2021/09/30

健康講座329 3回目の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンBNT162b2(Pfizer製)について、2回接種を5ヵ月以上前に完了した60歳以上の高齢者に対する3回目ブースター接種は、COVID-19感染および重症化リスクが大幅に低下することが報告されました。イスラエルでは2021年7月30日に、5ヵ月以上前にBNT162b2の2回接種を完了した60歳以上の高齢者への、3回目接種が承認されているのです。研究グループは、追加免疫のデータを収集するため3回目ブースター接種を行った同国約114万例の高齢者を対象に試験を行ったようです。

簡単に結論だけ記載しておきます。参考までに。


・ブースター接種後4~6日、12日以上経過の有効性を比較

・ブースター接種後12日以上群、4~6日群に比べ感染率5倍超低下

 原著

2021/09/29

健康講座328 新型コロナウイルスのブレイクスルー感染

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 COVID-19ワクチンの2回接種を終了していても、その後感染するという「ブレークスルー感染」といものがあるようです。これらのリスク因子を調査した研究結果がThe Lancet Infectious diseases誌に掲載されておりました。英国・キングス・カレッジ・ロンドンからは、ワクチン接種後の感染におけるリスク因子を調査するために、英国のCOVID追跡アプリの利用者である成人から得られた自己申告データを用いた大規模なケースコントロール研究を行ったようです。


 2020年12月8日~2021年7月4日の間にCOVID-19ワクチンの1回目または2回目の接種を受け、接種前の検査で陰性だった者を対象として、以下の群に分けた。

・1回目接種後14日以上経過し、COVID-19検査が陽性(症例群1)
・2回目の接種後7日以上経過し、検査が陽性(症例群2)
・1回目接種後14日以上経過し、2回目の接種前の検査が陰性(対照群1)
・2回目の接種後7日以上経過し、検査が陰性(対照群2)

 主な結果は以下のとおりでございます。

・期間内に124万9例が1回目のワクチン接種を報告し、そのうち6,030例(0.5%)がその後に陽性反応を示した(症例群1)。また、97万1,504例が2回目のワクチン接種を報告し、そのうち2,370例(0.2%)が陽性反応を示した(症例群2)。

危険因子分析では、フレイル高齢者(60歳以上)における1回目接種後の感染と関連し(オッズ比[OR]1.93)、貧困度の高い地域の居住者は1回接種後の感染リスクが高かった(OR:1.11)ようです。非肥満(BMI<30kg/m2)は1回目接種後の感染リスクが低かったようです

ワクチン接種を受けた感染者では、ワクチン接種を受けていない感染者に比べて、ほぼすべての症状が報告される頻度が低く、とくに60歳以上の場合、ワクチン接種を受けた参加者は、完全に無症状である可能性が高かった。


・年齢とワクチン接種後の感染との間には有意な逆相関が認められた。

 要するにですよ、高齢者ほどワクチン接種後の感染リスクが低下することがわかったのです。一方で、フレイルの高齢者や貧困地域に住む人々はワクチン接種後の感染リスクが高く、ワクチン接種後もソーシャルディスタンスやその他の感染防止策を取り続ける必要があるかもしれません。

原著

2021/09/28

健康講座327 妊娠糖代謝と子供の屈折異常

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 妊娠糖尿病や妊娠前から糖尿病であった母親の子どもは、近視や遠視などの屈折異常が多いというデータが報告されたました。

 屈折異常とは、目のスクリーンである網膜にピントが合わない状態のことで、具体的には、近視や遠視、乱視を指すようです。軽度の屈折異常は眼鏡で光学的に調整可能だが、幼児期の重度の屈折異常は不可逆的な視覚障害に至ることがあります。

 屈折異常はここ数十年増加し続けており、その原因は非遺伝的因子の影響が大きいと考えられているようです。例えば、パソコンなどで長時間のディスプレイ操作を行ったり、野外活動が少ないことは、軽度から中等度の屈折異常の非遺伝的リスク因子として知られています。

 今回の研究は、デンマークの全国規模の住民研究のデータを用いられました。1977~2016年に生まれた247万580人の子どもを長期間追跡し、母親の妊娠前からの糖尿病または妊娠糖尿病と、子どもの高度屈折異常との関連を調べたのです。追跡は子どもの出生時点からスタートし、25歳に至るか2016年12月31日に至るまでの間に高度屈折異常と診断されるか、もしくは移住や死亡による追跡打ち切りまで継続したようです。

 この間の糖代謝異常妊婦は5万6,419人(2.3%)で、1型糖尿病が0.9%、2型糖尿病が0.3%、妊娠糖尿病が1.1%でした。また、糖代謝異常妊婦は1977年の0.4%から2016年の6.5%へと経年的に増加しています。糖代謝異常妊婦は糖代謝正常の妊婦に比較して、高齢で過去の妊娠回数が多く、教育歴が長く独居者が多かったようです。

 最大25年間の追跡期間中に、糖代謝正常妊婦の子ども1万9,695人と、糖代謝異常妊婦の子ども553人が高度屈折異常と診断されました。交絡因子を調整後、糖代謝異常妊婦の子どもは、高度屈折異常のリスクが39%有意に高いことが明らかになったのです。屈折異常のタイプ別に見ても、遠視は37%、近視は34%、乱視は58%、いずれも有意にハイリスクだったのです。

 妊婦の糖尿病のタイプ別の比較では、1型糖尿病妊婦の子どもでは32%のリスク上昇、2型糖尿病妊婦の子どもでは68%のリスク上昇が見られました。また、母親が糖尿病性の合併症を有していなければ18%のリスク上昇であるのに対して、糖尿病性合併症を有している妊婦の子どものリスクは105%増と、2倍以上ハイリスクだったのです。

 このほかに、小児期には遠視が多く発生し、10代から若年成人期には近視が増えることが分かったのです。


新しい知見でした。参考にしてください。

原著

2021/09/27

健康講座326 昼寝のコツ

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 日本人の睡眠時間は世界でダントツ短いとのことで有名だそうです。厚生労働省の『平成27年 国民健康・栄養調査』によると、睡眠時間6時間未満の人がわずか8年で11%も増加し、全体の4割を占めているとのことです。睡眠不足が日常的に継続した先には、健康被害はおろか経済損失としても影響がでるということでございます。


 OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均睡眠時間によると、日本の平均的な睡眠時間は7時間22分で、加盟国で最も短い(OECDの平均は8時間25分)らしいです。

 睡眠不足が積み重なった状態を『睡眠負債』というらしいですが、気づかないくらいわずかな睡眠不足でも、蓄積すると大きな影響を及ぼす可能性があるとのことです。実は、6時間未満で熟眠感を得ている人でも睡眠負債の可能性があり、睡眠不足が日常的な習慣になって、自覚がないというのです。この現象は2003年に、2週間分の負債が蓄積することによるパフォーマンスの低下は、徹夜による負債に匹敵することが示されたようです。

 睡眠負債を抱えた人が働きに出れば、仕事効率に影響を及ぼしパフォーマンス低下は避けられないです。2018年度『企業の睡眠負債』実態調査によると、仕事中に眠気を感じているのは8割近く、うち2割は毎日眠気を感じていたのです。回答者の6割近くが生産性への影響を訴えたということです。

 睡眠不足にならない生活習慣を心がけることが一番ですが、睡眠不足が避けられない場合もあることでしょう。そのような時に、巷では有名な、コーヒーナップというものがございます。コーヒーに含まれるカフェインの効果は摂取後20~30分後に効果を発揮するのです。 また、人間の脳の活動は起きてから約12時間後に低下傾向に陥ることから、(脳の活動が低下する前)昼食時にコーヒーを飲んで仮眠をとると、カフェインの効果で目が覚めやすく、午後の仕事が効率的にできるのです。まとまった睡眠時間が取れない人も、仕事中に眠気が襲ってきたときに10~15分の昼寝を取り入れることで、脳がスッキリして業務効率も上がるといわれております。

 昼寝は寝すぎるとよくないデータもあり、1時間以内にとどめるのが良いようです。
参考文

2021/09/26

健康講座325 塩の恐怖

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 塩分の取り過ぎが体に良くないことは皆さまもご存知かと思います。ところで、その理由はなんででしょうか?

 米疾病対策センター(CDC)によると、米国人の約9割がナトリウムを取り過ぎているということでございます。そのナトリウムの大半は塩化ナトリウム、つまり塩でございます。塩分が体に与える6つの影響と、その対策を考えていきましょう。今回は、米国のデータが基準であることはご了承願います。

①.心臓への影響

 心臓はポンプであり、血管はパイプです。パイプを通る血液の量が増えたり、パイプが細くなれば、血圧は上がります。塩分の取り過ぎはそれら双方を引き起こすのです。

②.悪影響は即現れ、かつ時間経過してからも現れる

 塩分を過剰に摂取するとその30分以内に血管の拡張性が低下するらしいです。さらに、高血圧の状態が慢性的になると、心臓発作や脳卒中などのかたちで悪影響が現れてきます。逆に、塩分摂取を控えることのメリットも、すぐに現れるとのことです。塩分摂取量を大きく減らした場合、血圧は数時間から数日以内に下がるとのことです。

③.全身に影響が及ぶ

 塩分過剰摂取は心臓だけでなく腎臓にも負担をかけます。腎臓の働きの一つは塩分を排泄することです。しかし高血圧の状態では、腎臓のその働きが低下し、塩分が体内に蓄積しやすくなります。その結果、足がむくんだり、胸に水が溜まって心臓や肺の働きを低下させたりするのです。さらに、高血圧による血管障害のために脳卒中のリスクが高まるほか、塩分バランスと血圧の調節機能が正常に働かなくなる可能性もあります。

④.塩分過剰摂取による新たな悪影響も分かってきた

 最近の研究では、過剰な塩分が免疫システムに影響を及ぼし、心臓病のほか多くの健康障害にかかわる慢性炎症を引き起こすことが分かってきたのでございます。過剰な塩分が腸内細菌にも影響を与えるとの報告も見られます。最新の研究から、過剰な塩分によって引き起こされる炎症や高血圧に、腸内細菌が関与しているというエビデンスが示されているらしいです。

⑤.塩分摂取の影響は人によって異なる

 ただ、塩分が体に与える影響の根本的なメカニズムは、完全に理解されているわけではないのです。例えば、塩分を摂取しても血圧が上がらない人もいます。その反対に‘過剰’とは言えない程度なのに血圧が上昇してしまう「食塩感受性」の高い人もいるのです。大切なことは、大半の人にとって塩分摂取を控えることは健康に良いことが多いことです。

⑥.改めて減塩を考える

 塩とナトリウムは厳密には異なるものです。食品に含まれるナトリウムのほとんどは塩であり、ほぼ同じ意味で用いても本質的には問題ないです。ファストフードのハンバーガーには、1,000mg以上のナトリウムが含まれていることがあり、フライドポテトを追加で注文すると400mgプラスされる可能性があります。チキンヌードルスープでは2,200mg以上に上ることもあるのです。

 米国のガイドラインでは、成人のナトリウム摂取量を1日2,300mg以下にすることを推奨している。さらに米国心臓協会(AHA)は、1日1,500mg以下を理想としています。一方、米国人の平均的なナトリウム摂取量は、1日3,400mgらいしいです。食品のパッケージには『低ナトリウム』と書かれていても、そうではないことも往往にしてありえます。だからこそ、栄養表示ラベルを確認することはとても重要でございます。
 
 過去85件の研究のメタ解析では、ナトリウム摂取の抑制が血圧低下につながることが確認されております。肥満でない健康な若い人も含め、全ての人が塩分の過剰摂取に注意すべきでしょう。

2021/09/25

健康講座324 朝型のすゝめ

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 良い仕事の結果を出したい場合や学校の成績を上げたい場合、早寝早起きを心がけるのが良いかもしれないです。と言いますのも、夜型の人に比べて朝型の人の方が、仕事のパフォーマンスが良く、早期退職につながる健康問題に悩まされることも少ないとする研究結果が報告されたのでございます。オウル大学(フィンランド)Center for Life Course Health Researchによるこの研究で報告されました。

 朝型か夜型かなどのクロノタイプは主に遺伝子により決まるそうですが、太陽光への曝露、仕事のスケジュール、家族の生活リズムなどの環境要因の影響も受けている可能性があるということでございます。一般的に、成人の夜の睡眠時間は7時間以上が推奨されているようです。しかし、夜型の人が平日にこの睡眠時間を確保できていることは少ないとのことです。そのため、睡眠負債がたまり、休日に寝だめしてそれを解消しようと努めてしまうのです。このような社会的な時間と生物時計のずれにより生じる不調を「ソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)」というらしいです。過去の研究では、長期にわたる睡眠不足は健康状態の悪化を招くとともに、認知機能にも悪影響を及ぼすことが示唆されております。

 今回、1966年にフィンランドで生まれた1万2,000人以上のうち、2012年時点で現役の労働者であるなどの条件を満たした総計5,831人(男性2,672人、女性3,159人)を抽出したようです。これらを対象に、クロノタイプと労働能力および健康問題を原因とする早期退職との関連を検討しました。対象者のクロノタイプは46歳時(2012年)に行われた調査で確認されています。また、対象者は同時期に自分の労働能力についても、検証済みの評価スケール(0~10で評価)で評価していました。

 対象者のクロノタイプは、朝型が男性46%、女性44%、中間型が男女ともに44%、夜型が男性10%、女性12%だったようです。4年間の追跡期間中に、84人が障害年金を受給するようになり、17人が死亡していたとのことです(うち3人は障害年金受給者)。解析の結果、朝型の人と比べて夜型の人では、短い睡眠時間、不眠症、高レベルのソーシャルジェットラグが見られるなど、睡眠と健康に関連する全ての因子の評価が低かっただけでなく、未婚者や失業者の割合も高かったのでございます。また、夜型の男性28%と女性24%は46歳時の調査で「低い労働能力」と評価されており、この割合は朝型や中間型の人と比べて有意に高かったです。夜型の人が「低い労働能力」と評価される確率は、睡眠時間や社会・経済的要因、労働時間などの関連因子を調整した後でも、朝型の人のほぼ2倍であったようです。

 さらに、性別にかかわりなく、低い労働能力は障害年金を受給するリスクの増加と強く関連することも判明しました。このリスクは、夜型の男性で朝型の男性よりも3倍高かったです。

 ただし、これは観察研究でありますので、クロノタイプと労働能力や障害年金受給との因果関係が証明されたわけではございません。それでも、得られた結果が過去に報告された研究結果と一致することからも、健康促進、組織レベルでの業務計画のため、仕事のパフォーマンス向上をサポートする際には、クロノタイプを考慮に入れるのはありかもしれませんね。

原著

2021/09/24

健康講座323 アブラナ科の恩恵

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 果物や野菜の乳がんリスクへの影響について、日本人での疫学データについて、東京保健医療大学は、日本人女性4万7,289人における果物や野菜の摂取量と乳がん罹患リスクの関連を評価したようです。その結果、果物・野菜全体の摂取量と乳がんリスクとの間に全体的な関連はないが、閉経前女性においてアブラナ科の野菜の摂取量が乳がんリスク低下と有意に関連していたことを報告したのです。


 本研究は、食事評価は食物摂取頻度調査票を用いたものです。

 主な結果は以下のとおりでございます。。

・平均追跡期間10.2年の間に、452人が新たに乳がんと診断された。
・女性全体および閉経後女性において、果物・野菜全体、アブラナ科の野菜、緑色葉野菜、黄色野菜、トマト加工品の摂取量について、乳がんリスクとの関連は認められなかった。
アブラナ科の野菜の摂取量は、閉経前女性の乳がんリスクの有意な減少と関連し、エストロゲン受容体陽性およびプロゲステロン受容体陽性の乳がんとわずかな逆相関が認められたようです。


 その他にも、キャベツ、ダイコン、小松菜、ブロッコリー、白菜などの「アブラナ科野菜」を食べている人は、がん、心疾患、脳血管疾患などの死亡リスクが低下するという研究が発表されております。

 繰り返します、 キャベツ、ダイコン、小松菜、ブロッコリー、白菜、チンゲンサイ・・・これらはどれも「アブラナ科野菜」でございます。

原著

2021/09/23

健康講座322 子供の生活習慣病と認知機能への影響

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 多くの人は中年期に差し掛かるまで、高血圧や脂質異常症などの病気や、心臓や脳の健康リスクについてなかなか気にすることはないですよね。こんなマニアックなブログを御高覧頂いている皆様に関しましては、早期から意識を高く持ってみえるかもしれませんが。。。一般論としては、より早期から健康リスクに目を向けるべきであることを数々の研究結果が示しているのは言うまでもありません。

 トゥルク大学(フィンランド)は、3,596人の子ども(3~18歳)を31年間にわたって追跡し、34~49歳に成長した2,026人に対して認知機能テストを施行しました。その研究から得られた結論は、人生の早い段階で体重、コレステロール、血圧を管理することが、成人期の認知機能低下を抑制する可能性があるというものだったのです。

 具体的には、子どもの頃に血圧とコレステロール値が高かった人は、子どもの頃にそれらが良好だった人と比較して、記憶力と学習能力が低いと判定されました。子どもの頃から中年期までずっと肥満であった人は、歳をとるにつれて情報を処理したり注意力を維持することが難しくなっていたのです。子どもの時点で、体重、コレステロール、血圧という評価された3つの心血管リスク因子を全て有していた人は、40代に達するまでに、脳の健康に関する指標の全てが低下していたのでございます。

 心臓の健康と脳の健康との関連は、多くのエビデンスにより証明されています。良好な血流を保つことで、心臓と脳、双方の臓器が適切に機能し続けるのです。反対に高血圧や高コレステロール血症などの血管にダメージを与える状態は、心臓と脳の双方を危険にさらし、心臓発作、脳卒中、認知症を引き起こす可能性があるのでございます。

 ここ数十年の間に小児肥満が増加し、また、心臓の健康状態の悪化は早くも小児期に始まるという報告が増えています。

 健康に良い生活習慣は、これまで考えられていたよりもはるかに早い年齢で身に付ける必要があると言えます。

 米国の身体活動に関するガイドラインでは、子どもたちに対して、少なくとも毎日1時間の中程度から高強度の身体活動を行うことを推奨しているようです。また、少なくとも週に3回は筋肉と骨の健康のための高強度運動を行い、座ってテレビを見たりスマートフォンを操作したりする時間(スクリーンタイム)を制限すべきであることもガイドラインに示されているのです。


 余談ですが、私もスマホの設定で、スクリーンタイムに時間制限機能をつけております。

 話は戻りますが、子どもが肥満かそうでないかにかかわりなく、定期的な身体活動は、認知機能、学業成績、そのほかの健康指標全般に好影響を与えるのです。また、肥満の子どもは後年の心血管リスクや死亡率が高くなることが研究で示されているものの、成長段階で肥満が解消されるとリスク上昇は抑制されるということでございます。


原著

2021/09/22

健康講座321 SGLT2阻害薬の心不全への効果

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 SGLT2阻害薬エンパグリフロジンは、糖尿病の有無を問わず左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)患者の心血管死または心不全による入院の複合リスクを有意に低下させることが、ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学が行った、世界23ヵ国622施設で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III試験「EMPEROR-Preserved試験」の結果示されたようです。SGLT2阻害薬は、左室駆出率が低下した心不全患者の心不全による入院リスクを低下させるが、HFpEF;左室駆出率が保たれた心不全患者における有効性については不明であったことから、とても大きな知見となりそうです。


 研究グループは、NYHA心機能分類クラスII~IVの慢性心不全で、左室駆出率が>40%、NT-proBNPが300pg/mL以上(ベースラインで心房細動を有する患者の場合は900pg/mL以上)の18歳以上の患者を、標準治療に加えて、エンパグリフロジン(1日1回10mg)またはプラセボの投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けました。割り付けは、地域、糖尿病の有無、推定糸球体濾過量(eGFR)(<60mL/分/1.73m2 vs.≧60mL/分/1.73m2)、左心室駆出率(<50% vs.≧50%)で層別化したようです。

 主要評価項目は、心血管死または心不全による入院の複合、副次評価項目は、初回および再発を含むすべての心不全による入院、eGFRのベースラインからの低下率であったようです。

 2017年3月27日~2020年4月13日の期間に1万1,583例がスクリーニングされ、5,988例が無作為に割り付けられたものです(エンパグリフロジン群2,997例、プラセボ群2,991例)。

入院の複合リスク21%低下

 追跡期間中央値26.2ヵ月において、主要評価項目のイベントはエンパグリフロジン群13.8%(415/2,997例)、プラセボ群17.1%(511/2,991例)に発生したようです。ハザード比(HR)は0.79であり、エンパグリフロジン群で有意に発生リスクが低下したのです

 主要評価項目の有効性は、主に心不全による入院リスクの低下と関連していたのです。また、エンパグリフロジンの有効性は、糖尿病の有無にかかわらず一貫していたようでございます。

 主要副次評価項目である心不全による入院の総数は、プラセボ群と比較してエンパグリフロジン群で有意に低下したいたようです。
原著

2021/09/21

健康講座320 新型コロナ感染のタイミング

 みんさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 突然ですが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した患者が、他の人にウイルスを最も感染させやすいのはいつですか??それは、発症の2日前から3日後までだというこてでございます。米ボストン大学公衆衛生学部の研究で示されました。

 今回の研究では、中国の浙江省で、感染力が強いデルタ株が出現する前の2020年1月8日から7月30日までの間にCOVID-19の診断を受けた一次感染者730人(年齢中央値46歳、男性51.2%)と、その濃厚接触者に当たる8,852人(年齢中央値41歳、男性52.9%)の追跡データの分析が行われました。濃厚接触者は、同居人、食事を共にした人、職場の同僚、病院のスタッフ、乗り物に同乗した人などとしました。検査陽性者のうち無症状の患者については、検査で最初に陽性となってから90日以上経過観察して、無症状が継続するか、この間に発症するかを確認しました。

 一次感染者の46.0%が軽症、42.9%が中等症、11.1%が無症状で、重症者はいなかったようです。一方、濃厚接触者でCOVID-19の診断を受けたのは3.6%(327人)で、このうちの9.5%が重症であったが、大半は軽症(30.0%)か中等症(41.9%)で、残り(18.7%)は無症状だったのです。解析の結果、濃厚接触者が一次感染者から新型コロナウイルスに感染するリスクは、一次感染者の発症前2日から発症後3日の間に接触した場合に最も高くなり、なかでも発症0日目が最も高いことが明らかになったようです。このリスクは特に、この期間に一次感染者と同居していた場合と、接触時間が長かった場合で高かったようです。

 また、無症状の患者に接した場合よりも、軽症や中等症の患者に接した場合の方が、濃厚接触者の感染リスクが高くなることも判明しました。さらに、一次感染者が無症状だった場合、その人から感染した人も無症状である確率が高いことも分かったのです。

 これまでの研究では、伝播性の間接的な評価値としてウイルス量が用いられてきました。今回の研究から、一次感染者の症状発現に対する曝露のタイミングが、感染に重要であることがわかりました。この知見は、体調に異変を感じている人に対する迅速な検査と隔離を行うことが、COVID-19の広がりを防ぐ上で重要であることを示してます。さらに、発症者の臨床的重症度を軽減させるワクチンの必要性を再確認できますね。

参考にしてもろうて。

原著

2021/09/20

健康講座319 禁煙後の効果は、その後の体重増加のデメリットを上回る!!

みなさんどうもこんにちは。


いつもご覧頂き誠にありがとうございます。

小川糖尿病内科クリニックでございます。


 さて、なかなか困難な禁煙に成功された方がみえたらそれは素晴らしいことですね。禁煙に成功すると、食べ物がおいしくなって、つい食べ過ぎて、ふっとてしまう方もみえますよね。そんな方たちに、ちょっとした朗報がございます。

 禁煙後に体重が増えたとしてもその増加幅が5kg以内なら、喫煙を続けた人よりも循環器疾患の発症リスクが有意に低下することが報告されたのです。国立がん研究センターなどによるもので、なるべく若いうちに禁煙した方が、より大きなメリットを得られることを示すデータも得られたようでございます。

 禁煙が循環器疾患の予防にとって重要であることは、多くの研究から明らかになっていますよね。一方で、禁煙によって体重が増えてしまうことがあるあるでございます。体重の増加は循環器疾患のリスク因子の一つであり、せっかくの禁煙の効果を相殺してしまうことも考えられるでしょう。しかし、禁煙後の体重増加が、実際に禁煙のメリットを弱めるのかどうかは、よく分かっていなかったのです。

 今回発表された研究の対象は、1990年と1993年に、岩手県二戸、長野県佐久、茨城県水戸、高知県中央東、沖縄県宮古などの9保健所管内に居住していて、研究開始時と開始5年後の調査時にがんや循環器疾患の既往がなかった45~74歳の男女6万9,910人。中央値14.8年追跡し、喫煙状況と、体重増加、循環器疾患発症との関連を検討したのです。

 研究開始時と5年後のアンケートの回答結果から、対象者全体を喫煙状況により下記の4群に分類しました。研究開始時と5年後ともに喫煙している「喫煙者」、過去に喫煙していたが研究開始時と5年後ともに喫煙していない「長期禁煙者」、過去から研究開始5年後にかけて喫煙したことがない「非喫煙者」、研究開始時に喫煙していて5年後には禁煙していた「新規禁煙者」。また、新規禁煙者についてはさらに、禁煙後の体重増加なし、0.1~5.0kg増加、5.1kg以上増加の3群に分類したのです。

 追跡期間中に、4,023人が循環器疾患(虚血性心疾患889人、脳卒中3,217人)を発症しました。循環器疾患発症リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、飲酒・身体活動習慣、糖尿病既往、血糖降下薬・降圧薬・コレステロール低下薬の服用、摂取エネルギー量、大豆・野菜・果物・魚・肉類・乳製品の摂取量、ビタミンサプリメントの摂取、循環器疾患の家族歴、居住地域)を統計学的に調整し、それらの影響をできるだけ取り除いた上で、喫煙者を基準としてその他の群の循環器疾患発症リスクを解析したものです。

 その結果、長期禁煙者の循環器疾患発症ハザード比(HR)は0.56、非喫煙者はHR0.60で、いずれも喫煙者よりリスクが有意に低かったのです。また新規禁煙者でも、禁煙後に体重が増加していない群はHR0.66、体重増加幅が0.1~5.0kgの群はHR0.71と、喫煙者よりリスクが有意に低かったです。体重増加幅が5.1kg以上の群は喫煙者のリスクと有意差がなかったが、研究グループは、この条件の該当者数が少ないために統計学的有意差に至らなかったと説明しています。

 このほかに年齢層別の解析からは、60歳未満の新規禁煙者は60歳以上の新規禁煙者よりも、循環器疾患のリスクがより低いことが分かったのです。

 ごちゃごちゃとややこしいことを述べましたが、要するにですよ、喫煙を続けた場合に比べて禁煙することは、その後の循環器疾患発症リスクが低いことと関連していたことがわかったのでございます。また、より若い時期での禁煙によるリスク軽減効果が大きく、多少の体重増加は相殺できるくらいの効果があるとのことでございます。

参考にしてもろうて。

原著

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...