2022/07/29

健康講座525 肥満の影響

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 肥満ではあるが検査値上の異常はない場合、「代謝的に問題のない肥満」と言われることがあるようです。しかし、「健康的な肥満などはない」とする論文が、英グラスゴー大学健康福祉研究所の研究によるものだそうです。


 肥満者の代謝関連検査値が基準値内にあるとしても、それはその人が実際に健康であることを意味するわけではないようです。なぜならば、糖尿病、心臓病、脳卒中、呼吸器疾患のリスクが高いからだそうです。

 英国の大規模ヘルスケア情報ベース「UKバイオバンク」の登録者から、解析に必要なデータがそろっている38万1,363人を抽出し、住民ベースの前向きコホート研究として行われたようです。ベースライン時のBMIが30以上で肥満に該当するものの、6つの代謝関連指標(中性脂肪、LDL-コレステロール、HDL-コレステロール、HbA1c、C反応性蛋白、血圧)のうち4つ以上が基準値内の人を「代謝的に健康な肥満」と定義したようです。11.2年(中央値)追跡して、2型糖尿病や心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患の発症、アテローム性動脈硬化症による非致死性/致死性心血管イベント、全死亡のリスクを検討しました。

 ベースライン時に肥満でなかった人(代謝的に健康な人と不健康な人の双方)に比較して、代謝的に健康な肥満者は、心不全1.60、呼吸器疾患HR1.20の発症、および全死亡HR1.12、心不全死HR1.44が有意に多かったようです。

 比較対照を、ベースライン時に肥満でなく、かつ代謝的に健康な人に限ると、2型糖尿病HR4.32、心不全HR1.76、呼吸器疾患HR1.28の発症、および全死亡HR1.22、心血管イベントHR1.18の発生率が有意に高かったようです。

 BMIと代謝関連指標の変化を縦断的に解析し得た8,521人のデータ(追跡期間中央値4.4年)から、ベースライン時に代謝的に健康な肥満者の4分の1強が、代謝的に不健康な肥満に移行していたことが分かりました。その他、約半数は変化がなく、約20%は非肥満になっていたようです。

 代謝的に健康とされる肥満者であっても、代謝的に健康な非肥満者と比較して、心臓発作や脳卒中、心不全、呼吸器疾患のリスクが高いことから、『健康』とは言えないと思われます。代謝関連指標が良好か否かにかかわらず、減量は全ての肥満者にとって有益な可能性があると思います。

 なお、世界の肥満人口は現在3億人以上とされており、最近の増加傾向が続くとすると、2030年までに肥満者が10億人を超えると予測されているようです。これは世界の成人人口の20%に相当するのです。


原著

健康講座524 歩行速度と認知症

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 歩く速さが遅くなったと感じたら、認知症のリスクがあるかもしれません。歩行速度が年々低下していて、かつ認知機能の低下も進行している場合、それらが単独で進んでいる場合よりも、認知症のリスクがより高いことを示すデータがモナッシュ大学(オーストラリア)から報告されております。研究結果は、認知症のリスク評価における歩行速度の重要性を示唆しております。

 2010~2017年に米国とオーストラリアの高齢者対象に実施された、低用量アスピリンの有用性を評価する無作為化比較試験のデータを用いて、認知機能や歩行速度が低下することと認知症リスクとの関連を検討しました。1万9,114人の研究参加者のうち、データ欠落のない1万6,855人(88.2%)を解析対象とした。平均年齢は75.0±4.4歳、女性が56.0%であり、教育歴12年以上の人が44.8%だった。

 認知機能や歩行速度を、研究参加時点と研究終了時、および、研究期間中に3回測定。認知機能については、その低下速度の三分位に基づき研究参加者全体を3群に分け、第3三分位群(認知機能低下幅の大きい上位3分の1)を「認知機能低下」と定義した。歩行速度については、1年間に秒速5cm以上低下した場合を「歩行速度低下」と定義した。認知症の発症は、米国精神医学会の診断基準(DSM-4)に基づき判定した。

 まず、認知機能のみが低下した群はハザード比(HR)7.1であり、歩行速度のみが低下した群はHR4.0だったようです。それに対して、認知機能と歩行速度がともに低下した群は、HR22.2と、双方とも低下しなかった群の22倍以上ハイリスクだった。

 要するにですよ、認知機能と歩行速度の低下の重複が、認知症リスクの上昇と強く関連していることが明らかになり、認知症のスクリーニングの評価項目に歩行速度の測定を加え、早期介入の重要性が示唆されたのです。

 これまでの研究で、ランニング、速い速度でのウォーキング、水泳、サイクリング、ダンスなどの有酸素運動が、認知機能の低下抑制または改善に役立つことが示されているようです。なお、認知機能テストを受けた結果、認知症発症の前段階に当たる「軽度認知障害(MCI)」と判定されることがあります。このMCIと判定された人が全て認知症へと進行するわけではないようです。米国立老化研究所によると、MCIと判定された65歳以上の人の10~20%のみが、1年以内に認知症を発症するとされています。

参考までに。

原著

2022/07/27

健康講座523 葉物野菜と筋力

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 筋力を高めたい人は、葉物野菜を毎日摂取すると良いかもしれないです。ほうれん草やレタスなどの硝酸塩が豊富な葉物野菜を多く摂取している人は、摂取していない人に比べて、高齢になっても筋力や身体機能が高いことが明らかになったのです。

 今回の研究は、Australian Diabetes, Obesity, and Lifestyle Study(AusDiab)の参加者の中から今回の研究対象者として3,759人(女性56%、研究開始時の平均年齢48.6歳)を抽出。食物摂取頻度質問票での平均値に基づき、対象者の12年間に及ぶ習慣的な食事摂取量を評価した。一方、筋機能については、2011/2012に実施されたKnee Extension Strength(KES)testと8-ft Timed Up and Go test(8ft-TUG)というものに基づき定量化したようです。さらに、身体活動量についても質問票を用いて評価した。

 対象者の1日当たりの硝酸塩摂取量の中央値は65mg/日で、およそ81%が野菜由来であったようです。摂取量で対象者を3群に分類したところ、摂取量が最も多かった群(摂取量中央値91mg/日)は、最も少なかった群(摂取量中央値47mg/日)に比べて、KESが2.6kg(11%)高く、8ft-TUGが0.24秒(4%)速かったようです。

 今回の研究から、硝酸塩の豊富な野菜を多く含む食事を摂取することにより、身体活動量に関係なく、筋力が増強される可能性が示されました。筋機能は健康全般、特に後年の骨の強さを維持するために不可欠で、筋機能を最適化するためには、ウエイトトレーニングなどの運動を定期的に行うとともに、葉物野菜を豊富に含んだバランスの良い食事を摂取するのが理想的と思われます。

 硝酸塩は、サプリメント(栄養補助食品)で摂取するよりも、健康的な食事の一部として野菜から摂取する方が良いと思われます。緑の葉物野菜には、健康に欠かせないあらゆる種類の必須ビタミンとミネラルが含まれているからでございます。

原著

2022/07/24

健康講座522 新型コロナワクチン4回接種の効能

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチン(BNT162b2[ファイザー製]、mRNA-1273[モデルナ製])の4回接種は、3回接種と比較し、オミクロン変異株流行中の長期療養施設の60歳以上の入居者において、SARS-CoV-2オミクロン変異株の感染(症状の有無を問わないRT-PCR検査陽性)、症候性感染および重篤なアウトカム(入院または死亡)の予防を改善することが、カナダ・オンタリオ州公衆衛生局による検討で示されたようです。また、4回目接種者はワクチン未接種者と比較し、重篤なアウトカムへの予防効果は高いことも示された。ただし、保護効果の持続期間は不明であったとのことです。これまでに、イスラエルにおける60歳以上を対象としたリアルワールドの有効性試験では、BNT162b2の4回目接種者は3回目接種者(4ヵ月以上前に接種)と比較して、オミクロン変異株への感染およびCOVID-19重症化がかなり予防できることが示唆されていたとのことです。B

 研究グループは、カナダ・オンタリオ州の長期療養施設626ヵ所において、2021年12月30日~2022年4月27日の期間にSARS-CoV-2のRT-PCR検査を1回以上受け適格基準を満たした、60歳以上の入居者6万1,344例を対象に、検査陰性デザインによる症例対照研究を行ったようです。1週間に少なくとも1回陽性となった入居者を症例とし、同じ週の検査がすべて陰性であった入居者を対照としました。
 主要評価項目は、RT-PCR検査で確認されたSARS-CoV-2オミクロン変異株の感染、入院または死亡。

 SARS-CoV-2オミクロン変異株の感染陽性者は1万3,654例、陰性対照者は20万5,862例であった。

 ワクチン接種後7日以上を経過した4回目接種(95%がmRNA-1273を接種)の、84日以上経過した3回目接種に対する限界有効性は、症状の有無を問わない感染に関して19%、症候性感染が31%、重篤なアウトカムに関して40%であったようです。

 ワクチン接種者の未接種者に対するワクチン有効性は、追加接種ごとに増加し、4回目接種では、症状の有無を問わない感染に関して49%、症候性感染が69%、重篤なアウトカムに関しては86%であったとのことです。

原著

2022/07/22

健康講座521 ビーガン食と体重減少

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 肥満や2型糖尿病の管理がうまくいっていないのなら、ビーガン食を試してみるのも、一つの方法かもしれないです。それによって管理状態が改善する可能性を示唆するデータが、ステノ糖尿病センター(デンマーク)から報告されました。


 ビーガン食は植物性食品のみを摂取する最も厳格なベジタリアン食で、「完全菜食主義食」とも呼ばれる食事スタイルでございます。果物や野菜、ナッツ、マメ科植物、種子などが中心の食事で、動物性食品は乳製品も含めていっさい口にしない。このビーガン食による体重やBMI、血糖値、血清脂質、血圧などへの影響を、システマティックレビューとメタ解析により検討したようです。

 文献データベースを用い、2022年3月までに発表された、肥満(BMI25kg/m2以上)または2型糖尿病患者を対象に、ビーガン食による12週間以上の介入を行った無作為化比較試験(RCT)の英語論文を検索。11件の研究報告が抽出され、それらの研究参加者は合計796人(平均年齢48~61歳)で、介入期間は平均19週間だった。比較対照群として、ビーガン食以外の地中海食などによる介入群を置いた研究と、食事介入をせずに通常の食事を継続した群を対照とした研究が存在しました。

 メタ解析の結果、ビーガン食による介入群は対照群に比較して、体重の減少幅は4.1kg、BMIは1.38kg/m2、それぞれ有意に大きかった。比較対照を上記の2群に分けて解析すると、ビーガン食以外の地中海食などによる介入群との比較では、体重の減少幅は2.7kg、BMIの減少幅は0.87kg/m2の差だったのです。それに対して、食事介入をせずに通常の食事を継続した群との比較では、体重7.4kg、BMI2.78kg/m2という、より顕著な差が認められました。

 そのほか、HbA1cは0.18%、総コレステロールは11.6mg/dL、LDL(悪玉)-コレステロールは9.3mg/dLの群間差があり、それぞれビーガン食の介入による低下幅の方がやや大きかったです。中性脂肪や血圧の変化幅は、対照群とほとんど差がなかったようです。

 これまでに報告された研究のメタ解析から、ビーガン食を少なくとも12週間順守すると、肥満者には臨床的に意味のある体重減少がもたらされ、2型糖尿病患者の血糖値が改善する可能性のあることが明らかになりました。ビーガン食は脂肪の含有量が少なく、食物繊維の含有量が多いために、カロリー摂取量が低下して体重が減少すると考えられます。

 参考までに。

2022/07/20

健康講座520 糖尿病と新型コロナの後遺症

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後にさまざまな症状が慢性的に続いている状態、いわゆる「long COVID」または「PASC(post-acute sequelae of COVID-19)」のリスクを、糖尿病が最大4倍程度押し上げる可能性が報告されました。

 糖尿病がCOVID-19重症化(入院や死亡)の主要なリスク因子の一つであることは、パンデミックの初期から知られていました。ただし、COVID-19罹患者の多くを悩ませているlong COVIDと糖尿病との関連は明らかになっていませんでした。これまでの報告を用いた探索的研究であるスコーピングレビューによってこの点が検討されました。

 2020年1月1日~2022年1月27日に発表された、全文が公開されているlong COVID関連の英語論文を検索し、39件の個別研究が含まれている計7件のレビュー論文を抽出。全体として43%の研究が糖尿病をlong COVIDの強力なリスクファクターとして特定していたそうです。それらの研究の大半で、非糖尿病群と比較したオッズ比が4以上を示していました。ただし、long COVIDの定義に含める症状や解析対象者(入院患者か非入院患者か)、および追跡期間(最短が4週間、最長が7カ月)による結果の差異も認められました。

 なぜ糖尿病がlong COVIDリスクを高めるのかは明確でないですが、多くのメカニズムが提唱されているようです。糖尿病は慢性炎症疾患という側面があります。従って糖尿病患者ではCOVID-19罹患に伴う炎症反応がより強く表れることが、long COVIDにつながる可能性があるという説がでております。

 糖尿病患者はパンデミック収束まで、普段に増して健康維持に努めるべきと強調されております。そして、ワクチン接種も重要でございます。接種後にもCOVID-19に罹患することがあるが、long COVIDのリスクは抑えられる可能があります。

 糖尿病患者がCOVID-19に罹患した場合、感染後2~3カ月間は血糖値を注意深くモニタリングすべきです。なぜなら、long COVIDのために糖尿病が悪化する可能性があるからだそうです。そして、十分な休息、定期的な運動、体に良い食事を取ることが、健康状態の悪化予防になり、ウイルスの排除にもつながるでしょう。

 long COVIDに対する特効薬はまだないです。当たり前の予防策をすることが、結局は最善ということになります。

2022/07/18

健康講座519 新型コロナワクチン3回と蔓延

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

  新型コロナウイルスのブレークスルー感染が新型コロナの蔓延に大きく寄与する可能性があるかどうかについてのデータは限られています。そこで、韓国・ウルサン大学は新型コロナワクチンの3回接種を終えた完全接種者(ブレークスルー感染群)と1~2回接種の部分的接種/未接種者(非ブレークスルー感染群)の新型コロナの他人へ感染を広げる(2次感染)割合やウイルス排出動態に関するコホート研究を実施しました。その結果、 初期のゲノムウイルス量はワクチン接種者とワクチン未接種者の間で類似していたが、完全接種者では、部分的接種者/ワクチン未接種者よりも生存可能なウイルスの排出期間が短く、2次感染率が低いことが示されました。


 本研究は 2次感染率に関する試験とウイルス排出動態試を実施するために、2020年3月1日~2021年11月6日の期間に入院または3次医療機関への受診で新型コロナと診断された医療従事者、入院患者、および介護者の疫学データを分析したようです。そのために新型コロナウイルスのゲノムRNAをPCRで測定し、2021年7月20日~8月20日に韓国・ソウル市にある施設で分離されたデルタ変異株に感染した新型コロナ軽症例の唾液サンプルのウイルス培養を毎日行ったものです。

 主な結果は以下のとおりで7ございます。

・新型コロナ感染者173例が2次感染率の試験に含まれた。彼らに感染歴はなく、50例(29%)がブレークスルー感染だった。
・院内での2次感染率は、ブレークスルー感染群のほうが非ブレークスルー感染群よりも有意に少なかった。
・初期ゲノムウイルス量は2群間で同等だったものの、細胞培養での生存ウイルスは完全接種者(症状発症後4日間)のものと比較して、部分的接種者(同8日間)とワクチン未接種者(同10日間)のもので著しく長い期間検出された。

 本研究データは、新型コロナワクチンでもブレークスルー感染の可能性があるにせよワクチン接種はウイルス蔓延を制御するのに非常に有用でありそうです。

原著

2022/07/15

健康講座518 男性更年期と代謝疾患

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 テストステロン欠乏により生じる病態と言えば男性更年期(疲れやすい、肥満、うつ、性欲低下…)をまず思い浮かべるのですが、実は、加齢による骨格筋量の減少(サルコペニア)の原因の1つであり、脂肪肝の発症にも深いかかわりがあるということでございます。

 肝臓と筋肉には肝筋連関というつながりがあり、2型糖尿病を例にとると、高血糖はもちろんのこと、過栄養による脂肪肝や運動不足による筋肉量低下が引き金となり糖尿病を発症するというものです。肝筋連関のせいで肝臓と筋肉が互いに足を引っ張り合ってさらなる悪循環を来し、サルコペニアが脂肪肝を助長するようです。これを立証するものとして、『脂肪肝と肥満と糖尿病の関係性』に関する研究1)というものがあるそうで、肥満でなくても脂肪肝があればサルコペニアのリスクはある。そして、過体重を伴わない脂肪肝は、サルコペニアがあることで見掛け上の体重が減少していると考えられているようです。

 サルコペニアにも負の影響をもたらす脂肪肝。近年では単なる内臓脂肪ではなく、筋肉、心臓、肝臓、膵臓の4つの部位に主に発生し、さまざまな細胞に障害を及ぼす “異所性脂肪蓄積”の1種として重要視されているのです。さらに、脂肪肝は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)へ進展することもあるため、NASHのリスク因子である男性更年期(LOH症候群)やサルコペニアを早期に改善させる必要があります。実際に国内の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の年代別割合を見ると、男女ともに20代から増加し50~60代でピークを迎え、とくに男性の場合は50代をピークに逆U字を描く傾向にあり、肝筋連関に加えて、血清テストステロンの低下が脂肪肝に影響しているのではと言われております。また、海外データ3)で、脂肪肝指数はテストステロン高値群より低値群で高く、トリグリセリド/HDL-C比はテストステロン高値群より低値群で高いことが示唆されているようです。

 去勢モデルマウスとテストステロン補充に関する研究4)を示し、これによると去勢モデルにテストステロンを補充することで骨格筋量の回復、耐糖能異常の改善がみられたようです。さらにエストラジオールを補充することで最も高い改善が見られ、脂肪肝も抑制することが示されました。ただし、実臨床においてLOH症候群でサルコペニアと糖尿病を伴う受診者にエストラジオールを補充することの是非については議論があるようです。エストラジオールの代替として大豆イソフラボンおよびエクオールの可能性について検討がされているようです。

 テストステロンの補充で骨格筋量が回復しさらにエストラジオールの補充が脂肪肝の改善に効果を有することから、エストラジオールの代替として大豆イソフラボンを補充することは脂肪肝・サルコペニア・糖代謝改善に期待できるのではと思われます。
参考

2022/07/14

インスリン注射の見直し@小川糖尿病内科クリニック 東海市

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。

インスリン注射を行っている患者さん、注射回数や注射の単位が何年も変わっていない
ことはないでしょうか?

糖尿病は、血糖を下げるインスリンというホルモンが出にくい場合と効かない場合に大きく分けられます。

実際にはどちらか一方ということはほぼなく、インスリンの出にくさと効かなさの総合的な結果で血糖値が決まってきます。

年齢、体重、併発疾患、併用薬、食事内容、時間帯など様々な要因で変わってくるため、厳密には必要インスリン量は常に変化します。

毎日インスリン単位を微調整をし続けるのは現実的には不可能ですが、数年ごとに見直すことによって個々の体質にあわせて調整が可能ですし、必要になってきます。

10年前と比べ、内服薬も注射薬も劇的に変わりました。
ご自身の体質の変化と使用可能なお薬の変化を鑑みると、10年前と全く同じ処方が適切である可能性は低いと思われます。

もちろん全員とは申し上げませんが、インスリン注射回数や単位を減らしかつ血糖管理がより安全で安定にすることができるかもしれません。

なかにはインスリンが効きすぎによって、無自覚もしくは自覚している低血糖が起こっている患者さんも多く見えます。

低血糖は様々な合併症や予後を悪くすることが分かっております。

そのような低血糖予防も含めたインスリン治療を心がけて参ります。

少しでも気になるようでしたら当院へ是非相談へ来ていただければ幸いです。

2022/07/13

健康講座517 電子タバコと歯周病

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 タバコは歯周病のリスク因子として有名ですが、電子タバコもやはり歯周組織にダメージを与えるというエビデンスが報告されました。米ニューヨーク大学(NYU)によるもので、電子タバコ利用者の口内細菌叢は、非喫煙者よりも喫煙者に近い特徴を有しているとのことです。

 口の中に生息する細菌は、バイオフィルムという粘着性の膜を形成して繁殖します。歯の表面のバイオフィルムは、毎日の歯磨きと定期的な歯科受診によってコントロール可能です。しかし、歯と歯茎の間に深い歯周ポケットがあると十分にクリーニングできず、細菌が産生する毒素が組織を刺激し、慢性的な炎症反応が引き起こされるのです。これが歯周病と呼ばれる状態です。米国歯周病学会によると、喫煙は歯茎を脆弱にして歯周病のリスクを高めるそうです。従来型タバコだけでなく、電子タバコも口内細菌叢のバランスを乱し、炎症や感染を起こしやすくする可能性が示されました。

 成人84人の口内細菌叢の変化を6カ月間にわたり観察するという研究を行いました。研究対象者のうち、従来型タバコの喫煙者が27人、電子タバコ利用者が28人、非喫煙者が29人だったようです。6カ月間で全ての群の口内細菌叢の組成に変化が見られたが、全体的に前二者は非喫煙者に比較して、Selenomonas、Leptotrichia、Saccharibacteriaという細菌の割合が高かったようです。電子タバコ利用者の口内には、歯周病を進行させることが明らかになっている、FusobacteriumやBacteroidalesという細菌が多いことも明らかになったようでございます。

 また、研究参加者全員に何らかの歯周病の所見が認められました。ただしその重症度が異なり、従来型タバコ喫煙者は約80%が重症と判定された一方、非喫煙者の多くは軽症または中等症にとどまっていたようです。電子タバコ利用者はそれら両者の中間に当たり、約40%が重症と判定されました。

 従来型タバコの喫煙によって生じる白板症(口腔粘膜や舌にできる白い斑点のことで前がん病変とされる)に関しては、電子タバコがまだ比較的新しい製品であるため、利用した場合にそのリスクが上昇するのかは不明だそうです。ただし、「電子タバコはタバコの葉を燃焼はさせないものの、それ自体に問題のある成分が含まれている」とのことです。具体的には、プロピレングリコール、グリセロール、香料などや、製品によってはニコチンも含む液体が加熱されたとき、蒸気とともに有毒化学物質が生成されると解説されていました。

 電子タバコの蒸気は多くの人々が信じているような無害な存在ではなく、発がんを促すことが知られている重金属や化学物質が含まれているようです。ただし、長期間の喫煙で問題になる肺気腫や慢性気管支炎などの疾患リスクが、電子タバコの利用でも上昇するのかは、電子タバコの歴史がまだ浅いために明らかでないとのことです。

 とは言え今回発表された研究のように、短期的な悪影響の存在を示唆するエビデンスの蓄積が進んでいます。電子タバコが十代の若者や若年成人に人気であることを考慮すると、この問題は深刻かもしれません。短期的な悪影響を示すエビデンスの一つとして、電子タバコの利用を始めた若年成人は、1年以内に喘鳴と空咳を発症しやすいことが分かったということでございます。

 このような電子タバコの潜在的な危険性について、成人の喫煙者に対して、電子タバコが禁煙の助けになるという宣伝に使われているようです。しかし、電子タバコで禁煙成功率が高まるという確固たるエビデンスはないです。どうぞ、ご参考に。


原著

2022/07/11

健康講座516 多価不飽和脂肪酸(PUFA)の摂取量増加は死亡低下

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 2型糖尿病患者において、多価不飽和脂肪酸(PUFA)の摂取量増加は炭水化物または飽和脂肪酸の摂取と比較して、全死亡および心血管死の低下と関連していることが認められております。中国・浙江大学が、米国のNurses' Health StudyおよびHealth Professionals Follow-up Studyのデータを解析して明らかにしたようです。結果は、2型糖尿病患者の心血管死および全死亡の予防に、食事中の脂肪の質が重要な役割を果たすことを示しております。糖尿病患者の食事ガイドラインでは、良好な健康を維持するためにトランス脂肪の摂取を減らし、飽和脂肪を不飽和脂肪に置き換えることを推奨しているのですが、これは一般集団での検討結果に基づいたもので、糖尿病患者における特定の食事中の脂肪と全死亡および心血管死との関連性についてはこの度の報告でより知見が深まりました。


 研究グループは、2型糖尿病患者における食事中の脂肪と心血管死および全死亡との関連を評価する目的で、米国のNurses' Health Study(1980~2014年)およびHealth Professionals Follow-up Study(1986~2014年)の2型糖尿病患者1万1,264例について解析したようです。

 参加者は、食事中の脂肪の摂取について、食事摂取頻度調査票を用いた2~4年ごとの調査を受けていた。

 主要評価項目は、追跡期間中の全死亡と心血管死であるようです。食事中の脂肪の摂取量と主要評価項目との関連について解析しました。

 追跡期間中、死亡は2,502例(うち心血管死646例)が確認された。解析の結果、多価不飽和脂肪酸(PUFA)の摂取は全炭水化物と比較し心血管死のリスク低下と関連していました。摂取量の第1四分位と比較した第4四分位のハザード比(HR)は、多価不飽和脂肪酸(PUFA)で0.76、海産物由来のn-3系PUFAで0.69、α-リノレン酸で1.13、リノール酸で0.75であったようです。全死亡についても、PUFA、n-3系PUFA、リノール酸で同様の関連が確認されたが、植物性ではなく動物性の一価不飽和脂肪酸は全死亡のリスク増加と関連していました。

 飽和脂肪酸からのエネルギーの2%を、総PUFAまたはリノール酸からの同等のカロリーに置き換えると、13%、15%、それぞれ心血管死のリスクが低下しました。また、飽和脂肪酸からのエネルギーの2%を総PUFAに置き換えると、全死亡のリスクが12%低下したのです。

 参考までに。

2022/07/08

健康講座515 SGLT2阻害薬カナグル(一般名:カナグリフロジン)、「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病」適応追加

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 田辺三菱製薬は、6月21日、SGLT2阻害薬カナグル(一般名:カナグリフロジン)が、「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く)」の適応追加承認を取得したことを発表したようです。カナグルは、2型糖尿病治療薬として2014年に製造販売承認を取得し、販売を開始しているお薬です。


 2型糖尿病は、慢性腎臓病の発症や進展のリスク因子であり、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者は多くみえます。病態の進行に伴い腎機能が低下し、腎不全に至った場合には透析療法への移行が必要となってしまいますが、透析療法は患者のQOLを低下させるだけでなく、医療経済的な観点からも重要な課題となっております。

 参考までに。COIは皆無でございます。

2022/07/06

健康講座514 無症候性高度頸動脈狭窄症患者においての急性虚血性脳卒中

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 外科的介入を受けなかった無症候性高度頸動脈狭窄症患者において、頸動脈病変に関連した同側の急性虚血性脳卒中の推定発生率は5年間で4.7%であることが、後ろ向きコホート研究で示されたようです。

無症候性で狭窄率70~99%の高度頸動脈狭窄症患者3,737例について調査

 研究グループは、2008~12年の間に無症候性高度頸動脈狭窄症と診断された患者で、同側の頸動脈インターベンション(頸動脈内膜切除術または頸動脈ステント留置)歴ならびに過去6ヵ月以内の脳卒中または一過性脳虚血発作既往歴がない成人患者を対象に、2019年12月31日まで追跡したようです。

 主要評価項目は、頸動脈病変に関連した同側の急性虚血性脳卒中(脳梗塞)の発生であります。

同側脳梗塞の平均年間発症率は0.9%

 3,737例(標的動脈4,230本)のうち、2,314例(標的動脈2,539本)は試験終了時点までにインターベンションを受けていなかったようです。

 また、追跡期間中のスタチンの使用は、脳梗塞のリスク低下と関連していたようでございます。
原著

2022/07/04

東海市新型コロナワクチン予防接種について

こんにちは。

東海市にある小川糖尿病内科クリニックの院長の小川義隆です。

コロナワクチン予防接種についてお伝えいたします。


当院での新規予約再開しました。新規予約ご希望の方は東海市より、ご予約頂ければ幸いです。当院の予約枠は半日あたり6人までとしておりましたが、地域からのニーズが多かったことを受け、当院スタッフより献身的な姿勢を示して頂きました。従いまして、2月より半日12人と予約枠を増設します。できるだけスムーズなご案内を意識しますが院内待機の観点や通常診療と並行しますので、予約時間はあくまで目安としてご理解頂ければ幸いです。



<注意事項>

当院はコロナワクチン個別接種医療機関ですが、予約や予約に関するご質問は当院では受け付けておりません。また、予告なく予防接種についての内容が変更される可能性がございますので、予約前に下記サイトやコールセンターにてご確認をお願いいたします。


予約開始日時、予約方法、その他詳しい内容につきましては、

特設サイト (東海市コロナワクチン予防接種特設サイトへ)

コールセンター(052-601-6555)

にてご確認をお願いいたします。


また、厚生労働省が作成している新型コロナワクチンについてのQ&Aは、こちらをクリック(外部リンク)サイト内では新型コロナワクチンについて詳しく記載しています。


<予約の流れ>

①接種券が届く

  ↓

②予約する(東海市の予約開始日時につきましては、特設サイトをご確認ください)

予約方法は以下の2通りです。

①コールセンター(052-601-6555)、フリーダイアル(0120-123-912)

②ワクチン接種予約システム(こちらをクリック(外部リンク))

 ▶︎②の予約システムの詳しい使い方はこちらをクリック(外部リンク)

なお、基礎疾患などがある方は、かかりつけ医などに接種可能かご相談の上ご予約ください。

  ↓

③予約した日時に接種医療機関にて接種する(当院の場合)

◆持ち物

接種券、予診票、健康保険証、住所がわかる本人確認書類(運転免許証など)、お薬手帳(あれば)

※接種券、予診票がない場合は接種致しかねますので、必ずお持ちください。


◆当日の服装


・肩に近い位置に接種いたしますので、
 半そでの服、袖なしの服を着用ください。
 上着の下がこのような状況ですと助かります。
・冬場で寒いと思いますが、スムーズな進行のために
 ご協力をお願い致します。

 
 ・その服装で上着を羽織った場合は、
  接種時には脱いでいただきます。
 
 ・接種時は、肘はだらんと下におろした姿勢で
  力を抜いていただきます。


◆注意事項

・感染症対策のため、必ずマスク着用の上お越しください。

・スムーズに接種するため、事前に予診票にご記入ください。(問診表の書き方へ

・他の患者さまの診察と同時進行で予防接種を行っているため、予約時間より前後する可能性がございます。予約時間はあくまで目安時間でありますことをあらかじめご了承ください。

・接種後、急変などが起こった場合に対応するため、15〜30分待機していただきます。

・接種者の付き添いの方は最低限の人数でお願いいたします。



<予防接種開始時、当院のコロナ対策について>

・手指消毒用アルコール




・空気清浄機



・自動検温機、受付パーテーション










・待合室椅子にパーテーション設置(一部ない椅子もございます)










・接種後の待機場所にパーテーション設置(こちらのスペースで15〜30分待機していただきます)












<最後に…>

感染者が増加してきておりますので、引き続き手洗い、マスク着用をよろしくお願いいたします。

定期薬の服用ができない状況は危険ですので、受診の方はお忘れなくご来院ください。


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当院での新型コロナワクチン接種の流れ

当院での新型コロナ(COVID19)ワクチン接種後のアナフィラキシーと対策

新型コロナ(COVID19)ワクチン投与の副反応





(発行・監修:長野県新型コロナウイルスワクチン接種アドバイザーチーム)



健康講座513 人工甘味料のがんリスク

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 「シュガーフリー」と聞くとヘルシーな印象を受けますが、砂糖の代わりに使用される人工甘味料の摂取量が多い人では、がんのリスクがわずかに高まる可能性のあることが新たな研究で示されました。フランス国立保健医学研究所(INSERM)の研究でございます。

 これまで長年にわたって、人工甘味料が発がんを促し得ることが基礎研究で示されていました。これには、人工甘味料が体内の慢性的な炎症をもたらしたり、DNAの損傷を引き起こしたり、腸内細菌叢に影響を与えたりすることが関係すると考えられています。また、ダイエット飲料を日常的に飲んでいる人たちでは、がんリスクが比較的高いことも一部の研究で示されているようです。

 今回の研究は、10万2,865人のフランスの成人を対象にしたもの。対象者を中央値で7.8年間追跡し、人工甘味料〔アスパルテーム、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、スクラロース〕の摂取量とがんリスクとの関連を検討しました。人工甘味料の摂取は24時間の食物摂取記録により評価しました。

 その結果、人工甘味料の摂取量が多い人(摂取量が中央値より多い)では人工甘味料を摂取していない人と比べて、がんと診断されるリスクが13%高いことが示されました。人工甘味料の種類別に見ると、アスパルテームで15%、アセスルファムKで13%のリスク上昇だったようです。がん種に着目すると、乳がんリスクはアスパルテームの摂取量が多い人で22%上昇し、大腸がんなどの肥満関連のがんリスクは、全ての人工甘味料の摂取量が多い人で13%、アスパルテームの摂取量が多い人で15%上昇していました。

 この大規模研究では、アスパルテームやアセスルファムKなどの世界中で多くの食品や飲料に使用されている人工甘味料が、がんリスクの上昇に関連していることが示されました。

 ただし、アスパルテームやアセスルファムKとがんリスクとの間に関連が認められたものの、この結果は、単にこれらの人工甘味料が最もよく消費されている甘味料であることを表しているに過ぎない可能性があります。また、いずれの人工甘味料に関しても、直接、がんの発症をもたらすことは証明されていないようです。

 いずれにしても、健康上の観点から、果物や野菜、食物繊維の豊富な穀物などの未加工の食品を積極的に摂取し、シュガーフリーか否かにかかわらず、加工食品の摂取を控えるのが良いと思われます。


原著

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...