/12/20

健康講座842 全粒植物性食品(WFPBD: Whole Food Plant-Based Diet)が1型糖尿病(T1D)に与える影響

 全粒植物性食品(WFPBD: Whole Food Plant-Based Diet)が1型糖尿病(T1D)に与える影響に関する最新の研究結果をご紹介します。この内容は、小川糖尿病内科クリニックからの新しい知見として、皆さまにできるだけ分かりやすく、そして親しみやすくお伝えしたいと思います。専門用語には、適切な注釈や説明を加えていきますので、安心して読み進めてくださいね。




背景

全粒植物性食品とは、未加工または極めて加工度の低い植物性食品を主食とする食事法のことを指します。たとえば、果物、野菜、全粒穀物、豆類、ナッツなどが含まれます。一方で、動物性食品(肉、乳製品、卵など)や、砂糖や精製された小麦などの加工食品は、極力避けるか、最小限にすることが特徴です。

最近、このような全粒植物性食品(WFPBD)を取り入れた食事法が、健康全般に良い影響を与えるという報告が増えてきています。たとえば、心臓病や肥満、2型糖尿病に良い影響を与えることが確認されています。しかし、1型糖尿病に関しては、その効果がまだ十分に研究されていませんでした。そこで、今回の研究は、WFPBDが1型糖尿病の食後の血糖値(食後高血糖)に与える影響を調べたものです。

研究デザインと方法

この研究では、「1型糖尿病エクササイズ・イニシアティブ」から収集されたデータを使用しています。参加者たちは、日々の食事と血糖値のデータを提供しており、その情報をもとに、全粒植物性食品の摂取が血糖管理にどう影響するかを解析しました。

**プラントベース・ダイエット・インデックス(PDI: Plant-Based Diet Index)という指標を用いて、食事がどれだけ植物性か、どれだけ健康的かをスコア化しました。さらに、PDIの中でも、健康的な植物性食品の摂取を反映するhPDI(healthful PDI)と、逆に不健康な加工食品を多く含む食事を反映するuPDI(unhealthful PDI)**の違いについても調査しています。

結果

この研究には、367名の参加者からの7,938件の食事データが含まれていました。

最も注目すべき結果として、健康的な全粒植物性食品(hPDIが高い食事)を摂取した場合、食後の血糖値が4%改善したことがわかりました。具体的には、hPDIが高い食事を摂った場合、食後の血糖値が正常範囲に収まる割合(TIR: Time In Range)が**75%であったのに対し、hPDIが低い食事では71%**でした(p<0.001)。つまり、より健康的な植物性食品を摂取することで、食後の血糖値がより安定するという結果が得られたのです。

さらに、食後の血糖値の上昇(血糖スパイク)も、hPDIが高い食事では少ないことがわかりました。hPDIが高い食事では、食後の血糖上昇は53mg/dLでしたが、hPDIが低い食事では62mg/dLと、明らかに高い値を示しました(p<0.001)。また、**血糖値が250mg/dLを超える時間(極端な高血糖の状態)についても、hPDIが高い食事では8%であったのに対し、低い食事では14%**と大きな違いが見られました(p<0.001)。

一方で、**血糖値が低すぎる状態(低血糖)**に関しては、PDIやhPDIによる違いは見られませんでした。つまり、健康的な全粒植物性食品を摂取しても、低血糖のリスクは増加しないということです。

結論

今回の研究では、全粒植物性食品を中心にした食事を摂ることで、1型糖尿病の患者さんにとって食後の血糖管理が改善することが示されました。特に、加工度の低い植物性食品を多く摂ることが、動物性食品を減らすこと以上に重要であることがわかりました。

また、健康的な植物性食品(hPDIが高い食事)を摂取することにより、血糖値が安定し、食後の極端な高血糖を避けることができることが強調されています。この結果は、1型糖尿病の患者さんが食事療法の一環として全粒植物性食品を取り入れることのメリットを示しており、今後の治療方針に役立つ可能性があります。


具体的な食事の提案

この研究結果を踏まえると、1型糖尿病の方にとって、健康的な全粒植物性食品を取り入れることは非常に有益です。以下は、日常的に取り入れやすい具体的な食品例です。

  • 全粒穀物: 白米ではなく玄米や全粒小麦のパンを選びましょう。これにより、血糖値の上昇が緩やかになります。
  • 野菜や果物: できるだけ多くの色とりどりの野菜や果物を摂るようにしましょう。特に、葉物野菜やベリー類は血糖管理に良い影響を与えると言われています。
  • 豆類やナッツ: 豆やナッツは、たんぱく質や食物繊維が豊富で、血糖値の安定に役立ちます。例えば、ひよこ豆やレンズ豆をサラダに加えると良いでしょう。
  • 未加工の食品を選ぶ: 加工食品は血糖値を急激に上げる原因になることが多いです。できるだけ未加工の食品を選びましょう。

これらの食品をバランスよく取り入れることで、より安定した血糖値を保つことができ、健康的な生活を送る手助けとなるでしょう。


最後に

この研究から、全粒植物性食品を積極的に摂取することで、1型糖尿病の患者さんでも食後の血糖値管理が向上することが示されました。これを日常生活に取り入れることで、より健康的なライフスタイルを実現できる可能性があります。

今回の研究は、動物性食品を減らすことが必ずしも最優先ではなく、未加工の植物性食品を意識的に増やすことが、血糖管理にとって鍵となるという点を強調しています。


このように、全粒植物性食品は、健康的な血糖管理をサポートする素晴らしい選択肢です。もしご興味がありましたら、ぜひご相談ください。専門のスタッフが、皆さまのライフスタイルや食事習慣に合わせたアドバイスをさせていただきます。

2024/12/19

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こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長の小川義隆です。

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【勤務時間】 8:30 ~ 19:15
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【試用期間】 就業から3ヶ月は試用期間になります。

【福利厚生】 インフルエンザワクチン予防接種
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【勤務地】  愛知県富木島町新石根84-1 小川糖尿病内科クリニック

【アクセス】 名鉄常滑線太田川駅から知多バスで9分

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③面接実施
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2024/12/01

健康講座841 「2型糖尿病高齢者における血糖コントロールと感染症リスクの比較研究」

 


こんにちは、小川糖尿病内科クリニックです。今回は、2024年10月22日に発表された「2型糖尿病高齢患者における緩和された血糖コントロールと感染症リスクの比較」に関する最新の研究について、わかりやすくご紹介いたします。この研究は、特に糖尿病患者の感染症リスク管理に興味のある方にとって重要な知見となるでしょう。

研究の目的

この研究の目的は、厳格な血糖コントロールを行った患者と、より緩やかな血糖コントロールを行った患者との間で、感染症による入院リスクを比較することにあります。具体的には、緩和された血糖コントロールが、感染症リスクをどの程度高めるのかを調査しました。

研究方法

65歳以上の2型糖尿病患者を対象に、アメリカの統合医療提供システムからデータを収集し、後ろ向きコホート研究が実施されました。この研究では、2019年1月1日から2020年3月1日までの期間における血糖コントロールと感染症による入院リスクの関係を解析しました。患者は、血糖値の指標として用いられるHbA1cの値に基づいて分類され、以下のように血糖コントロールのレベルが評価されました。

  1. 厳格な血糖コントロール:HbA1cが6%から7%未満
  2. 緩やかな血糖コントロール
    • HbA1cが7%から8%未満
    • HbA1cが8%から9%未満

研究結果

この研究には合計103,242人の高齢2型糖尿病患者が参加しました。厳格な血糖コントロールを行っている患者(HbA1c 6%から7%未満)は全体の48.5%、HbA1c 7%から8%未満の患者は35.3%、HbA1c 8%から9%未満の患者は16.1%でした。

結果として、HbA1cが8%から9%未満の患者では、感染症による入院リスクが有意に増加していることが確認されました(相対リスク1.25、95%信頼区間1.13から1.39)。一方、HbA1cが7%から8%未満の患者では、感染症による入院リスクに有意な差は見られませんでした(相対リスク0.99、95%信頼区間0.91から1.08)。
また、調整後のデータでは、HbA1cが8%から9%未満の患者では、特に皮膚、軟組織、骨の感染症による入院リスクが33%増加していることが示されました。

感染症の種類別リスク

感染症による入院リスクは4つの主要なカテゴリーに分けて評価されました。

  1. 呼吸器感染症
     呼吸器感染症のリスクは、HbA1cが7%から8%未満のグループで低下しており、血糖管理を少し緩めた場合でもこの種の感染症に対するリスクは大きく増加しないことが示唆されました。

  2. 尿路感染症
     尿路感染症については、血糖コントロールが厳しい場合と緩やかな場合で大きな差は確認されませんでした。これは、尿路感染症に対するリスクが血糖値の変動にそれほど敏感ではない可能性があることを示唆しています。

  3. 敗血症
     敗血症は非常に危険な感染症ですが、HbA1cが8%未満の範囲ではリスクの増加はわずかで、統計的に有意な差は確認されませんでした。しかし、血糖管理の悪化が敗血症リスクに及ぼす影響については今後のさらなる研究が必要です。

  4. 皮膚、軟部組織、骨の感染症
     HbA1cが8%から9%未満の患者では、特に皮膚や軟部組織、骨に関連する感染症による入院リスクが33%増加していることが確認されました。このような感染症は、血糖値の管理が不十分な場合に免疫力が低下することで起こりやすくなります。皮膚や軟部組織の感染は特に注意が必要です。

結論

この研究は、高齢の2型糖尿病患者において、HbA1cが7%から8%未満の範囲であれば、感染症による入院リスクが増加しないことを示しています。これは、現在の臨床ガイドラインで推奨されている「緩やかな血糖コントロール」が安全であり、リスクがほとんど増加しないことを裏付ける結果です。一方で、HbA1cが8%以上になると、特に皮膚や軟部組織、骨に関連する感染症のリスクが顕著に増加するため、定期的な血糖値のチェックと管理が必要です。

この研究の意義

今回の研究結果は、高齢者における糖尿病管理に対する新たな知見を提供しています。特に、高齢の2型糖尿病患者にとって、血糖値を7%から8%未満に管理することが感染症リスクの抑制に有効であることがわかりました。厳格すぎる血糖管理を避け、適度な管理を行うことが、感染症による入院リスクを抑える一方で、低血糖などの危険を減少させるために重要です。

血糖コントロールの重要性

高齢者では、過度な厳格な血糖コントロールは低血糖を引き起こしやすく、転倒や事故のリスクを高めるため、適切な管理が求められます。今回の研究では、HbA1c7%から8%未満という目標が、安全かつ有効であることが確認されました。患者さんの個別の健康状態や生活スタイルに合わせた血糖管理が、感染症リスクを減少させつつ、全体的な健康を保つために最適です。

まとめ

今回の研究によると、2型糖尿病を持つ高齢患者が、緩やかな血糖コントロールを達成することは、感染症の入院リスクを大きく増加させることはないとされています。ただし、HbA1cが8%を超えると、皮膚や骨に関連する感染症のリスクが高まるため、特に注意が必要です。

小川糖尿病内科クリニックでは、患者様一人一人に最適な血糖管理を行うことを重視しており、感染症予防や全身の健康管理にも力を入れております。健康に関するご質問やご相談があれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...