2021/10/31

健康講座367 清涼飲料水シリーズ

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックです。


 加糖飲料シリーズもなかなかに続きます。


 加糖飲料やソフトドリンクといえば、ペットボトルを購入する機会も多くなりますが、水分摂取目的で購入される方も多いかと思います。1日の水分摂取量の目安として、水分制限がない場合は約1.5~2.0Lといわれています。これは、コップ1杯を200mLと換算して、8~10杯ほどです。

水分には、「酸素や栄養素を運ぶ働き」「老廃物を排泄する働き」「血液を循環させる働き」「汗として体温を調整する働き」「体液の性状を一定に保つ働き」など多くの働きがあります。朝、起きがけの1杯から始め、こまめな水分摂取が必要です。

特に、夏の時期、「電解質の多いスポーツドリンクを飲んだほうが良い」と考えている糖尿病患者さんなどが、無意識下で清涼飲料水による糖分の過剰摂取で高血糖や清涼飲料水ケトーシスを引き起こすケースもあります。

大手2社のスポーツドリンク(ペットボトル500mL)で清涼飲料水の糖質を比較した場合、A社は23.5g、B社は31gです。これを1本3gのスティックシュガーで換算すると、A社は約8本分、B社は約10本分に相当します。また、最近では、水と間違えてしまうような清涼飲料水もあります。これでは、水分を摂取しているつもりで、糖質を大量に摂取してしまうことになります。

飲料に入っている糖分の問題点は、もう1つあります。裏の表示を見ると「果糖ぶどう糖液糖」「果糖 砂糖」などの表記があります。そうです、さんざん記載してきた加糖・加糖シリーズです。果糖(フルクトース)やブドウ糖(グルコース)は単糖類に分類され、それ以上加水分解されない糖のため、体内に入るとすぐに腸管から吸収されます。また、液糖であることでより吸収がされやすくなります。吸収された糖は、血糖値の急上昇へつながるため、血糖コントロールへの影響、糖化など、生活習慣病のリスクが高くなります。

また、果糖は、内臓肥満やメタボへの影響が強く、ヒトにエネルギー比25%のフルクトースを10週間摂取させると、内臓脂肪の増加、脂質代謝異常、インスリン抵抗性の発症が引き起こされると報告されてます。

さらに、フルクトースはグレリン(食欲のホルモン)の抑制作用がなく、満腹中枢にも働かないため、その点においても肥満を助長させる大きな要因となります。

ですので、食事がきちんと食べられている方は、食事から塩やミネラルが摂れるので、水、お茶、麦茶(ミネラル含有)などを中心に水分を摂取しましょう。

まずは清涼飲料水の糖質量の多さを認識してもらうこと、清涼飲料水に多く含まれる果糖摂取のリスクをこれまでのブログから知って頂ければ幸いです。飲み物を買う際には、原材料名が記載されたラベルの確認を習慣にするとよいでしょう。



  • Stanhope KL, et al. J Clin Invest. 2009;119:1322-1334.

2021/10/30

健康講座366 果糖と痛風

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 砂糖で甘味を加えたソフトドリンク(コーラ、その他の炭酸飲料など)に多く含まれる果糖は血清尿酸値を上昇させることが知られています。これらの飲み物や果糖と、痛風リスクの関連はどうなのでしょうか。果糖シリーズも佳境に入って参りました。

 本試験は、進行中の医療従事者追跡研究に登録された5万1,529人の男性医療従事者のうち、ベースライン時に痛風の既往歴がなかった4万6,393人を対象とした12年に及ぶ研究です。

 12年の追跡期間中に755人が痛風を発症しました。砂糖で甘味を加えたソフトドリンクの摂取の増加にともなって痛風のリスクが増大したのです。ソフトドリンクの摂取が月に1杯未満の群に比べ、週に5~6杯の群の多変量相対リスクは1.29、日に1杯の群では1.45、日に2杯以上の場合は1.85でありました。ダイエット用のソフトドリンク(低カロリーのコーラなど)は痛風リスクを増大させなかったようです。

 果糖の摂取量を5つの段階に分け、最も少ない群の痛風の多変量相対リスクを1.00とした場合、摂取量が増えるに従って相対リスクは1.29、1.41、1.84、2.02と上昇したようです。また、果糖の摂取を高めるフルーツジュースや果糖が豊富な果物(リンゴ、オレンジ)も、痛風リスクを増大させました。

原著 

2021/10/29

健康講座365 ソフトドリンクとうつ

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 今回、ソフトドリンク摂取と青年期アジア人におけるメンタルヘルス問題との関連についての報告です。

 本研究は、ソフトドリンク摂取およびソフトドリンクからの糖分摂取と不安やうつ症状との関連性について、全般性不安障害のスクリーニングツール(GAD-2)およびうつ病のスクリーニングツール(PHQ-2)を用いて評価した横断的研究でございます。対象は、2017年に中国・長沙の総合大学に入学した大学生です。

 主な結果は以下のとおりでございます。

・調査を完了した学生は8,226人、そのうち全身性障害のない学生8,085人について分析を行ったようです。
・7回以上/週のソフトドリンク摂取をしていた学生は、ほとんど摂取していなかった学生(人口統計学的および行動学的要因で調整)と比較し、GAD-2スコア(平均差:0.15、95%CI:0.07~0.23)およびPHQ-2スコア(平均差:0.27、95%CI:0.19~0.35)が有意に高かった。
・25g以上/日の糖分をソフトドリンクから摂取している学生は、摂取していなかった学生と比較し、GAD-2スコア(平均差:0.11、95%CI:0.04~0.18)およびPHQ-2スコア(平均差:0.22、95%CI:0.15~0.29)が有意に高かった。
・この関連における肥満への影響は、臨床的に有意ではなかった。

 要するにですよ、7回以上/週のソフトドリンク摂取または25g以上/日の糖分をソフトドリンクから摂取している学生は、不安およびうつ病が有意に高レベルであったのでございます。

参考にしてください。

原著

2021/10/28

検討講座364 加糖飲料とコレステロール

皆さんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 加糖飲料を習慣的に摂取すると、コレステロールやトリグリセリド(中性脂肪)の値に大きな影響を与え、脂質異常症の発症につながる可能性があることが、米タフツ大学ジーン・メイヤー米国農務省(USDA)加齢ヒト栄養研究センターの研究で示されました。1日1缶(約360mL)以上の加糖飲料を毎日飲むと、心疾患や脳卒中のリスクが高まる可能性があるのです。

 フラミンガム心臓研究のデータを用いて、これらの研究に参加した6,730人を対象に1991年から2014年まで追跡。加糖飲料がコレステロール値に与える影響について調べました。参加者の平均追跡期間は12.5年であった。

 その結果、1日1缶を超える加糖飲料を摂取している人は、月に1缶未満の人と比べて、善玉コレステロールとして知られるHDL-コレステロール値の4年間の平均変化は有意に低く、トリグリセライドの平均変化は有意に高いことが分かったのでございます。

 解析では、加糖飲料を1日1缶以上摂取している人は、摂取量が少ない人と比べて、トリグリセリドが高値となるリスクは53%高く、HDL-コレステロールが低値となるリスクは98%高かったのです。

 一方、低カロリーの甘味料入り飲料や果汁100%のジュースを長期にわたり摂取しても、コレステロール値の悪化や脂質異常症の発症とは関連しないことも示されました。

 他のブログで述べました通り、加糖飲料は健康に有害であることを裏付けるエビデンスが集積してきており、その影響は明らかでございます。

 加工食品に添加された糖類を、主に炭酸飲料やスポーツドリンク、果実風味のジュースなどの加糖飲料から摂取している可能性があります。この結果は、決して加糖飲料の代わりにダイエット飲料や果汁ジュースを飲むことを勧めるものではありません。なぜならば、これらの飲料についても健康への影響は明らかになっておらず、今後さらなる研究が必要だからです。

 加糖飲料を飲む習慣をつけないためにも、幼少期の子どもには加糖飲料を与えないようにし、10代の子どもや大人の場合には、加糖飲料の代わりにプレーンな炭酸水に少量の果汁を加えたり、水やお茶、コーヒーには砂糖を加えずに飲む工夫をお勧め致します。

原著

2021/10/27

健康講座363 ミトコンドリアを介する新規作用機序の2型糖尿病治療薬

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


2型糖尿病治療薬で、イメグリミン塩酸塩という薬が新しく登場しております。本剤は、ミトコンドリアに作用する新しい機序の糖尿病治療薬であり、インスリン分泌低下型、インスリン抵抗性亢進型のいずれであっても血糖降下作用が期待できます。


本剤は、2型糖尿病の適応で、2021年9月16日に発売されました。

本剤の適用は、あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行った上で効果が不十分な場合に限り考慮します。


通常、成人にはイメグリミン塩酸塩として1回1,000mgを1日2回朝、夕に経口投与します。なお、本剤とビグアナイド系薬剤は作用機序の一部が共通している可能性があります。臨床試験でも両剤を併用した場合は、ほかの糖尿病用薬との併用療法と比較して消化器症状が多く認められたことから、併用薬を選択する際は注意が必要です。


臨床試験において、本剤が投与された安全性評価対象1,103例中、副作用発現数は168例(15.2%)でした。主な副作用は、低血糖6.7%(74例)、悪心2.1%(23例)、下痢1.9%(21例)、便秘1.3%(14例)などでした。なお、低血糖は重大な副作用としても報告されています。


  •   この薬は、血糖値に応じてインスリンの分泌を促す作用と、インスリンが働きにくい状態を改善する作用によって血糖値を改善します。

  •  薬の服用により、低血糖症状を起こすことがあります。脱力感、高度の空腹感、発汗、震えなどの症状が認められた場合には、飴やジュースなどで糖分を摂取してください。α-グルコシダーゼ阻害薬を併用している場合はブドウ糖を摂取してください。



本剤は、既存の経口糖尿病治療薬とは異なる構造を有しており、ミトコンドリアへの作用を介してグルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓・骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用(肝臓での糖新生抑制、骨格筋などでの糖取り込み能改善)の2つによって血糖降下作用を示します。インスリン分泌低下型、インスリン抵抗性亢進型のいずれの病態であっても効果が期待できるという特徴があります。製品名は、2つを意味する“twin”と一般名の“imeglimin”に由来しているということらしいです。

2型糖尿病患者を対象とした長期投与試験において、単独療法または併用療法でHbA1c改善効果を示し、52週にわたってその効果が維持されました。

主な副作用には、悪心、下痢、便秘などがあります。重大な副作用として低血糖(6.7%)が報告されていますが、本剤の作用によるインスリン分泌はグルコース濃度依存的で、低血糖時にはインスリンを分泌させないことが報告されており、単剤使用での重症低血糖のリスクは低いと考えられます。

腎機能障害のある患者では、腎臓からの排泄が遅延し、本剤の血中濃度が上昇する恐れがあることから、eGFRが45mL/min/1.73m2未満(透析を含む)の患者への投与は推奨されていません。

やはり、注意すべき点は、メトホルミンとの併用により消化器症状が増大する恐れがあることです。メトグルコを第一選択薬にすることが多いので、薬価もメトグルコを上回る本薬薬剤の位置付けは今後の課題となりそうです。個人的に、メカニズムにはかなり興味がありますが、しばらく二週間処方であり、海外のデータもあまりないので静観していこうかと思ってます。


2021/10/26

健康講座362 加糖飲料と心臓病

皆さんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 炭酸飲料などの甘い飲み物を多く飲む女性は、心臓病や脳卒中のリスクが高いことを示すデータが報告されました。フルーツジュースも果汁100%でなく加糖されている場合は、有意なリスクになるということでございます。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)による研究です。

 カリフォルニアで1995年に始まり現在も継続中の、女性教師を対象としたコホート研究のデータを利用しました。研究に登録されている13万3,477人から、心血管疾患や糖尿病の既往がある人、86歳以上の人などを除外した10万6,178人を20年間追跡し、加糖飲料の摂取量と心血管疾患発症リスクの関係を検討したのです。

 対象者の平均年齢は52.1±13.4歳で、加糖飲料の摂取量は、ほぼ全く飲まない人が40.9%、週に1回未満の人が33.4%、週に1回以上~1日1回未満の人が21.5%、1日1回以上の人が4.2%だった。加糖飲料の摂取量が最も多い群は他群に比較し、平均年齢が若く、摂取エネルギー量と炭水化物摂取量が多く、喫煙率が高い傾向が見られたようです。

 180万7,182人年の追跡中に、8,848件の心血管イベント、2,677件の心筋梗塞、5,258件の脳卒中、2,889件の血行再建術が記録されていました。心血管疾患リスクに影響を及ぼす因子(年齢、人種/民族、BMI、飲酒・喫煙習慣、摂取エネルギー量、高血圧の既往、閉経・ホルモン補充療法の有無、経済状況、心血管疾患の家族歴など)で調整した結果、以下のような関連が認められました。

 加糖飲料を1日1回以上飲む女性は、ほぼ全く飲まない人に比べ、心血管イベントのリスクが19%、脳卒中のリスクが21%、血行再建術が必要となるリスクが26%、それぞれ有意に高かったのでございます。

 また、飲み物の種類によって、以下のようなリスクの違いが観察された。前記の全ての因子で調整後、加糖されたフルーツジュースを1日に1回以上飲む人は、ほぼ全く飲まない人に比べて42%、ソフトドリンクでは23%、心血管疾患のリスクが有意に高かったです。

 本研究は観察研究のため、因果関係の証明にはなしません。しかし、加糖飲料は、複数のメカニズムを介して心血管疾患のリスクを高めると考えられております。糖負荷により血糖値とインスリン値が上昇し、その後の食欲を刺激する可能性があり、肥満という心血管疾患の主要危険因子を引き寄せるという機序がひとつ考えられます。

原著

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...