2021/12/31

健康講座428 便と睡眠 

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 便秘の症状に睡眠の質が影響している可能性を示す研究結果が報告されました。愛知医科大学消化管内科の解析結果であり、「Journal of Neurogastroenterology and Motility」に掲載された内容でございます。


 便秘の一部には重大な器質性の疾患が隠れていることもあるが、大半は機能性の便秘であり症状のコントロールが治療目的となるのです。そのような機能性便秘は、食事や運動、睡眠などの生活習慣により症状が変化しやすいです。これらの因子はいずれも概日リズム(1日24時間周期の生理活動)を変動させて、排便の回数や便の性状などに影響を及ぼします。ただし、食事や運動と便秘の関連を個々に検討した研究はありますが、睡眠と便秘、および生活習慣全般との関連を検討した研究は多くないようです。


 今回、1万人に「自分は便秘だと思うか」という質問をして、「はい」と回答した20~69歳の成人4,908人から、器質性便秘や二次性便秘の患者を除外。その上で、性別、年齢、居住地域を全国調査のデータにマッチさせた3,000人を抽出し解析対象としました。このうち、「よく眠れているか」との質問に1,269人(42.3%)が「はい」と回答し、1,731人(57.7%)は「いいえ」と回答したようです。

 主要評価項目であるブリストル便形状スケール(BSFS)は、睡眠良好群と不良群との間に有意な差が認められました。具体的には、BSFSのタイプ4(滑らかで柔らかい標準的な便)の割合は睡眠良好群の方が有意に高く(P=0.001)、BSFSタイプ1(コロコロした固い便)やタイプ2(ゴツゴツした固い便)の割合は睡眠不良群の方が多かったのです

 二次評価項目として設定されていた、過敏性腸症候群(IBS)の重症度(IBS-SI-J)、IBS関連QOL尺度(IBS-QOL-J)、うつレベル(HADS)なども全て、睡眠不良群の方が状態の悪化を示しており、有意差が認められました。また、排便回数、腹痛、残便感などの排便に関連する症状の多くが睡眠不良群で有意に多く見られました。喫煙や運動不足、朝食欠食、間食、就寝前の摂食、体重増加など、非健康的な生活習慣についても、睡眠不良群の方が有意に多く認められたのです。

 これらの結果を基に、便秘と睡眠障害、生活習慣とが相互に関連しているという仮説を支持する結果が得られました。便秘や睡眠の問題を抱えている人のQOL向上には、全般的な生活習慣も含めた多因子への介入が必要と考えられそうです。

原著

2021/12/30

健康講座427 睡眠習慣と心疾患

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 夜10~11時の間に眠りに就く人は心疾患のリスクが低いというデータが報告されたようです。英エクセター大学の研究によるもので「European Heart Journal ― Digital Health」に論文が掲載されました。


 概日リズム、つまり体内時計の変化がキーワードになりそうです。概日リズムは毎日の生理学的活動リズムを制御しており、それが乱れた場合の影響は広範囲に及び、心血管系を含むさまざまな身体的・精神的疾患のリスクが高まるというものです。概日リズムは毎朝、光に当たることでリセットされ、入眠時刻が遅い人は起床時刻も遅く、そのリセットのタイミングを逃してしまう可能性があるようです。それが長期間続いた場合、健康への実害が生じるのではないかと推察されております。

 本研究のデザインは、入眠時刻が遅いことが心疾患のリスク因子であることを証明ではなく、その可能性を示したにとどまるようです。概日リズムの乱れが、肥満や糖尿病、高血圧、心血管疾患、さらにはがんなどの疾患リスクと関連していることを示した研究結果が増えてきているのも事実です。

 研究の対象は、英国の大規模ヘルスケア情報データベース「UKバイオバンク」の登録者のうち、7日間にわたる入眠・起床時間のデータのある8万8,026人(平均年齢61.43±7.8歳、男性41.6%)。入眠・起床時刻は手首に装着する加速度センサーで判定されたものです。

 平均5.7±0.49年の追跡期間中に3,172件の心血管疾患(CVD)イベントが記録されていた。年齢と性別を調整後、午後10時からの1時間に入眠していた群のCVDイベントリスクが最も低いことが分かったのです。調整因子として既知のCVDリスク因子、睡眠時間やその不規則性を追加してもこの関連の有意性は保たれていたのでございます。

 具体的には、入眠時刻が午後10時台の群を基準として、午後10時前の群のCVDイベントのハザード比(HR)は1.24(95%信頼区間1.10~1.39、P<0.005)、午後11時台の群はHR1.12(同1.01~1.25、P=0.04)、0時以降の群はHR1.25(同1.02~1.52、P=0.03)であり、いずれも有意にリスクが高かったのです。性別に見ると、男性では入眠時刻が午後11以降の場合のリスク上昇は有意でなく、午後10時前の場合のみ有意でした。女性では入眠時刻が午後11時台の場合は有意性が消失し、その他のカテゴリーは有意性が維持されていました。

 入眠時刻とCVDイベントリスクとの有意な関連の存在を示しているが、この結果のみに基づいて一般の人々に入眠時刻の推奨をすることは時期尚早かもしれません。その上で、朝の光に当たることで概日リズムがリセットされることに関してはエビデンスがあるため、睡眠習慣を整えることには健康上のメリットがあると考えられます。

 睡眠習慣を整える具体的な方法として、適切な時刻に入眠して朝の光を浴びることのできる時刻に起床すること、夜遅い時間帯にはカフェインやブルーライトを避けること、午後4時以降には昼寝をしないこと、寝室は睡眠を取るために利用し他の目的には使わないこと、眠たくなってから床に就くことなどが、エビデンスに基づく推奨となります。

 

2021/12/29

健康講座426 げっぷの研究

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 成人の曖気(げっぷ)に関する初の疫学調査の結果が報告されたようです。大阪市立大学大学院医学系研究科消化器内科研究によるもので、げっぷの頻度が不安・うつや睡眠障害のレベルと有意に関連することなどが明らかになったとのことでございます。


 げっぷは胃や食道のガスが排出される生理的な現象で、それ自体は何かの疾患に特異的な症状ではないですが、逆流性食道炎や機能性ディスペプシア(FD)などでは、げっぷの回数が増加することが報告されています。

 胃食道逆流症の症状評価のための質問票にある「げっぷの頻度は?」との質問に対して、「全くない」と回答した場合は0点、「まれに」は1点、「時々」は2点、「しばしば」は3点、「いつも」は4点とし、3点以上を臨床的に無視できないげっぷ(clinically significant belching;CSB)と定義したようです。すると、調査対象者1,998人のうち121人(6.1%)がこれに該当しました。

 CSBの該当者と非該当者で比較すると、年齢、性別、BMI、ウエスト周囲長、喫煙・飲酒習慣に有意差はなかったようです。その一方、逆流性食道炎の有病率はCSB群8.3%、非CSB群13.6%、FDの有病率は同順に27.3%、10.4%であり、CSB群ではFDが多く、有意差が認められました(P<0.001)。胸やけの症状を訴える患者の割合は、CSB群10.7%、非CSB群3.1%で、CSB群に多かったのです(P<0.001)。

 また、CSB群は不安やうつ、睡眠障害のレベルが高いことが分かったのでございます。具体的には、HADSという21点満点の指標で評価した不安・うつレベルは、非CSB群が6.8±5.5点に対してCSB群は10.1±6.2点と有意に高かったのです。同様に、アテネ不眠尺度(AIS)という24点満点の指標で評価した睡眠障害のレベルは、非CSB群が3.5±3.1点に対してCSB群は5.2±3.3点と有意に高かったです(いずれもP<0.001)。

 ロジスティック回帰分析の結果、CSBと有意に関連する因子として、胸やけ〔オッズ比(OR)2.07(95%信頼区間1.05~4.09)〕、FD〔OR2.12(同1.33~3.36)〕とともに、HADSスコア8点以上〔OR2.29(同1.51~3.45)〕とAISスコア6点以上〔OR1.73(同1.14~2.61)〕が抽出されました。

 げっぷの頻度別に解析すると、「まれに」および「時々」の場合は、性別が男性であることも有意な関連因子として抽出されまし7た。この点については、男性には摂食速度が速い人が多く食事中に空気を飲み込みやすい可能性があることや、アルコールや炭酸飲料の摂取量が多いこと、および、げっぷをすることの抵抗感が少ないことなどの影響ではないかと考察されています。

 参考にしてください。

原著

2021/12/28

健康講座425 若年性大腸がんとビタミンD

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 ビタミンDが豊富な食品が、若い人たちを大腸がんから守ってくれる可能性のあることが報告されました。米ダナファーバーがん研究所の研究結果であり、ビタミンD欠乏症は近年、着実に増加してきているようです。それが若い人たちの大腸がん増加につながっているのではないかと考えられるとのことです。

 米国では、50歳未満で発症する若年性大腸がんの増加が続いています。この傾向は、魚、きのこ、卵、牛乳などのビタミンDが豊富な食品の摂取量低下傾向と一致しているようでございます。また、ビタミンD摂取量と大腸がんによる死亡リスクに関連があるとする報告も増えているようです。
 

 1989年にスタートした25~42歳の女性看護師対象の前向きコホート研究のデータを用い、9万4,205人を1991~2015年にわたって追跡したようです。

 125万560人年の追跡で、大腸がん111例と大腸ポリープ3,317例が記録されていました。解析の結果、大腸がんに関しては、ビタミンD摂取量300IU/日未満に比較して450IU/日以上ではハザード比(HR)0.49(95%信頼区間0.26~0.93)であり、ビタミンD摂取量が多いほどリスクが低いという関連が認められたのでした(傾向性P=0.01)。なお、300IUのビタミンDとは、8オンス(237mL)のコップ3杯分の牛乳に含まれる量に相当するということでございます。

 また、1日当たりのビタミンD摂取量が400IU多いごとに、大腸がんリスクが54%低下することも分かった〔HR0.46(95%信頼区間0.26~0.83)〕。ただしこの関連は、ビタミンDをサプリメントからではなく、食品から摂取している場合にのみ認められたようです。具体的には、食品からの1日当たりビタミンD摂取量が400IU多いごとにHR0.34(同0.15~0.79)と有意であるのに対し、サプリメントではHR0.77(同0.37~1.62)と有意でなかったのです。

 興味深いことに、ビタミンD摂取量と大腸がんリスクとの逆相関は、50歳以上では認められなかったようです。

 なお、一部ががん化する可能性のある大腸ポリープについても、50歳未満では、ビタミンDの摂取量が多いことによるリスク低下が認められました。具体的に、通常型腺腫(1,439例)については1日当たりビタミンD摂取量が400IU多いごとに、HR0.76(同0.65~0.88)、鋸歯状ポリープ(1,878例)ではHR0.85(同0.75~0.97)だったとのことです。

 これらの結果は、ビタミンDが若年成人の大腸がん予防に重要かもしれません。食生活を含む生活習慣に関する情報を基に大腸がんハイリスク者を特定し、より早期からスクリーニングを開始すべきかもしれないですね。


原著 

2021/12/27

<速報>12月27日 診療について

 小川糖尿病内科クリニックでございます。

おはようございます。本日12月27日は午前診療をもって、今年最終診療日となります。

また、本日積雪のため、当院スタッフも出勤ができない状況です。 最大限、ご迷惑おかけしないように尽力致しますが、ご案内等で少しお待ち頂く場合がございますのでご了承願います。 発熱外来も対応困難となります。

来院頂ける方々におかれましても、安全に注意頂き、無理はなさらずに気を付けてお越し下さい。

健康講座424 新型コロナワクチンと心筋梗塞、肺塞栓症、脳血管イベントのリスク

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 75歳以上のフランス人において、BNT162b2mRNAワクチン(以下、ファイザー社ワクチン)接種後の重度心血管イベントの発症について短期リスクを評価したようです。その結果、急性心筋梗塞、脳卒中、および肺塞栓症の発生率の増加は、ワクチン接種14日後に見られなかったことを明らかにしました。なお、先行のイスラエルと米国の研究でも、ファイザー社ワクチン接種後42日と21日において、心筋梗塞、肺塞栓症、脳血管イベントのリスクは増加しなかったと報告しているようです。


 研究者らは、フランスの国民健康データシステムを使用し、75歳以上でかつ2020年12月15日~2021年4月30日に急性心筋梗塞、出血性脳卒中、虚血性脳卒中、肺塞栓症と診断されて入院した患者(ワクチンの接種は問わない)を適格者として検証を行いました。調査方法には自己対照ケースシリーズ法を用い、心血管イベントに依存する曝露、ワクチン接種のキャンセルや延期または短期の死亡率を増加させる可能性のある死亡率に関連する高いイベントを調査したようです。


 主な結果は以下のとおりでございます。

・2021年4月30日時点で、75歳以上の約390万人がファイザー社ワクチンを1回以上接種し、320万人が2回接種をしていた。
・そのうち、観察期間中に1万1,113例が急性心筋梗塞で入院(そのうち1回以上ワクチン接種を受けたのは58.6%)し、1万7,014例が虚血性脳卒中(同54.0%)、4,804例が出血性脳卒中(同42.7.%)、7,221例が肺塞栓症(55.3%)で入院した。
・ワクチン1回目、2回目いずれかの接種後14日間に、有意なリスク増加は見られなかった。
・心筋梗塞のRIは、 1回目が0.97、2回目が1.04だった。虚血性脳卒中では1回目が0.90、2回目が0.9。出血性脳卒中は1回目が0.90および2回目は0.97。肺塞栓症は0.85、2回目は1.10だった。
2つの細分化された曝露間隔(1~7日および8~14日)において、心血管イベントの有意な増加はいずれも観察されなかった。

原著

2021/12/26

健康講座423 妊婦 禁煙 報酬

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 妊娠中の喫煙者では、禁煙を継続するに従って増額される金銭的な報奨はこの報奨がない場合と比較して、禁煙継続率の向上をもたらし、不良な新生児アウトカムの割合が低く、喫煙妊婦への安全で効果的な禁煙介入であることが、フランス・ソルボンヌ大学ピティエ-サルペトリエール病院の「FISCP試験」で示されたようでございます。

 本研究は、妊娠中の喫煙者の禁煙状況および出産アウトカムに及ぼす、禁煙の継続に応じて金額が漸増する報奨金の有効性の評価を目的とする単盲検無作為化対照比較試験であり、フランスの18ヵ所の産婦人科病棟で参加者の登録が行われたものです。

 対象は、年齢18歳以上、たばこ≧5本/日または手巻きたばこ≧3本/日の喫煙者で、妊娠期間<18週であり、禁煙の意思のある妊婦(0[まったく意思がない]~10[きわめて強い意思がある]点の視覚アナログ尺度で>5点)でありました。被験者は、金銭的な報奨を受ける介入群またはこれを受けない対照群に無作為に割り付けられました。

 すべての参加者は、6回の受診日に来院しただけで、その都度来院費として20ユーロ(17ポンド、23ドル)相当の引換券を受け取りました。金銭的報奨群では、来院費とは別に、受診時に禁煙を継続していると、2回目の受診日は40ユーロ、3回目は60ユーロ、4回目は80ユーロ、5回目は100ユーロ、6回目は120ユーロの報奨金に相当する引換券が与えられました(最高額は520ユーロ)。対照群は、6回の受診日にすべて来院しても、禁煙継続の有無にかかわらず、合計120ユーロの来院費のみが与えられたのです。

 主要アウトカムは、所定の禁煙開始日から、出産前の6回目受診日までの禁煙継続でありました。禁煙は、参加者の自己申告による過去7日間の喫煙なし、かつ呼気中一酸化炭素(eCO)≦8ppmと定義されます。


 460例の妊婦が登録され、金銭的報奨群に231例、対照群に229例が割り付けられました。全体の平均年齢は29歳で、受診回数中央値は4回であり、両群間に差はなかったです。また、就業率は金銭的報奨群が59%(137例)、対照群は65%(148例)であり、婚姻率はそれぞれ18%(41例)および13%(31例)、交際中が71%(163例)および75%(171例)です。全体の過去7日間の喫煙本数中央値は60本でした。

 禁煙継続率は、金銭的報奨群が16%(38/231例)と、対照群の7%(17/229例)に比べ有意に高かった(オッズ比[OR])ようです。

 一方、不良な新生児アウトカム(新生児集中治療室への移送、先天形成異常、けいれん、周産期死亡の複合)のリスクは、金銭的報奨群が2%(4例の新生児)と、対照群の9%(18例の新生児)よりも7%低く、有意な差が認められました。

 お金がもらえなくても、禁煙するのは大前提ですが、おもしろい結果ではありますね。
原著

2021/12/25

健康講座422 糖尿病とかくれ心房細動

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 糖尿病患者は、脳梗塞のリスクを押し上げる心房細動の自覚症状に気付いていない人が少なくないことが分かったようです。心房細動の自覚症状に気付かないことでその診断が遅れ、脳梗塞などの合併症リスクが高くなる可能性があるので、最適な糖尿病患者の心房細動スクリーニング方法を検討すべきかもしれません。


 心房細動は不整脈の一種で、自覚症状として動悸やめまいなどを生じることがあります。ただしより重要なのは、心臓の中に血液の塊(血栓)が形成されやすいために、その血栓が脳の動脈に運ばれて脳梗塞が起きてしまうリスクが高い点にあるのでございます。このタイプの脳梗塞は梗塞の範囲が広いことが多く、重症になりやすいです。

 米国では現在、少なくとも270万人が心房細動を患っており、2030年までに1210万人に増加すると予測されているのです。糖尿病は1型か2型かにかかわらず、心房細動のリスクを高めることは分かっています。

 研究の対象は、スイスで行われている心房細動に関する多施設共同研究の参加者2,411人(平均年齢73.2±8.4歳、女性27.4%、糖尿病17.4%)。主要評価項目は心房細動のタイプ、症状、および心房細動による生活の質(QOL)への影響で、二次評価項目として合併症(循環器疾患、および脳卒中や認知機能障害などの神経学的症候)の有病率を検討したようです。

 解析の結果、主要評価項目のうち心房細動のタイプについては、非糖尿病群では発作性が45.6%、非発作性が54.5%(持続性31.1%、永続性23.4%)であり、糖尿病群では発作性40.7%、非発作性が59.3%(持続性28.1%、永続性31.2%)だった。年齢や性別、心血管リスク因子で調整後、糖尿病と非発作性心房細動との有意な関連は見られなかったようです〔オッズ比(OR)1.01〕。

 一方、前記の調整因子に、自覚症状に影響を及ぼし得る薬剤(β遮断薬や抗不整脈薬)の処方の有無を追加した検討で、糖尿病群は非糖尿病群に比べて心房細動の症状を自覚している割合が有意に低かったのです〔OR0.74(同0.59~0.92)〕。また糖尿病群はQOLが低かったようです。

 二次評価項目の合併症有病率についても、糖尿病群の方が高く群間の有意差が認められました。まず、循環器疾患については、高血圧がOR3.04、心筋梗塞OR1.55、心不全OR1.99だった。神経学的症候についても、脳卒中がOR1.39、認知機能障害OR1.75だったのです。

 要するにですよ、糖尿病のある心房細動患者は非糖尿病患者よりも心房細動の症状を自覚する頻度は低いもののQOLが低下しており、また循環器疾患の有病率が高く神経学的症候を来しやすいようです。糖尿病患者に生じるサイレントな心房細動を体系的にスクリーニングした方がよいかもしれません。

原著

2021/12/24

健康講座421 新型コロナウイルス感染症(COVID-19と維持透析患者

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した維持透析患者のレムデシビルによる予後改善効果が認められたということでございます。日本透析医会、日本透析医学会、日本腎臓学会によるCOVID-19対策合同委員会が実施した研究の結果であります。

 3学会のCOVID-19対策合同委員会は、全国規模で透析患者のCOVID-19罹患状況等を継続調査しているようです。今回報告された研究は、パンデミック第4波が収束した2021年6月19日までに登録されたCOVID-19透析患者1,948人から、転帰不明者などを除外した1,010人のデータを解析したもののようです。

 解析対象者のうち699人(69.2%)は回復し、311人(30.8%)は死亡していたようです。死亡した患者群は、高齢で透析歴が長いという点で有意差があったが、性別や原疾患には差がなかったようです。併存疾患については、心血管疾患と末梢動脈疾患の有病率が死亡群で有意に高く、高血圧や糖尿病、呼吸器疾患、がんの有病率は有意差がなかったとのことです。

 COVID-19に対して行われた治療内容を見ると、死亡群では呼吸管理(酸素投与、人工呼吸器や体外式膜型人工肺の使用)やデキサメタゾン投与が行われていた患者が多かった模様です。血液検査データを入手し得た311人での検討では、死亡群は回復群に比べクレアチニン(8.8±3.5対10.1±4.1mg/dL、P=0.004)とアルブミン(2.9±0.6対3.3±0.6g/dL、P<0.001)が有意に低く、CRPが有意に高値(中央値7.1対2.0mg/dL、P<0.001)だったようです。またBMIは死亡群の方が有意に低かったとのことでございます(22.0±4.6対23.5±5.3、P=0.01)。

 多変量解析の結果、死亡リスクの上昇と独立して関連する因子として、70歳以上〔60歳未満に対してハザード比(HR)4.92〕、透析歴の長さ〔1年未満に対して1~5年ではHR2.07、末梢動脈疾患〔HR1.49、およびデキサメタゾン投与〔HR1.36〕や種々の呼吸管理〔酸素投与ではHR3.44〕が抽出されました。

 一方、レムデシビルの投与は死亡リスクの低下と独立して関連していたとのことです〔HR0.60〕。そこで、年齢と呼吸管理の施行状況を傾向スコアで一致させ、レムデシビルが投与されていた患者と投与されていなかった患者を1対3の割合(98人と294人)で抽出し比較した結果、レムデシビル投与群は死亡リスクが有意に低く〔HR0.45〕、生存期間の有意な延長が認められたようです。また、在院日数もレムデシビル投与群の方が有意に短かったとのことです〔群間差4.7日(2.2~7.4)〕。

 このほか、アルブミンが1g/dL高いごとに死亡リスクが半減すること〔HR0.48〕、血液透析患者と腹膜透析患者では予後に差がないことなどが明らかになりました。

 これらの結果から、国内の透析患者のCOVID-19による死亡率は30.8%と高く、一般人口の20倍に上ります。これは海外からの報告と一致しており、日本に特異的なことではないものの、透析患者の感染対策の徹底が求められるようです。また、COVID-19透析患者へのレムデシビルによる治療は、入院期間の短縮と死亡リスクの抑制につながるようでございます。

原著

2021/12/23

健康講座420 10代の肥満研究

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 周囲に肥満や過体重の人が多数存在する環境で育つ10代は、それが理想的な体型だと認識するようになり、その結果、自身も肥満や過体重になりやすいことが、米南カリフォルニア大学の研究で示されたようです。肥満率が高い地域では、体重が不健康なレベルでもそれが当たり前とみなされ、このことが肥満対策を難しくさせている可能性があるとのことでございます。


 今回、2017年12月から2018年7月にかけて、米軍関係者の家族を対象とする研究に参加した16~19歳の10代 401人のデータを収集したようです。子どもたちとその親たちには、オンライン調査を通じて身長や体重などさまざまな質問項目への回答を求め、また、子どもたちには標準体重から肥満まで9種類の体型を図示し、その中から自分にとって最も理想的な体型を選択させたようです。

 その結果、肥満率が高い郡に住んでいる10代は、肥満率が低い郡に住んでいる10代と比べて、より大きな体型を理想的な体型として選ぶ確率が高いことが示されたようです。この研究は、親の勤務地の関係で肥満率が高い、あるいは低い郡で生活する10代を対象としているため、肥満者の多い環境が、体型の基準や肥満リスクにどのような影響を与えるのかを実社会の中で検討したようです。

 肥満の人をたくさん目にすることで、若い人が過体重の体型を当たり前とみなすようになることには、メリットとデメリットの両面があるようです。そして、メリットとして、自分自身の体型に満足できたり、肥満であっても自尊心が傷付けられにくくなることなどを挙げられています。さらに、ソーシャルネットワークで肥満が標準体型とみなされるようになれば、肥満に対する偏見がなくなり、肥満を理由としたいじめや嫌がらせも減るのではないかとも考えられています。

 その一方で、肥満は2型糖尿病や脂肪肝など数々の慢性疾患の主なリスク因子でり、肥満が当たり前のことになってしまうと、肥満の予防や管理に関心が払われなくなり、健康上の大きなリスクにつながる可能性もあります。

原著

2021/12/22

健康講座419 災害高血圧と透析導入

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 東日本大震災の被災地では、高血圧関連腎症による透析導入が有意に増加していたことをが報告されました。一方で、糖尿病性腎症は震災の前後ともに最も多いことや、他の腎疾患による透析導入件数には有意な変化がないことも分かりました。

 大規模災害発生後には種々のストレスにより、被災者の血圧が上昇することや、脳心血管イベントリスクが高まる可能性が指摘されています。しかしながら末期腎不全への進行は長時間を要し、さらにさまざまな生活習慣や疾患が関与するため、その影響に関する報告はあまりありません。東日本大震災前後の透析導入件数の推移を後方視的に検討してみました。

 研究の対象は、気仙沼市立病院で2007~2020年に外来透析治療を受けた全ての患者296人。この数値は同院での透析導入患者と、避難先などの他院で導入後に気仙沼に戻り同院で維持透析を受けた患者の合計であり、外来透析に移行できない患者は除外されているとのことです。なお、同院は気仙沼市内で維持透析が可能な唯一の医療機関で、近隣の他の透析施設とは数十km離れているようです。

 解析対象者の平均年齢は69.1±12.4歳、女性が30.7%であり、透析導入件数は東日本大震災前が81人、震災後が215人だったとのことです。

 まず、透析導入の原疾患にかかわらず全ての透析導入件数の推移を見ると、震災前の2007年から震災後の2015年まではほぼ変化がないものの、震災5年後の2016年に大幅に増加していました。その後2019年までは透析導入件数の多い状態が継続し、2020年に震災前の水準に戻っていたようです。この一過性の増加は、被災により気仙沼の人口が減少したにもかかわらず、透析導入件数が増加したとのことです。

 次に、透析導入の原疾患を、糖尿病性腎症、腎硬化症を含む高血圧関連腎症、糸球体腎炎、その他の4群に分類した上で、その割合の震災前後での変化を検討しました。すると、糖尿病性腎症は震災前が48.1%で震災後は34.9%、高血圧関連腎症は同順に16.0%、33.5%、糸球体腎炎は21.0%、17.2%、その他は14.8%、14.4%であり、高血圧関連腎症の割合のみが顕著に増加していたのです。なお、この研究における高血圧関連腎症とは、高血圧のみに長期間罹患し、末期腎不全に緩徐に進行する過程で検尿異常がなく、タンパク尿がごくわずかな症例と便宜的に定義しているようです。

 高血圧関連腎症に関しては震災が有意な関連因子として抽出され、震災前に対してオッズ比2.523だったようです。

 これらの検討結果から、東日本大震災の5年後から認められた透析導入件数の増加は、高血圧関連腎症の増加によって生じたと考えられました。

 大規模災害後の高血圧関連腎症による透析導入件数の増加の背景として、災害に関連するストレスは交感神経系を亢進させ、高血圧の発症や血圧管理不良のリスクとなり、また避難生活ではナトリウム摂取量が増加しやすく、『災害高血圧』と呼ばれる状態を惹起するようです。参考までに。

原著

2021/12/21

健康講座418 早期の透析導入は死亡を減少か

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 進行した慢性腎臓病(CKD)患者において、非常に早期の透析導入は死亡および心血管イベントをわずかだが減少することが示されたようです。オランダ・ライデン大学医療センターが、進行性CKD患者における透析導入の最適な推算糸球体濾過量(eGFR)を明らかにすることを目的とした観察コホート研究の結果を報告したようです。検討により、導入参照値と比べた死亡の5年絶対リスク低下は5.1%で、平均1.6ヵ月の死亡の延期に相当するものだったが、透析導入を4年早める必要があることも示されたようです。

 研究グループは、スウェーデンの全国腎臓登録を用い、ベースラインのeGFRが10~20mL/分/1.73m2の患者を対象として追跡調査を行ったようです。

 主要評価項目は5年全死因死亡率、副次評価項目は主要有害心血管イベント(MACE:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合)であります。eGFR(mL/分/1.73m2)値4から1単位刻みで19までの、15の透析導入戦略に関して、補正後ハザード比および絶対リスクを推算したようです(参照値はeGFR6~7)。


 進行したCKD患者1万290例(年齢中央値73歳、女性3,739例[36%]、eGFR中央値16.8)において、3,822例が透析を開始し、死亡が4,160例、MACEが2,446例で確認されました。

 死亡率には放物線型の関連が認められ、eGFR15~16で最も死亡リスクが低かったようです。eGFR6~7での透析導入と比較して、eGFR15~16での透析導入による死亡の5年絶対リスク低下は5.1%、MACEの同リスク低下は2.9%で、ハザード比はそれぞれ0.89、0.94でありました。

 死亡に関する絶対リスク差5.1%は、5年の追跡期間中で平均1.6ヵ月の死亡の延期に相当するものですが、一方で透析導入は4年早める必要があったようです。

 参考にしていただければ幸いです。
原著

2021/12/20

健康講座417 コーシ(ヒ)ーと認知症

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 コーヒー、緑茶、カフェインは、認知症予防の潜在的な因子といわれているが、根拠となるエビデンスはあるのでしょうか。中高年の認知症リスクとコーヒー、緑茶、カフェインの摂取との関連を調べてみましょう。

 ある研究は、8年間フォローアップを行ったようです。対象者は、40~74歳の日本の地域住民1万3,757人。2011~13年に自己記入式のアンケート調査を実施した。予測因子は、コーヒー、緑茶の消費量とし、そこからカフェインの摂取量を推定しました。アウトカムは、介護保険データベースより抽出した認知症発症としたようです。

 主な結果は以下のとおりでございます。

・調査期間中の認知症発症数は309例であった。
・コーヒーの消費量が多い人は発症頻度が低く、五分位で最も消費量が多い群(326mL/日以上)は、最も少ない群(26mL/日未満)と比較し有意に低かったようです。
・同様に、カフェイン摂取量が最も多い群は、最も少ない群と比較しHRが有意に低かったのです。
・コーヒーの消費量が1日2~2.9杯および1日3杯以上の人は、0杯の人と比較し低かったようです。
・緑茶の消費量と認知症リスク低下との関連は、60~69歳でのみ有意な関連が認められたようです。

 コーヒーやカフェイン摂取は、とくに男性において、用量依存的に認知症リスクの低下が認められました。1日3杯以上コーヒーを飲んでいる人では、認知症リスクが50%減少することが示唆されたのです。

参考にしてもろうて。

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2021/12/19

健康講座416 孤食と心疾患

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1人で食事をしている(孤食)高齢女性は心疾患になりやすい可能性が、韓国の研究で示されたようです。孤食は早食いになりやすく、食事内容も不健康になりがちであるため、体重増加や高血圧、コレステロール値の上昇につながり、心疾患リスクが高くなるということでございます。

 今回の研究対象として、2016年の韓国国民健康栄養調査のデータから65歳以上の女性590人を抽出したようです。これらの対象者を、1人で食事をしているか(孤食群)、誰かと一緒に食事をしているか(共食群)で分類し、健康に関わる行動や栄養摂取状況について、群間で比較を行いました。

 その結果、孤食群では共食群に比べて、食品表示ラベルに対する意識が薄く、表示内容の活用頻度も低く、ラベルから受ける影響も低いことが明らかになったようです。また、孤食群では共食群よりも、カロリー、炭水化物、食物繊維、ナトリウム、カリウムの摂取量が少なかったようです。その一方で、冠動脈疾患の症状の1つである狭心症になるリスクは、共食群の2.58倍であることも判明したのです。

 このような女性の心疾患リスクを増大させる根本原因は、栄養価の乏しい食事であり、外食が増え、その結果、脂肪分、糖分、塩分の多い食事を取ることが多くなるらしいです。

 因みにですが、この研究では、1人で食事をする女性のほぼ8割が配偶者を亡くした女性であったようです。このような女性は抑うつ状態であることが多く、また、経済的な困窮や外出を恐れる傾向も認められたようです。

 参考にしてもろうて。

原著

2021/12/18

健康講座415 緑茶と認知症2

みなさんどうもこんにちは。


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 とR研究では、緑茶の特定の構成要素が、認知神経の保護効果を有することが示唆されているようです。緑茶消費量と認知症発症との関連を明らかにする研究が報告されました。

 65歳以上の日本人高齢者を対象とした5.7年間の前向きコホート研究。日々の緑茶消費量やほかの生活習慣要因に関連する情報を、公的介護保険データベースより取得したようです。

 主な結果は以下のとおりでございます。

・対象者1万3,645人のうち、5.7年間の認知症発症率は8.7%であったようです。
・頻繁な緑茶消費は、認知症発症リスクの低さと関連していたようですでございます(5杯以上/日 vs.1杯未満/日のハザード比:0.73)。
・緑茶消費量は、認知症発症リスクの低さと有意に関連していたのです。

参考にしてしてください。

原著

2021/12/17

健康講座414 緑茶と認知症

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 認知症への対策は、大きな問題となっています。いくつかの研究において、食事での要因の影響により、認知症が予防できる可能性が示唆されているようです。緑茶に焦点を当て、緑茶の摂取と認知症、アルツハイマー病、軽度認知障害(MCI)、認知障害との関連を調査した観察研究のシステマティックレビューを実施したようです。

 PubMedより、2018年8月23日までの研究を検索し、お茶と認知機能との関連を調査した文献のリファレンスまたはレビューを調べました。次いで、緑茶の摂取と認知症、アルツハイマー病、MCI、認知障害との関連性を評価するオリジナルデータが、抽出した文献に含まれているかを調査したようです。

 主な結果は以下のとおりでございます。。

・最終的に、コホート研究3件、横断研究5件が抽出された。
・コホート研究1件および横断研究3件において、緑茶摂取の好影響が支持された。
・コホート研究1件および横断研究1件において、部分的な好影響が報告された。
・残りのコホート研究1件および横断研究1件では、有意な関連は認められなかった。

 これらの結果から、緑茶の摂取が認知症、アルツハイマー病、MCI、認知障害のリスクを減少させる可能性があるとの仮説は支持されたように思われます。参考までに。

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...