2022/08/29

健康講座538 腸内細菌2

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 過去10年間で腸内細菌叢領域は様々な知見がでてきております。健康や疾患との関連性も明らかになってきており、医学・医療分野での注目度も高まってます。


ゲノム解析技術の革新を背景に、2010年台前半から世界的に腸内細菌叢研究が活発化されました。

生活習慣に関する問診票に回答し、専用のキットを使って採取した糞便サンプルを郵送するだけの、手軽な腸内細菌叢検査サービスです。キットを返送いただいてから約4週間で結果が出ます。個人向けとして展開していましたが、医師から問い合わせをいただくことが増えたため、現在は医療機関にもサービスを提供しています。

腸内細菌では、ビフィズス菌や乳酸菌、酪酸菌、エクオール産生菌などの主要な細菌の割合、腸内細菌の多様性、細菌の構成比率などがあります。

これまでに蓄積した解析データから、機能性の消化管障害を有する人では健常な人と比べて腸内細菌叢のバランスが崩れており、検出される菌叢が大きく異なることがわかっているようです。具体的には、短鎖脂肪酸を産生する細菌が少ない、細菌の多様性を示すスコアが低い、ファーミキューテス門菌とバクテロイデーテス門菌の比率(FB比)が高いなどの違いが見つかります。菌叢のバランスが崩れている場合、プレバイオティクスやプロバイオティクスを取り入れてバランスを整えていくことで症状の改善につながることも期待できるようです。

腸内細菌叢との関連に関する研究が最も進んでいるのは、炎症性腸疾患(IBD)や過敏性腸症候群(IBS)、便秘、下痢などの下部消化管の疾患・症状です。そのほかに、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などの肝臓の疾患や関節リウマチなどの自己免疫疾患との関連も多く調べられています。エビデンスの集積が進めば、疾患の治療戦略の検討や予防を目的として、腸内細菌叢を解析するようになっていくものと期待されます。

腸内細菌叢は、抗菌薬をはじめとするさまざまな薬の影響を受けると考えられています。また逆に、腸内細菌叢のバランスが崩れていると、薬の効果や副作用の発現が減弱・増強される可能性があることもわかってきています。将来的に、投薬のベースとして腸内細菌叢を整えることが重要視されるようになれば、腸内細菌叢を解析する意義がより明確になるものと考えられます。


2022/08/26

健康講座537 2022-2023インフルエンザワクチン

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます

 近年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、季節性インフルエンザは影を潜めることになりました。しかし、2022-23シーズンはインフルエンザの流行が懸念されているようです。その理由として、北半球の流行予測をする指標となる南半球のオーストラリアにおいて、2022年4月中旬以降からインフルエンザの流行が報告されているからであす。そこで、「2022-23 シーズンの季節性インフルエンザワクチンの接種に関する日本ワクチン学会の見解」が公開されておりました。


 本見解では、2022-23シーズンのインフルエンザワクチン接種を強く推奨し、とくに接種が推奨される方に、確実にインフルエンザワクチンが接種可能な体制を早期に準備しておくことが重要と示しているようでございます。

2022-23シーズンのインフルエンザ流行の懸念

 2021-22シーズンのわが国のインフルエンザ流行状況と感染者は、報告総数は753人(2020-21シーズンは1,107人)でCOVID-19の流行以前と比べると明らかに流行の規模は小さいものの、2022-23シーズンではインフルエンザに対する感受性者のさらなる増加が危惧されるとともに、海外から日本への渡航制限解除の影響による感染者数の増加が懸念されるようです。

 今後、インフルエンザが3シーズンぶりに流行した場合、死亡者や重症者の増大、またCOVID-19と時期を同じくして流行することなどによって、医療負荷の増大が心配されるとしています。

 また、オーストラリアにおけるインフルエンザ流行状況(2022年6月5日現在)として、インフルエンザ様疾患の報告例が2022年3月以降、増加が報告され、4月中旬から確認されたインフルエンザの週ごとの報告数は、過去5年間の平均を超えている。また、5〜19歳の年齢層と5歳未満の子どもが最も高い報告率であることも示されています。

2022-23シーズンのインフルエンザワクチン接種について

 学会は「インフルエンザの罹患率や死亡率を低下させるため、生後6ヵ月以上のすべての人に対するインフルエンザワクチンの接種を推奨する」としています。

1)日本における2022-23シーズンのインフルエンザHAワクチン
 インフルエンザHAワクチンは、4価ワクチンであり、2021-22シーズンからA/H3N2株とB/ビクトリア系統株の2株が変更となった。
・A型株
 A/ビクトリア/1/2020(IVR−217)(H1N1)
 A/ダーウィン/9/2021(SAN−010)(H3N2)
・B型株
 B/プーケット/3073/2013(山形系統)
 B/オーストリア/1359417/2021(BVR−26)(ビクトリア系統)

2)特に接種が推奨される方
・定期接種対象者:65歳以上の方、60~64歳で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に障害があり身の回りの生活を極度に制限される方、60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方
・医療従事者、エッセンシャルワーカー:急性期後や長期療養施設のスタッフを含む医療従事者、薬局スタッフ、その他重要インフラの業務従事者の方
・インフルエンザの合併症のリスクが高い方:生後6ヵ月以上5歳未満の乳幼児、神経疾患のある子ども、妊娠中の方、その他特定の基礎疾患を持つ方

3)接種回数と接種間隔
・13歳以上の方は、原則1回接種。ただし、医師が特に必要と認める場合は、1〜4週の間隔で2回接種。
・生後6ヵ月以上13歳未満の小児は2〜4週の間隔で2回接種。ただし、世界保健機関(WHO)は、ワクチン(不活化ワクチンに限る)の用法において、9歳以上の小児および健康成人に対しては「1回注射」が適切である旨、見解を示し、米国予防接種諮問委員会(US-ACIP)も、9歳以上の者は「1回注射」とする旨を示している。何らかの事情で2回の接種機会が得られない場合でも少なくとも1回は接種し、未接種のまま、インフルエンザシーズンを迎えないことを推奨する。

ワクチンの有効性と安全性

1)有効性
 現行のインフルエンザワクチン製造において、インフルエンザウイルスの流行株とワクチン株の一致率は毎年異なるために、インフルエンザワクチン推定有効率において年次差がみられる。そのため、インフルエンザワクチンを接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではなく、インフルエンザの発病予防、発病後の重症化や死亡を予防することに関しては、一定の効果があるとされる。
(国内における研究報告)
・65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については34〜55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があった
・6歳未満の小児を対象とした2013/14〜2017/18シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は41〜63%と報告
・3歳未満の小児を対象とした2018/19〜2019/20シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は42〜62%と報告

2)安全性
 インフルエンザワクチン接種後には、注射部位の発赤、痛み、腫れなどの局所反応や、発熱、悪寒、頭痛、倦怠感、関節痛、筋肉痛などの全身反応を含む副反応が出現する可能性がある。これらの副反応は、通常、2〜3日以内に消失。また、重い副反応の報告がまれにあるが、報告された副反応の原因がワクチン接種によるものかどうかは、必ずしも明確ではない。インフルエンザワクチンの接種後に報告された副反応が疑われる症状などについては、順次評価が行われ公表される。

 日本ワクチン学会では、「今冬の国民の感染症対策と医療体制の維持のため、2022-23シーズンのインフルエンザワクチン接種について、強く推奨いたします」と提言し、「確実にインフルエンザワクチンが接種可能な体制を、早期に準備しておくことが重要」と記している。

以上抜粋引用となります。

参考

2022/08/24

健康講座536 腸内細菌

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 普段から野菜や魚、食物繊維を豊富に摂取している人の腸内では炎症を抑える働きを持つ細菌が豊富である一方で、ファストフード好きの人の腸内では炎症を促進する細菌が豊富である可能性が高いことが、食習慣と腸内細菌叢の関連について検討した研究から明らかになったようです。


 腸内には、さまざまな細菌などの微生物が群れ集まって生息している。この微生物の群集を腸内細菌叢(腸内フローラ)と呼ぶ。近年、腸内細菌が、代謝や栄養素の合成から免疫防御や脳の機能にいたるまで、人体の正常なプロセスに、重要な働きをしていることが明らかにされつつあるようです。

 この研究は、1,425人のオランダの成人〔炎症性腸疾患患者331人(クローン病患者205人、潰瘍性大腸炎患者126人)、過敏性腸症候群患者223人、健常者871人〕を対象に、173個に及ぶ食事因子と腸内細菌叢との関係を調査した。対象者の食習慣については食物摂取頻度調査で評価し、腸内細菌叢については対象者から提供された便検体を解析したようです。

 その結果、クローン病や潰瘍性大腸炎などの消化器疾患の有無にかかわらず、魚や植物由来の食品の摂取は一貫して抗炎症作用を有する腸内細菌と関連することが明らかになったようです。すなわち、野菜、果物、脂の多い魚、ナッツ類、食物繊維が豊富に含まれる穀類の摂取量が多い人の腸内では、短鎖脂肪酸を大量に作り出す細菌の濃度が全般的に高いことが判明したのです。短鎖脂肪酸は、腸内細菌が消化されない食物繊維を発酵させる際に産生される脂肪酸で、抗炎症作用があるということです。

 その一方で、こうした食事とは正反対のファストフード、すなわち肉やフライドポテト、加糖飲料、加工されたスナック類の摂取量が多い人では、食物繊維が不足しているため、短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌が少なく、炎症を促す腸内細菌が多く生息していることが分かったようです。

 これまで多くの研究で、地中海食や植物由来の食品を主体とした食事が、さまざまな疾患のリスクを低下させることが報告されているようです。今回の研究からは、こうした食事が腸内細菌叢に与える影響が、疾患リスクを低下させる要因の一つであることを裏付ける新たなエビデンスを得ることができたと説明されてます。

 なお、腸内細菌叢を構成する細菌バランスには、遺伝子や年齢、健康状態、薬剤の使用(特に抗菌薬)、ストレスなど、さまざまな要因が影響を与えると考えられているようです。成人の腸内細菌叢に最も強い影響を与える要因は食事と考えられます。日頃より、個々人のニーズに合わせて食品を選びながら、植物由来の食品を主体とする食事が勧められており、プロバイオティクスのサプリメントを摂取するよりも、まずは食事内容を重視すべきかもしれません。

 食事と疾患リスクの関連で腸内細菌叢が重要な因子となっていることを裏付けるエビデンスは増えつつあります。

原著

2022/08/22

健康講座535 2022-2023年 インフルエンザ

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。


 現在、わが国は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第7波の真っただ中でありますが、インフルエンザについては、国内でCOVID-19の流行が始まった2020年2月以降、患者報告数は急速に減少していました。しかしながら、2021年後半から2022年前半にかけて、北半球の多くの国ではインフルエンザの小ないし中規模の流行がみられていました。

1)2022-2023年シーズンは、インフルエンザの流行の可能性が大きい
 北半球冬季のインフルエンザ流行の予測をするうえで、南半球の状況は参考になるが2022年は4月後半から報告数が増加し、例年を超えるレベルの患者数となっており、医療の逼迫が問題となっている。今後、海外からの入国が緩和され人的交流が増加すれば、国内へウイルスも持ち込まれると考えられ、日本においても、今秋から冬には、同様の流行が起こる可能性がある。

 一方、過去2年間、国内での流行がなかったために、社会全体のインフルエンザに対する集団免疫が低下していると考えられる。そのため、一旦感染が起ると、とくに小児を中心に大きな流行となる恐れがある。

2)A(H3N2)香港型に注意
 オーストラリアで本年度に検出されたインフルエンザウイルスのうち、サブタイプが判明したものでは、約80%はA(H3N2)、約20%がA(H1N1)だった。そのため、今シーズンは、わが国でもA(H3N2)香港型の流行が主体となる可能性がある。

 そのため今季のA(H3N2)のワクチン株は、オーストラリアのDarwinで分離された、A/Darwin/9/2021 (H3N2)-like virus, clade 3C.2a1b.2a.2(2a.2)が採用された。

3)今季もインフルエンザワクチン接種を推奨
 今季に流行が予想されるA(H3N2)香港型に対するワクチンの発病防止効果は未知だが、発症してもワクチンによる一定の重症化防止効果は期待でき、欧州では65歳以上の高齢者においてA(H3N2)感染による入院防止率は37%であったと報告されている。

4)例年通りのインフルエンザ診療が必要
 今季、発熱患者では、ワクチン接種歴に関わらずCOVID-19とインフルエンザの鑑別が重要となり、また、両者の合併例も考えられる。したがって、外来診療では両方のウイルスを念頭にいれて、PCR、抗原検査、迅速診断などによる確定診断が必要となる。

 インフルエンザと診断されたときは、抗ウイルス薬による治療を検討することとなります。抗ウイルス薬は、インフルエンザの重症化、死亡率を抑制します。重症化のリスクのある人は当然治療の対象ですが、リスクを持たない人でも重症化することがあり、その予測は困難であります。
参考までに。

2022/08/19

健康講座534 インフルエンザワクチンとコロナワクチンの同時接種

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 これまで新型コロナワクチンの接種は他のワクチン接種と13日以上の間隔を空けて実施することとされていましたが、知見等の蓄積をふまえ、インフルエンザワクチンに関しては同時接種も可能とすることが、7月22日に開催された第33回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で了承されました。

各社のコロナワクチンとインフルワクチン同時接種の有効性・安全性

<同時接種の有効性>
ファイザー社・アストラゼネカ社:2回目接種において、ファイザー社またはアストラゼネカ社ワクチン単独接種と比べ、新型コロナウイルス抗スパイクIgG抗体価は有意差がなかった。さらにファイザー社ワクチンとの同時接種においてインフルエンザの一部の株に対するHI抗体価の上昇がみられた。
モデルナ社:追加接種において、インフルエンザワクチン単独またはモデルナ社ワクチン単独接種と比べて、インフルエンザHI抗体価、新型コロナウイルス抗スパイクIgG抗体価共に低下はなく、免疫干渉はないと報告された。
武田社:初回接種において、インフルエンザワクチン単独接種と比べて、インフルエンザHI抗体価は同程度に上昇した。また、両ワクチンの同時接種による新型コロナウイルス感染症発症予防効果は87.5%と、武田社ワクチン単独接種の89.8%と同程度であった。

<同時接種の安全性>
ファイザー社・アストラゼネカ社:観察期間を通じた全身副反応報告割合は非同時接種群と比較して、同時接種群でも同程度であり、同時接種での安全性の懸念は認められなかった。
モデルナ社:接種後21日間に報告された有害事象は同時接種群17.0%、モデルナ群14.4%、インフルエンザ群10.9%であり、同時接種での安全性の懸念は認められなかった。
武田社:接種後21日以内に報告された有害事象は同時接種群18.4%、ノババックス群17.6%、インフルエンザ群:14.5%で同時接種により安全性の懸念が増すことはなかった。

 米国ではインフルエンザワクチンを含めて、他のワクチンと新型コロナワクチンは同時接種可能とされており、2021年9月~2022年5月のデータにおけるmRNAワクチンの追加接種とインフルエンザワクチンの同時接種後7日間の全身反応の調整オッズ比は、mRNAワクチン追加接種の単独接種と比較し、ファイザー社ワクチンとの同時接種で1.08、モデルナ社ワクチンとの同時接種で1.11であったと報告されている。英国では2022年5月26日にインフルワクチンとコロナワクチンの同時接種は安全であるという基本方針が示されており、同会ではこれらの知見と諸外国の対応等考慮して、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンについては、間隔の規定を廃止し同時接種を認める一方、インフルエンザ以外のワクチンとの同時接種については、13日以上の間隔を開けることとし、引き続きエビデンスを収集しながら検討することとされた。

 なお、委員からは同時接種を積極的に推奨するのか? という質問が上がり、厚労省では、積極的に推奨するということではなく、1つの選択肢として同時接種も可能となるという位置づけと回答した。

「オミクロン株対応ワクチン」今秋以降に導入の方向で検討

 ファイザー社およびモデルナ社では、「オミクロン株対応ワクチン」の開発を進めており、ともにオミクロン株(BA.1)の成分を含んだワクチンの臨床試験結果を発表し、BA.1に対する中和抗体価が従来ワクチンと比較して優越性を示したことが報告されている。FDAでは製造販売業者に対して、オミクロン株(BA.4/5)の成分を含む2価の追加接種用ワクチンを開発するよう、COVID-19ワクチンを改良することを検討するよう勧告しており、これにより、改良されたワクチンが2022年秋の初めから中頃に利用できるようになる可能性がある。

 本邦でも「オミクロン株対応ワクチン」を予防接種に導入していく方向が了承され、「オミクロン株対応ワクチン」の構成(オミクロン株の成分のみを含んだ単価ワクチンとするか従来型ワクチンを含んだ2価ワクチンとするか、オミクロン株の構成亜系統[BA.1またはBA.4/5])について専門的に議論する場を設けることで一致した。

 なお、厚労省では同日7月22日付けで「オミクロン株に対応した新型コロナワクチンの接種体制確保について」と題した事務連絡を発出し、「オミクロン株対応ワクチン接種は、少なくとも新型コロナウイルス感染症にかかった場合の重症化リスクが高い高齢者等を対象とすることが考えられるが、今後得られるデータや諸外国の動向等を踏まえて、高齢者等以外の者も対象とする可能性があるため、現時点では、初回接種を完了した全ての住民を対象に実施することも想定して準備を進める」ことを要請している。

4回目接種対象者、医療従事者に拡大

 3回目接種から4ヵ月以上経過した60歳以上において、オミクロン株流行期におけるファイザー社ワクチン4回目接種による感染予防効果は、4回目接種後22~28日後には約50%であったが、50~56日後には約9%である一方、重症化予防効果は4回目接種後36~42日後においても77%であったと報告されている。また18歳以上の医療従事者を対象とした前向き臨床研究では、オミクロン株流行下においてファイザー社またはモデルナ社ワクチン4回目接種の感染予防効果は、3回目接種と比較してそれぞれ30.0%および10.8%であり、発症予防効果についてはそれぞれ43.1%および31.4%であったとの未査読の研究報告がある。

 これらいくつかの論文データからは、4回目接種の感染予防効果は限定的とのエビデンスに特段変わりはないものの、新規感染者が急速な増加傾向にあることから、重症化リスクの高い者が多数集まる医療機関・高齢者施設等において従事者を通じた集団感染が生じることを懸念し、60歳未満の医療機関・高齢者施設等の従事者に対する4回目接種を、予防接種法に基づく予防接種として位置付けることを了承した。

 同時接種可能とすることおよび4回目接種対象者の拡大については、同日公開された「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(8.2版)」にも反映されている。
参考

2022/08/17

健康講座533 新型 コ ロナ ウ イル ス感 染 症に 係 る医 療機 関 ・保 健 所か らの 証 明書 等 の 取得 に 対す る 配慮 に関 し て

みなさんどうもこんにちは小川糖尿病内科クリニックです。

以下、抜粋となりますが、何卒ご査収願います。

今般、新 型 コロ ナウ イ ルス 感 染症 の急 拡 大 による医 療の ひ っ迫 を 回 避し 、 医療 機 関や 保健 所 が重 症 化リ スク の ある 方 への 対応 を 確実 に 行 うこ と がで き るよ う、 後 藤茂 之 厚生 労働 大 臣よ り 周知 方依頼 が あり まし た 。

 本 件 は、 職 場や 学校 等 にお い て従 業員 や 生徒 等 が新 型コ ロ ナウ イ ル ス感 染 症の 患 者又 は濃 厚 接触 者 とな った 際 、療 養 又は 待機 の 開始 ・ 終 了時 に 、医 療 機関 や保 健 所が 発 行す る検 査 の結 果 を証 明す る 書類 等 は 求め ら れて い ない こと に つい て 、改 めて 情 報提 供 する もの で す。 また、や む を得 ず証 明 を求 め る必 要が あ る場 合 にあ って は 、医 療 機 関や 保 健所 が 発行 する 書 類で は なく 、従 業 員等 が 自ら 撮影 し た検 査 の 結果 を 示す 画 像等 や、 自 ら My HER-SYS で 取 得し た 療養 証 明書 ( ログ イ ン後 、 ただ ち に取 得可 能 。別 添 参照 )等 に より 、 確認 を行 う こと と さ れて お りま す 。

(参考) 病床、診療・検査医療機関のひっ迫回避に向けた対応 ( 2022 年7月 2 9 日新型コロナウイルス感染症対策本部 )

https://corona.go.jp/omicron_ba5/pdf/omicron_ba5_kaihinimuketataiou_20220729.pdf


一 従業員又は生徒等(以下、「従業員等」という。)が新型コロナウイルス感染 症に感染し、自宅等で療養を開始する際、当該従業員等から、医療機関や保健 所が発行する検査の結果を証明する書類を求めないこと。 やむを得ず証明を求める必要がある場合であっても、真に必要のない限り、 医療機関や保健所が発行する書類ではなく、従業員等が自ら撮影した検査の 結果を示す画像等や、自ら My HER-SYS で取得した療養証明書(ログイン後、 ただちに取得可能。別添参照)等により、確認を行うこと。 二 従業員等が新型コロナウイルス感染症に感染し、療養期間(※)が経過した 後に、改めて検査を受ける必要はないこととされていることを踏まえ、当該従 業員等が職場や学校等に復帰する場合には、検査陰性の証明書等の提出を求 めないこと。 ※ 有症状の場合は 10 日間、無症状の場合は7日間。 三 従業員等が保健所から新型コロナウイルス感染症の患者の濃厚接触者と認 定され、待機期間が経過した後に、職場又は学校等に復帰する場合には、検査 陰性の証明書等の提出を求めないこと。 ただし、当該従業員等が抗原定性検査キットによる検査により待機期間を短 縮する場合に、その検査結果を画像等で確認することは差し支えない。 四 従業員等以外の者(顧客や来訪者などを想定)に対して、新型コロナウイル ス感染症の感染の有無を確認する必要がある場合には、可能な限り、自ら My HER-SYS で取得した療養証明書(感染していることを確認する場合に限る)や 抗原定性検査キットにより自ら検査した結果等で確認を求めることとし、真 に必要のない限り、医療機関や保健所から発行された療養証明書(紙)の提出 を求めないこと。 ※ 今般の急速な感染拡大の中、当面の間、保健所等における療養証明書の申請 の受付を一時中止し、地域の感染状況に応じて業務を再開することとして差 し支えない取扱としている。

2022/08/15

健康講座532 大腸劣化と腸内細菌

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

『大腸劣化』を防ぐ短鎖脂肪酸とうものがあります。

 大腸劣化とは、『大腸に多く存在する腸内フローラが、偏った食生活やストレス・睡眠不足などによって老廃物や有害物質が作られることで正常な機能が保てなくなり、最終的には大腸がんなどの大腸疾患のみならず全身の健康リスクにまで発展すること』を意味するそうです。

 腸内フローラには数千種類以上、数百兆個以上の種々の菌が存在し、善玉菌優位のバランス(善玉菌、悪玉菌、日和見菌それぞれの比率が2:1:7の状態)保持が必要とされるそうです。しかし、無理なダイエットによる炭水化物制限による食物繊維不足、過度な動物性タンパク質摂取や食の欧米化進展という近年の日本人の偏った食文化が、悪玉菌へ餌を供給するとともに悪玉菌優位の環境をもたらし、最終的には腸内劣化により大腸がんなどの発症を招いてしまうのです。

 回避する方法として、善玉菌の餌となる短鎖脂肪酸を増やすコツとそのメカニズムがあります。短鎖脂肪酸とは、ビフィズス菌や酪酸菌が水溶性食物繊維などを食べた際に産生される物質で、酢酸や酪酸などを示し、腸内環境を弱酸性にして善玉菌が発育しやすい環境へ整えるものです。ビフィズス菌から産生される酢酸には整腸作用、免疫力向上、血中コレステロール低下などの作用が期待でき、酪酸菌から産生される酪酸には、大腸のバリア機能強化や、大腸を動かすエネルギーの産生作用があります。善玉菌の餌となるオリゴ糖、イヌリン、大麦や海藻類を積極的に取ることが重要であり、穀物摂取量低下による食物繊維不足は注意です。

 短鎖脂肪酸の増加には食物繊維の摂取が有用であることについて、臨床試験(水溶性食物繊維を多く含むスーパー大麦グラノーラを1ヵ月間、毎日摂取する試験)があり、「排便量や便の性状だけではなく、肌の状態や睡眠状態の改善もみられたようです。腸内環境の整備が整腸作用だけに留まらず、全身の健康に貢献することを示唆する結果でした。

 日本人の腸内フローラについて、キット検査結果を集計したところ、40代以降の4人に1人は大腸劣化の疑いがあることが明らかとなったようです。ただし、腸内フローラの多様性については、20代で低かったらしく、加齢だけが大腸劣化の原因ではないことを明らかにされました。

 腸内細菌叢と体臭の関係につい、人間が放出するガスには皮膚ガスと呼ばれるものがあり、判明しているだけでも300種を超えるのです。皮膚ガスの放散経路には、「表面反応由来」「皮膚腺由来」「血液由来」の3経路があり、表面反応由来の加齢臭は皮脂の酸化が原因のため、洗って落とすことができます。しかし、血液由来のダイエット臭(アセトン)や疲労臭(アンモニア)は洗っても落とすことができないようです。

 では、どのように血液由来の臭いを減らせば良いのだろうか? 疲労臭の主成分アンモニアの血中濃度は、腸内細菌の改善によって減らせることが明らかになっているのです。そこで、ラクチュロース(牛乳に含まれる乳糖を原料として作られる二糖類。大腸に到達後、ビフィズス菌の餌になる)の摂取試験を行い、ビフィズス菌数の増加に伴う皮膚からのアンモニア放散量の減少を示唆したという報告も出ています。

2022/08/12

健康講座531 帯状疱疹ワクチン

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 ワクチンで予防できる疾患として、「水痘(水ぼうそう)と帯状疱疹」があります。

水痘は、時に重症化し、しかも空気感染によって容易に伝播する感染症です。妊婦にとっては最も避けたい感染症の1つであります。また、同じ水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によって発症する帯状疱疹は、神経痛により生活の質を大きく低下させてしまうのです。

このような水痘・帯状疱疹を予防するには、ワクチンが有効かつ重要であります。現在、水痘・帯状疱疹ウイルスに対してわが国で使用できるワクチンは2種類あります。従来の水痘生ワクチンと、2020年1月に発売された、帯状疱疹予防に特化した不活化ワクチンである。

水痘と帯状疱疹の特徴と疫学、そしてワクチンの活用法と注意点について。

水痘

感染経路:空気感染、飛沫感染

潜伏期:約14日間

周囲に感染させうる期間:水疱が痂疲化(かさぶた)するまで

学校保健法:第2種(出席停止期間:すべての発しんがかさぶたになるまで)

感染症法:5類(入院例に限る)


全身性の水疱性発疹と発熱を来たし、多くは軽症で自然に軽快する。しかし成人では、肺炎などの皮膚外病変により重症化しやすく、成人の死亡率は小児の約8倍にもなる2)。成人の中でも最もハイリスクなのは、妊婦である。妊娠第1・2三半期の初感染では先天性水痘症候群(胎児水痘症候群)のリスクとなり、妊娠第3三半期の初感染では10~20%で水痘肺炎を併発し、時に致死的となる3)。さらに分娩5日前から48時間後では重篤な新生児水痘を生じうる3)。そのため、水痘未感染の妊婦への感染予防は、極めて重要である。しかしながら、水痘は感染が広がりやすく、1人の感染者から平均8~10人に感染させうる。家庭や職場での空気感染対策は困難であり、ワクチン接種は重要な感染予防策である。


水痘の罹患率は、ワクチンの定期接種化により激減している。ワクチンギャップや、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)への曝露機会の減少により、水痘の抗体を獲得しないまま成人する層が一定数いると思われる。現在、水痘の報告者数のほとんどは小児だが、今後は成人の水痘例が増加するかもしれない。


帯状疱疹

感染経路:接触感染、空気感染

周囲に感染させうる期間:皮疹が痂疲化するまで

水痘・帯状疱疹ウイルスは水痘罹患後に仙髄・腰髄の後根神経節に潜伏感染し、宿主の加齢や免疫力低下に伴う細胞性免疫の低下により再活性化し、帯状疱疹を起こす。発症すると皮膚分節に沿ったチクチクとした痛みに続いて、水疱を伴う皮疹を生じる。多くの場合は片側性であるが、免疫抑制者では全身に広がる汎発性帯状疱疹となりうる。皮疹は7~15日前後で痂疲化し、感染性がなくなる。合併症としては帯状疱疹後神経痛(Post herpetic neuralgia:PNH)が最も多く、ほかにラムゼイ・ハント症候群、脊髄炎、遅発性の脳梗塞などがある。


帯状疱疹は、約3人に1人が一生のうちに1度以上経験するとされる5)。帯状疱疹の罹患率は4~10人/1,000人年、PHNは2.1/1,000人で、いずれも年齢が上がるにつれて罹患率も上がる6)

帯状疱疹の罹患率は、水痘ワクチン導入後に増えており7,8)、水痘の流行規模の縮小により、自然感染によるブースターの機会が減ったことが原因ではないかと考えられている。実際に、水痘を発症した小児と暮らす成人では、10~20年後に帯状疱疹が発症するリスクは約30%減ると報告されている9)


水痘の予防には水痘生ワクチンが、帯状疱疹の予防には、水痘生ワクチンと帯状疱疹不活化ワクチンの2種類が使用される。


(1)効果

発症予防効果は、1回接種で約80%、2回接種で93%である。重症化は、1回接種で約99%、2回接種で100%予防する1)

(2)副反応

ワクチン接種により一般的な副反応のほか、水痘ワクチンに特異的な副反応としては、接種後1~3週間後に発熱、3~5%に水痘様発疹がみられることがある。

(3)禁忌

妊婦、明らかな免疫抑制状態にある人、このワクチンによる重度のアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を呈した既往のある人

(4)注意事項

生ワクチン接種後は、2ヵ月間は妊娠を避ける。

2種類のワクチンを使用することができる。発症予防効果は不活化ワクチンでより高い。


以下、不活化ワクチンについて。

(1)効果

帯状疱疹の発症予防効果は、水痘生ワクチンより不活化ワクチンで高いことが知られている。不活化ワクチン2回接種による帯状疱疹の発症予防効果は50歳以上で97.2%、70歳以上で89.8%、帯状疱疹後神経痛は50歳以上で100%、70歳以上で85.5%である10)。一方の水痘生ワクチンでは、50歳以上における帯状疱疹発症抑制率は51%、帯状疱疹後神経痛の減少率は66%である 。ただし、いずれも免疫原性の持続が証明されているのは10年未満11,12)であり、今後は追加接種などが議論になる。

(2)副作用

不活化ワクチンの方が、生ワクチンよりも副作用の頻度が高い。生ワクチンの臨床試験の結果では、局所性(注射部位)の副反応が80.8%に認められ、主なものは疼痛(78.0%)、発赤(38.1%)、腫脹(25.9%)であった。全身性の副反応は64.8%に認められ、主なものは筋肉痛(40.0%)、疲労(38.9%)、頭痛(32.6%)であった。他のワクチンに比較して局所性副反応の頻度は高いが、いずれも3日前後で消失することがわかっている10)

(3)禁忌

両者とも、このワクチンによる重度のアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を呈した既往のある人。水痘生ワクチンでは妊婦、明らかな免疫抑制状態にある人。

(4)対象

対象は慢性疾患をもつ50歳以上の成人で、とくに慢性腎不全、糖尿病、関節リウマチ、慢性呼吸器疾患をもつ人に推奨される13)

日常診療で役立つ接種ポイント

1)妊娠を希望する女性に対する、水痘ワクチン

先に述べたように、妊婦の水痘は重症化のリスクが高い。妊娠中の水痘は何としても防ぎたい。水痘の罹患歴がなく、かつ水痘ワクチンの接種歴のない女性が妊娠を希望する際には、水痘ワクチンを接種しておきたい。また、接種後2ヵ月間は妊娠を避ける必要もある。

2)50歳以上に対する帯状疱疹予防のワクチン

水痘の罹患歴がある50歳以上の成人には、帯状疱疹不活化ワクチンの2回接種もしくは水痘ワクチンの1回接種を勧めたい(免疫抑制者など生ワクチンが禁忌とされる場合には、帯状疱疹不活化ワクチンを選択する)。帯状疱疹は高齢者ほどリスクが高く、帯状疱疹後神経痛を発症すると著明にQOLが低下する。なお、帯状疱疹は約6.4%に再発が認められる14)ため、帯状疱疹の罹患歴がある場合の再発予防としても有効である。


小児における水痘ワクチンの定期接種化により、水痘の発症者は今後も減り続けるだろう。一方で、水痘の罹患歴のある者のブースター機会も減るため、今後しばらく帯状疱疹の罹患率は上昇することが予測される。水痘は非常に感染力が強く、ワクチン接種による予防が重要である。妊婦の水痘を予防し、帯状疱疹後神経痛を予防するために、妊娠を希望する女性、また、50歳以上の高齢者へのワクチン接種を忘れないようにしたいです。


水痘ワクチンについて

ワクチンの種類

生ワクチン
(従来の水痘ワクチン)

不活化ワクチン

当院での接種


当院で接種できます
予約は受付にて

×
当院では接種
できません

商品名

乾燥弱毒性
生水痘ワクチン

シングリックス筋注用

定期/任意

任意

任意

接種回数

1

2

摂取量

1回 0.5ml

1回 0.5ml

接種方法

皮下注射

筋肉内注射

摂取間隔

 

2か月以上あけて
2
回目の接種
6か月以内)

費用

16000

118,000円~


参考

こどもとおとなのワクチンサイト

国立成育医療センター プレコンセプションケアセンター



2022/08/10

健康講座530 加工食品の悪影響対策の兆し

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 非健康的な食品とされることの多いソーセージやベーコン、ハムなどの加工肉の体への影響も気になるという人に研究結果が発表されました。日本を含む東アジアでよく目にするタデ科植物の「イタドリ」が、加工肉の保存目的で使われている添加剤の健康への悪影響を抑制できるかもしれないということでございます。

 イタドリは、英国では生態系を乱す外来種として扱われており、成長が速くて庭を侵食したりするため、忌避されがちな植物だそうです。その“嫌われ者”のイタドリが、加工肉に添加されている亜硝酸塩による健康への悪影響を抑制してくれる可能性のあることが分かったのです。なお、亜硝酸塩を摂取すると体内で、N-ニトロソ化合物が生成されるようです。N-ニトロソ化合物は発がん性物質の一つとされており、亜硝酸塩を多く含む食事が、大腸がんのリスクの高さと関連する可能性を指摘した研究結果が報告されているのです。

 イタドリやローズマリー、緑茶をはじめとする植物や果物を材料として、レスベラトロールなどの成分を抽出し、抗菌活性を持つと期待される食品添加剤を作成しました。その添加剤を、従来の製法で作られた加工肉に加えることで、ヒトへの影響がどう変化するかを検討したのです。

 研究対象は健康な成人63人(年齢25.4±8.5歳、BMI22.3±2.1、肉摂取量254±38g/日)。通常の製法で作られた加工肉を摂取する条件や、イタドリなどから新たに作成した添加剤を追加した加工肉を摂取する条件、亜硝酸塩を除去した加工肉を摂取する条件など、いくつかの異なる条件設定の下、それぞれ300gの肉を2週間摂取してもらい、糞便中のN-ニトロソ化合物レベルを比較した。

 その結果、イタドリなどから作成した添加剤を用いることで、加工肉を食べても糞便中のN-ニトロソ化合物レベルが著しく低くなることが明らかになったのでございます。加工肉摂取に伴い体内で生成され、発がんリスクに影響を及ぼす可能性のある化合物が、天然の添加物を用いることで減少することを示しているかもしれません。

 亜硝酸塩が除去されていない加工肉を食べるという条件設定でも、天然の添加物は一定の保護効果を発揮するようでございます。この結果は、防腐剤として使われている亜硝酸塩を完全に除去することができない食品でも、天然の添加物を使用することで亜硝酸塩の潜在的な悪影響を部分的に抑制できることを示唆しています。

原著

2022/08/08

健康講座529 コーヒーとコレステロールの一研究結果

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 「コーヒーは身体に良い」という論文報告が散見されますが、コーヒー豆に含まれるジテルペン(とくにカフェストール、カーウェオール)が血清コレステロールを上昇させてしまうという報告1)もあるようです。しかしながらですよ、このジテルペンの影響はコーヒーの抽出方法によって異なるようです。そこで今回、ノルウェー・トロムソ大学がコーヒーの抽出方法、なかでも研究数の少ないエスプレッソコーヒー(短時間で高圧抽出)と血清総コレステロール(S-TC:serum cholesterol)との関連性を調査したようです。その結果、エスプレッソコーヒーの消費量は、S-TCの増加と関連しており、女性と比較して男性のほうが有意に強い関連が示されたようです。また、ボイルド(サイフォン式など)/プランジャーコーヒー(フレンチプレスなど)を摂取したの場合は男女ともにS-TCが増加し以前の研究で示された結果と同様だったが、フィルターろ過コーヒーに至っては女性でS-TCがわずかに増加したことが示されたようです。

 研究者らは、ノルウェー北部で行われた横断研究であるトロムソ研究第7回調査(n=2万1,083、40歳以上[平均年齢:56.4歳])の人口データを使用。エスプレッソコーヒーの消費量とS-TCの関連を調査し、性別とコーヒー消費量の関連などを評価しました。質問ではコーヒーの抽出方法を「フィルターコーヒー」「ボイルド/フレンチプランジャーコーヒー(粗挽きコーヒー)」「インスタントコーヒー」「エスプレッソベースのコーヒー(コーヒーマシン、カプセルなど)」の4種類とし、1日の消費量に応じて、対象者をカップ0杯、1〜2杯、3〜5杯、6杯以上にグループ分けしたものです。


 主な結果は以下のとおりでございます。

・エスプレッソの摂取量が1日あたりカップ0杯の参加者と比較して、毎日カップ3~5杯飲む人は、S-TC増加と有意に関連しており、女性で0.09mmol/L(95%信頼区間[CI]:0.01~0.17)、男性で0.16mmol/L(95%CI:0.07~0.24)だった。
・ボイルド/プランジャーコーヒーについても1日あたりカップ0杯の人と比較して、毎日カップ6杯以上飲んだ場合は、S-TCが増加し、女性で0.30mmol/L(95%CI:0.13~0.48)、男性で0.23mmol/L(95%CI:0.08~0.38)だった。
・フィルターろ過のコーヒーを毎日カップ6杯以上の飲んだ場合のS-TCは、女性で0.11mmol/L(95%CI:0.03~0.19)高くなるのに対し、男性では関連性がみられなかった。
・インスタントコーヒーの消費量に有意な線形傾向があったが、飲んでいない参加者を除外した場合、用量反応関係は示されなかった。
・ボイルドまたはプランジャーコーヒーを除くすべてのコーヒー抽出型で性差が有意にみられた。

 なお、エスプレッソコーヒーのようにノンフィルターコーヒーではLDLコレステロールを含む成分なども取り除かれていないことから、1日あたりカップ9杯以上を摂取すると心血管疾患(CVD)による死亡リスクが最大25%増加すると、他研究2)より報告されているようです。


原著

2022/08/05

健康講座528 未成年においてのGLP-1受容体作動薬デュラグルチド

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 0~18歳の2型糖尿病において、GLP-1受容体作動薬デュラグルチドの週1回投与(0.75mgまたは1.5mg)は、メトホルミン服用や基礎インスリンの使用を問わず、26週にわたる血糖コントロールの改善においてプラセボよりも優れることが、米国・ピッツバーグ大学による検討で示されました。BMIへの影響は認められなかったようです。

以下結果をまとめますと、


デュラグルチド0.75mg、1.5mgを週1回投与

 研究グループは、10歳以上18歳未満の2型糖尿病で、BMIが85パーセンタイル超、生活習慣の改善のみ、もしくはメトホルミン治療(基礎インスリン併用または非併用)を受ける154例を対象に、26週にわたる二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。

 被験者を無作為に1対1対1の割合で3群に割り付け、それぞれプラセボ、デュラグルチド0.75mg、デュラグルチド1.5mgを週1回皮下注射で投与した。被験者はその後26週の非盲検の延長試験に組み込まれ、プラセボ群だった被験者に対し、デュラグルチド(0.75mg、週1回)を26週間皮下注射で投与した。

 主要エンドポイントは、ベースラインから26週までの糖化ヘモグロビン値の変化だった。副次エンドポイントは、糖化ヘモグロビン値7.0%未満達成、および空腹時血糖値とBMIのベースラインからの変化など。安全性についても評価が行われた。

糖化ヘモグロビン値7.0%未満、プラセボ群14%に対しデュラグルチド群51%

 計154例が無作為化を受けた。26週時点の平均糖化ヘモグロビン値は、プラセボ群が0.6ポイント上昇したのに対し、デュラグルチド群では、0.75mg群で0.6ポイント、1.5mg群で0.9ポイント、いずれも低下した(対プラセボ群のp<0.001)。

 また26週時点で、糖化ヘモグロビン値7.0%未満を達成した患者の割合は、プラセボ群14%に対しデュラグルチド群では51%と有意に高率だった(p<0.001)。

 空腹時血糖値も、プラセボ群で上昇(17.1mg/dL)したのに対し、デュラグルチド群では低下が認められた(-18.9mg/dL、p<0.001)。一方でBMIについては、両群間で差は認められなかった(プラセボ群0.0、デュラグルチド統合群-0.1、p=0.55)。

 有害事象は、胃腸有害イベントの発生頻度が最も多く、26週にわたってデュラグルチド群でプラセボ群よりも高率に認められた。

 以上より、デュラグルチドに関する安全性プロファイルは、成人で報告されたものと一致していたと考えられます。

参考までに。

原著

2022/08/03

健康講座527 ストレスと免疫

みなさんどうもこんにちは。

OGDMCLです。

 ストレスは、免疫システムを弱めてさまざまな疾患を引き起こす可能性のあることが、米南カリフォルニア大学の研究で示唆されました。衝撃的な出来事や仕事の重圧、日々のストレスや不当な扱いなどの経験は、免疫システムの老化スピードを速めることが示されたとのことです。

 免疫機能は加齢に伴い大きく低下し、老朽化した白血球が増える一方で、感染と闘える新しい白血球の数はわずかとなるようです。こうした現象は、「免疫老化」と呼ばれているそうです。免疫老化はがんや心血管疾患、肺炎の発症リスクを高めるだけでなく、ワクチンの有効性の低下や器官系の老化とも関連するとのことでございます。しかし、同じ年齢の人でも健康状態に大きな差があるのは、ストレスと免疫システムの老化との関連から説明できるのではないかと考え、今回の研究を実施したとのことです。

 まず、研究対象とした50歳以上の男女5,744人に、ストレスフルな出来事や慢性的なストレス、日常的あるいはこれまでに経験した不当な扱いなどの社会的ストレスを評価する質問票に回答してもらいました。次に、対象者から血液サンプルを採取し、フローサイトメトリーと呼ばれる手法で、抗原に曝されたことのないナイーブT細胞と最終分化したT細胞の割合など、免疫システムの老化について分析しました。

 その結果、ストレススコアの高い人では、抗原からの刺激を受けてすぐに活性化するナイーブT細胞が少なく、最終分化したT細胞が多いことが示され、免疫システムの老化が進んでいることが明らかになったようです。こうした関連は、教育や喫煙、飲酒、体重、人種あるいは民族を調整した後も認められました。

 免疫細胞であるT細胞は胸腺で作られるのですが、その産生量は、胸腺の組織が加齢により縮んで脂肪組織に置き換わるに伴い減っていくようです。過去の研究では、胸腺のこのような老化は、質の悪い食生活や運動量の少なさといった、社会的ストレスと関連する生活因子の影響により加速することが示唆されています。今回の研究では、質の悪い食生活と低運動量を統計的に調整すると、ストレスと免疫老化の加速の関連はそれほど強くなかったということでございます。多くのストレスを抱えている人では、食事の質や運動量が低下しがちです。このことは、これらの人で免疫老化が進んでいる理由の一つになるのではないかと推測されます。

 免疫システムを弱める他の要因として考えられるのは、高頻度に生じる感染症の一つであるサイトメガロウイルス(CMV)感染症だそうです。先行研究では、社会的ストレスがCMVの活性化を惹起し、それに応答するために免疫システムが多くの資源を注ぎ込んで、T細胞を産生せざるを得ない状態になることが示唆されているのです。このようにして産生されたT細胞の一部は、機能しなくなった古い細胞として残るのだということです。

 今回の研究では、CMVを抑制することでストレスとT細胞の状態との関連が減弱することが示されたようです。このことから、慢性的なストレスによってCMVの再活性化が日常的に起こるようになり、免疫システムの老化が加速するという経路も考えられます。CMVワクチンを開発することで、免疫システムの老化を抑えることができる可能性があるとの見解を示しているようです。


原著

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...