2022/03/30

保健所による自宅療養証明書の発行について(新型コロナ)

 新型コロナウイルス感染症と診断され、保健所から健康観察を受けた方で、自宅で療養をされていた場合は、保健所より自宅療養証明書を発行できます。詳細は、所管の保健所へお問い合わせください。

自宅療養証明書とは

 自宅療養証明書とは、新型コロナウイルス感染症と診断され、自宅で療養していた期間を証明する書類です。
 なお、自宅療養期間は陽性判明日~健康観察最終日までの期間になります。

問い合わせ先

 申請方法などは、所管の保健所へお問い合わせください。
 
愛知県の保健所一覧


当院で証明書や診断書をご希望の場合は、別途自費費用がかかってしまうので何卒ご理解の程お願い申し上げます。

健康講座472 12歳以下の小児への新型コロナウイルスワクチン接種 学会の見解

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 12歳以下の小児への新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が、わが国でも検討されている中、日本小児科学会の予防接種・感染症対策委員会は、同学会のホームページで「5~11歳小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」を発表しました。

 引用となりますが、考え方としては、COVID-19の小児流行の現況を説明するとともに、小児へのワクチン接種について重症化予防への期待について記してあります。


 国内の5~11歳のCOVID-19症例の大多数は軽症としながらも、「感染率が同年代人口の1~2%にとどまるなかでも、酸素投与などを必要とする中等症例は散発的に報告されている」と指摘されており、「今後、全年齢において感染者数が増加した場合には、ワクチン未接種の小児が占める割合が増加し、小児の中等症や重症例が増える」と注意を喚起しております。

 また、2歳未満(0~1歳)と基礎疾患のある小児患者では、重症化リスクが増大することを紹介し、「長期化する流行で行動制限が小児に与える直接的および間接的な影響は大きくなる」と記載がありました。

 小児へのCOVID-19ワクチンの現状について、国内で5~11歳を対象とする接種への承認申請は、現時点でファイザー社製のみであり、同ワクチンは従来のワクチンと比べ含有されるmRNAが1/3の製剤で、使用に際し注意が必要であること、海外のデータから、5~11歳の小児に対する同ワクチンの発症予防効果が90%以上と報告されているが、新しい変異ウイルス(オミクロン株など)への有効性を示すデータは十分に得られていないことは注意が必要かと思われます。

 そして、米国で接種された5~11歳の小児への約870万回のファイザー社製ワクチン接種のデータについて、4万2,504人が自発的な健康状況調査に登録され、その結果2回接種後、局所反応が57.5%、全身反応が40.9%に認められ、発熱は1回目接種後7.9%、2回目接種後13.4%に認められたことを紹介してありました。また、同期間に、米国の予防接種安全性監視システムには、4,249件の副反応疑い報告があり、このうち97.6%(4,149件)が非重篤だったこと、重篤として報告された100件(2.4%) の中で最も多かったのが発熱(29件)、11件が心筋炎と判断されたが、全員が回復したことも合わせて記しています。以上から、5~11歳の小児では16~25歳の人と比べて一般的に接種後の副反応症状の出現頻度は低かったと米国でのデータを説明しておりました。                      
小児のCOVID-19ワクチン接種について、以下の4項目で考えを伝えていました。

【ワクチン接種の考え方について】
1)子どもをCOVID-19から守るためには、周囲の成人(子どもに関わる業務従事者など)へのCOVID-19接種が重要。
2)基礎疾患のある子どもへのワクチン接種により、COVID-19の重症化を防ぐことが期待される。基礎疾患を有する子どもへのワクチン接種については、本人の健康状況をよく把握している主治医と養育者との間で、接種後の体調管理などを事前に相談することが望ましいと考える。
3)5~11歳の健康な子どもへのワクチン接種は12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種と同様に意義があると考えている。健康な子どもへのワクチン接種には、メリット(発症予防など)とデメリット(副反応など)を本人と養育者が十分理解し、接種前・中・後にきめ細やかな対応が必要。
4)接種にあたっては、接種対象年齢による製剤(12歳以上用と5~11歳用のワクチンでは、製剤・希釈方法・接種量が異なる)の取り扱いに注意が必要と考える。また、集団接種を実施する場合においても、個別接種に準じて、接種前の問診と診察を丁寧に行い、定期接種ワクチンと同様の方法で実施することが望ましい。

参考

2022/03/28

健康講座471 心血管疾患とSGLT2阻害薬

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

SGLT2阻害薬は、高リスク患者において、心血管アウトカム改善に関する一貫性のあるクラス効果を示しているようです。

10件の主要な無作為化臨床試験のメタ解析から発表がありました。

メタ解析は、広範な有効性アウトカムを評価し、さらには良好にデザインされた数件の大規模臨床試験のさまざまなサブグループにおける主要アウトカムの特性を明らかにしました。本解析は、選択された患者さんにおける(心不全による入院の)予防および全死因死亡の減少を含む、心血管疾患の罹患や死亡を改善する有効な薬剤クラスとして、SGLT2阻害薬を支持しておりました。

文献、学会発表やほかの資料を調査し、参加者がアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)またはASCVDのリスク因子、糖尿病、心不全を有していた10件のプラセボ対照無作為化試験が特定されました。高リスク患者計7万1,553例のうち、3万9,053例がSGLT2阻害薬を、3万2,500例がプラセボの投与を受けたようでございます。

心血管死または心不全による入院からなる主要アウトカムの発生率は、SGLT2阻害薬に無作為に割り付けられた群で8.10%であったのに対しプラセボ群では11.56%であり、オッズ比(OR)は0.67で有意差があったようです(p<0.001)。どうやら主要アウトカムに含まれる個別アウトカムはいずれもSGLT2阻害薬群で減少しており、治療必要数(NNT)は5.7であったようです(p<0.001)。要するにですよ、薬を使用した人の5.7例のうち一人に心臓に対し良い効果がでるということでございます。

心血管系が原因の死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中で定義された主要有害心血管イベントの発生率も、SGLT2阻害薬群において有意に低下していました。その発生率は9.82% vs.10.22%で、オッズ比は0.90であったようです(p=0.03)。

心不全による入院または緊急受診(4.37% vs.6.81%、OR:0.67、p<0.001)、心血管死(4.65% vs.5.14%、OR:0.87、p=0.009)の発生率もSGLT2阻害薬によって低下しました。心不全の減少は、ナトリウム利尿作用と間質液減少の組み合わせおよび心臓線維化の抑制によるものと考えられているようです。

一方で、5件の試験で評価された急性心筋梗塞の減少は見られなかったようです。その発生率は、SGLT2阻害薬群で4.66%、プラセボ群で4.70%、ORは0.95で有意差はなかったのです(p=0.22)。この結果はおそらく、SGLT2阻害薬が既知の狭心症に対する特性や血管拡張作用を有しておらず、心筋の酸素消費量を低下させず、心筋リモデリングを予防しないという事実によるものだろうと言われております。

それでも、全死因死亡の発生率は7.09% vs.7.86%(OR:0.87、p=0.004)と、SGLT2阻害薬によって有意に低下したのでございます。

年齢に関しては、主要アウトカムの発生率は65歳未満群が65歳以上群よりもやや低かった(6.94%[OR:0.79、p<0.001]vs.10.47%[OR:0.78、p<0.001])ものの、両群でSGLT2阻害薬によるベネフィットが得られたようでございます。


JAMA Netw Open. Published online January 5, 2021. 


2022/03/25

健康講座470 日常生活と糖質

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。


 適切な糖質量についてはまだまだ見解が分かれていますが、食事療法を実践する上で長期的に継続できる、患者さんの嗜好に配慮できる、糖尿病の予防・管理に対してのエビデンスを踏まえて糖質量を考えることは必要です。

日本においても各栄養について、推定必要量や栄養素比率などが定められていますが、「糖尿病の予防・管理のための望ましいエネルギー産生栄養素比率」を設定する明確なエビデンスは、残念ながら今のところありません。

米国糖尿病学会の診療ガイドラインにおいて、「総エネルギーの適正化を念頭に個別化を図ること。低炭水化物食(糖質制限)は短期的には血糖コントロール改善に役立ち、投薬を減らせる可能性があるが、長期継続は困難で大半の人は元の栄養バランスに戻り、効果は持続しない」とされています。また、国内の糖尿病診療ガイドラインには、「炭水化物摂取量と糖尿病の発症リスク、糖尿病の管理状態との関連性は確認されていない」と記されています。

しかし、現代人の日常食生活を考えると、糖質は過多になる傾向があります。これは、糖質を多く含む菓子類やジュース、スポーツドリンクなどの嗜好飲料、アルコール飲料などの摂取過多がひとつの原因となります。また、外食においてはファーストフードや丼物、麺類などが手軽に食べやすいことから、食生活の癖によって摂取する糖質量は大きく変化していきます。

日本人の食事摂取基準2020年版では、成人の目標量は「炭水化物:50〜65%エネルギー、タンパク質:13〜20%エネルギー、脂質:20〜30%エネルギー」となっています。


1日に必要な摂取カロリー(kcal)を1600kcalと想定しますと、炭水化物を50%エネルギーとして計算した場合、糖質は800kcal分になります。炭水化物は4kcal/gですので、1日の糖質量の目安は200g、1日3食とした場合、1食あたり66.7gとなります。

例えば、有名チェーン店の牛丼を食べた場合、並盛りで糖質量が約90〜100gとなり、1食で1/2日分の糖質を摂取することになります。米飯だけではなく、甘く煮る調理法によっても糖質量が上がることを意識する必要がございます。

カレーには、米飯のほかルゥにも糖質が含まれ、1食の糖質量は約100〜130gとさらに多くなるのであります。

ハンバーガー類の糖質量は約30〜40gと抑えられますが、一方で脂質に偏りがちです。また、同時にフライドポテトなどを追加するとさらに糖質量が増えていきます。

そば、うどんは、約60〜120gと米飯1膳ほどです。比較的ボリュームが少なく大盛りにしがちな麺類は、単体よりもトッピングを意識すると満足度が上がります。

糖質をむやみに減らそうとするだけでは、食事療法の継続は難しく、また栄養バランスを崩す原因となります。1日の糖質量の目安を理解したうえで、自身がどのぐらいの糖質量を摂取しているかを把握することが大切です。


参考にしてくださいね。

2022/03/23

健康講座469 嗜好と遺伝子とカフェイン

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

  ブラックコーヒーやダークチョコレートを好む傾向は、遺伝子に組み込まれているようだとする研究結果が報告されました。このような傾向を持つ人は、実際にその味自体が好きなわけではなく、カフェインを素早く代謝できる遺伝子を持っており、苦味とカフェインにより得られる刺激を関連付けているのだということでございます。

 コーヒーの摂取に関するゲノムワイド関連解析(GWAS)では、カフェインの代謝経路に関与するが味覚には関与しない遺伝子変異が特定されているようで。ただし、コーヒーの味は、ミルクや甘味料を加えることで変わるが、こうしたGWAS研究ではその点が考慮されていないということです。今回、味覚に関連する遺伝子変異は、ミルクや甘味料を加えたコーヒーの摂取よりもブラックコーヒーの摂取との関連の方が強く、また、カフェインの代謝経路に関連する遺伝子変異は、ブラックコーヒーかミルクや砂糖入りのコーヒーかなどの飲み方(カフェインの含有量に関わりなく)と特異的には関連しないとの仮説を立てたようです。そして、UKバイオバンクと米国の2つのコホート(Nurses’ Health Study;NHS、Health Professionals Follow-up study;HPFS)の遺伝子、食事と食物の好みに関するデータを用いて、この仮説を検証したのです。

 その結果、カフェインの代謝がより速くなる遺伝子変異を有する人では、コーヒーの味と香りに対する嗜好が強く、ブラックコーヒーを好む傾向があることが明らかになったのでございます。また、ミルクチョコレートよりも、より苦味の強いダークチョコレートを好む人でも、同じ遺伝子変異を有することも判明したのでございます。

 ブラックコーヒーを好む人で確認された遺伝子変異は、味ではなくカフェインの代謝の速さに関連しているということです。カフェインが急速に代謝されるため、その刺激作用もすぐに消失してしまい、コーヒーをもっと飲みたくなるのかもしれません。
 私もそうですが、こういう人はカフェインの自然の苦味を、精神刺激作用と同一視しているようです。苦味を、カフェインやそれによる高揚感に関連付けるようになっているのです。それゆえ、カフェインのことを考えると苦い味が連想されるため、ブラックコーヒーやダークチョコレートを好むようです。ただ、ダークチョコレートには少量のカフェインも含まれているが、苦みをもたらす成分は、主にカフェインに似た精神刺激物質であるテオブロミンであるそうです。

 参考までに。

原著

2022/03/21

【YouTube】健康診断の流れについて 

こんにちは。
小川糖尿病内科クリニックの小川義隆です。

健康診断のご予約が少しずつ多くなってまいりました。
そこで、当日の流れについて簡単に動画を作成いたしました。

当院で健康診断の実施をお考えの方や、
ご予約されて当日の流れを知りたいという方は
ぜひご覧ください。

なお、アップロードした動画は9000円コースを参考に作成しております。
他のコースとは内容が異なりますので、ご注意ください。

動画は▶ボタンをクリックすると再生できます。
(動画内で音楽が流れますので音量にご注意ください。)




健康診断の当日の流れ:動画はこちら(YouTubeへ)
健康診断WEB予約ページ:WEB予約はご予約はこちら



健康診断 ネット予約受付再開しました

こんにちは。
小川糖尿病内科クリニックの小川義隆です。

現在、健康診断のご予約が少しずつ増えてきております。

健康診断のネット受付可能期間は1か月先までの予約が可能です。

なお、企業様の健診も承っておりますので、検査項目や注意事項をよくお読みの上、
お気軽にお電話にてお問い合わせください。

3月、4月は健康診断のご予約が集中が予想されますので、
お早めのご予約をお勧めいたします。

健康診断のご予約ページはこちらをクリック

健康講座468 新型コロナワクチン予防接種の効能評価

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)への感染や、症候性新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発現に対する4種のワクチンの有効率は、完全接種後1ヵ月から6ヵ月までの間に平均で約20~30%低下するが、重症化に対する有効率の低下は約9~10%と小さいことが、世界保健機関(WHO)の検討で示されたようでございます。


4種のワクチンの効能・効果を評価するメタ回帰分析

 研究グループは、さまざまな臨床アウトカムに対するCOVID-19ワクチンの感染防御期間のエビデンスを系統的にレビューし、接種後の時間経過に伴うデルタ変異株に起因するワクチン突破型感染の割合の変動を評価する目的で、メタ回帰分析を行ったのです。
 対象は、COVID-19ワクチンの効能(efficacy)に関する無作為化対照比較試験と、COVID-19ワクチンの効果(effectiveness)に関する観察研究とされています。
 完全接種後1~6ヵ月のワクチンの効能・効果の平均変化量の推定が行われております。

 310の論文が全文レビューの対象とされ、18の研究(いずれもオミクロン変異株の広範な感染拡大が始まる前に行われたもの)が解析に含まれました。7米国の研究が8報、英国が2報、カナダ、フィンランド、イスラエル、カタール、スペイン、スウェーデンが各1報で、残りの2報は複数の国が参加した臨床試験だったようです。

重症化への有効率は、約8割が6ヵ月後まで70%以上で維持

 SARS-CoV-2感染に対するワクチンの効能・効果は、完全接種後1ヵ月から6ヵ月までに、全年齢層で平均21.0%ポイント低下し、高齢者(各試験の定義で50歳以上)では平均20.7%ポイント低下しました。

 症候性COVID-19におけるワクチンの効能・効果は、完全接種後1ヵ月から6ヵ月までに、全年齢層で平均24.9%ポイント低下し、高齢者では32.0%ポイント低下していました。

 また、重症COVID-19では、ワクチンの効能・効果が同期間に、全年齢層で10.0%ポイント、高齢者では9.5%ポイント、それぞれ低下しましたが、感染や症候性COVID-19の発現に対する効能・効果に比べると低下の幅が小さかったようです。COVID-19の重症化に対するワクチンの効能・効果は、全体の81%の患者が、接種後6ヵ月まで70%以上で維持されていたようです。

 参考にしてください。
原著

2022/03/18

健康講座467 インスリン以外の血糖を下げるホルモン

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 膵臓からのインスリン分泌が血糖値を下げるための主要なメカニズムであることは、100年以上前から分かっていることでございます。しかし、血糖値を下げる仕組みはインスリン分泌ばかりでなく、FGF1というタンパク質も血糖降下作用を持つようです。そのFGF1の血糖降下メカニズムが明らかになりそうです。


 FGF1は、線維芽細胞成長因子1(fibroblast growth factor 1)の略です。脂肪組織で生成されるこのFGF1に、インスリンと同じような血糖降下作用があることはこれまでにも知られていたとのことです。今回の研究では、FGF1がどのように血糖値を下げるのか、実験用マウスを用いて検討されたのです。その結果、FGF1はインスリンと同様に、脂肪組織の分解と肝臓からの糖放出を抑制することで、血糖降下作用を発揮することが分かりました。ただしFGF1は、インスリンとは異なるシグナル伝達経路を介してこれを行っていたのです。

 インスリン抵抗性のある状態では、インスリンシグナル伝達が損なわれています。しかし、異なるシグナル伝達経路を機能させることで、脂肪分解の抑制と血糖制御の可能性があり、インスリン抵抗性のある実験用マウスにFGF1を注射すると、血糖値は著明に低下することも確認されたようです。

 しかし、動物実験で認められた効果がヒトでも認められるとは限りません。インスリン抵抗性のある人は、FGF1に対しても抵抗性を示す可能性は当然あると思います。また、2型糖尿病は、患者ごとに代謝状態が大きく異なる複雑な症候群です。FGF1を標的とする治療は、一部の2型糖尿病患者さんには有効かもしれないですが、他の患者に効果はあるのでしょうか。

 マニアックな話ですが、インスリンの脂肪分解抑制作用は、ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)と呼ばれる酵素が、シグナル伝達経路の重要な鍵を握っているようです。それに対して今回の研究により、FGF1ではPDE4という別の酵素が利用されていることが分かりました。

 今後のさらなる知見に興味がでます。

2022/03/16

健康講座479 全粒穀物食べよう

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 全粒穀物の摂取により、ウエスト周囲長が増えにくくなり、血圧や血糖の上昇も抑制されるようです。米国で1948年から続けられ、数々の重要なエビデンスを発信してきたフラミンガム研究からの新たな知見であります。

 この新たな知見は、全粒穀物の摂取とウエスト周囲長や血圧、血糖との関係を示したものであり、因果関係までは分からないものです。しかし、ウエスト周囲長、血圧、血糖の上昇は、全て心臓病の発症に寄与するリスク因子であります。

 この研究は、フラミンガム研究の参加者、3,121人(平均年齢54.9±0.2歳、女性54.5%、BMI27.2±0.1)を、中央値18.1年追跡した研究です。追跡期間中は約4年ごとに、全粒穀物や精製穀物の摂取量を含む食習慣、および喫煙や飲酒、身体活動状況などの情報を収集しました。ベースライン時点の全粒穀物摂取量は、平均16.0±0.28g/日だったようです。

 年齢や性別、BMI、摂取エネルギー量、喫煙・飲酒・身体活動量、糖尿病・高血圧・脂質異常症、閉経状態などで調整後、全粒穀物の摂取量が多い人ほど、ウエスト周囲長や血圧、血糖の上昇幅が少ないという関係が示されました。具体的には以下のとおりでございます。

 ウエスト周囲長は、全粒穀物の摂取量が最も少ない群(8g/日未満)では4年ごとに3.01±0.13cm増えていたのに対し、摂取量が最も多い群(48g/日以上)の4年間ごとの変化は1.84±0.23cmであった(傾向性P<0.001)。収縮期血圧は、同順に1.32±0.28mmHg、0.55±0.49mmHgの上昇(傾向性P=0.009)、空腹時血糖値は2.51±0.20mg/dL、1.04±0.38mg/dLの上昇(傾向性P=0.001)。また、中性脂肪やHDL-コレステロールについては有意でないながらも、全粒穀物の摂取量が多い群では変化の幅が少なかったです。

 食事調査から、全粒穀物の大半は、全粒小麦パンと、手軽に食べられるように加工されたシリアル食品で占められていることが分かりました。一方、精製穀物は主としてパスタと白パンとして摂取されていたようです。

 今回の研究結果に関連して、全粒穀物はおそらく複数のメカニズムを介して心血管リスク因子に対し抑制的に働くと考えられます。詳細は不明だが、例えば体脂肪が増えるのを抑制したり、食後の血糖値の急上昇を防いだり、少量の食事で満腹感を得られたり、腸内細菌叢を健康的に保ったりすることが関与しているのではないかと考えられてます。

 さらに、全粒穀物に含まれているマグネシウムなどの栄養素は、血圧や血糖の管理に役立つ可能性もあります。


 全粒穀物には食物繊維、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質などの健康に良い成分が大量に含まれています。体重増加や炎症、血糖値の上昇を抑制し、消化管の機能を助け、一部のがんのリスクを低下させることも、これまでの研究で示唆されています。

 オートミールや全粒粉クラッカーなど、手軽に入手可能な全粒穀物製品が少なくないです。成分表示ラベルを見て、全粒穀物の含有量を確認するのも良い方法でございます。


原著

健康講座466 COVID-19患者における細菌の同時感染

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 COVID-19患者における細菌の同時感染や2次感染はまれであるということが、最近発表されたメタアナリシスや前向き研究で明らかにされている。しかし、これらの研究では、調査対象の患者の約70%に抗菌薬が処方されてようです。COVID-19患者集団における細菌の同時感染率を明らかにするため、入院中の抗菌薬使用と同時感染の状況について後ろ向き横断研究により検討したようです。

 新型コロナ流行開始以来、COVID-19患者に対し、症状からほかの感染症が疑われる場合を除き、抗菌薬の処方は原則行っていません。2020年11月1日~21年10月9日までに、入院したCOVID-19感染が確認された症候性患者1,056例(年齢中央値:50歳、男性669例、女性387例)を解析対象としました。533例(50.5%)が軽症、313例(29.6%)が中等症I、203例(19.2%)が中等症II、7例(0.7%)が重症であったようです。入院中、9例(0.9%)が死亡、1,046例(99.1%)が回復、1例が回復前に他院に転院したとのことです。

 調査結果によると、104例(9.9%)で入院前に抗菌薬が処方されていたが、入院中に抗菌薬が投与された患者は18名(1.7%)だったのです。このうち15例は治療、3例は予防として使用しました。入院中に微生物学的に確認されたCOVID-19以外の感染症は6例(0.6%)で7件であったようです。軽症のCOVID-19を除いても5例(0.9%)であったのです。

 本研究により、COVID-19患者において、入院中の抗菌薬使用頻度が低いにもかかわらず、細菌による同時感染はまれで、そのほとんどが非重症例だったことがわかりました。また、非重症患者のほとんどが抗菌薬なしで回復したことから、非重症患者の治療に抗菌薬を使用する必要はほぼなく、COVID-19患者の治療には、薬剤耐性を考慮し、抗菌薬の使用を慎重に行う必要があるようです。

2022/03/14

健康講座465 歯周病と糖尿病 リマインド

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 歯周病は、歯だけの問題ではなく、糖尿病や心臓病、メンタルヘルス不調のリスクを高める可能性を示す論文が示されております。歯周病の予防・早期発見・治療、そして定期的な歯科検診はとても重要であると思われます。

 1995~2019年の英国の医療関連調査データ(IMRD-UK)を用いたものです。この間に、歯周病での受療記録のある人とその記録がない人とで、全身疾患やメンタルヘルス不調のための受療頻度に差があるか否かを検討しました。歯周病での受療行動が記録されていた「歯周病群」として6万4,379人、年齢、性別、受療の時期などの一致する歯周病受療記録のない「対照群」として25万1,161人を抽出しました。平均年齢は45歳だったようです。

 ベースライン時点の横断的な解析では、歯周病群は対照群に比べて、心血管疾患〔調整オッズ比(aOR)1.43、心血管代謝疾患aOR1.16、自己免疫疾患aOR1.33、メンタルヘルス不調aOR1.79の有病率が、いずれも有意に高かったとのことです。

 次に、中央値3.4年の追跡期間中の新規発症は、心血管疾患ハザード比(HR)1.18、心血管代謝疾患HR1.07、自己免疫疾患HR1.33、メンタルヘルス不調HR1.37であり、いずれも歯周病群の方が有意に罹患率が高かったのでございます。

 歯周病がこれらの慢性疾患の発症リスク上昇と関連している可能性がありそうです。歯周病患者数は極めて多いため、歯周病によってこれらの慢性疾患のリスクが上昇するのは誰にとっても望ましくないですね。

 米疾病対策センター(CDC)によると、30歳以上の米国人のほぼ半数が歯肉炎または歯周炎を患っているようです。歯肉炎は歯周病の初期段階に当たり、歯茎が赤く腫れて出血することがあるようです。より進行した歯周炎と呼ばれる段階の歯周病では、歯茎と歯の間の隙間が広がったり歯槽骨が減少したりして、歯が揺れ動いたり抜けてしまったりすることもあるそうです。

 歯周病がそれらの慢性疾患を引き起こすのか、それとも逆に、それらの慢性疾患が歯周病を引き起こすのかは明らかではないですが、それが双方向性である可能性があるようです。双方向性が最も明らかなのは、糖尿病でございます。糖尿病以外の慢性疾患と歯周病との双方向性については、さらなる研究が求められるようです。その上で、歯茎が健康と言えない状態の場合、糖尿病がないかは健診や医療機関で調べてもらうと良いでしょう。

 歯周病を早期に発見すれば、簡単に治療できるようです。痛みがなければ歯磨きやデンタルフロスをしっかり使わなかったり、歯科検診を受けなくても良いわけではないとのことです。痛みが現れたり、歯槽膿漏になるまで、放置していると大変なことになります。これは、糖尿病も同じです。症状が出る前に、予防医学に興味をもって頂ければ幸いです。


原著

2022/03/11

健康講座464 心不全と糖尿病薬

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 2型糖尿病患者において心不全による入院の直後にmetformin治療を開始することは、左室駆出率(LVEF)が40%超の場合にその後1年間の再入院の発生率低下と関連したようです。

代替としてSU薬を開始した群では、LVEFが40%超の場合には再入院の発生率は中立的でありやした。しかしLVEFが40%以下の場合は、SU薬非開始群と比較し再入院の発生率は48%有意に増加したのでありやした。

既存のエビデンスからですと、心不全に対してはSGLT2阻害薬が第一選択薬とされており、metforminはさらなる血糖降下が必要な場合に考慮されております。

循環器医の間でのコンセンサスは、駆出率が低下した心不全および保持された心不全のいずれの患者に対しても、血糖コントロールやmetformin治療とは独立に、SGLT2阻害薬を治療の柱の1つとすべきだ、というものもあります。

Get With the Guidelines-Heart Failureレジストリにおいて2006〜14年に収集されたデータが用いられました。同レジストリは、米国心臓協会がスポンサーを務め組織化したプログラムであり、現在米国の500超の病院が参加し12万5,000例超の患者が組み入れられているようでございます。

本試験では、心不全による入院後に退院し、2型糖尿病の既往または治療中と診断され血糖降下薬を1種類以上処方されている者が対象とされた。metforminが推奨されないeGFR 45mL/分/1.73m2未満の患者は除外されておりました。

最終的な試験コホートは5,852例となったようです。そのうち、入院中または退院後90日までにmetforminを開始したのは454例(8%)、同期間中にSU薬を開始したのは504例(9%)であったようです。

29の潜在的交絡因子で調整した解析では、metformin開始群における全死因死亡または心不全再入院の複合の12ヵ月間の発生率は、非開始群と比較し19%有意に低下したのでありやす。

再入院の発生率は、metformin開始群で非開始群と比較し20%低下したが、この差は統計学的有意差にわずかに届かなかったようでありやす(p=0.072)。全死因死亡の発生率は、metformin開始群と非開始群で同等だったようです。

初回入院中のLVEFで患者を層別化した解析では、LVEFが40%超の患者において、metformin使用が再入院発生率を42%有意に減少させ、再入院または全死因死亡の複合発生率の有意な32%の減少と関連したことが明らかになったのでございます(全患者のおよそ58%でLVEFが40%超)。

LVEF40%以下の患者では、metformin治療と3種類の主要アウトカムのいずれもが有意に関連しなかったことが示されました。

完全調整モデルにおいて、SU薬開始群では、非開始群と比較し3種類の主要アウトカムすべてでわずかに有意な増加が認められました。SU薬治療は、全死因死亡の24%の相対増加(p=0.045)、再入院の22%の相対増加(p=0.05)、再入院または全死因死亡の複合の17%の相対増加(p=0.047)と関連しました。

ベースラインのLVEFで層別化したところ、LVEFが40%以下の患者においてSU薬治療による有意差が認められました。LVEFが40%以下のSU薬開始群では、全死因死亡が29%増加しました。

本試験では、心不全による入院時にLVEFが40%以下であった患者ではmetforminのベネフィットが見られなかったことから、駆出率が低下した心不全という状況下での2型糖尿病に対するファーストライン治療として、metforminよりもSGLT2阻害薬を優先することを支持するデータがさらに加わったとも考えられます。

今回の試験においてSU薬による害が示唆されたことで、可能であれば心不全患者において別の血糖降下薬の使用を優先することが支持されるでしょう。

The study received no commercial funding. Get With the Guidelines-Heart Failure is sponsored in part by several drug companies. Greene has reported no relevant financial relationships. Cheng and McGuire have each received personal fees from numerous companies.

JACC Heart Fail. Published online December 8, 2021. Abstract

2022/03/09

健康講座463 SARS-CoV-2の既感染者の再感染予防効果は!?

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 SARS-CoV-2の既感染は、これまでアルファ株、ベータ株、デルタ株に対し、高い再感染予防効果を示すことがわかっているようですが、オミクロン株は従来株よりも免疫を回避することも明らかになっているようです。既感染による予防の有効性を変異株別に推定した研究が掲載されたようです。


 カタールで行われたケースコントロール研究は、全国のSARS-CoV-2データベースからCOVID-19の検査結果、ワクチン接種、臨床感染データ、関連する人口動態に関するデータを抽出したものです。このデータベースにはこれまでカタールで行われた全PCR検査結果、ワクチン接種、入院および死亡例が含まれました。

 再感染予防効果は、既感染者の未感染者と比較した時の感染感受性の減少率と定義しました。ワクチン接種有無の調整を含む1次分析と、ワクチン接種者を除外した1次分析を行ったものです。

 再感染予防における既感染の有効性は、ワクチン接種の有無の調整後でアルファ株90.2%、ベータ株85.7%、デルタ株92.0%、オミクロン株56.0%と推定されたようです。

 再感染した既感染患者のうち、重症へ進行したのはアルファ株1例、ベータ株2例、デルタ株0例、オミクロン株2例だったようです。再感染が重篤に進行または死亡した例はなかったようです。既感染の重症化防止の有効性は、アルファ株69.4%、ベータ株88.0%、デルタ株100%、オミクロン株87.8%と推測されました。

 全体として、既感染のアルファ、ベータ、デルタ株への再感染防止効果は強固であり(約90%)、これは以前の推定を裏付ける所見であったのです。オミクロン株ではこの効果は落ちたものの、既感染による重症化予防効果は変異株に関係なく強固でありました。

2022/03/07

健康講座462  口腔機能と栄養状態

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 口腔機能が低下している高齢者は栄養状態も良くないことが知られています。このような関連は非高齢者でも認められることが明らかになったようでございます。東京歯科大学老年歯科補綴学講座の研究によるものでございます。


 口腔機能の軽度の低下を表す「オーラルフレイル」が近年、フレイル(要介護予備群)の表現型の一つとして注目されているようです。口腔機能低下のために栄養状態に影響が生じ、両者の相互作用によって心身機能が加速度的に低下してしまうことから、高齢者のオーラルフレイルには早期介入が求められます。ただし、このようなオーラルフレイルのリスクは高齢者だけでなく、中年期から生じている可能性があるのです。

 研究の対象は、東京都内の歯科医院(単施設)で2016年7月~2018年6月に歯科健診を受けた40~64歳の中年期成人117人(平均年齢50±7歳、男性37.6%)。健診データを後方視的に解析する横断研究として実施しました。なお、急性歯科疾患や糖尿病、嚥下障害などを有する患者は除外されているようです。

 口腔機能は、残存歯数、口腔水分、口唇と舌の巧緻性、舌圧、口唇閉鎖力、および咀嚼能力で評価しました。一方、栄養状態は、BMI、除脂肪量指数(FFMI)、および骨格筋量指数(SMI)で評価しました。


 栄養状態関連指標を目的変数、口腔状態関連指標を説明変数とする線形重回帰分析の結果、以下のように全ての栄養関連指標について、舌圧および口唇閉鎖力が低いほど低値という有意な関連が認められた。BMIに関しては舌圧がβ=0.204(P=0.047)、口唇閉鎖力がβ=0.252(P=0.015)、FFMIは舌圧β=0.156(P=0.048)、口唇閉鎖力β=0.208(P=0.009)、SMIは舌圧β=0.149(P=0.048)、口唇閉鎖力β=0.200(P=0.009)。また、FFMIとSMIは性別も有意な関連があり、女性で低値だった。

 要するにですよ、中年期成人においても口腔機能が低下している人の存在が認められる」とした上で、歯科医院外来の中年期患者では、舌圧と口唇閉鎖力がBMI、FFMI、およびSMIと正相関しているのです。高齢者だけでなく中年期成人においても口腔機能と栄養状態に関連があると結論付け、舌圧と口唇閉鎖力を測定することで、BMIやFFMI、SMIなどで把握される栄養状態を推定可能と考えられるかもしれません。

原著

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...