2021/11/30

健康講座398 新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時に接種できないか?

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時に接種できれば、正直とても助かりますよね。米国ではワクチン接種率を高めるために同時接種も可としているが、日本では現時点で互いに片方のワクチンを受けて2週間後に接種可となっているのです。今回、英国による多施設共同無作為化第IV相試験で、新型コロナウイルスへのアストラゼネカ製ワクチン(ChAdOx1)もしくはファイザー製ワクチン(BNT162b2)とインフルエンザワクチンの同時接種により安全性の懸念は引き起こされなかったことが示されたようですようでございます。また、両ワクチンに対する抗体反応も維持されていたようです。


 本試験では、2021年4月1日~6月26日に英国における12施設で、新型コロナワクチンの初回接種を受けた成人679人を登録し、以下の6グループに分けて検討した。

・ChAdOx1+培養細胞4価インフルエンザワクチン:129人
・BNT162b2+培養細胞4価インフルエンザワクチン:139人
・ChAdOx1+MF59Cアジュバント添加3価インフルエンザワクチン:146人
・BNT162b2+MF59Cアジュバント添加3価インフルエンザワクチン:79人
・ChAdOx1+遺伝子組換え4価インフルエンザワクチン:128人
・BNT162b2+遺伝子組換え4価インフルエンザワクチン:58人

 その後、新型コロナワクチンの2回目接種と一緒にインフルエンザワクチンもしくはプラセボを接種し、その3週間後にインフルエンザワクチン接種者にはプラセボを、プラセボ接種者にはインフルエンザワクチンを接種し、6週間観察した。前者には340人、後者には339人が無作為に割り付けられた。主要評価項目は、インフルエンザワクチンもしくはプラセボの接種後7日間に参加者から報告された1つ以上の特定全身反応であり、差が25%未満であれば非劣性とした。また、局所および非特定全身反応、液性応答も評価したようです。

 主な結果は以下のとおりだそうです。

・6グループのうち、ChAdOx1+細胞培養4価インフルエンザワクチン(インフルエンザワクチン群とプラセボ群のリスク差:-1.29%、95%信頼区間:-14.7~12.1)、BNT162b2+培養細胞4価インフルエンザワクチン(6.17%、-6.27~18.6)、BNT162b2+MF59Cアジュバント添加3価インフルエンザワクチン(-12.9%、-34.2~8.37)、ChAdOx1+遺伝子組換え4価インフルエンザワクチン(2.53%、-13.3~18.3)の4グループでは非劣性を示した。一方、ChAdOx1+MF59Cアジュバント添加3価インフルエンザワクチン(10.3%、-5.44~26.0)、BNT162b2+遺伝子組換え4価インフルエンザワクチン(6.75%、-11.8~25.3)では、95%CIの上限が非劣性マージンを超えた。
ワクチン接種による全身反応のほとんどが軽度もしくは中等度だった
・局所および非特定全身反応の割合は、無作為に割り付けられた2群間で同様だった。
・重篤な有害事象は重度の頭痛による入院の1件で、試験的介入に関連していると考えられた。
・免疫応答への影響はなかった。

 ややこしいですが、同時接種に大きな問題はなかったようでございます。来シーズンに、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンを一緒に接種することで、ワクチン接種のための負担が軽減され、ワクチンが必要な人々へのタイムリーなワクチン投与とCOVID-19とインフルエンザの予防を可能になると良いですね。

原著

2021/11/29

健康講座396 免疫不全者の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンはどこまでやるのか

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 疾患やそれに対する治療により免疫の機能が低下している免疫不全患者では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンの防御効果を高めるために、4回目の接種が必要になるかもしれない。そんな研究結果が研究で示唆されたようでございます。


 免疫不全患者では通常、COVID-19の重症化リスクが高いです。しかし、これらの人では、免疫システムが正常に機能している人に比べて、2回のmRNAワクチン接種により得られる防御効果が低い可能性のあることが指摘されているのです。

 そこで今回、米疾病対策センター(CDC)が運営するデータを用いて、免疫不全患者におけるmRNAワクチン接種の有効性を調べたようです。免疫不全の成人2万101人(免疫不全群)、免疫システムが正常に機能している成人6万9,166人(免疫正常群)が含まれていたものです。これらの成人のうち免疫不全群の53%と免疫正常群の43%がmRNAワクチンの2回接種を完了していた。

 解析の結果、COVID-19に関連した入院に対するmRNAワクチン2回接種の有効性は、免疫不全群で77%、免疫正常群で90%であり、免疫不全群の方が低いことが明らかになったのです。この違いは、mRNAワクチンの種類や被接種者の年齢、デルタ株の蔓延時期に関わりなく認められたようです。また、ワクチンの有効性は、免疫不全群のサブグループ間で大幅に異なり、臓器移植患者または幹細胞移植患者の59%からリウマチ性疾患患者や炎症性疾患患者の81%までの幅があったようです。

 この結果は、免疫不全患者にとってもmRNAワクチンの2回接種は有益ではあるが、免疫システムが正常に機能している人に比べると、COVID-19重症化に対する防御力が大幅に低いことを示唆するものす。免疫不全患者では、ワクチンの2回接種後も防御力が十分ではないため、3回目の接種と、それにより得た免疫を持続させるためのブースター接種(4回目)を受けるのも一考かもしれません。

原著

2021/11/28

健康講座395 寿命が延びる5つの習慣

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 ある5つの生活習慣を実践すると、それをまったく行わないときよりも10年以上余命が延びる、と言われたら興味がでますでしょうか。今回は、健康的な生活が余命に大きな影響を及ぼすことがわかった2つの論文の結果をを紹介します。

二つの論文とは、女性看護師を対象に慢性疾患のリスクファクターを検証しているNurses’ Health Study(1980~2014年、n=7万8,865)と、栄養的要素が男性医療者の健康に与える影響を検討したHealth Professionals Follow-up Study(1986~2014年、n=4万4,354)です。両研究におけるアンケート調査はなんと現在も進行しています。

今回紹介する論文は、この2つの研究の合計約12万3,000例の30~75歳を分析しています。両研究は組み入れ対象者の面で相互補完的な関係にあり、それらをまとめて分析した本研究も貴重な結論を導き出しています。

解析項目は、健康上低リスク生活習慣者と高リスク生活習慣者でどれだけ死亡率に差が出るかです。組み入れ対象が医療専門職であることと、そのうちの多くは白人であることから、外的妥当性の評価には注意が必要です。

本研究では、健康リスクを低減させる要素として、下記の5つを定義しました。

1.健康的な食事をしている

「健康的な食事」の定義付けとして、AHEI(Alternate Healthy Eating Index)を用いた評価がなされています。これは野菜、果物、ナッツ、全粒穀物、多価不飽和脂肪酸および長鎖オメガ3系脂肪酸の摂取が多く赤身肉、加工肉、甘味料入り飲料、トランス脂肪酸、精製粉の摂取が少ないとスコアが良くなる指標です。研究では、AHEIスコアが各研究の上位40%に入った参加者は、健康的な食事を取っていると定義されました。

2.喫煙しない

3.少なくとも1日当たり30分の中等度または活発な運動を行っている

4.適度な量のアルコール摂取(女性で5~15g/日、男性で5~30g/日)

5.BMIが18.5~24.9kg/m2、すなわち低体重または肥満ではない

各項目に当てはまれば1点、当てはまらなければ0点とし、5項目の合計点によって、対象者は5段階にスコア分けされました。

研究期間中に、4万2,167例の参加者が死亡しています。そのうち、がん患者数は1万3,953例、心血管疾患患者数は1万689例でした。5つの習慣のいずれもが、単独で全死因死亡またはがんないし心血管死亡のリスクを低減させる傾向がありました。

最も不健康なスコア0の参加者と比較して、最も健康的なスコア5の参加者を多変量調整した結果は、全死因死亡が74%減少、がんによる死亡が65%減少、心血管疾患死亡が82%減少でした。

また、スコア5以外の参加者と比較して、スコア5の参加者では、全死因死亡が60.7%、がんによる死亡が51.7%、心血管疾患による死亡が71.7%減少しています。

一般的な米国人口がこれら5つの習慣を取り入れた場合の50歳時点での平均余命は、女性で43.1年、男性で37.6年でした。これは、そのいずれも取り入れない場合と比較して、女性で14.0年、男性で12.2年余命が延びている計算になります。

現実的に健康リスクを低減させる要素の5つすべてを一度に取り入れることが難しいのであれば、それぞれの習慣がリスク低減に寄与しているため、どれか1つの習慣だけを提案するアプローチもよいでしょう。大きな結果がもたらされることがわかっていれば、小さな習慣から徐々に取り入れて維持していくモチベーションも湧くのではないでしょうか。



Li Y, et al. Circulation. 2018 Apr 30. 

2021/11/27

健康講座394 痛風と食事の影響

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 高尿酸血症や痛風の患者さんで、アルコールや肉・魚の内臓などプリン体を多く含む食品の摂取はなかなか制限できないかもしれませんね。プリン体は最終的に尿酸に代謝されるため、プリン体が多い食品を避けようというのはよく聞く話ですが、この摂取制限にどれほどの効果があるのか気になるところですね。

プリン体制限食は尿中尿酸排泄を減らすと考えられていますが、プリン体は体内で生成される割合のほうが多いこともあり、尿酸値への影響は約1mg/dL程度と小さいことが知られています1)

さらに、尿酸値が多少高くても、必ずしも痛風発作が起こるわけではありません。無症候性高尿酸血症の結果を定量化するために、健康な男性2,046例を対象とした14.9年間にわたる追跡調査2)では、尿酸値と痛風発作の年間発症率の関係は下記のとおりでした。

  • 尿酸値9 mg/dL以上:年間発症率4.9%
  • 尿酸値7.0~8.9 mg/dL:年間発症率0.5%
  • 尿酸値7.0 mg/dL未満:年間発症率0.1%

※尿酸値9 mg/dL以上の場合、痛風発作の5年累積発生率は22%。

この研究では、痛風の強力な予測因子として、年齢、肥満度指数(BMI)、高血圧、コレステロール値およびアルコール摂取が指摘されています。多くの人が自覚症状がない疾患で、尿酸値と発作の発症率や食事の影響が小さいとなると、継続的なプリン体の摂取制限はなかなか難しいように思います。

しかし、プリン体制限食が急性痛風発作の発症予防に寄与するという報告もあります。1つ目が2004年にNEJMに掲載された論文で3)、プリン体、タンパク質および乳製品の摂取が痛風発作の新規発症に及ぼす影響を前向きに調査したものです。対象はベースライン時点で痛風の既往がない男性 47,150 例で、食事要因と痛風の新規発症の関係を12年間追跡しています。研究期間中に痛風と初診断された730例のうち、各食品の摂取量が最小五分位群に対する最大五分位群の痛風の多変量補正相対リスクは次のとおりでした。

  • 肉類摂取量:1.41 
  • 魚介類摂取量: 1.51 
  • 乳製品摂取量の増加:0.56
  • 興味深いことに、プリン体が豊富な野菜の摂取量やタンパク質の総摂取量は痛風リスクの上昇と関連がみられませんでした。ちなみに、乳製品の摂取がリスク低減につながる理由として、尿酸とナトリウムが結合した針状結晶が関節で炎症を起こす過程を阻害するためという説があるようです4)

    続いて、高プリン体食と再発性痛風発作リスクの関係を調べた研究もあります5)。こちらは痛風患者633例を1年間追跡しています。平均年齢は54歳、78%が男性、88%が白人です。参加者は、痛風発作時に、発作発症日、発作の兆候、服用薬剤(抗痛風薬を含む)、発作前2日間の潜在的なリスクファクターの有無(プリン体含有食品の摂取を含む)について質問を受けています。すべての高プリン体食品(例:肉、内臓肉、肉汁、魚介類、豆類、ホウレンソウ、アスパラガス、マッシュルーム、酵母、ビール、その他ワインなどのアルコール飲料)が対象となっています。

    2日間の総プリン体摂取量の最小五分位群と比較して、他の各五分位群の再発性痛風発作のオッズ比の増加は、それぞれの群の低いものから1.17、1.38、2.21、4.76(p<0.001)で、動物性のプリン体摂取量については1.42、1.34、1.77、2.41(p<0.001)、植物性のプリン体摂取量については1.12、0.99、1.32、1.39(p=0.04)でした。プリン体摂取の影響は、性別、アルコール、利尿薬、アロプリノール、NSAIDs、コルヒチン服用のサブグループ間で一貫していました。高プリン体食の摂取で、再発性痛風発作のリスクが約5倍増加しており、とくに動物由来のプリン体の制限が有効であることが示唆されています。

    プリン体は食事由来よりも体内で生成される割合のほうが高いものの、実際にプリン体制限食では痛風発作が少ないと思います。植物性のプリン体摂取についてはあまり過敏になる必要はなさそうですが、アルコールや動物性のプリン体摂取は尿酸値への影響が直接大きくなかったとしても、痛風発作の原因になりうることや、乳製品が予防となりうることは押さえておくとよいでしょう。


2021/11/26

健康講座393 COVID-19ワクチンの追加接種について

皆さんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンについて、今後のCOVID-19ワクチンの追加接種などに関する説明会を開催したようです。

ワクチン追加接種のスケジュール

(1)3回目の追加接種について
【ワクチンの対象者】
・感染拡大防止及び重症化予防の観点から、1回目・2回目の接種が完了していない者への接種機会の提供を継続するとともに、2回接種完了者すべてに対して追加接種の機会を提供する。
・18歳以上の者に対する追加接種としてファイザー社ワクチンが薬事承認されたことを踏まえ、まずは18歳以上の者を予防接種法上の特例臨時接種に位置付ける。
・重症化リスクの高い者、重症化リスクの高い者と接触の多い者、職業上の理由などによりウイルス曝露リスクの高い者については、とくに追加接種を推奨する。
【使用するワクチン】
1回目・2回目に用いたワクチンの種類にかかわらず、mRNAワクチン(ファイザー社ワクチンまたモデルナ社ワクチン)を用いることが適当。
(※mRNAワクチン以外のワクチンの使用は科学的知見を踏まえ引き続き検討)
・当面は、薬事承認されているファイザー社ワクチンを使用することとし、追加接種にモデルナ社ワクチンを使用することに関しては、薬事審査の結果を待って改めて議論する。
【2回目接種完了からの接種間隔】
2回目接種完了から原則8ヵ月以上とする。
(2)小児(5~11歳)の新型コロナワクチンの接種について
 小児の感染状況、諸外国の対応状況および小児に対するワクチンの有効性・安全性を整理した上で、議論する。
(3)特例臨時接種の期間について
 現行の期間(令和4年2月28日まで)を延長し、令和4年9月30日までとする。


 アナフィラキシーなどの副反応に関する報告を次のようにまとめている。

【アナフィラキシーについて】
・武田モデルナ社ワクチンは10月24日までに製造販売業者報告は491件だった(うちブライトン分類に基づく評価においては、アナフィラキシーと評価されたものは50件)。
・アストラゼネカ社ワクチンは10月24日までに医療機関報告は3件あり。
・年齢、性別別の解析結果では、若年の女性においてアナフィラキシーの報告頻度が多い傾向がみられている。
・アナフィラキシー疑いとして報告され、転帰が確認されたほとんどの例で軽快したことが判明している。
【心筋炎関連事象について】
COVID19感染症により心筋炎を合併する確率は、ワクチン接種後に心筋炎を発症する確率と比較して高い。ワクチン接種後の心筋炎については、国内外において、若年男性で2回目接種後4日以内の発症報告が多い。
・国内における年齢、性別別の報告頻度に係る集団的な解析で、10歳代および20歳代男性の報告頻度が多く、10歳代および20歳代男性についてファイザー社ワクチンに比べて、モデルナ社ワクチン接種後の報告頻度が高い。
・心筋炎関連事象疑い事例の死亡の報告頻度は一般人口と比べて高かったが、若年の年代別の死亡全体の報告頻度は一般人口と比べて低かった。
・心筋炎関連事象の転帰は、発症しても軽症であることが多いとされている。国内で報告があった若年男性の事例では、死亡例や重症例も報告されているが、引き続き、転帰が確認可能であった多くの事例で、軽快または回復が確認されている。
【血小板減少症を伴う血栓症について】
 ファイザー社ワクチンについては12件、モデルナ社ワクチンについては2件、アストラゼネカ社ワクチンについては1件が、血小板減少症を伴う血栓症と評価された。
【年齢・性別に関して】
・mRNAワクチンにおいては、アナフィラキシーおよび心筋炎関連事象以外の副反応疑い報告全体の報告頻度についても、若年者において報告頻度が多い傾向がみられている。
・死亡報告については高齢者において報告頻度が多い傾向がみられてれいる。

   参考

2021/11/25

求人アンケート作ってみました!

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

応募や質問しやすいようにアンケートフォームを作ってみました。

お気軽にご質問頂ければ幸いです。

現在、医療事務、管理栄養士を募集しております、


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健康講座392 α-リノレン酸(ALA)の摂取量と心血管死

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 食事によるα-リノレン酸(ALA)の摂取量が多い集団は少ない集団に比べ、全死因死亡や心血管疾患(CVD)死、冠動脈疾患(CHD)死のリスクが有意に低く、ALAの血中濃度が高いと全死因死亡とCHDによる死亡のリスクが低下することが示されたようです。

 研究グループは、ALAの食事摂取量やその組織バイオマーカーと、全死因死亡、CVD死、がん死との関連の評価を目的に、メタ解析を行ったようです。

 解析には、成人(年齢18歳以上)を対象とした前向きコホート研究で、ALAの食事摂取量または組織バイオマーカー(脂肪組織、血液)と、全死因死亡、CVD死、CHD死、がん死との関連の相対リスク推定値のデータを記載した論文が含まれました。

全死因死亡やCVD死、CHD死のリスクが有意に低下

 前向きコホート研究の41の論文が、系統的レビューとメタ解析の対象となった。各試験の追跡期間は2~32年で、この間に19万8,113例が死亡し、このうち6万2,773例がCVD死、6万5,954例はがん死であった。

 メタ解析では、ALA摂取量が最も多い群は最も少ない群に比べ、全死因死亡のリスクが有意に低かったようです。最高摂取量群では1万人年当たり113件の全死因死亡が回避されることが示されたのです。

 一つの参考までに。

原著

2021/11/24

健康講座391 高齢者の骨折と乳製品

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 高齢者介護施設の入居者では、乳製品を用いてカルシウムとタンパク質の摂取量を増量する栄養学的介入は、転倒や骨折のリスクの抑制に有効で、容易に利用できる方法であることが示されたようです。

 本研究は、ビタミンDの摂取量は十分だが、カルシウムの平均摂取量が600mg/日で、タンパク質の摂取量が1g/kg体重/日未満の高齢者介護施設入居者における、乳製品による栄養学的介入の骨折予防効果と安全性の評価を目的とする2年間の比較試験であります。

 この試験には、オーストラリアの主に歩行可能な高齢者が居住する60の認定介護施設が参加し、介入群に30施設、対照群に30施設が無作為に割り付けられた。参加者は、7,195例(平均年齢86.0[SD 8.2]歳、女性4,920例[68%])だったようです。

 介入群では、牛乳(250mL)、ヨーグルト(100g)またはチーズ(20g)が増量され、これによりカルシウムの平均摂取量が562(SD 166)mg/日、タンパク質の平均摂取量が12(6)g/日増え、摂取量の合計はそれぞれ1,142(353)mg/日および69(15)g/日(1.1g/kg体重)となった。介入により、乳製品の摂取量が2.0サービングから3.5サービングに増加した。対照群は通常の食事を維持し、カルシウムの摂取量は700(247)mg/日、タンパク質の摂取量は58(14)g/日(0.9g/kg体重)だったとのことです。

骨折が33%、転倒は11%のリスク低下

 56施設(介入群27施設、対照群29施設)のデータが解析に含まれた。参加者は、介入群が3,301例、対照群は3,894例であった。追跡期間中のエネルギー摂取量は両群で差はなく、各群内で有意な変動はなかった。骨折が324件(大腿骨近位部骨折135件)、転倒が4,302件、死亡が1,974件発生した。

 2年間で、介入群は対照群に比べ、骨折リスクが33%低下し、大腿骨近位部骨折のリスクは46%減少した。また、転倒のリスクは介入群で11%抑制された。

 5ヵ月の時点で、全骨折および大腿骨近位部骨折のリスクに有意な差がみられ、いずれも介入群で良好であったようです。
 
 この栄養学的介入は、入居者の好みに合わせて個別に行われ、既存の献立に通常の小売り用の牛乳、ヨーグルト、チーズを組み合わせた給食サービスを活用して行われたが、円滑な運用が可能であったようです。この介入は、高齢者介護施設における骨折予防のための公衆衛生対策として広く利用でき、より広範な地域社会でも使用できる可能性がりそうです。
原著

2021/11/23

健康講座390 プロトンポンプ阻害薬(PPI)と歯周病

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 胃食道逆流症や胃潰瘍などに広く使用されているプロトンポンプ阻害薬(PPI)が、歯周病の重症度を低下させる可能性のあることが報告されたのでございます。

 PPIは胃酸の分泌を抑制する薬で長く使われてきているが、近年では消化管内の細菌叢の組成に影響を及ぼす可能性が報告されています。また、骨の吸収にかかわる破骨細胞の働きを調節する作用を有することも明らかになっている。一方、歯周病は歯周に付着した微生物が歯周組織に炎症を引き起こし、歯槽骨(歯を支える骨)が吸収されて歯が抜けやすくなる病気です。このようなPPIの作用や歯周病進行のメカニズムから、PPIが歯周病のリスクを抑制する可能性を想定し、以下の検討を行ったようです。

 研究の対象は、歯周病健診を受けた1,093人。PPIが処方されているか否かで2群に分け、歯周ポケットの深さを比較した。歯周ポケットとは、歯と歯茎の間にある溝のことで、歯周病の重症度の指標。歯肉(歯茎)が歯にぴったりと付着していて歯周ポケットが浅ければ、歯肉の状態は良好と判定される。なお本研究では、歯周病のハイリスク者である、喫煙者および糖尿病患者は対象から除外されている。また解析に際しては、歯周病リスクに影響を及ぼし得る自己免疫疾患を有する患者や化学療法の既往者などを除外する前と除外後とで検討を行っている。

 検討の結果、PPIが処方されている人は歯周病の重症度が有意に低いことが明らかになったようです。例えば、自己免疫疾患患者や化学療法の既往者などを除外後の検討で、PPIが処方されていない群では深さ6mm以上の歯周ポケットがある人が23.7%を占めていたのに対し、PPIが処方されている群でのその割合は14.0%だった(P=0.030)。深さ5 mm以上の歯周ポケットのある人の割合で比較しても、同順に40.0%、27.2%だったのです(P=0.039)。

 参考までに。

原著

2021/11/22

健康講座389 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのクロス接種の期待

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン接種では、2回ともウイルスベクターワクチンである英アストラゼネカ社製のワクチンを接種するよりも、1回目にアストラゼネカ社製、2回目にはmRNAワクチンである米ファイザー社製、または米モデルナ社製のワクチンを接種する方が効果的であるとする研究結果が報告されたようです。

 欧州医薬品庁が、アストラゼネカ社製のワクチンと、非常にまれながらも重篤で致死的になることもある血栓症発症とを関連付けて以来、ヨーロッパの多くの国では、同ワクチンの一部、あるいは全国民への接種を停止する動きが広まったようです。その結果、いくつかの国では、1回目と2回目で異なるワクチンを接種する「異種混合接種」が推奨されているとのことです。直近の研究では、アストラゼネカ社製ワクチンの接種後にmRNAワクチンを接種した人では、アストラゼネカ社製ワクチンを2回接種するよりも、強力な免疫反応が得られることが報告されています。しかし、異種混合接種の安全性や、COVID-19発症に対する有効性はどうなのでしょう?。

 そこで、スウェーデンで2021年7月5日までに2回のCOVID-19ワクチンの接種を終えた人(344万5,061人)の中から、1回目にアストラゼネカ社製、2回目にファイザー社製のワクチンを接種した9万4,569人、1回目にアストラゼネカ社製、2回目にモデルナ社製のワクチンを接種した1万6,402人、2回ともアストラゼネカ社製ワクチンを接種した43万100人を抽出。さらに対照として、上記の人々がワクチン接種を終えた時点で未接種だった18万716人も選び出し、COVID-19の発症について比較したようです。なお、この研究が実施されたのは、スウェーデンでデルタ株が猛威を奮っていた時期だとのことです。

 2回目接種から平均76日(範囲1〜183日)の追跡期間中にCOVID-19を発症したのは、異種混合接種群で187人、未接種群で306人であり、罹患率は、前者で10万人年当たり2.0人、後者で10万人年当たり7.1人だった。異種混合接種群を、2回目に接種したワクチンの種類で分けて解析すると、ワクチンの有効性は、アストラゼネカ社製/ファイザー社製で67%、アストラゼネカ社製/モデルナ社製で79%だったのです。また、異種混合接種をまとめて解析した場合でのワクチン有効性は68%であり、2回ともアストラゼネカ社製のワクチンを接種した場合(50%)に比べて、有意に大きな効果が見込めることが明らかになったようでございます。

 COVID-19ワクチンは、接種しないよりは接種した方が良いし、1回接種よりも2回接種する方が良いのは当然です。しかし今回の研究から、2回ともウイルスベクターワクチンを接種するよりも、初回にウイルスベクターワクチン、2回目にmRNAワクチンを接種する方が、COVID-19の発症リスクが大幅に低減することが示唆されたのでございます。

 なお、この研究では、ワクチン接種後の血栓発生率は低かったようです。

 原著 

2021/11/21

健康講座388 新型コロナワクチンの効用

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 米国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種プログラムの導入の初期段階に、高齢者におけるCOVID-19患者数やCOVID-19による救急診療部受診数、入院者数が減少し、死者数も減少したことが、米国疾病予防管理センターで示されました。


 米国では、2020年12月中旬に、緊急使用許可(EUA)下に最初のCOVID-19ワクチンの使用が可能となった。2021年6月8日の時点で、全人口の52%が少なくとも1回のワクチン接種を受け、42%は2回の接種を完了しており、このうち65歳以上の接種率はそれぞれ86%および76%に達しているようです。

 本研究は、2020年11月1日~2021年4月10日の期間に、米国の初期段階のCOVID-19ワクチン接種プログラムが、全米の50歳以上の集団におけるCOVID-19患者、救急診療部受診、入院、死亡に及ぼした影響の評価を目的とする研究であります。

 ワクチン接種後と接種前のCOVID-19患者の発生率比の変化を比較した相対的な変化の比は、50~64歳と比較して、65~74歳で53%、75歳以上では62%(59~64)それぞれ減少したのです。

 同様にCOVID-19による救急診療部受診者数は、50~64歳と比較して、65~74歳で61%、75歳以上では77%減少しました。また、COVID-19による入院者数は、50~59歳と比較して、60~69歳で39%、70~79歳で60%、80歳以上では68%低下しました。

 COVID-19による死亡も、50~64歳と比較して、65~74歳で41%、75歳以上では30%減少したようです。

 本研究の結果は、既存のワクチンのすでに確立されている有効性のデータと一致しており、対象者全員の接種率を高めることの重要性を再確認できそうですね。
原著

2021/11/20

健康講座387 非アルコール性脂肪性肝疾患と酸化コレステロール

みなさんどうもこんにちは。

おが

 メタボリックシンドロームにしばしば合併する脂肪肝ですが、実は動脈硬化リスクも伴うのです。自覚症状に乏しいことから、“隠れ脂肪肝”などと呼ばれ、脂肪肝だからと言って、ただ“脂モノ”を控えるというだけだは不十分でございます。

 アルコールの影響を受けていない脂肪肝は、脂肪が肝臓に蓄積した「非アルコール性脂肪肝(NAFL)」と、さらに炎症や線維化を伴った「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」に分類されます。しかし、区別が難しいため、NAFLとNASHの総称として「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」とも呼ばれることもあります。


 NASHは、炎症を繰り返すうちに線維化が進み(肝硬変)、肝がんに至るケースもあります。20年ほど前は、「脂肪肝は、がんにならない」と言われていたが、ウイルス性肝炎由来の肝細胞がんが治療法の進歩により減り、相対的に、脂肪肝炎由来のがん症例の増加が増えております。

 NASHがウイルス性肝炎と決定的に違うのは、虚血性心疾患のリスクを伴う点。米国において、NAFLD患者は肝がんより心血管疾患で死亡する例のほうが多いという報告1)もあるようです。

 NAFLDは、肥満や糖尿病をはじめとする生活習慣病と高率に合併し、国内の有病率は、男性では40~59歳の40%以上、女性では60~69歳の30%以上との報告があります。また、NAFLD患者の生存率は、肝線維化と強く関連することがわかっているようです。

 脂肪肝は、腹部エコーで腎皮質よりも白く映る(肝腎コントラスト陽性)所見により、健診などで発覚し、その後は『NAFLD/NASH診療ガイドライン20142)』のチャートに従って診断されます。線維化の段階を評価するためには、FIB-4 index(肝線維化の進行度を非侵襲的に推測するためのスコアリングシステム/日本肝臓学会)や、MR Elastographyを用いた画像化による方法があり、NASHが疑われる場合は、専門医の受診が勧められます。動脈硬化性疾患のリスクに潜む“隠れ脂肪肝”を、見過ごさないようにしたいです。


 次に、酸化コレステロールと動脈硬化の関連性について説明します。動脈硬化は、高血圧、脂質異常症、糖尿病などによってダメージを受けた血管壁に、LDLが入り込むことで進行するものです。

 通常、LDLはコレステロールを肝臓から末梢に運んでいるが、生活習慣病の人には、血管壁に入り込みやすい、小型で密度の高いLDL(small dense LDL)が存在するのです。これは、“超悪玉コレステロール”とも呼ばれ、近年注目を集めている。このsmall dense LDLが、動脈硬化を強力に誘発すると考えられ、血清脂質値が正常にもかかわらず、動脈硬化を引き起こした例も報告されているのでございます。

 血管壁に入り込んだLDLは、「酸化」されることで白血球のターゲットとなり、プラークの形成をもたらす。LDLの酸化反応は、身近な食品中にも含まれる「酸化コレステロール」によって促進され、とくに、small dense LDLは酸化しやすいのです。

 つまり、動脈硬化を防ぐためには、酸化コレステロールが多く含まれる食品を避けたほうがよいことになります。例えとして、焼き鳥の皮の部分、インスタントラーメンの麺、マーガリンやマヨネーズの変色した部分、二度揚げされた揚げ物、漬け込み保存された魚卵、加工肉食品、するめやビーフジャーキーなどUV照射を受けた食品などが挙げられます。

参考

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...