2019/10/31

健康講座133~日本人2型糖尿病の炭水化物摂取

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長の小川義隆です。

 日本人の2型糖尿病患者では、炭水化物の取り過ぎはHbA1c値の上昇につながる可能性があることが、横浜市立大学附属市民総合医療センター内分泌・糖尿病内科部長の山川正氏らの研究グループの検討で分かった。この研究では、総エネルギー量に対する炭水化物由来のエネルギーの割合を60%未満に抑えることが血糖コントロールの維持に有用なことも示唆された。詳細は「Journal of Diabetes Investigation」8月1日オンライン版に掲載された。

 日本糖尿病学会による食事療法に関する提言では、炭水化物の摂取は総エネルギーの比率で50~60%とすることが推奨されている。しかし、日本人を含むアジア人の2型糖尿病患者を対象に、三大栄養素の摂取エネルギー比率を大規模に調査した研究は限られていた。そこで、研究グループは今回、日本人の2型糖尿病患者を対象に、良好な血糖コントロールの達成に適した栄養素のエネルギー比率を検討する観察研究を実施した。

 対象は、日本人の糖尿病患者を対象に睡眠や食生活の質と血糖コントロール状況などの関連を調べる観察研究(Sleep and Food Registry in Kanagawa;SOREKA研究)に参加した20歳以上の2型糖尿病患者3,032人。対象患者の平均年齢は63.2歳、男性が1,851人で、平均BMIは25.3、平均HbA1c値は7.5%であった。簡易型自記式食事歴法質問票を用いて、対象患者の三大栄養素のエネルギー比率を評価した。

 その結果、対象患者の1日の平均エネルギー摂取量は1,711±645kcalであり、たんぱく質、脂質、炭水化物のエネルギー比率は平均でそれぞれ16.3%、26.8%、52.3%であった。

 対象患者をHbA1c値で5つの群に分けて比較したところ、HbA1c値が6.5%未満の群に比べて、8%を超える高値群ではたんぱく質のエネルギー比率は低く、炭水化物のエネルギー比率は高いことが分かった。さらに、HbA1c値が高いほどBMIは上昇し、炭水化物のエネルギー比率は増加したが、たんぱく質のエネルギー比率と食物繊維の摂取量は減少した。年齢や性、BMIなどを調整した多変量回帰分析でも、HbA1c値と炭水化物のエネルギー比率の関連は有意であった(P<0.0001)。

 さらに、対象患者を炭水化物のエネルギー比率で5つの群(45%未満、45%以上50%未満、50%以上55%未満、55%以上60%未満、60%以上)に分けてHbA1c値との関連をみたところ、炭水化物のエネルギー比率が45%から60%に増加するとHbA1c値の有意な上昇と関連することが示唆された。

 以上の結果から、日本人の2型糖尿病患者が良好な血糖コントロールを保つためには炭水化物の取り過ぎを避け、炭水化物のエネルギー比率を60%未満に抑えることが必要な可能性がある。しかし、今回の研究では炭水化物のエネルギー比率をどこまで下げるべきなのかは示されなかった。

2019/10/30

健康講座132~精神ストレスと糖尿病

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。

 肥満や高血圧、座りがちな生活習慣などは、2型糖尿病発症のリスク因子であることが広く知られている。しかし、女性では精神的なストレスもその発症に関与している可能性があることが、米カリフォルニア大学のJonathan Butler氏らが実施した研究から明らかになった。研究の詳細は、米国心臓協会年次集会(AHA 2018、11月10~12日、米シカゴ)で発表された。
 米疾病対策センター(CDC)の調べによると、米国では2015年時点で2型糖尿病患者は3030万人と推計され、うち1200万人が65歳以上の高齢者とされている。また、2型糖尿病のリスク因子に関しては、糖尿病の家族歴や年齢、肥満や高血圧といった従来の要因以外についても研究が進められている。

 しかし、精神的ストレスと2型糖尿病との関連について検討した研究の多くは、職場のストレスや抑うつ症状、不安など個々のストレス因子に焦点を当てたものや、ある一定期間のみに実施されたものだった。
 高齢の女性を対象に、さまざまなストレス因子と糖尿病リスクの関係を経時的に検討する観察研究を実施した。Women's Health Studyに参加した女性医療従事者のうち心疾患の既往がない2万2,706人(平均年齢72歳)を対象に、急性および慢性のストレス因子に関する情報を収集し、平均3年間にわたり追跡した。急性ストレスには否定的でトラウマとなる出来事などが、慢性的なストレスには仕事や家族、人間関係、金銭問題、近所づきあい、差別などに関係するストレスなどが含まれた。
 解析の結果、トラウマとなる出来事などの急性ストレスと家庭や職場の慢性ストレスはいずれも、ストレスレベルが最も高い女性では、新たに2型糖尿病を発症するリスクが倍増することが分かった。
 従来知られているリスク因子と同様に、心理社会的なストレスも糖尿病のリスク因子として重視する必要がある。また、公衆衛生上の観点から、糖尿病リスクを評価する際には心理社会的ストレス因子についても調べる必要がある。
 糖尿病の発症予防には、精神的ストレスなど従来とは異なるリスク因子も考慮することの重要性が浮き彫りになった。また、糖尿病予防には生活習慣への介入が有効だが、失業や家族の介護などで精神的なストレスがたまれば健康的な生活習慣を守るのも難しくなる。そのため、患者の社会生活についても尋ね、必要な場合はカウンセラーやソーシャルワーカーを紹介する必要がある。

2019/10/29

健康講座131~開発中のGIP/GLP-1受容体デュアルアゴニスト

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。

 2型糖尿病治療薬として開発中のGIP/GLP-1受容体デュアルアゴニスト「LY3298176」の有効性と安全性を検討した、米国・National Research InstituteのJuan Pablo Frias氏らによる第II相の無作為化プラセボ・実薬対照試験の結果が発表された。

 LY3298176は、デュラグルチドと比べて血糖コントロールが良好で体重を減少し、有効性および、安全性に関する許容範囲と忍容性プロファイルも有意に良好であった。著者は、「GIPとGLP-1受容体の組み合わせ製剤は、2型糖尿病の治療において新たな治療選択肢を提供するだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2018年10月4日号掲載の報告。

プラセボ、デュラグルチドを対照に26週の試験
 試験は、2型糖尿病患者を、LY3298176(1mg、5mg、10mg、15mg)、デュラグルチド1.5mg、またはプラセボを投与する6群(いずれも週1回の皮下投与で26週間)に、1対1対1対1対1対1の割合で無作為に割り付けて行われた。割付では、ベースラインの糖化ヘモグロビンA1c(HbA1c)、メトホルミン服用、BMIによる層別化も行われた。適格としたのは、18~75歳、6ヵ月以上の2型糖尿病(HbA1cが7.0~10.5%)で、食事および運動のみではコントロール不良、またはメトホルミン療法で安定している、BMI 23~50の患者であった。

HbA1cの変化、目標達成患者割合でみた有効性を確認
 2017年5月24日~2018年3月28日に、555例が適格評価を受け、318例が6治療群のいずれか1群に無作為に割り付けられた。2例の患者が割付治療を受けなかったため、mITTおよび安全性解析の集団には316例が包含された。
 258例(81.7%)が26週の治療を完了し、283例(89.6%)が試験を完了した。ベースラインの平均値は、年齢57歳(SD 9)、BMI 32.6(5.9)、糖尿病と診断されてからの期間9年(6)、HbA1c 8.1%(1.0)で、男性53%、女性47%であった。
 26週時点で、LY3298176のHbA1cの変化における効果は用量依存的であり、プラトーに達しなかった。HbA1cのベースラインからの平均変化は、プラセボ群-0.06%に対して、LY3298176の1mg群-1.06%、5mg群-1.73%、10mg群-1.89%、15mg群-1.94%であった。
 デュラグルチド群のベースラインから26週時点のHbA1cの変化は-1.21%であり、これと比べたLY3298176投与群の事後平均差(80%信用セット)は、1mg群0.15%(-0.08~0.38)、5mg群-0.52%(-0.72~-0.31)、10mg群-0.67%(-0.89~-0.46)、15mg群-0.73%(-0.95~-0.52)であった。
 26週時点で、目標HbA1c<7.0%を達成したLY3298176投与群の患者割合は33~90%で(vs.デュラグルチド群52%、プラセボ群12%)、≦6.5%達成患者割合は15~82%であった(vs.デュラグルチド群39%、プラセボ群2%)。また、LY3298176投与群の空腹時血糖値の変化は-0.4~-3.4mmol/L(vs.デュラグルチド群-1.2mmol/L、プラセボ群0.9mmol/L)。同じく体重の変化は-0.9~-11.3kg(-2.7kg、-0.4kg)、5%以上の体重減少達成率は14~71%(22%、0%)、10%以上の体重減少達成率は6~39%(9%、0%)。腹囲の変化は-2.1~-10.2cm(-2.5cm、-1.3cm)、総コレステロール値の変化は0.2~-0.3mmol/L(-0.2mmol/L、0.3mmol/L)、HDL/LDLの変化は対照群と比べて差はなく、トリグリセライド値の変化は0~-0.8mmol/L(-0.3mmol/L、0.3mmol/L)であった。
 副次評価項目の12週時点のアウトカムは、すべてが26週時点と類似していた。

安全性も確認、重症低血糖症は報告例なし
 6つの治療群の被験者13/316例(4%)で、23件の重篤な有害事象が発生した。治療により発現した有害事象で最も頻度が高かったのは、消化器系イベント(悪心、下痢、嘔吐)であった。消化器系イベントの発現は、用量依存的(LY3298176の1mg群23.1%、5mg群32.7%、10mg群51.0%、15mg群66.0%、デュラグルチド群42.6%、プラセボ群9.8%)で、大半は軽度~中等度の一過性のものであった。また、2番目に多かった有害事象は食欲減退であった(LY3298176の1mg群3.8%、5mg群20.0%、10mg群25.5%、15mg群18.9%、デュラグルチド群5.6%、プラセボ群2.0%)。
 重症低血糖症の報告例はなかった。
 

2019/10/28

健康講座130~グリクラシドの意外性

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。

 経口血糖降下薬のうちスルホニル尿素(SU)薬であるグリクラジドだけが、プラセボや他の血糖降下薬と比べて2型糖尿病患者の左室心筋重量(LVM)の減少に有効な可能性があることが、伊勢赤十字病院(三重県)糖尿病・代謝内科の井田諭氏らが実施したネットワークメタ解析の結果から示された。詳細は「Cardiovascular Diabetology」9月27日オンライン版に掲載された。

 これまでの研究で、2型糖尿病患者はLVMが増大しやすく、LVMの増大は心不全などの心血管疾患や突然死などの独立した予測因子であることが報告されている。一方、経口の血糖降下薬によるLVMへの効果については、これまでの研究で一致した結果は得られていない。

 井田氏らは今回、2018年1月までに公表された、2型糖尿病患者を対象に経口血糖降下薬によるLVMへの有効性を検討したランダム化比較試験(RCT)論文を検索。基準を満たした11件のRCT(計1,410人が参加)を対象にネットワークメタ解析を実施した。解析対象患者の平均年齢は60.3歳で、女性が44.6%であった。

 解析の結果、経口血糖降下薬のうちSU薬であるグリクラジドだけがプラセボと比べて有意にLVMを減少させることが分かった。また、経口血糖降下薬間でLVM減少効果を比較したところ、グリクラジドは他の薬剤〔同じくSU薬のglyburide(グリブリド、日本国内の一般名はグリベンクラミド)、α-グルコシダーゼ阻害薬のボグリボース、メトホルミン、チアゾリジン系薬のピオグリタゾン、rosigritazone(日本国内未発売)、DPP-4阻害薬のシタグリプチン〕と比べて唯一、LVMを減少させることが明らかになった。

 今回の解析から、経口血糖降下薬のうちグリクラジドがLVMを有意に減少させる可能性が示された。心不全の初発や再発予防を必要とする2型糖尿病患者に対しては、グリクラジドの選択が適している可能性がある。


 SU剤の選択の一助になれば幸いです。

2019/10/27

健康講座129~2型糖尿病は発症10年以上前から進行している

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。

 新たに糖尿病や前糖尿病と診断された人たちでは、診断の10年以上も前から空腹時血糖値(FPG)異常やインスリン抵抗性の増大といった糖尿病の徴候がみられることが、相澤病院(長野県)糖尿病センターの提坂浩之氏と同顧問の相澤徹氏、同病院健康センターの小池秀夫氏らの研究グループの検討で分かった。糖尿病の発症を防ぐには、これまで考えられていた以上に早期からの介入が必要であることが示唆された。研究の詳細は欧州糖尿病学会(EASD 2018、10月1~5日、ベルリン)で報告され、論文は「Journal of the Endocrine Society」5月号に掲載された。
 
 研究グループは今回、2005~2016年に健診でFPGやHbA1c値を測定した成人男女2万7,392人を対象に、後ろ向きに平均で5.3年間追跡した。この期間中に新たに糖尿病やいわゆる境界型を指す「前糖尿病」と診断された人たちについて、10年前までさかのぼってFPGやBMI、インスリン抵抗性指数を調べた。
 
 追跡期間中に糖尿病を発症した人は1,061人、前糖尿病を発症した人は4,781人であった。解析の結果、糖尿病を発症した人では、発症しなかった人に比べて10年前の時点で平均FPG値とBMIが有意に高かった。
FPG空腹時血糖:101.5mg/dL対94.5mg/dL
BMI:24.0対22.7、P<0.01)
インスリン抵抗性指数は有意に低い(7.32対8.34、P<0.01)
ことが分かった。また、前糖尿病になった人でも、ならなかった人に比べて10年前の時点でFPGとBMIが有意に高く、インスリン抵抗性が増大していた。
 
 2型糖尿病を発症する人の多くは、徐々に血糖値が悪化して糖尿病の前段階というステップを踏むため、実際には糖尿病と診断される20年以上も前にその徴候が現れると考えられるという。

 糖尿病の発症を防ぐには、耐糖能障害になってからの生活習慣への介入では、長期間観察すると介入効果がかなり逓減すると報告された。真に効果的な糖尿病予防のためには、前糖尿病になる以前から、さらに早期の介入が必要かもしれない。

2019/10/26

PV27000

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。

PV27000となりました。

今後ともよろしくお願いいたします。



2019/10/24

健康講座128~コレステロールのガイドライン

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。

 米国のコレステロール管理ガイドラインが改訂され、その詳細が米国心臓協会年次集会(AHA 2018、11月10~12日、米シカゴ)で発表された。5年ぶりに改訂された新たなガイドラインでは、生涯にわたり健康的な生活習慣を維持してコレステロールを管理することが、動脈硬化性疾患のリスク低減に重要であることが強調された。また、その管理は個々のリスクに応じて個別化する必要があることも示された。
 おもな改訂ポイントとしては
(1)CTによる動脈硬化の評価など精緻な心疾患リスク評価を行うこと
(2)コレステロール値の管理が難しい高リスク患者に対しては、スタチン系薬に加えてエゼチミブやPCSK9阻害薬などのより強力なコレステロール低下薬を併用すること
(3)9~11歳の時点(心疾患や高コレステロール血症の家族歴がある場合は2歳時点)でコレステロール値を測定し、生涯リスクを早期に評価することなどが盛り込まれた。
 AHAによると、米国では成人のおよそ3人に1人がLDLコレステロール(LDL-C)値が高いとされる。LDL-C値が高いと血管のプラークが肥厚して動脈狭窄が進むが、LDL-C値が100mg/dL以下に管理されていれば心疾患や脳卒中の発症リスクは低下する。年齢にかかわらずLDL-C高値は健康リスクを高めるため、たとえ若年者であっても健康的な生活習慣でコレステロール値を管理する必要がある。
 AHAによれば、小児や10歳代の若者ではコレステロール低下薬の使用に関するエビデンスが確立していないため、生活習慣の改善が唯一の介入策になるという。また、20~30歳代の若年者はコレステロール値の測定を含めた心疾患リスクを評価する必要がある。さらに、スタチン系薬を服用していない人は、検査のために採血前に絶食する必要はないとされている。
 今回の改訂で、医師に対しては、コレステロールの悪化をもたらすリスク因子について患者と十分に話し合い、その患者のリスクに応じた個別評価を行うことが奨励されている。従来の喫煙習慣や高血圧、高血糖などに加え、家族歴や民族性、メタボリックシンドローム、慢性腎臓病、慢性的な炎症性疾患、早期閉経、妊娠高血圧症候群についても確認し、個別化した治療内容に反映することも推奨されている。
 さらに、心疾患リスクが中等度の患者に対してはCTによる冠動脈石灰化(CAC)スコアの評価が推奨されている。CACスコアがゼロの場合には、他にリスク因子がなければスタチン治療は必要ない。ただし、喫煙習慣や糖尿病、心疾患の家族歴などのリスク因子がある人はスタチン治療が必要となる可能性がある。
 一方、心筋梗塞や脳卒中の既往がある患者やLDL-C値が70mg/dL以上の高リスク患者に対しては、スタチンの服用量にかかわらずエゼチミブやPCSK9阻害薬などの併用を検討すべきとされた。
 新しいコレステロールガイドラインは内容が複雑なため、診療の第一線に立つ医師や患者、その家族が理解しやすいように分かりやすく説明していく必要がある。

2019/10/22

健康講座127~デュラグルチドのREWIND試験

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。

 米国・イーライリリー・アンド・カンパニーは、2型糖尿病治療薬デュラグルチド(商品名:トルリシティ)の国際共同試験「REWIND試験」において、主要心血管イベント(MACE)の発現率を有意に減少させたことを発表した。
 対象患者の7割は1次予防例で、GLP-1受容体作動薬では初めて、1次予防例を含む幅広い2型糖尿病患者における心血管(CV)イベントへの影響を評価した試験といえる。
 ※心血管死、非致死性心筋梗塞(心臓発作)、非致死性脳卒中から成る複合評価項目

 REWIND(Researching cardiovascular Events with a Weekly INcretin in Diabetes)試験はCVイベント発現率について、デュラグルチド1.5mg週1回投与とプラセボとを比較した多施設共同無作為化二重盲検比較試験である。主要評価項目はMACEの初発で、詳細データは、2019年6月に開催予定の米国糖尿病学会(ADA)にて報告予定である。
 ※国内におけるデュラグルチドの用法・用量は0.75mg/週

CVアウトカム試験における1次予防という壁
 糖尿病患者でCVイベント発症リスクが高いことはよく知られている。そのため、EMPA-REG OUTCOMEやLEADER等で示された、薬剤によるCVイベント抑制作用には大きな注目が集まっている。

 一方、こうした試験の対象者はCV高リスクの2次予防例が多く、1次予防例が少ないことが指摘されていた。また1次予防例が多く含まれる試験でCVリスクを有意に減少させることは難しいとされてきた。
 しかし、今回発表のREWIND試験の対象には、ベースライン時に心血管疾患の既往がない患者が69%含まれる。
 これまでのGLP-1受容体作動薬のCVアウトカム試験では患者の7割以上が心血管疾患の既往があり、その点、従来試験と正反対の背景を有する。

「HbA1c 9.5%以下」を対象とした点が鍵
 デュラグルチドの国際共同試験であるREWIND試験は、他のCVアウトカム試験同様、心血管疾患の既往またはリスク因子を有する2型糖尿病患者9,901例が対象。
 患者の選択基準は、以下であった。
 (1)経口血糖降下薬(1~2剤)±基礎インスリン、もしくは基礎インスリン単独での治療を受けている患者 
 (2)HbA1c 9.5%以下
 (3)50~54歳で、心血管疾患既往を有する患者
 (4)55~59歳で、心血管疾患既往、もしくは心血管疾患または腎疾患の徴候を1つ以上有する患者
 (5)60歳以上で、心血管疾患既往、もしくは心血管疾患のリスク因子を2つ以上有する患者
 このうち特徴的なのは「(2)HbA1c 9.5%以下」という基準だ。他のGLP-1受容体作動薬のCVアウトカム試験ではHbA1c値の上限を設定しておらず、REWIND試験で初めてHbA1c値の上限が設定された。

1次予防例7割、前例がないデュラグルチドのCVアウトカム試験
 HbA1c値の規定の違いにより、従来のGLP-1受容体作動薬のCVアウトカム試験と異なる対象患者が組み入れられ、結果的に対象者の7割が1次予防例という、かつてないCVアウトカム試験が設定された。ベースラインの平均HbA1c値も7.3%と、比較的低い値になっている。
 さらに1次予防例が多いことでイベント発症までの期間が延長され、追跡期間中央値は5.3年と、GLP-1受容体作動薬のCVアウトカム試験としては最長となっている。
 1次予防例を7割含む、2型糖尿病患者におけるCVイベント抑制を報告したGLP-1受容体作動薬のCVアウトカム試験は前例がない。今回、米国・イーライリリー・アンド・カンパニーは、REWIND試験においてMACEの発現率を有意に減少させたことをいち早く発表した。現段階で明らかなのは試験概要と患者背景のみで、詳細結果は不明だが、デュラグルチドによってCVイベント抑制が示されたことは注目に値する。
 

2019/10/21

【再掲】10月22日(火)は休診です

こんにちは。小川糖尿病内科クリニック院長の小川義隆です。

誠に勝手ながら、明日10月22日(火)は祝日のため、
当院は休診とさせていただきます。

みなさまにはご迷惑をおかけいたしますが、
ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

2019/10/20

PV26000

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。

お陰様でPVも26000まで達成しました。

今後ともよろしくお願いいたします。





2019/10/19

健康講座126~不健康生活と2型糖尿病リスク

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長の小川義隆です。

 交替制の夜勤労働と不健康な生活様式はいずれも2型糖尿病のリスクと関連し、これらが併存すると、個々の要因を単独に有する場合に比べリスクが相加的に高くなることが、米国の女性看護師を対象とする調査の解析で示された。中国・華中科技大学のZhilei Shan氏らが、BMJ誌2018年11月21日号で報告した。交替制の夜勤労働者は不健康な生活様式の頻度が高いとする報告は多い。また、交替制夜勤労働と不健康な生活様式は、いずれも2型糖尿病のリスクを増大させることが知られている。

NHSとNHS IIのデータを用いた前向きコホート研究
 研究グループは、交替制夜勤労働の期間および生活様式の因子と、2型糖尿病リスクの複合的な関連を評価し、夜勤労働単独、生活様式単独、およびこれらの交互作用を定量的に検討する前向きコホート研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。
 米国の「看護師健康調査(Nurses' Health Study[NHS]:1988~2012年)」および「看護師健康調査II(NHS II:1991~2013年)」に参加した女性看護師のうち、ベースライン時に2型糖尿病、心血管疾患、がんに罹患していない14万3,410例を対象とした。
 交替制夜勤労働は、日勤および準夜勤に加えて、当該月に3回以上の夜勤に就いた場合と定義した。不健康な生活様式の因子は、現喫煙、中~高強度の身体活動が1日に30分未満、代替健康食指数(Alternate Healthy Eating Index[AHEI]:0~10点、10点は1日の推奨サービング数の順守を示す)のスコアが低値(下位の5分の3まで)の食事、BMI≧25であった。

リスクの約7割が不健康な生活様式に起因
 夜勤の経験のない女性と比較して、夜勤の年数が増えるに従って、現喫煙が多くなり、BMIが増加した。また、夜勤期間が長くなるに伴い、NHSの参加者は年齢が高くなり、NHS IIの参加者は非婚者および単身者が多くなった。22~24年のフォローアップ期間に、1万915人が2型糖尿病を発症した。
 夜勤経験のない女性に比べ、夜勤期間が長期になるに従って、2型糖尿病の多変量補正ハザード比(HR)は上昇することが認められた(傾向のp<0.001)。また、不健康な生活様式が0~1項目の場合に比し、3項目以上の参加者は、2型糖尿病のリスクが5倍以上であった(補正後HR:5.39、3.65~7.95)。さらに、夜勤経験がなく、かつ不健康な生活様式が0~1の群に比べ、夜勤が10年以上かつ不健康な生活様式が3項目以上の群における2型糖尿病の多変量補正後HRは7.04(5.29~9.37)だった。
 夜勤期間が5年長くなるごとの2型糖尿病の多変量補正後HRは1.31(95%CI:1.19~1.44)、不健康な生活様式の因子が1つ増えるごとの補正後HRは2.30(1.88~2.83)であった。これら2つの複合作用による2型糖尿病の補正後HRは2.83(2.15~3.73)であり、相加的な交互作用が認められ(交互作用のp<0.001)、交互作用に起因する過剰なリスクは0.20(0.09~0.48)であった。
 2型糖尿病の発症に影響を及ぼす複合的関連のリスクの割合は、夜勤単独が17.1%(14.0~20.8%)、不健康な生活様式単独は71.2%(66.9~75.8%)であり、これらの相加的な交互作用に起因するリスクの割合は11.3%(7.3~17.3%)だった。
 2型糖尿病の多くは、健康的な生活様式を順守することで予防可能であり、交替制夜勤労働者では、より大きな便益が得られる可能性が示唆される。

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...