2024/01/26

健康講座816:2型糖尿病診断後の糖尿病治療薬の初期省略が心血管イベントリスクに及ぼす影響



本日は2型糖尿病と診断された後の治療方針が、心血管イベントのリスクにどのような影響を及ぼすかというテーマでお話しします。デンマークのレジスターから得られたデータに基づいた新たな研究が、糖尿病治療薬を初期に省略した人々、特に2型糖尿病の寛解を達成した人々が、治療薬を用いて血糖を良好にコントロールしている人々と比較して、心血管イベントのリスクが高いかどうかを調査しました。さらに、スタチンやレニン-アンジオテンシンシステム阻害薬(RASi)の使用の開始が少ないことが、高リスクに関連している可能性も検討されました。

このコホート研究では、2014年から2020年までの間に初めてHbA1cを測定した人々をデンマークのレジスターを用いて同定しました。HbA1cの値が48から57 mmol/mol(6.5-7.4%)であった14,221人の個人を対象とし、6ヶ月後に糖尿病治療薬の使用有無と達成されたHbA1cの値(<48対≥48 mmol/mol [6.5%])に基づいて4つのグループに分けました。これらは、糖尿病治療薬を用いて血糖を良好にコントロールしているグループ、血糖が不十分にコントロールされているグループ、寛解しているが糖尿病治療薬を用いていないグループ、そして継続的な2型糖尿病があるが治療薬を用いていないグループです。

結果として、糖尿病治療薬を用いて血糖が良好にコントロールされている参加者と比較した場合、他の3つのグループでは、5年間の標準化された心血管イベントのリスクが高かったことがわかりました。継続的な2型糖尿病で治療薬を用いていないグループでは3.3%、寛解しているが治療薬を用いていないグループでは2.0%、血糖が不十分にコントロールされている治療薬を用いているグループでは3.5%リスクが高かったと報告されています。治療薬を用いていない個人は、治療薬を用いている個人と比較して、スタチンやRASiの開始が少なかったこともわかりました。もし、治療薬を用いていないグループでスタチンとRASiの開始が良好にコントロールされている治療薬を用いているグループと同じであったならば、継続的な2型糖尿病グループではリスクが2.1%、寛解グループでは1.1%減少したでしょう。

したがって、結論として、初期に糖尿病治療薬を省略した個人は、寛解を達成した場合でも、治療薬を用いて血糖が良好にコントロールされている個人と比較して、5年間の心血管イベントのリスクが高いことが示されました。これは、スタチンやRASiの使用が少ないことに関連している可能性があります。

この研究は、2型糖尿病の新たな診断後の治療方針が、実際の臨床現場で長期的な心血管健康にどのように影響を及ぼすかを理解するために、非常に重要な洞察を提供しています。2型糖尿病の寛解を目指すことは重要ですが、その過程で心血管保護薬の使用を怠らないことが、総合的な健康管理においても同様に重要であるということが強調されています。 

2024/01/19

健康講座815 歩行速度と2型糖尿病リスクの関連性についてのシステマティックレビューとメタアナリシス

 


最新の研究によると、歩行速度が速い人は2型糖尿病になりにくい可能性があるという興味深い結果が出ています。これは、よりアクティブな生活を送ることが、健康を守る上で重要であることを示唆しています。今回の講座では、歩行速度と2型糖尿病リスクの関連性について最新のシステマティックレビューとメタアナリシスの結果を基に解説します。

研究チームは、成人における歩行速度と2型糖尿病リスクの関連を探るために、10件のコホート研究を分析しました。その結果、ゆっくりとした歩行(時速3.2km未満)と比較して、通常の歩行速度(時速3.2-4.8km)を維持する人は、2型糖尿病になるリスクが15%低下することがわかりました。さらに速い歩行速度(時速4.8-6.4km)では、そのリスクは24%低下し、さらに速い歩行(時速6.4km以上)をする人では、なんと39%もリスクが低下することが明らかになりました。これらの結果は、100人につき、それぞれ0.86人、1.38人、2.24人の2型糖尿病の発症者数が減少することを意味しています。

ただし、これらの結果はいくつかの研究における高いバイアスのリスクや、証拠の確実性が低いという点を考慮する必要があります。また、研究者たちは歩行に費やす時間や運動の総量などの要因を調整した後でも、これらの効果が一貫していることを発見しました。

重要なのは、歩行速度が時速4kmを超えると、2型糖尿病のリスクが有意に低下するという点です。これは、普段の散歩を少し意識して速めにするだけで、健康を大きく改善できる可能性があるということを意味しています。

この研究は、私たちが日常的にどのように運動するか、そしてその運動の質が、健康に与える影響を理解する上で貴重な情報を提供しています。まとめると、歩行速度を上げることは、2型糖尿病の予防において有効な手段の一つとなり得ると言えそうです。

著者: Ahmad Jayedi 1, Mahdieh-Sadat Zargar 2, Alireza Emadi 3, Dagfinn Aune 4 5 6 所属情報拡大

PMID: 38050034 DOI: 10.1136/bjsports-2023-107336

概要 目的:歩行速度と2型糖尿病リスクとの関連を調査する。

デザイン:システマティックレビューとメタアナリシス。

データソース:2023年5月30日までのPubMed、Scopus、CENTRAL、Web of Science。

2024/01/12

健康講座814 「三重県産青サノリの健康効果と利用法: 糖尿病内科クリニック健康講座」

 こんにちは、糖尿病内科クリニックの健康講座へようこそ。本日の講座では、特に三重県産の青サノリの健康への影響とその利用法に焦点を当ててご紹介します。青サノリは、その栄養価の高さと健康効果で注目されている海藻類です。特に三重県産の青サノリは、リアス式海岸の自然環境下で育つため、特有の栄養素を豊富に含んでいます。



三重県産青サノリは、その高品質な成分とリーズナブルな価格で、健康と美容の両方に効果が期待できる食品として注目されています。ここでは青サノリの特性、栄養価、健康効果、摂取方法、そして三重県産の重要性について詳しく見ていきましょう。

青サノリの特性

三重県産青サノリは、日本全国で生産される青サノリの約60%を占めています。特に伊勢島地方は、リアス式海岸の自然環境の中で育った青サノリが高品質であることで知られています。自然豊かな海域で育つ青サノリは、栄養価が高く、その質の良さが特徴です。

栄養価と健康効果

青サノリには多くの栄養素が含まれており、特に注目されるのが以下の点です。

  1. ラムナン硫酸: ラムナン硫酸は、ヒトエグサの細胞管に含まれる特有の成分です。青サノリにはラムナン硫酸が約50%含まれており、抗がん作用やアレルギー症状の抑制、ヒアルロン酸の分解を阻害する働きが期待されています。

  2. カルシウム: 青サノリに含まれるカルシウムは牛乳の約8倍とされ、骨の健康をサポートします。

  3. ビタミンA: ほうれん草の約2倍のビタミンAが含まれており、視力の維持や皮膚の健康に寄与します。

  4. 食物繊維: 青サノリには大豆の約6倍の食物繊維が含まれています。特に水溶性食物繊維が豊富で、消化器官の健康に良い影響を及ぼします。

摂取方法と利用法

青サノリの摂取方法は多岐にわたります。主な摂取方法は以下の通りです。

  1. 味噌汁の具材として: 味噌汁に1グラムを加えることで、超健康的な味噌汁が作れます。90グラム入りの商品であれば、3ヶ月分の摂取が可能です。

  2. スナックとして: 塩分が含まれているため、そのままスナックとして食べることもできます。これは健康的で手軽な間食の選択肢として適しています。

三重県産青サノリの重要性

三重県産の青サノリは、伊勢島地方のリアス式海岸で育つため、特有の栄養価を持っています。自然環境によって育まれた青サノリは、味や品質にも優れています。また、1等品と2等品を上手に混ぜ合わせているため、優れた栄養価を保ちながら、リーズナブルな価格で提供されています。

まとめ

三重県産青サノリは、その豊富な栄養価と健康効果、リーズナブルな価格で、日常の食生活に取り入れる価値が高い食品です。特に、ラムナン硫酸の含有量が高く、抗がん作用やヒアルロン酸の分解を阻害する働きがあることが注目されています。毎日の味噌汁に加えたり、スナックとして摂取したりすることで、健康と美容の両方に効果が期待できます。また、水溶性食物繊維の補給源としても優れているため、特に現代人が不足しがちな食物繊維を補うのに適しています。このように青サノリは、日本の食文化の中で健康的な生活をサポートする優れた食材と言えるでしょう。

2024/01/05

健康講座813  「日常の小さな工夫で健康をサポート:セブンイレブンのゆで卵から社会的繋がりまで」

 皆さん、どうもこんにちは。






私たちの健康は、大きな病気や事故だけでなく、日常の生活習慣や食事、さらには心の健康にも影響されています。今回は、日常生活の中でできる小さな工夫を取り入れて、心身の健康をサポートする方法についてお話しします。

まずは、セブンイレブンの「とろっとゆで卵」から。この卵は、ビタミンCと食物繊維以外の全ての栄養素を含む完全栄養食として知られています1。特に高齢者の方にとって、筋肉量の減少や基礎代謝の低下は避けたい問題です。この「とろっとゆで卵」は無添加で、タンパク質を豊富に含んでいるため、筋肉の維持や構築に役立ちます2

さらに、外に出ることの重要性について。外出は気分転換にもなり、社会的なつながりを作ることができます。孤立感は心の健康にとって大きなリスク要因となり得るので、外出を通しての人との交流は非常に大切です3。また、新しい刺激を受けることで、脳細胞が活性化され、認知症の予防にも繋がるとされています4

しかし、昨今の日本では様々な問題が起こっています。特に高齢者の方々の孤立や健康問題は、社会全体の課題となっています。これに対処するためには、地域や家族、そして自分自身の意識改革が必要です。

結論として、健康の維持や向上には、食事や運動だけでなく、心の健康や社会的繋がりも大切です。日常の小さな工夫を取り入れることで、より健やかな毎日を送ることができるのです。

皆さんも、日常生活の中で健康を意識し、小さな工夫を取り入れてみてはいかがでしょうか。


Footnotes

  1. [栄養成分表による解析結果、日本栄養学会]

  2. [筋肉の健康とタンパク質の関係、日本筋肉学会誌]

  3. [社会的孤立と心の健康、心の健康研究所]

  4. [外出と脳の健康、認知症予防研究所]

2024/01/02

健康講座812 「日常の食生活におけるたんぱく質の重要性:小川糖尿病内科クリニックによる健康講座」


 はじめに、現代の健康意識が高まる中で、たんぱく質の重要性が再び注目されています。筋トレや健康維持のために、たんぱく質の適切な摂取は不可欠です。2013年に623億円だったプロテイン市場は、2023年には2580億円に拡大する見込みであり、これはたんぱく質への関心の高まりを示しています。

たんぱく質の摂取量は個人の活動量や年齢、健康状態によって異なります。たとえば、60歳で活動量が少ない男性の場合、1日に必要なたんぱく質量は約77〜110gです。この量は、体の筋肉量や代謝の維持、身体機能の正常な動作を支えるのに必要な量です。

たんぱく質を多く含む食品には、肉類、魚類、卵、乳製品、豆類、一部の穀物があります。例えば、鶏むね肉は100gあたり約20〜30gのたんぱく質を含み、カロリーが低いため、栄養豊富で調理しやすい食品です。同様に、するめいかも100gあたり17.9gのたんぱく質を含み、低カロリーで栄養価が高いです。

また、鶏卵は1個あたり約8gのたんぱく質を含み、手軽に摂取できる優れた食品です。牛乳も1カップ(200ml)で約7gのたんぱく質を含みますが、カロリーが意外に高いため、過剰摂取には注意が必要です。大豆製品もたんぱく質が豊富で、絹ごし豆腐1丁(300g)には約16gのたんぱく質が含まれます。

主食としての穀物もたんぱく質源として重要です。白米、パン、パスタなどにはそれぞれ異なる量のたんぱく質が含まれています。特にパスタは100gあたり約12.9gのたんぱく質を含み、小麦を使用した食品にはグルテンというたんぱく質が含まれています。

健康的な食生活を送るには、様々な食品をバランス良く組み合わせることが重要です。農林水産省の『食生活指針』では、多様な食品を組み合わせることが勧められています。たんぱく質だけでなく、ビタミンやミネラルなどの栄養素も適切に摂取することが、全体的な健康の維持に役立ちます。

この記事では、たんぱく質が多く含まれる食品について詳しく説明し、それらを日常の食生活にどのように取り入れることができるかに焦点を当てました。個々のニーズに合わせた食事計画を立て、健康的な生活を送るための一助となれば幸いです。

2024/01/01

健康講座811  「オリーブオイルと日本人の健康:摂取の利点とバランスについて」

 



オリーブオイルとは?

オリーブオイルは、オリーブの果実から抽出される油で、地中海料理に欠かせない成分です。特にエクストラバージンオリーブオイルは、加工を最小限に抑えた高品質のオイルで、多くの健康効果が報告されています。

オリーブオイルの健康効果

  1. 心血管疾患のリスク低減:オリーブオイルに含まれる一価不飽和脂肪酸は、心臓病のリスクを低減することが知られています。

  2. 抗炎症作用:オリーブオイルには抗炎症作用があり、関節炎や他の炎症性疾患の緩和に役立つとされています。

  3. 抗酸化作用:ビタミンEなどの抗酸化物質が豊富で、細胞の酸化を防ぎ、老化の遅延やがんの予防に貢献する可能性があります。

日本人とオリーブオイル

日本人の食生活では、すでに植物油の摂取量が高いとされています。そのため、西洋人と比べてオリーブオイルを積極的に摂取することによる追加的な健康効果は限定的かもしれません。日本の伝統的な食事は、既に心血管疾患のリスクを低減するとされているため、オリーブオイルを取り入れることの必要性は、西洋の食生活とは異なります。

結論

オリーブオイルは多くの健康効果を持つ食品ですが、日本人の場合は既に摂取している植物油とのバランスを考える必要があります。オリーブオイルを食生活に取り入れる際は、他の油脂の摂取量を調整することが重要です。栄養バランスを考慮した上で、健康的な食生活を目指しましょう。

この健康講座は、オリーブオイルに関する一般的な情報を提供するものです。個々の健康状態や食生活に関する具体的なアドバイスは、医師や栄養士にご相談ください。

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...