2024/03/29

健康講座823 「ロキソニン使用時の腎機能への影響とその対策」

 ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の一種で、炎症や痛みを和らげる効果があります。しかし、NSAIDsは腎機能に影響を与えることが知られており、特に既存の腎疾患がある人には注意が必要です。ロキソニンが夜間頻尿に影響を与えるという事実は、一部の専門家や患者の間では認識されているかもしれませんが、一般的な認識として広く知られているわけではありません。


ロキソニンは腎臓でのプロスタグランジンの合成を抑制することで、腎臓の血流を減少させる可能性があります。これにより、一時的に尿の生成が減少し、夜間のトイレの回数が減ることがあるかもしれません。ただし、この効果は短期間のみであり、薬の効果が切れると腎機能は通常に戻ります。重要なのは、このような副作用がすべての人に起こるわけではないということです。

ロキソニンの使用に際しては、以下のようなガイドラインが存在します。

  • 日本のガイドライン: 日本での使用ガイドラインでは、NSAIDsの腎機能への影響について注意を促しています。特に腎障害のリスクが高い人々には、より慎重な使用が推奨されています。

  • 国際的なガイドライン: WHO(世界保健機関)やFDA(アメリカ食品医薬品局)もNSAIDsの使用に際しては、腎機能に注意を払うよう指示しています。

具体的な研究としては、以下の文献が参考になります。

  • Whelton A, Hamilton CW. "Nonsteroidal anti-inflammatory drugs: effects on kidney function." J Clin Pharmacol. 1991;31(7):588-98.

  • Harirforoosh S, Jamali F. "Renal adverse effects of nonsteroidal anti-inflammatory drugs." Expert Opin Drug Saf. 2009;8(6):669-81.

これらの文献は、NSAIDsが腎機能に及ぼす影響についての研究を含んでおり、ロキソニンを含むNSAIDsの安全な使用についての情報を提供しています。

最終的に、ロキソニンを含む任意の薬剤の使用にあたっては、専門家のアドバイスを受け、個々の健康状態に応じた適切な判断が求められます。小川糖尿病内科クリニックの健康講座では、このような情報を患者さんが理解しやすい形で提供し、安全な薬の使用を促進していきます。

2024/03/15

健康講座822 「非糖尿病患者におけるSGLT2i投与によるケトアシドーシスの危険性について」


 最近の研究で、非糖尿病患者が心不全治療のためにSGLT2i(ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害剤)を使用した際に、重篤なケトアシドーシスを発症した2症例が報告されました。通常、SGLT2iは糖尿病患者での血糖コントロールに使用されますが、心不全治療にも用いられることがあります。これらの症例は、非糖尿病患者でもSGLT2iによる正常血糖ケトアシドーシスのリスクがあることを示しています。

研究デザインと方法: この研究では、心不全の治療のためにSGLT2iを開始した後に重度の非糖尿病性ケトアシドーシスを発症した2例の症例報告を詳述しています。これらの症例は、食欲の低下に起因するもので、両方の患者が摂食量の減少によりケトアシドーシスを発症しました。

結果: 各患者はケトアシドーシスを発症し、静脈内グルコースの投与、口からの糖分を含む液体の摂取の奨励、最小限のインスリン投与により症状が解決しました。これらの症例は、非糖尿病患者でもSGLT2iによるケトアシドーシスが発生する可能性があることを示しています。

結論: SGLT2iは糖尿病治療薬として有効ですが、非糖尿病患者においては、特に心不全の治療に使用される場合、ケトアシドーシスのリスクがあることに注意が必要です。非糖尿病患者にSGLT2iを使用する場合は、特に食欲の低下や摂食量の減少が見られる際には、ケトアシドーシスの発症に警戒し、適切なモニタリングと管理が重要となります。

この研究は、非糖尿病患者におけるSGLT2iの使用に関する新たな知見を提供しており、心不全治療におけるSGLT2iの安全性と効果についてさらなる研究が必要であることを示唆しています。また、心不全を持つ非糖尿病患者にSGLT2iを使用する際には、ケトアシドーシスのリスクを十分に理解し、慎重にモニタリングすることが重要です。

この健康講座では、SGLT2iによるケトアシドーシスの危険性について詳しく説明し、非糖尿病患者における使用時の注意点を強調しています。これにより、患者さんや医療従事者がこの重要な情報を理解し、適切な治療を行うための一助となることを願っています。

2024/03/06

健康講座821 「暖かい足元、健康な未来 - 糖尿病と足の動脈硬化(LEAD)への対策」

 「足の動脈硬化(LEAD:下肢動脈疾患)への理解と予防」は、特に寒い冬の時期に重要です。冬には血流が悪化しやすく、「足の冷え」や「足のむくみ」「しびれ」の問題が増えます。これらの症状は、足の血液の流れが低下していることが密接に関連しており、深刻な病気の兆候である場合もあります。そのため、これらの症状には注意が必要です。



「フットケアの日」にちなんで行われた「女性の足の悩みに関する調査」では、冬に足の悩みが多いこと、特に「冷え」や「かかとのヒビ割れ」が多いことが明らかにされました。この調査から、血流を良くすることが「冷え性の改善」や「むくみ改善」にどれだけ効果的であるかが分かります。

しかし、約3割の人が足のケアを全く行っていないという事実も明らかになりました。これは、足の健康に対する意識の向上が必要であることを示しています。

毛細血管は、酸素を運ぶ重要なルートであり、毛細血管のコンディションが整わないと、体の組織に十分な酸素が行き渡らなくなる可能性があります。これは、足の冷えや疲労感という症状につながり、血管の老化である動脈硬化の一歩手前の状況につながります。

足の動脈の病気で多い「末梢動脈疾患」(PAD)は、足の指先に向かって血液を送り、酸素と栄養を供給している足の動脈で、動脈が途中で狭くなったり詰まってしまう病状です。PADになると、しびれや痛み、悪化すると潰瘍ができたり、ひどい場合には壊死することもあります。全身の動脈硬化を伴うことも多く、心筋梗塞や脳梗塞に罹患する危険性が高まります。

PADは、ほとんど無症状のまま病気が進行し、いったん症状が出始めると完治が難しくなります。PADの病期としては、ます冷感やしびれが起こり、やがて「間欠性跛行」(しばらく歩くと痛みが出る、休むとまた歩ける、という症状)があらわれ、それが進行すると安静時にも疼痛が起こるようになります。

糖尿病患者で血糖コントロールが悪いと、動脈硬化が進みやすくなるだけでなく、とくに膝から下の動脈(下腿動脈)が詰まりやすくなります。血流の迂回路ができにくく、足部の虚血が進み重症化しやすいので、特に注意が必要です。

PADを予防・改善するためには、バランスの取れた食事や適度な運動を心がけ、禁煙に努めることが必要です。喫煙、糖尿病、高血圧、高脂血症、ストレス、肥満などの動脈硬化の危険因子をコントロールしていくことが求められます。

治療法は進歩しており、薬物治療と運動療法が行われることが多いです。間欠跛行の薬物治療では、血液をサラサラにする抗血小板薬を使い、病状の進行を抑え、ほかの部位の動脈の閉塞を予防する治療が行われます。運動療法では、医師の指導の下で1日30分以上の歩行訓練を週3回、3ヵ月以上続けると多くの場合で改善します。

薬物や運動療法でも症状が改善しない時は、途絶えた血流を再開させる血行再建術が行われます。血行再建術には、動脈硬化を起こした血管を内側から広げる血管内治療と、詰まった血管を迂回してその先の血管につなげるバイパス手術があります。

血管内治療では、カテーテルを通じて風船を膨らませ、血管を拡張させるバルーン治療や、ステントを血管内で広げて固定するステント治療があります。これらの治療は、ここ数年で飛躍的に技術や治療器具が進歩しており、これまでは治療不可能であった部位についても、治療の幅が拡がってきています。

PADは全身の血管疾患でありトータルケアが重要です。治療により症状が良くなるだけではなく、今後起こりうる血管疾患の予後も改善しうることが可能となります。

2024/03/01

健康講座820 運動以外で体重停滞期を打破する3つの戦略

 

体重管理に取り組む中で、多くの方々が食事量を減らしても体重が減らなくなる「停滞期」に直面します。この期間は多くの方にとって挑戦となりますが、科学的に裏付けられた戦略を用いることで、この難局を乗り越えることが可能です。小川糖尿病内科クリニックでは、糖尿病を抱える方やそのリスクがある方を対象に、体重管理における包括的なアプローチを推奨しています。以下に、効果的な3つの戦略を紹介します。

  1. タンパク質量を増やす:

    • 科学的根拠: タンパク質は満腹感を引き起こすことで知られています。タンパク質を多く摂取することで、無意識の間食が減少し、体重管理に役立ちます。タンパク質豊富な食事は、食欲を抑制し、体重管理に有効であるという研究結果が一貫して報告されています。
    • 実践的なヒント: 鶏肉、魚、豆腐、豆類などの低脂肪タンパク質源を食事に取り入れましょう。量だけでなく質にも注意しましょう。
  2. 起床時刻を早める:

    • 科学的根拠: 早起きは体重に驚くべき影響を与えることができます。これにより、日々の総活動量が増加します。早起きして日光にさらされる人はBMIが低い傾向にあるという研究もあり、これは食欲をコントロールするホルモンの調節がより良くなるためかもしれません。
    • 実践的なヒント: 徐々に目覚まし時計を早め、軽い朝の活動に取り組みましょう。これには軽い散歩、ストレッチ、その他の軽い身体活動が含まれます。
  3. 夕食を早めにとる:

    • 科学的根拠: 食事のタイミングは体重管理において重要な役割を果たします。夕方早い時間に食事をすることで、夜間の脂肪蓄積を減らすことができます。私たちの代謝は睡眠中に遅くなるため、これが重要です。
    • 忙しいスケジュールの場合の対応策: 仕事が忙しくて早い夕食が難しい場合は、夕方におにぎり1個とサラダチキンを摂り、帰宅後に野菜スープを食べることを検討しましょう。これにより、夜遅くに過食することを防ぎます。

運動は体重管理に不可欠な要素ですが、これらの食事および生活習慣の変更により、体重減少の停滞期を打破することが大いに助けとなります。小川糖尿病内科クリニックでは、食事、運動、生活習慣の変更を組み合わせた健康へのバランスの取れたアプローチを強調しています。


こちらの内容は一般的なガイドラインであり、特に糖尿病などの医療状態を持つ方は、個別のアドバイスを得るために医療提供者に相談することをお勧めします。健康講座に関するさらなる情報や参加を希望される方は、直接小川糖尿病内科クリニックにお問い合わせください。

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...