2022/01/31

健康講座446 思い込みかも?新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種後の頭痛や疲労

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 偽薬(プラセボ)は体調を良くすることもありますが、逆に、損ねて有害事象を招くこともあることをご存じでしょうか?プラセボで体を壊して有害事象が生じることはノセボ(nocebo)効果として知られています。

これまでの12のプラセボ対照無作為化試験報告をメタ解析したところ1)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン1回目接種後の頭痛や疲労などの注射部位以外に及ぶ全身性有害事象の実に8割方はそのノセボ効果に起因していてワクチンが原因ではないと示唆されました2)

全身性有害事象はワクチン1回目投与後の人の46%、プラセボ投与後の人の35%に生じていたのです。その結果に基づくとワクチン1回目接種後の全身性有害事象の76%はワクチンとは無関係のノセボ効果に起因します。

理由は定かではありませんがワクチン2回目接種後の全身性有害事象のノセボ効果は1回目接種後より低めでした。2回目投与後の全身性有害事象の発生率はプラセボ群では少し下がって32%、ワクチン投与群では逆に増えて61%であり、それらの数値に基づくとワクチン2回目接種後の全身性有害事象のうちおよそ半分(52%)がワクチンとは無関係のノセボ効果に端を発すると推定されました。

一方、注射部位の有害事象は全身性有害事象とは対照的にワクチンを原因とするものが大半を占めるようです。1回目投与後の注射部位有害事象の発生率はワクチン群では67%、プラセボ群では16%であり、ワクチン1回目投与後の注射部位有害事象の24%がノセボ効果に起因すると示唆されました。ワクチン2回目投与後の注射部位有害事象のうちノセボ効果の割合は全身性有害事象と同様に1回目投与後より低く、16%ほどでした。

頭痛や疲労などの漠然とした症状がCOVID-19ワクチン接種後の一般的な有害事象として説明書の多くに掲載されており、ノセボ効果でも生じうるそういった症状があたかもワクチン接種後に特有の有害事象であるという思い込みを増やしているかもしれませんね。

現在出回るそのような説明書や報道はノセボ効果をおそらく誘発または助長していますが、その効果の存在を説明することでCOVID-19ワクチン接種に関する不安を減らして接種をより受け入れやすくなれば幸いです。

実際、ノセボ効果の理解を促すことにより、いつもの同意手順の有害事象の説明に“この手段を調べた無作為化試験のプラセボ群の被験者にも似た有害事象が認められており、それらはどうやら不安や心配に端を発する”といったノセボ効果の簡潔にして正確な情報を含めることが服薬に伴う有害事象を減らしうると示されています4)

参考までに。


健康講座445 インターネット検索語句分析と自殺者数の変動

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

インターネット検索サイトの検索語句の分析から、自殺者数の変動を予測できるとする研究結果が報告されたのでございます。京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻の研究によるものでございます。迅速な予測が可能であることから、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックで自殺者数の増加リスクのある、現在のような局面での有用性が高いかもしれません。


 自殺者数に関する公的な統計として、厚生労働省の人口動態統計や警察庁の自殺統計があるが、いずれも自殺発生を後方視的に把握したものです。そのため一定のタイムラグが存在し、社会情勢の変化に伴う自殺者数の変動を加味した、タイミングの良い自殺予防策の立案に役立てることは難しいようです。

 一方、ネット検索サイトでの自殺に関連する単語の検索頻度が、自殺率の変動と相関するとする研究結果が報告されています。ただし、それらの研究はパンデミック以前に行われたものであり、また、自殺行動に直接関連するキーワード(例えば自殺の方法など)との相関を検討したものが多いよです。よって、自殺企図の前段階に当たる希死念慮に関連する語句の検索頻度から、自殺者数の変動を予測し得るかを検討する必要がある。仮にそのような予測が可能であるなら、自殺リスクのある人が既遂に至るのを防ぐ対策の策定に、ネット検索情報が有用な情報となり得るのです。

 このような視点から、自殺行動を目的とした検索語句ではなく、希死念慮の高まりに関連する可能性のあるフレーズや単語の検索頻度と自殺者数の変動との関連を探ったようです。具体的には、「虐待」「仕事/行きたくない」「会社/辞めたい」「離婚」「お金がない」の5つです。これらの検索語句が2016年1月~2020年12月に「Yahoo!JAPAN」で検索された回数と、警察庁統計による2016年1月~2021年3月の自殺者数との相関を検討したようです。

 ベクトル自己回帰モデルという手法で検索語句の使用頻度を基に自殺者数の変動を予測し、実際の報告データとの乖離を検討しました。その結果、性別にかかわらず自殺者数の予測値と報告値が一致して変動することが明らかになったのです。以上の結果から、「自殺を直接的に意味する語句ではなく、自殺に関連する可能性のあるフレーズの検索頻度も、自殺者数の予測に有効」と結論付けられています。


 なお、性別に見ると、男性では特に「離婚」、女性では「お金がない」という語句の検索回数による予測能が高かったようです。パンデミック下で国内でも女性の自殺者数の増加が報告されており、その背景としてシングルマザーの経済的困難の存在が指摘されていますが、本研究でもその裏付けが得られたのです。また、本研究の解析対象期間には含まれていないですが、男性ではリーマンショック時に自殺率が上昇したことが明らかになっているようです。

原著

2022/01/28

健康講座444 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の小児重症化リスク

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクは、成人よりも小児の方が低いことが知られています。その理由の一部として、成人と比べて小児では、免疫の働きが強く、血管の状態も良いことを指摘した世界各国の研究データのレビュー論文がございます。

 COVID-19の小児患者の大半は無症状、または軽症であるそうです。また、症状が現れても、たいていは発熱や咳、喉の痛み、味覚や嗅覚の変化程度ですむことが多いです。免疫抑制剤の使用など、通常は重症感染症のリスク因子となる因子を持っていても、COVID-19の重症化リスクがそこまで上昇するわけではないともいわれております。

 心臓や血管、リンパ管の壁を覆う内皮細胞は、加齢とともにダメージが増えて老化することが知られています。また、内皮細胞の傷ついた状態がCOVID-19の重症化に関連することも報告されています。傷ついた血管が、血管内での血栓形成を促して脳卒中や心筋梗塞を起こす可能性が指摘されてます。また、新型コロナウイルスが内皮細胞に感染して、血管に炎症をもたらすこともあるようです。しかし、小児では、成人に比べて内皮細胞のダメージが大幅に少ないため、異常な血栓が形成されにくいのだそうです。

 糖尿病や肥満などの慢性炎症に関連する加齢性疾患もまた、COVID-19の重症化に関与していると考えられています。それに加えて、小児では、免疫系の強化につながる生ワクチン(麻疹、風疹、ムンプスの混合ワクチンなど)接種後の経過期間が短いことも、COVID-19重症化リスクの抑制に寄与している可能性があるということでございます。

 小児と成人では免疫系に大きな違いがあり、小児はより強力な自然免疫反応を示すようです。これは、新型コロナウイルスに対する最も重要な防御になる可能性があります。

 また、免疫記憶も新型コロナウイルスに対する防御として重要な要因の一つとみられています。COVID-19の小児患者では、他のウイルスへの感染も多いことも指摘されております。何度もウイルスに感染することで自然免疫記憶が向上し、小児の新型コロナウイルス排除能が高まる可能性もあるかもしれません。

 さらに、喉や鼻、肺、胃などの常在細菌も、新型コロナウイルスへの感受性に影響するといわれております。細菌叢は、免疫の調節や炎症、疾患に対する防御において重要な役割を果たしてます。小児は、とりわけ鼻にウイルスや細菌を保有することが多く、これらの細菌が新型コロナウイルスの増殖を抑えている可能性があるともいわれております。

 このほか、小児では成人と比べて抗炎症作用のあるビタミンDのレベルが高い傾向にあることも論文で指摘されています。COVID-19の重症化とビタミンD欠乏はともに、肥満や慢性腎臓病、黒人またはアジア系の人種であることなどをリスク因子とします。このことを考慮すると、COVID-19の予防あるいは治療にビタミンD補充が有用である可能性もあります。

原著

2022/01/26

健康講座443 小児の新型コロナウイルス感染例の重症化の危険因子

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 日本、中国、シンガポール、マレーシア、インドネシア、インド、パキスタンのアジア7ヵ国における小児の新型コロナウイルス感染例の観察研究から、小児における重症化の危険因子として、1歳未満、併存疾患の存在、診察時の咳症状が特定されております。


 7ヵ国の研究者グループは、小児のCOVID-19重症化の危険因子を特定するため、Pediatric Acute and Critical Care COVID-19 Registry of Asia(PACCOVRA)にデータ提供している病院の小児COVID-19の観察研究を実施しました。主要アウトカムは、世界保健機関(WHO)の定義によるCOVID-19の重症度(軽症、中等症、重症、重篤)としたものです。単変量および多変量ロジスティック回帰モデルを使用し、重症/重篤なCOVID-19の危険因子を検討したものです。

 主な結果は以下のとおりでございます。

・7ヵ国8病院から、検査で確認された小児の新型コロナウイルス感染例260例が登録された。
・よくみられる臨床症状は類似していた(発熱64%、咳39%、鼻炎23%)。
・約40%は無症候性だった。
・全体の死亡率は2.3%で、すべてインドとパキスタンから報告された。
・多変量解析によると、1歳未満、併存疾患の存在、診察時の咳症状が、重症/重篤なCOVID-19と関連していた。

原著

2022/01/24

健康講座442 アンパンマンと乳児のこころ

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

突然ですが、「アンパンマン」をご存じでしょうかね?ご存知の通り、顔があんパンでできた、子どもたちの人気ヒーローですね。特に、3歳児までに絶大な人気があります。それにしても、なぜ人気があるのでしょうか?そして、4歳児からなぜか人気がなくなるようです。そもそもなぜ自分の顔を食べさせるヒーローが子どもに受け入れられるのでしょうか?

今回は、乳幼児の心の成長を発達心理学的に読み解き、心の起源を進化心理学的に掘り下げてみましょう。


まず、3歳までにすさまじいスピードで発達する「乳児脳」とも呼ばれる独特の心理があります。乳幼児発達心理学、進化心理学、そして子育て心理に当てはめてみましょう。


アンパンマンは、お腹のすいた人(子ども)のもとに降り立ち、自分の顔をちぎって、喜んで食べさせます。そして、顔の一部がなくなると、力がなくなり飛べなくなります。すると、ジャムおじさんができたての新しい顔に取り替えてくれます。ちなみに、アンパンマン自身はものを食べることはないようです。

1つ目は、捨て身で守ってくれることです。困っている人には、必ず、無条件に、自己犠牲的に助けてくれる存在であることです。それを、視覚的に分かりやすく描いています。そして、アンパンマン自身は食べないという設定から、困っている人には気兼ねさせずに一貫して食べさせる存在になれます。また、アンパンマンの顔は、ジャムおじさんによって新しく作られるため、なくならないという安心感もあります。

発達心理学的に見ると、乳児は、泣けば必ず母親から授乳してもらえると認識しています。まさに、アンパンマンの顔はおっぱいと言えるでしょう。乳児がおっぱいを吸うと、オキシトシンというホルモンが母親の脳内で分泌され、お乳が出やすくなります。この時、同時に母親は自分の子どもを大切にしたいという気持ちが連動して高まります(愛情)。一方、乳児は、抱っこ、愛撫などによる肌の触れ合いがあると、乳児の脳内でも同じようにオキシトシンが分泌されることが分かっています。この時、同時に乳児はその母親にくっついていたいと思う気持ちが連動して高まります(愛着形成)。そのため、泣くだけでなく、機嫌が良い時は鼻にかかったような柔らかな音を出したり(あう~)、笑顔を見せるようになります。(個人の感想としては、父親にはあまりしない。。。)

つまり、親の愛情と子どもの愛着は相互作用をして高まります(共発達)。そして、これらの高まりは、オキシトシンの分泌や受容体の増加と密接な関係があります。よって、オキシトシンは、「愛情ホルモン」「愛着ホルモン」「絆ホルモン」とも呼ばれています。さらに、乳児にとって、母親をはじめとして父親や祖父母なども含めた家族は、自分を無条件に大切にしてくれる安心で安全な心のよりどころであると認識していきます(愛着対象)。これが土台となり、成長するにつれて家族だけではなく他人とのかかわりも求めるようになっていきます。

進化心理学的に見ると、哺乳類が誕生してから、その母親は子どもを哺乳する、つまり乳を与えて育てるというメカニズムを進化させました。これは、自分の栄養を与えるという自己犠牲の上に成り立っています。飽食の現代では想像しにくいですが、常に飢餓と隣り合わせの原始の時代、それでも母親は命がけで自分の栄養を子どもに分け与えて、子孫を残してきたのです。人類が700万年前に誕生してから、もちろん父親も、猛獣から体を張って子どもを守り、子孫を残してきました。当時から、そうしたいと思う母親や父親の心理と、そうされたいと思う乳児の心理(愛着)が共に進化していったのでしょうね(共進化)。

ちなみに、比較動物学的には、サルなどの類人猿も、もちろん哺乳類で愛着形成があります。ただし、サルと人間の違いは、サルの乳児はあまり泣かないようでえす。その理由は、サルの乳児は生まれてすぐに母親の胸に自力でしがみつくことができるため、いつでも哺乳ができて、しかも天敵が来てもそのままいっしょに逃げることができるため、親の関心を引く必要がそれほどないそうです。そもそも泣けば、それだけ天敵に気付かれるリスクを上げるため、泣くことはデメリットでもあります。一方、人間の乳児は、頭部を大きく進化させた代償として、母親の産道を通過するために、サルと比べて未熟児で生まれるように進化しました(生理的早産)。よって、生まれてしばらくは寝たままの状態になるため、親の関心をできるだけ引いて、天敵に見つかるリスクを上回って、生存の確率を高めたのとのことでございます。

子育て心理に応用すると、いつもあなたは大切であると言語的にも非言語的にも伝え続けることです。イヤイヤ期(第一次反抗期)などで、叱ったとしても、その後すぐに切り替えて、「大好きよ」と優しく明るく抱きしめることです。アンパンマンもどんな時も守ってくれる味方であるという無条件の愛情のシンボルです。だからこそ子どもに受け入れやすいと言われております。

2つ目は、みんなと仲良くすることです。アンパンマンワールドは1つの大きなファミリーです。たとえ困ったキャラクターがいても、仲間の一員とみなし、平和的に共存しています。

発達心理学的に見ると、親が、あやしている時に、乳児の気持ちを共感的に汲み取って声かけや表情で鏡のように映し出します(ミラーリング)。すると、その乳児は親の動きのインプットと自分の動きのアウトプットを同じ脳のネットワークで処理するメカニズムを働かせるようになります(ミラーニューロン)つまり、親が乳児の鏡(ミラー)になるのと相互作用して、乳児が親の意図と動作を同じくする「鏡の神経」(ミラーニューロン)を発達させていきます。こうして、乳児は、親のまねをするようになります(模倣)。その後、幼児になって保育園や公園などで、他の幼児といっしょになり、場所やおもちゃを取り合うなどのぶつかり合いや喧嘩が起きます。この時、親などの周りの働きかけによって、最初は単純に抵抗するだけだったのが、やがて順番で共有すること、分け合うこと、じゃんけんをすることなどによって、仲良くすることができるようになります(社会性)。

そして、自己主張と自己抑制のバランスをとるセルフコントロールを発達させていきます。これが土台となり、成長するにつれて、より高度で複雑化したコミュニケーションをするようになっていくのです。

進化心理学的に見ると、人類が約700万年前にジャングルに誕生し、約300~400万年前に草原(サバンナ)に出てから、母親と父親と子どもたちがいっしょに暮らす家族をつくったようです。しかし、草原だからこそさらに猛獣に狙われたり、食料が獲れないという自然の脅威がありました。それでも、生き残るために、より大きな血縁集団をつくって、競い合いながらも助け合う中、相手の心を読む、つまり相手の視点に立つ心理を進化させてきました(心の理論)。

ちなみに、比較動物学的には、サルなどの類人猿も、ミラーニューロンがあり、まねをします。ただし、サルと人間の違いは、サルは意図までは「まね」できない、つまり意図は理解できないことです。その理由は、サルのミラーニューロンの働きは、他のサルの次の動きを予測して素早く対応できれば良いだけで、意図まで理解する必要がないからです。

子育て心理に応用すると、同じ幼児同士がいっしょになった時、たとえ相手がばいきんまんに見えたとしても、最初は「いいよ」「どうぞ」というアクションや「ありがとう」「うれしい」というリアクションをするように働きかけることです。このような、譲り合いや、あげる・もらう(ギブ&テイク)というやりとりの積み重ねを通して、時には距離を取りつつ、粘り強く仲良くなろうとすることです。アンパンマンは誰とでも仲良くするという協力関係のモデルです。だからこそ子どもに受け入れやすいと言えるのかもしれません。

3つ目は、様々なキャラクター(心)を教えてくれることです。それぞれのキャラクターの際立ったビジュアルから、性格や役割の違いを理解して、そのキャラクターらしさ(その人らしさ)を受け止めやすくなります。

発達心理学的に見ると、乳児は、親の共感的なミラーリングによって、共感するミラーニューロンも発達させていきます。そして、自分の気持ちの変化を認識できるようになります。その後、幼児になって、徐々に家族や他の様々なお友達の気持ちの変化も察して、心を通わせようとするようになります(共感性)。この時、身の周りには、人だけでなく、自然物から人工物まで様々な物があることにも気付くようになります。その過程で、自分をはじめとする人に心があるように、万物にも心があると認識します(自己中心性)。これが土台となり、成長するにつれて、相手の気持ちを推し量ったり(心の理論)、思いやりを持つようになっていきます(愛他行動)。

進化心理学的に見ると、現生人類が約10~20万年前に喉の構造を進化させてから、複雑な発声ができるようになり、言葉を話すようになりました。そして、言葉によって抽象的に考えることができるようになり、相手の視点に立つ心理は、人間だけでなく、自然や動物などあらゆるものに向けられ、それらとも協力関係を築こうとしました(アニミズム文化)。

ちなみに、比較動物学的には、サルなどの類人猿も、共感します。ただし、サルと人間の違いは、サルの共感は痛み、恐れ、怒りなどの不快な感情に限定されていることです。その理由は、サルの共感は、他のサルの不快さを素早く感じ取って自分の身に降りかかるかもしれない危険を事前に避けることができれば良いだけで、喜びや安らぎなどの快の感情まで共感する必要がないからです。

子育て心理に応用すると、相手の心、さらには人だけでなく身の回りの物の心も考えさせることです。例えば、子どもがいっしょにいる同じ幼児を押しのけた時、「押すのはだめ」とただ厳しく叱るよりも、「お友達は痛いって言ってるよ」と情緒的に伝えるのです。また、食事の時にスプーンやフォークでお皿を叩いている時、「叩くと壊れるからだめ」と理屈で叱るよりも、「スプーンでお皿を叩くの、わしは嫌だよ」「スプーンとお皿が痛いって言ってない?」とやはり情緒的に伝える方が受け入れやすいようです。アンパンマンワールドのキャラクターたちは、様々な人や物の心に思いを馳せるという想像力のツールです。だからこそ子どもに受け入れやすいと言えるでしょう。


それでは、アンパンマンはなぜ4歳児から人気がなくなるのでしょうか? その答えは、発達心理学的に考えれば、特に3~4歳時以降に発達する「なぜ?」という理屈を考える心理です。この時、表面的で主観的な物の見方から(自己中心性)、体系的で客観的なものの見方に変わっていきます(脱中心化)。

進化心理学的に考えれば、現生人類が約10~20万年前に言葉を話すようになってから、抽象的に考える概念化の心理(脳)が進化しました。そして、概念化によって、原因と結果をつなぐ論理的思考が可能になり、ものごとの理屈が合うかを判断する心理が強まりました(合理性)。さらに、脳の重さで考えると、小学校1年生(6~7歳)で成人の脳の90%に達することが分かっています。まさに、乳幼児の脳の発達は、人類の心(脳)の進化の歴史を辿っているとも言えます。

すると、先ほどの3つのアンパンマンの特徴は、4歳以降の子どもにどう映るでしょうか?


1つ目は、このような身体のメカニズムを考えることです。顔をちぎったり取り替えたりすることについて、3歳までは無邪気に面白がるのですが、4歳以降はその重大さや残酷さが少しずつ分かるようになります。これが、自分の顔を食べさせるヒーローが、3歳までの子どもにしか受け入れられない理由です。実際に、初代アンパンマンの絵本は、出版社から次作を止められるほど大人には不評でした。ところが、幼稚園や保育園から注文が殺到します。その子どもたちから一番ウケたのは「アンパンマンが頭をかじらせるところ」だったのでした。その後のアニメ化で、「かじらせる」から「ちぎって渡す」というふうにマイルドになり、今に至っているようです。

また、ヒーローのビジュアルとしては、単純な顔立ちに3等身で全体的に丸みを帯びてぼんやりした素朴な姿です。親しみやすさがある一方、不格好です。よって、4歳以降の子どもは、美形・モデル体型で尖っていてキラキラした身なりの、戦隊ヒーロー、ロボットヒーロー、少女戦士に興味が移っていくそうです。

2つ目は、このような善悪のルールを考えることです。ばいきんまんが周りに迷惑かけ続けることについて、3歳までは「嫌だなあ」と感情的に思うだけなのですが、4歳以降は親からのしつけの理解が進んでいくにつれて、「何とかしたい」「懲らしめなければ」と思うようになります。ばいきんまんは懲りていないけどアンパンマンも懲りていないということに気付くのです。アンパンマンは優しすぎるのです。それは、ばいきんまんに対してだけでありません。アンパンマンは、アンパンマンワールドの弱いキャラクターたちをかばった結果、それが甘やかしにつながってしまったことをジャムおじさんに指摘されています。

また、ヒーローのポテンシャルとしては、アンパンチやアンキックには殺傷能力がなく、助けに行ったはずなのにしょっちゅう返り討ちにあい、逆に助けを求めてしまうことが多いです。ほのぼのと安心して見ることができる一方、物足りなくなるのです。ある意味、アンパンマンは、史上最弱のヒーローにみえるかもしれません。よって、4歳以降の子どもは、特殊能力や武器の使用、柔軟な発想や知恵によって、敵にとどめを刺したり爆破したりする、戦隊ヒーロー、ロボットヒーロー、少女戦士に興味が移っていきます。

3つ目は、このような根拠のレベルを考えることです。身の周りの様々な物に心があることについて、3歳までは疑うことはないのですが、4歳以降は自力で動くか動かないかで、5歳以降は成長するかしないかで、生物と無生物の違いが分かるようになります(素朴理論)。つまり、物に心があることに根拠がないと気付くようになります。

また、アンパンマンワールドの世界観として、人間がいないファンタジーになっています。空想として気楽に見ることができる一方、リアリティがないため、ツッコミどころ満載で、耐えられなくなってくるようです。

アンパンマンは、困っていれば捨て身で守ってくれるシンボルであり、誰にでも優しくみんなと仲良くなるモデルであり、アンパンマンワールドの仲間たちは様々な心を教えてくれるツールです。その点では、最弱のヒーローでありながらも、最初のヒーローとして欠かすことができないでしょう。


  • 1)ユリイカ2013年8月臨時増刊号「やなせたかし アンパンマンの心」
  • 2)乳幼児のこころ:遠藤俊彦ほか、有斐閣アルマ、2011
  • 3)生涯発達心理学:鈴木忠ほか、有斐閣アルマ、2016
  • 4)まねが育むヒトの心:明和政子、岩波ジュニア新書、2012

2022/01/22

健康講座441 オミクロン株×中和抗体価×新型コロナウイルスのワクチン接種

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 新型コロナウイルスのmRNAワクチン2回接種から6ヵ月以降に3回目の接種を受けると、オミクロン株に対する中和抗体価が大きく上昇することが、米国・ロックフェラー大学の研究で示されました。また、ワクチン未接種の既感染者においても、mRNAワクチンの接種によりオミクロン株に対する中和抗体価が大きく上昇したようです。


 新型コロナウイルスのワクチン接種または感染、もしくはその両方で曝露された47人における169の血漿検体において、武漢株とオミクロン株に対する中和抗体価を測定したものです。

 主な結果は以下のとおりでございます。

・mRNAワクチンのBNT162b2(ファイザー製)もしくはmRNA-1273(モデルナ製)を2回接種後1.3ヵ月における血漿検体では、オミクロン株に対する50%中和抗体価(NT50)は武漢株に対するNT50に比べ127±66(平均±SD)倍低く、接種後5ヵ月では27±17倍低かった。しかしながら、2回目接種から約6ヵ月後に3回目接種を受けた約1ヵ月後には、武漢株に対するNT50が26倍、オミクロン株に対するNT50は38倍と大きく増加した。
・ワクチン未接種の既感染者の血漿検体では、オミクロン株に対するNT50は武漢株に対するNT50に比べ、感染後1ヵ月で58±51倍低く、感染後6ヵ月で32±23倍低かった。しかしながら、既感染者にmRNAワクチンを接種すると接種前に比べ、武漢株に対するNT50が238倍、オミクロン株に対するNT50が154倍と大きく増加した。
・既感染者でワクチンを接種していない人の多くと、mRNAワクチン2回接種のみの人は、オミクロン株に対するNT50は低いもしくは検出不能であった。

参考にしてもろうて。

原著

2022/01/21

健康講座440 オミクロン株に対するワクチンの有効性

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 オミクロン株に対するワクチンの有効性について、発症予防効果はデルタ株と比較して低く、投与後の期間に応じてさらに低下する一方で、入院予防効果は2回目接種後6ヵ月以降も約50%となり、3回目接種により約90%まで高まるというデータが報告されました。英国・UK Health Security Agency(UKHSA)がオミクロン株に関する大規模調査結果を公開しました。

 デルタ株と比較したオミクロン株の症候性COVID-19に対するワクチン有効率(VE)が、診断陰性例コントロールデザインを用いて推定されました。オミクロン株感染20万4,036例とデルタ株感染16万9,888例のデータを使用しているものです。

 ファイザー製、モデルナ製、アストラゼネカ製の各社ワクチンごとの2回目および3回目接種後(交互接種含む)の発症予防効果は以下の通りでございます:

2回目接種後
・すべてのワクチン、すべての期間において、発症予防効果はデルタ株と比較してオミクロン株で低かった。
・アストラゼネカ製ワクチンのオミクロン株に対する発症予防効果は、2回目投与10~14週間後には約30%だったが、20週間後にはなくなっていた(VE=0%以下)。
・ファイザー製またはモデルナ製ワクチンのオミクロン株に対する発症予防効果は2回目投与2~4週間後には約60~70%だったが徐々に低下し、20週間後には約10%だった。
3回目接種後
・1~2回目をアストラゼネカ製、3回目にファイザー製またはモデルナ製接種の場合、オミクロン株に対する発症予防効果は3回目投与2~4週後に約60~70%となり、5~9週間後には約50~60%だった。
・1~2回目をファイザー製、3回目にファイザー製またはモデルナ製接種の場合、オミクロン株に対する発症予防効果は3回目投与2~4週後に約65~75%となり、5~9週間後には約55~70%だった。


 オミクロン株感染による症候性COVID-19入院に対するワクチン有効率(VE)が推定されました。ワクチンの種類を問わず(全種類の統合データ)、接種回数と経過期間ごとのワクチンによる入院予防効果は以下の通りでございます:

・1回目接種後≧4週間:52%
・2回目接種後2~24週間:72%
・2回目接種後≧25週間:52%
・3回目接種後≧2週間:88%


 入院リスクの評価には、英国で発生したオミクロン株感染52万8,176例とデルタ株感染57万3,012例のデータが使用されました。うちオミクロン株感染3,019例とデルタ株感染1万3,579例が、検体採取から14日以内に救急受診または入院していたようです。

 ワクチン接種状況ごとの、陽性後14日以内の救急受診・入院に対するハザード比(HR)は以下の通りでございます:

1回目のワクチン接種から≧28日
オミクロン株:HR1.02(95%CI:0.72~1.44)/デルタ株:HR 0.42(95%CI:0.36~0.48)
2回目のワクチン接種から≧14日
オミクロン株:HR0.35(95%CI:0.29~0.43)/デルタ株:HR 0.18(95%CI:0.17~0.19)
3回目のワクチン接種から≧14日
オミクロン株:HR0.19(95%CI:0.15~0.23)/デルタ株:HR 0.15(95%CI:0.13~0.16)

 上記より、オミクロン株感染で入院するリスクは、ワクチン接種を受けていない人と比較して、ワクチンを2回接種した人の方が65%低く、3回のワクチン接種を受けた人の間ではさらに低かった(81%)ようです。なお、これらの分析において併存疾患や重症度は反映されていないことに注意が必要です。
参考

2022/01/20

健康講座439 新型コロナウイルス抗原検査の擬陽性

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 抗原検査が一般市民でもできるようになってきそうな現在、心配なのは偽陽性の発生割合ではないでしょうか。今回、カナダ・トロント大学が調査した結果、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対しカナダ国内で使用されているすべての迅速抗原検査では、全体的に“偽陽性”の割合が非常に低く、その結果はほかの研究結果とも一致していたと示唆されました。ただし、検査のタイミング(感染段階で早すぎる/遅すぎる)や検査キットの品質問題が原因で正しくない結果が報告される可能性もあることから、1つの集団から偽陽性がクラスターとして発生するには、実装ではなく製造上の問題もあるのではとも思われます。


 本研究では、カナダ全土における無症候性の労働者を対象に、新型コロナの連続的スクリーニングに使用される迅速抗原検査の大規模サンプルから偽陽性結果の発生率を調査しました。

 無症候性の従業員は週2回にわたり検査を実施。その際の出社は任意で、一部の従業員は自宅やオンライン上で検査を行ったようです。なお、カナダはこの期間のうち、3~6月と8~10月に2つのデルタ変異株の感染拡大に見舞われていました。

 検査結果には、匿名化されたレコード識別子、雇用場所、検査、およびロット番号が記録された。検査結果が陽性の場合、患者は24時間以内にPCR検査を完了させる必要があったためにすぐさま医療機関を紹介されたようです。

 主な結果は以下のとおりでございます。

・537施設の職場で90万3,408件の迅速抗原検査が実施され、陽性は1,322件(0.15%)だった。そのうち1,103件はPCR検査の情報を有していた。また、約3分の2の症例はロット番号で追跡可能だった。
・偽陽性の結果数は462件だった(抗原検査のうちの0.05%、PCR検査を含む陽性結果の42%)。そのうちの278件(60%)は、2021年9月25日~10月8日に特定の企業(675km離れた2つの職場のみ)の従業員で報告された。
・これら2つの職場の偽陽性の結果は、すべて特定の抗原検査キットによるものだった。

 研究の限界として、職場の便宜的サンプルが含まれ、PCR確認結果の報告とロット番号の特定は必須ではなかったようです。さらに、これらの結果はカナダの疫学を反映しているため、新型コロナの発生率において異なる経験をしている日本には一般化できない可能性があります。

原著

2022/01/19

健康講座438 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン3回目接種とオミクロン(Omicron)株

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 Pfizer(ファイザー)/BioNTech(ビオンテック)の発表1,2)に続き、イスラエルでの研究でも両社の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2追加接種がどうやらオミクロン(Omicron)株に有効らしいことが示されました。

BNT162b2を2回接種の人の血液はオミクロン株を中和できませんでしたが、3回目接種は中和活性を100倍ほど高めたと発表しました3)

BNT162b2の2回接種を済ませた人の血清のオミクロン株に対する中和効果は弱く、他のSARS-CoV-2株に対する中和活性の25分の1未満ほどでしかありませんでした。

しかし3回目接種をした人のオミクロン株スパイクタンパク質に対する中和抗体活性は2回接種後に比べて25倍高く、3回接種後のオミクロン株中和活性は2回接種後の非オミクロン株中和活性に肩を並べるほどになると示唆されました。

Pfizer/BioNTechとイスラエルの研究はどちらもオミクロン株への3回接種の効果を示すものですが中身が少し違っています。

Pfizer/BioNTechの研究ではオミクロン株そのものではなくオミクロン株の変異を仕込んだ代理ウイルス(pseudovirus)が使われました3)。一方、イスラエルの研究はBNT162b2を2回接種してから5~6ヵ月経つ人と3回目接種してから間もない(1ヵ月後)人の血液のオミクロン株そのものへの効果を比較しており、オミクロン株そのものを使ったぶん実態により即しているようです。2回接種群と3回接種群の人数はどちらも20人です。

参考にしてください。

2022/01/18

健康講座437 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン(Omicron)株感染者の入院リスク

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン(Omicron)株感染者の入院リスクはデルタ株感染者に比べて20~25%低いとの英国データ解析結果(Report 50)を同国の大学Imperial College Londonが先週22日水曜日に発表しました1,2)

その入院の定義はPCR検査でのSARS-CoV-2感染(COVID-19)が判明してから14日以内の受診を含む来院記録があることです1)

オミクロン株感染者の1泊以上の入院リスクはより小さく、デルタ株感染者を40~45%下回りました。

オミクロン株感染者の入院リスクがデルタ株感染者に比べてより低いことは英国政府の保健安全保障庁(UKHSA)の解析でも示されています4)

イングランドのオミクロン株感染者数は5万6,066人で、そのうち132人が病院で治療を受けました。14人がオミクロン株感染判明から28日以内に死亡しました。

オミクロン株感染者の入院リスクはどうやらさらに小さく、デルタ株感染者より62%低いことが示されました。オミクロン株感染者は救急も含む入院にも至りにくく、デルタ株感染者より38%少ないという結果も得られています。

オミクロン株感染者の入院リスクが他の変異株感染者に比べて低いらしいことは好ましい兆候ですが油断は大敵です。

オミクロン株感染がどうやら軽症らしいのはワクチン接種の普及または先立つ感染で備わった免疫のおかげかもしれません。またはウイルス自体の変化が軽症で済むようにさせている可能性もあります6)


2022/01/17

健康講座436 オミクロン株の入院患者の特徴や転帰

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。

 

 南アフリカ共和国におけるCOVID-19第4波はオミクロン株が原因とされているようです。第4波初期におけるCOVID-19の入院患者の特徴や転帰について第1~3波それぞれの初期の入院患者と比較し、報告されました。第4波では年齢が若く、併存疾患のある患者が少ないこと、入院や急性呼吸器疾患を発症する患者が少なく、重症度と死亡率も低いことが示されたようです。

 本研究は、南アフリカ共和国全土に、1万床超の急性期病院49施設を有するNetcare Ltd South Africaで実施された。南アフリカ共和国では、2020年6~8月(従来株)、2020年11月~2021年1月(ベータ株)、2021年5月~9月(デルタ株)の3つの波が発生し、その後2021年11月15日から再び増加し始め、12月7日にコミュニティ陽性率が26%に達しました。そこで、各波で陽性率が26%に達するまでの期間(第1波:2020年6月14日~7月6日、第2波:2020年12月1日~23日、第3波:2021年6月1日~23日、第4波:2021年11月15日~12月7日)におけるCOVID-19の入院患者について、患者の特徴、酸素供給・人工呼吸の必要性、ICU入院、入院期間、死亡率を比較したようです。

 主な結果は以下のとおりでございます。

・各波の初期に病院で治療された患者数は、最も多かった第3波で6,342例に対し、第4波では2,351例と差がみられた。一方、第1~3波では新型コロナウイルス陽性で救急に来院した患者における入院患者の割合は68~69%だったのに対し、第4波では41.3%だった。
・入院患者の年齢中央値は第4波のほうが若く(第4波:36歳、最も高かった第3波:59歳、p<0.001)、女性の割合が高かった。
併存疾患のある患者は第4波で有意に少なく、急性呼吸器疾患を呈する割合は低かった(第4波:31.6%、最も高かった第3波:91.2%、p<0.001)
・第4波に入院した971例のうち、ワクチン接種者は24.2%、非接種者は66.4%、接種不明が9.4%だった。
・酸素供給を必要とした患者は第4波で有意に低く(第4波:17.6%、第3波:74%、p<0.001)、人工呼吸を受けた患者も同様に低かった。
・ICU入院患者は、第4波で18.5%に対し、第3波では29.9%だった(p<0.001)。
・入院期間中央値は、第1~3波の7〜8日から第4波では3日に減少した。
死亡率は、第1波19.7%、第3波29.1%に対し、第4波では2.7%と低かった。

 今回は、遺伝子型判定ができておらず、追跡最終日(12月20日)の時点で患者の7%がまだ入院していること、患者の行動や入院プロファイルが各波で異なることなどの注意点がございます。各波の違いが獲得免疫や自然免疫に影響されるかどうか(2021年12月時点で、同国の成人人口の44.3%がワクチン接種済みで、人口の半分以上が新型コロナウイルスへの曝露経験がある)、またオミクロン株が他の変異株よりも病原性が低いかどうかの判断はさらなる研究が必要と思われます。

原著

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...