2026/09/03

健康講座1053 FreeStyleリブレ2はレントゲンで外さなくていい? 2026年7月の変更を、やさしく解説します

 



更新:2026年9月

皆さん、こんにちは。

FreeStyleリブレ2を使っていると、「今度レントゲンを撮るんだけど、センサーは外したほうがいいの?」と気になることがありますよね。

これまでは、X線撮影、CT、MRIの前にはセンサーを外すよう案内されていました。リブレ2のセンサーは、いったん外すと再利用できません。そのため、検査のためだけに新しいセンサーへ交換する必要があり、費用もかかりますし、測定データが途切れてしまうこともありました。

ところが、2026年7月末に、この扱いが変わりました。

先に結論:一般のレントゲンとCTは、原則そのままで大丈夫

2026年9月時点で確認できる日本向けの公式情報では、FreeStyleリブレ2は、一般的なレントゲン撮影とCT検査であれば、センサーを装着したまま受けられます。

2026年7月31日、アボットジャパンは、FreeStyleリブレ2の添付文書や取扱説明書などにあたる「表示材料」を改訂しました。以前は「X線、MRI、CT検査の前にはセンサーを外す」という注意書きでしたが、改訂後はX線とCTの記載がなくなり、MRIだけが残っています。[アボットジャパンの改訂案内(PDF)](https://www.myfreestyle.jp/hcp/news/pdf/pdf-260731-01.pdf)

日本診療放射線技師会も、この変更を受けて、リブレ2は一般のX線撮影やCTでは、原則としてセンサーを外す必要がなくなったと案内しています。MRIについては、これまでどおり取り外しが必要です。[日本診療放射線技師会のお知らせ](https://www.jart.jp/news/info/20260807)

検査ごとの扱いを簡単にまとめると、次のとおりです。

検査センサーの扱い
一般のレントゲン、X線撮影原則、装着したままで可
CT検査原則、装着したままで可
MRI検査検査前に取り外す
放射線治療、長時間の透視、血管造影など一般のレントゲンと同じとは限らないため、事前確認が必要

ただし、センサーを装着したまま検査を受ける場合でも、受付や検査室で「FreeStyleリブレ2を装着しています」と必ず伝えてください。センサーが画像に写り込むことがあるためです。

センサーを外さなくてよくなったことで、検査のたびに新しいセンサーへ交換する必要がなくなり、測定期間を途切れさせずに済みます。岡山大学病院の案内でも、標準的なX線・CT検査中は測定が中断されないと説明されています。[岡山大学病院の案内](https://www.ouhp-dmcenter.jp/project/donats/x%E7%B7%9A%E3%83%BBct%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E4%B8%AD%E3%81%AEfreestyle%E3%83%AA%E3%83%96%E3%83%AC2%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BC%E5%8F%96%E3%82%8A%E6%89%B1%E3%81%84%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B/)

一方で、検査中にスマートフォンやReaderを検査室の外に置く場合は、その間の画面表示やアラートを確認できないことがあります。センサーをつけたままでよいことと、検査中に端末を使えることは、別の話です。

7月に変わったのは、センサーではなく公式の案内

ここは少しややこしいところです。

今回の変更は、2026年7月にセンサーの中身が新しくなった、という意味ではありません。アボットジャパンの案内には、製品性能そのものに変更はないと記載されています。

変わったのは、利用者や医療機関が確認する添付文書、取扱説明書、個装箱、アプリの説明書などの記載です。正確には、添付文書だけでなく、複数の公式な「表示材料」が改訂されました。

「添付文書」というのは、その医療機器を何に使うのか、どう使うのか、どのような注意が必要なのかをまとめた公式文書です。「使用してはいけない条件」や、起こる可能性のある不具合についても書かれています。

アボットジャパンによると、改訂された表示材料は2026年10月以降に出荷される製品から順次使われる予定です。そのため、しばらくの間は、以前の説明書が入った製品も流通する可能性があります。

手元の説明書に「X線やCTの前には外してください」と書いてあっても、必ずしもセンサー自体が別物ということではありません。説明書の切り替えに時間差があるためです。迷ったときは、現在の公式情報と、検査を受ける医療機関の指示を確認しましょう。

FreeStyleリブレ2は、何を測っているの?

FreeStyleリブレ2は、CGMという機器です。

CGMは、Continuous Glucose Monitoringの略で、日本語では「持続グルコース測定」といいます。上腕の後ろ側に小さなセンサーを貼り、センサーの先端を皮下に置いて、体の中のグルコースを連続的に測定します。

ここで測っているのは、血液そのものではありません。センサーが見ているのは、細胞と細胞の間にある「間質液」という液体の中のグルコースです。

血液中のグルコースが間質液に反映されるまでには、少し時間差があります。そのため、食後や運動後、インスリンを使った後のようにグルコースが急に変化する場面では、指先で測る血糖値とリブレの値が一致しないことがあります。

今回、X線やCTとの関係で問題になっていたのは、X線が血糖値を変えるかどうかではありません。センサー内部の電子部品が影響を受けて、壊れたり、誤った値を表示したり、通信できなくなったりしないか、という点です。

「体への影響」と「機器の測定機能への影響」は、分けて考える必要があります。

レントゲン・CTとMRIは、同じ画像検査でも仕組みが違う

レントゲンとCTはX線を使う

一般のレントゲン撮影では、X線を体に当てます。体の組織によってX線の通り抜け方が違うため、その差が画像になります。

CTもX線を使う検査です。体の周囲からいろいろな方向にX線を当て、コンピューターで体の断面画像を作ります。単純なレントゲンとCTでは画像の作り方が違いますが、どちらも基本的にはX線を利用しています。

X線は「電離放射線」と呼ばれます。これは、物質をつくる原子から電子をはじき出すほどのエネルギーを持つ放射線、という意味です。人体だけでなく、電子機器にも、照射量や照射条件によっては影響を与える可能性があります。

以前のリブレ2では、X線やCTの影響が十分に評価されていないという理由から、安全のためにセンサーを外すよう案内されていました。今回、試験結果などを踏まえて、その注意書きが見直されたと考えられます。

MRIは磁石と電波を使う

MRIは、X線を使いません。強い磁場と、磁場を変化させる仕組み、高周波の電波を使って体の内部を画像にします。

「放射線を使わないなら、MRIのほうが機器にも安全なのでは」と思うかもしれません。しかし、医療機器にとっては、X線とは別の危険があります。

MRIの強い磁場によって、金属を含む部品が引っ張られたり、向きが変わったりする可能性があります。また、高周波によって部品が熱くなったり、電子回路が誤作動したりすることもあります。

日本向けFreeStyleリブレ2の添付文書には、センサーに金属が含まれているため、MRI検査では、装置への吸着、故障、破損、火傷などのおそれがあると記載されています。MRIの前には、必ずセンサーを外してください。[PMDA掲載のFreeStyleリブレ2センサー添付文書](https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/ResultDataSetPDF/100159_30300BZX00119000_B_01_02)

今回の変更は、「X線とCTは装着したままでよくなったが、MRIまで大丈夫になった」という意味ではありません。X線・CTとMRIは、はっきり分けて考える必要があります。

なぜ「レントゲンとCTは大丈夫」と判断されたのか

今回の変更には、公式文書の見直しだけでなく、リブレのセンサーを実際に放射線環境に置いて機能を調べた試験も関係しています。

アボットの公式FAQ

アボットの日本向けFAQでは、MRIの場合は検査前にセンサーを取り外す必要がある一方、X線とCTについては、試験によってセンサーが影響を受けないことが示されたため、装着したまま使用できると説明されています。

同じFAQには、センサーをつけたままX線やCTを受けると、撮影する場所や条件によっては、センサーが画像に写り込む可能性もあると書かれています。[アボット公式FAQ](https://www.freestyle.abbott/ja-jp/support/faq-54.html)

ここでいう「影響を受けない」とは、通常の検査でセンサーの測定機能が壊れたり、検査によって測定値が系統的に変化したりすることが確認されなかった、という意味です。どんな放射線を受けても絶対に故障しない、という意味ではありません。

FreeStyleリブレ2を対象にした試験

2023年に発表された研究では、FreeStyleリブレ、FreeStyleリブレ2、FreeStyleリブレ3のセンサーについて、X線、CT、MRIの影響が調べられました。

X線とCTの試験では、センサーに模擬的なグルコースデータを読み込ませたうえで、放射線を当てました。センサーに直接当てる条件、周囲から影響を受ける条件、散乱線を受ける条件などを設定し、その後もセンサーが機能するか、データが保たれるか、設定したグルコース濃度に対する反応が変わらないかを確認しています。

FreeStyleリブレ2では、X線を試験全体で20回、CTを10回照射する評価が行われました。通常の一回の診断検査で想定される条件を上回る、比較的厳しい条件も含まれています。

結果として、X線・CTの後もセンサーの機能とデータは保たれ、測定値のずれも試験の許容範囲内でした。研究報告の表では、FreeStyleリブレ2の誤差は、許容基準の10mg/dL以下に対して1mg/dL未満でした。[Matievichらの原著論文](https://doi.org/10.1177/19322968221106206)

この結果は、リブレ2そのものを対象にした技術的な根拠として重要です。ただし、読み方には注意が必要です。

この研究は、実際の患者さんを病院で長期間追跡した臨床研究ではなく、センサーを使った実験室内の機能評価です。使われたセンサーの数も多くありません。また、研究費はアボットが負担し、著者はアボットの社員でした。

そのため、この研究だけから「どんな条件でも絶対に壊れない」と言うことはできません。一方で、リブレ2を対象に、X線やCTを直接・間接・散乱の条件で当てて機能を確認し、問題がなかったという点は、今回の公式案内を理解するうえで有力な材料です。

別モデルを使った日本の研究

2019年には、日本の研究者らがFreeStyleリブレProのセンサー50個を使い、胸部X線、CT、放射線治療、MRIの影響を調べています。

各条件に10個ずつのセンサーを割り当て、検査前後の記録データを比較したところ、データを読み取れない、エラーが出るといった問題はなく、検査前後で記録に変化は認められませんでした。[藤田医科大学の研究紹介](https://pure.fujita-hu.ac.jp/en/publications/are-the-recorded-data-of-flash-glucose-monitoring-systems-influen/)

ただし、この研究の対象はFreeStyleリブレProであり、現在のリブレ2と完全に同じ製品ではありません。そのため、これは補助的な根拠として見るのが適切です。特にMRIについては、日本向けのリブレ2の現行添付文書が取り外しを求めています。過去の研究結果だけを理由に、MRIへ装着したまま入ることはできません。

「センサーが画像に写る」ことと「センサーが壊れる」ことは別

「センサーが画像に写り込む」と聞くと、検査中にセンサーが壊れるのではないかと思うかもしれません。しかし、この二つは別の話です。

画像の中に、体の構造ではない機器や金属が写ると、白い影や黒い影、線状の乱れが出ることがあります。こうした画像上の乱れを「アーチファクト」と呼びます。

アーチファクトによって、画像を読みにくくなったり、センサーの近くにある小さな病変が見えにくくなったりすることがあります。画像を確認する医師は「読影医」と呼ばれますが、読影医が画像を読むとき、センサーの存在を知っていれば、その影響を考慮できます。

そのため、レントゲンやCTではセンサーを外さなくてもよい一方で、検査担当者には必ず装着を伝える必要があります。

センサーは直径約35mm、厚さ約5mmの小さな機器です。先ほど紹介した試験では、X線やCTの画像上でセンサーを確認できるものの、画像への影響は小さいと報告されています。ただし、実際の影響は、センサーの位置、撮影する部位、装置、撮影条件によって変わります。

検査当日はどうすればいい?

通常の胸部レントゲン、骨のレントゲン、腹部のレントゲンなどを受ける場合は、現在の公式情報上、センサーを自分で外す必要はありません。CTも同じです。

受付や検査室で、「FreeStyleリブレ2を上腕に装着しています」と一言伝えれば大丈夫です。もし医療機関側から個別の指示があった場合は、その施設の指示を優先してください。

スマートフォンやReaderを検査室へ持ち込めるかどうかは、センサーの扱いとは別に、病院のルールに従います。端末を検査室の外に置く場合は、検査中に画面を確認したり、アラートを受け取ったりできない可能性があります。

MRIを受ける場合は、検査室に入る前に必ずセンサーを取り外します。いったん外したセンサーは再利用できないため、検査後は新しいセンサーが必要です。MRIの予約が決まったら、センサーの交換時期や予備のセンサーについて、主治医や医療機関に早めに相談しておくと安心です。

検査後に、センサーの表示がおかしい、体調と数値が合わない、低血糖や高血糖のような症状がある、といった場合は、指先で測る血糖測定器で確認してください。測定値と自覚症状が一致しない場合に血糖測定器で確認することは、リブレ2の添付文書でも案内されています。

すべての放射線検査に、そのまま当てはまるわけではない

今回の変更は、日本向けのFreeStyleリブレ2センサーについてのものです。

初代FreeStyleリブレ、FreeStyleリブレPro、Dexcomなど他社のCGM、インスリンポンプに、同じ扱いが自動的に当てはまるわけではありません。医療機器は、製品ごとに内部構造や試験結果、公式の注意事項が異なるためです。

また、「X線」と呼ばれる検査でも、一般の胸部レントゲンや通常のCTと、放射線治療、長時間の透視、血管造影、CT透視などでは、照射量や照射時間、放射線の当たり方が大きく異なる場合があります。

今回の改訂を、特殊な高線量検査や放射線治療にまで広げて考えることはできません。米国食品医薬品局(FDA)も、X線、CT、透視、血管造影などでは、装着している機器の種類や照射範囲を確認するよう説明しています。特に高エネルギーの放射線治療は、一般の画像検査とは分けて考える必要があります。[FDA:糖尿病用ウェアラブル機器と画像検査・放射線治療](https://www.fda.gov/radiation-emitting-products/electronic-medical-devices-x-ray-imaging-and-radiation-therapy-what-know-and-how-prevent-damage/preventing-damage-wearable-diabetes-devices-during-imaging-and-radiation-procedures)

空港のボディスキャナーや手荷物検査のX線装置も、医療機関の一般的なレントゲンと同じ扱いとは限りません。今回の変更を、別の機器や別の検査にそのまま広げないようにしましょう。

よくある疑問

古い説明書に「X線・CTでは外す」と書いてあります

アボットジャパンは、改訂版の表示材料を2026年10月以降の出荷品から順次使う予定としています。当面は、改訂前の説明書が入った製品も流通します。

古い説明書が手元にあること自体は、不自然ではありません。現在の公式FAQではX線・CTは装着したままで使用できると説明されていますが、実際の検査では、受検する医療機関の最新の運用も確認してください。

レントゲンを受けると、血糖値が変わりますか

今回問題になっているのは、X線が血糖値を上げたり下げたりすることではありません。センサーの電子部品や測定機能に影響が出る可能性があるかどうかです。

レントゲンやCTの後に表示値と体調が合わない場合は、X線のせいだと決めつけず、指先の血糖測定で確認してください。

センサーが写って、レントゲン画像が読めなくなることはありますか

センサーが画像に写り込む可能性はありますが、必ず画像が読めなくなるという意味ではありません。撮影部位とセンサーの位置によって影響は変わります。

あらかじめ装着を伝えておけば、検査担当者や画像を読む医師が、その影響を考慮できます。

まとめ

FreeStyleリブレ2を使っている方にとって、今回の変更はかなり実用的なものです。

2026年7月末のアボットジャパンによる表示材料の改訂により、日本向けのFreeStyleリブレ2は、一般のレントゲン撮影とCT検査では、原則としてセンサーを装着したまま受けられるようになりました。検査のたびにセンサーを外して交換する必要がなくなり、測定期間を途切れさせずに済みます。

この変更は、アボットの公式資料だけでなく、日本診療放射線技師会の案内でも確認できます。また、リブレ2を含むセンサーを使った放射線照射試験でも、X線・CT後の機能維持が確認されています。

ただし、「どんな放射線検査でも絶対に大丈夫」という意味ではありません。センサーが画像に写る可能性はあるため、検査担当者には必ず装着を伝えます。放射線治療、長時間の透視、血管造影などは、個別に確認しましょう。

そして、MRIは今も別扱いです。MRIを受けるときは、これまでどおり検査前にセンサーを取り外してください。

覚えておくことは、これだけです。

一般のレントゲンとCTは、リブレ2を装着したまま。MRIは、これまでどおり外す。どの検査でも、まず医療スタッフに伝える。

根拠を確認した資料

健康講座1052 重度高中性脂肪血症は「腎臓」を静かに壊している ― カイロミクロン血症候群に隠された腎障害という見えない負担 ―




皆さんこんにちは。

今日は2026年に発表された最新の医学論文
「The hidden burden of kidney damage in chylomicronemia syndromes」
(カイロミクロン血症候群における“隠れた腎障害の負担”)
を、できるだけ噛み砕いて解説します。

この研究はとても重要です。

なぜなら、

👉 「中性脂肪が極端に高い人では、実は腎臓がかなりの頻度で傷んでいる」

という事実を、病理レベル(腎生検)と実臨床データの両面から証明したからです。


まず結論から

この論文の核心はこれです:

✅ 重度のカイロミクロン血症では

  • 約35%が蛋白尿

  • 約50%で腎機能低下

  • 約40%で過剰濾過(腎臓の酷使状態)

が見られ、

さらに

✅ 腎生検では

  • 糸球体に脂質が沈着

  • 泡沫細胞(脂肪を食べた細胞)が侵入

という**“脂質による腎障害”**が直接確認されました。

つまり:

中性脂肪が異常に高い状態そのものが、腎臓を物理的に壊している

ということです。


そもそも「カイロミクロン血症」とは?

少し整理します。


● カイロミクロンとは?

食事で摂った脂肪を運ぶ超大型リポ蛋白です。

通常は数時間で消えます。

しかし、

  • 遺伝的異常

  • インスリン抵抗性

  • 糖尿病

  • アルコール

  • 肥満

などが重なると、

血液中にずっと残り続けます。

これが

カイロミクロン血症

です。


● 2つのタイプ

この論文では次の2群を解析しています。

① FCS(家族性カイロミクロン血症)

  • 遺伝子異常が原因

  • 若い頃からTGが1000mg/dL超

  • 非常に稀

② MCS(多因子性)

  • 遺伝+生活習慣の合わせ技

  • 圧倒的に多い


研究方法

この研究は2段構えです。


① 腎生検(3名)

重度高TG+蛋白尿の患者3名に腎生検を実施。


② 国際コホート解析(84名)

イタリアとカナダの

  • FCS:38人

  • MCS:46人

計84人のカルテを後ろ向き解析。


腎障害の定義は:

  • 蛋白尿あり

  • eGFR<90

  • eGFR<60

  • または過剰濾過(≥105)


結果(かなり衝撃的)


● 腎生検で何が見えたか?

3人全員に共通していたのは:

🔴 糸球体に脂質沈着

🔴 泡沫細胞の浸潤

つまり:

血液中の脂肪がそのまま腎臓に入り込み、組織破壊を起こしている。

これは

lipid-associated nephropathy
(脂質関連腎症)

と呼ばれます。


● 84人の臨床データ

蛋白尿:35%

eGFR低下:49%

eGFR<60:8%

過剰濾過:41%

めちゃくちゃ多いです。


しかも、

高血圧と糖尿病が

  • 蛋白尿

  • 腎機能低下

の独立した悪化因子でした。


ここが最大のポイント

従来、

高TG → 急性膵炎

ばかり注目されていました。

しかし実際には:


❌ 腎臓も静かに壊れている

しかも

  • 痛くない

  • 自覚症状なし

  • 気づいた時は進行済み

という最悪のタイプ。


専門用語を超シンプルに


● eGFR

腎臓の濾過能力。

100が正常。

60以下は慢性腎臓病。


● 蛋白尿

腎臓のフィルター破壊サイン。

出た時点でアウト。


● 過剰濾過

一見eGFRが高く見えるが、

実は腎臓が無理して働いている危険状態。

糖尿病初期と同じ。


● 泡沫細胞

脂肪を大量に食べてパンパンになった免疫細胞。

動脈硬化と同じ現象。


医師としての臨床的まとめ

これはかなり重要な論文です。

なぜなら:


今まで

TG高値 → 膵炎だけ警戒


これからは

TG高値 →

✅ 尿検査
✅ eGFR
✅ アルブミン尿

も必須。


特に:

  • TG > 500

  • 糖尿病合併

  • 高血圧あり

この3つが揃った人は、

腎臓ハイリスク群

です。


最終メッセージ

この論文が教えてくれる本質は:


脂質は血管だけでなく、
腎臓の糸球体も直接壊す


そして

腎障害は“合併症”ではなく
“中核病態の一部”

です。


つまり:

重度高中性脂肪血症=腎疾患予備軍

これは今後の診療概念を変える内容です。



2026/09/02

健康講座1051 🫀肥満と心不全の関係をやさしく解説 〜太っていると心不全は悪い?それとも守られている?本当のところ〜

 


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皆さんこんにちは。
今回は「肥満と心不全」の関係について、最新の医学論文(Journal of the American College of Cardiology)をもとに、

👉 患者さんにもわかりやすく
👉 でも医学的に正確に

解説していきます。


■ まず結論から

👉 実は…

太っている=必ず悪い、ではありません

👉 むしろ心不全では

痩せすぎの方が危険なこともある


👉 ただし

太りすぎはやはり良くない


👉 つまり

「ちょうどいい体の状態」が一番大事


■ 心不全ってどんな病気?

● 心不全とは

👉 心臓のポンプ機能が弱くなり
全身に血液をうまく送れなくなる状態


● 今回のテーマ:HFrEF(エイチフレフ)

👉 「収縮不全型心不全」と呼ばれます


📝専門用語解説

HFrEF(Heart Failure with reduced Ejection Fraction)
→ 心臓の「押し出す力」が弱くなった心不全

駆出率(EF)
→ 心臓が血液をどれくらい送り出せているかの割合
(正常は50〜60%くらい)


■ 心不全の人は太っている人が多い?

👉 実は

心不全の患者さんの多くは「過体重〜肥満」


👉 でもここで疑問

「じゃあ太っているから心不全になるの?」


👉 結論

そこはハッキリしていません


■ なぜはっきりしないの?

● 理由① BMIの問題


📝専門用語解説

BMI(体格指数)
→ 体重 ÷ 身長² で計算される指標


👉 問題は

  • 筋肉が多くてもBMIは上がる

  • 脂肪が多くても同じBMI


👉 つまり

「質」が分からない


■ 有名な現象:肥満パラドックス

● これは何?

👉 心不全では

太っている人の方が長生きすることがある


👉 これを

肥満パラドックスと呼びます


■ なぜそんなことが起きるの?

いくつか理由があります👇


① 体力・エネルギーがある

👉 心不全は体が消耗する病気

  • 食欲低下

  • 筋肉減少


👉 そのため

余力がある人の方が耐えやすい


② 筋肉量の差

👉 太っている人は

筋肉も多いことが多い


👉 一方で

痩せている人は

筋肉が少ない(サルコペニア)


📝専門用語解説

サルコペニア
→ 加齢や病気で筋肉が減る状態
→ 予後(将来の状態)を悪くする


③ 早く治療される

👉 太っている人は

  • 症状が目立ちやすい

  • 早く病院に来る


👉 結果

治療開始が早い


■ じゃあ太っていた方がいいの?

👉 これは違います(重要)


■ 肥満が心不全を悪化させる理由

① 炎症が起きる


📝専門用語解説

炎症
→ 体の中で起きる「軽い火事」のような状態


👉 内臓脂肪が増えると

  • 炎症物質が出る

  • 心臓にダメージ



② ホルモンのバランスが崩れる


📝専門用語解説

神経体液性因子(しんけいたいえきせい)
→ 血圧や心臓を調整するホルモン系


👉 肥満でこれが乱れると

  • 心臓に負担

  • 心不全が進む



③ 心臓に負荷がかかる

👉 体が大きいと

  • 血液量が増える

  • 心臓の仕事量が増える


👉 結果

心臓が疲れる



④ 脂肪がホルモンのように働く

👉 脂肪はただの「貯金」ではありません


👉 実は

体に影響を与える物質を出す臓器


👉 心臓にも悪影響


■ じゃあ痩せればいいの?

👉 ここが難しいポイントです


■ 痩せすぎは危険

👉 特に心不全では

痩せすぎ=リスク高い


理由👇

  • 栄養不足

  • 筋肉減少

  • 免疫低下


👉 これは

生命予後に直結


■ じゃあどうすればいいの?

👉 結論はシンプル


■ ベストな考え方

👉

「体重」ではなく「体の中身」を見る



● 大事なのはこれ👇

  • 筋肉量

  • 脂肪の質(内臓脂肪)

  • 栄養状態



■ 理想的な状態

👉

✔ 痩せすぎていない
✔ 太りすぎていない
✔ 筋肉がある


👉

これが一番予後が良い


■ 最近話題のダイエット薬は?

👉 GLP-1などの薬があります


👉 ただし

心不全(HFrEF)ではまだデータが少ない


👉 特に注意

筋肉まで減ってしまう可能性


👉 つまり

自己判断でのダイエットは危険


■ まとめ(超重要)

👉

  • 太っている=必ず悪いではない

  • 痩せている=良いでもない


👉 本当の答えは


■ 最終結論

👉

「ちょうどよい体の状態を保つこと」


👉 具体的には

  • バランスの良い食事

  • 軽い運動(無理しない)

  • 筋肉を減らさない



■ 最後に

このテーマはとても大事です。

👉 「とにかく痩せろ」という時代は終わり


👉 これからは

「質の良い体を作る」時代




2026/09/01

健康講座1050 心肺機能の「ポートフォリオ理論」 ― HIIT(レバレッジ)× Zone2(自動積立)で、一生伸びる身体を作る




最初に結論

  • ミトコンドリア増加は、低強度“だけ”の専売特許ではない
    → 約6,000人規模の統合解析で、低〜中強度(ET)も高強度(HIT/SIT)も、ミトコンドリア関連指標は同程度に増える(群間差は有意でない)。 (PMC)

  • ただし「時間効率」は高強度が強い
    → 同じ1時間なら、HIT/SITのほうが増加効率が高い。 (PMC)

  • 長期の伸びは「土台(低強度)」×「刺激(高強度)」が回りやすい
    → ポラライズド(低強度多め+高強度少し)がVO₂peak改善で優位という研究・メタ解析がある。 (PMC)

  • 注意:毛細血管が“低強度が必ず5〜10%有利”とは言い切れない
    → 先ほどの約6,000人統合解析では、毛細血管(capillaries per fiber)は強度カテゴリー間の差が有意ではない(P=0.556)。 (PMC)

ここまでが「事実として固い芯」です。


1) 「ゆるい有酸素(Zone 2)」って結局どれ?

難しい用語は一旦捨ててOK。判断はこれだけで十分です。

✅ Zone 2のいちばん確実な定義(一般向け)

  • 会話できる:隣の人と普通に話せる(息が切れて文章が途切れない)

  • ちょい汗:運動はしているけど、追い込んでない

  • 「これで足りる?」と不安になるくらいが正解

心拍で管理したい人のために、目安も置いておきます。

心拍ゾーン早見(目安)

最大心拍の雑な目安:220 − 年齢(誤差が大きいので会話テスト優先)

Zone 2 ≒ 最大心拍の60〜70%

  • 40歳:HRmax 180 → 108〜126

  • 45歳:HRmax 175 → 105〜123

  • 50歳:HRmax 170 → 102〜119

  • 55歳:HRmax 165 → 99〜116

  • 60歳:HRmax 160 → 96〜112


2) 「ゆるい有酸素でしかミトコンドリアは増えない」は本当?

結論:今のエビデンスでは、かなり怪しい。

約6,000人のデータをまとめた統合解析では、筋肉のミトコンドリア関連指標の増加は、

  • ET(低〜中強度の持続運動):+23%

  • HIT(高強度インターバル/高強度):+27%

  • SIT(スプリント・インターバル):+27%

で、強度カテゴリー間の差は有意ではありません。 (PMC)

さらに重要なのが「時間効率」。

同じ論文で、**“1時間あたり”**に直すと

  • SITはETより約3.9倍

  • HITはETより約1.7倍
    効率的だと整理されています。 (PMC)

つまり、ここはこう言い切って大丈夫です。

ミトコンドリアを増やすだけなら、ゆるい有酸素“だけ”が最適ではない。
時間あたりの効率は、高強度が強い。


3) じゃあ、ゆるい有酸素の価値はどこにある?

ここからが本題です。

3-1) まず「毛細血管は低強度が有利」と断定はできない

ありがちな話として
「低強度の方が毛細血管が増える」
と言い切りたくなる。

でも、同じ約6,000人の統合解析では、毛細血管(capillaries per fiber)は

  • **ET 15% / HIT 13% / SIT 10%**増えたものの、
    強度カテゴリー間の差は有意ではありません(P=0.556)。 (PMC)

なので正確にはこうです。

毛細血管は「強度だけ」で決まるものではない。
期間、頻度、総量、回復、元の体力…“積み方”が効く。

3-2) それでもZone 2が“必要”になる、現実的で強い理由

結局、身体を長期で伸ばす最大の要因はこれです。

続くこと。総量が積めること。回復を壊しにくいこと。

高強度は効く。
でも、高強度ばかりだと「増やしにくいもの」が出てくる。

そして、やりすぎ高強度にはリスクもある。
Flockhartらは、高強度を過剰に増量するモデルで、状況によってはミトコンドリア機能や耐糖能に不利な変化が起き得ることを示しています。 (PubMed)

だから整理すると、こうなる。

  • HIIT=レバレッジ(短期で増える。だが用量ミスると壊れる)

  • Zone 2=自動積立(派手さはないが、回る。総量が積める)


4) エリートが「二刀流(ポラライズド)」を選ぶ理由

世界の持久系トップは、だいたい二刀流です。

  • ゆるい日が多い

  • 追い込む日は少ない

  • 中途半端は少ない

代表例として、Stöggl & Sperlich(2014)は
ポラライズド群が9週間でVO₂peak +11.7%、HIIT中心群は**+4.8%**という結果を報告しています。 (PMC)

さらに、Oliveiraら(2024)のメタ解析でも、
VO₂peak改善はポラライズドが他モデルより優位という結論が示されています(特に短期介入や高トレーニング者で)。 (PubMed)

重要なのはここ。

「低強度だけ」でも「高強度だけ」でもなく、
“両方を適切に配分したとき”が強い。


5) 忙しい人の最適解:週1HIIT+日常Zone2(これで十分)

競技者みたいに週15時間は無理。
だから“比率”ではなく“設計”に落とす。

まず覚えるのはこれだけ

「一駅ぶん歩く」+「週1回だけ追い込む」

  • 一駅ぶん早歩き(片道15分)

  • 階段を普通に上る

  • ランチを少し遠い店にする

  • 電話は歩きながら

  • 週末に40〜60分の散歩(会話できるペース)

これで、Zone 2は勝手に積み上がります。


6) 週間スケジュール(コピペで使える形)

上:メイントレ
下:日常Zone2(歩く・早歩き・ゆるジョグ)

  • :筋トレ(上)
       + 通勤・昼歩き(合計30〜60分)

  • :ゆるジョグ/早歩き(20〜40分でも可)
       + こま切れ歩き

  • :筋トレ(下)
       + 通勤・昼歩き

  • :休養寄り(歩くのはOK)
       + こま切れ合計30分

  • :ゆるい有酸素(20〜40分)or 休養
       + 歩き

  • HIIT(週1の芯)
       + 余裕あれば散歩

  • :家族散歩 or ゆるジョグ(40〜60分)


7) 最後にまとめ(科学と現実の“落としどころ”)

  • ミトコンドリア増加は「低強度だけ」が最適ではない。 (PMC)

  • 時間効率は高強度が強い。 (PMC)

  • 毛細血管は「低強度が必ず有利」と断定できない(強度差が有意でない解析もある)。 (PMC)

  • 長期で伸びやすいのは、低強度多め+高強度少しの二刀流(ポラライズド)を支持する研究・メタ解析がある。 (PMC)

  • 高強度は“増やしすぎ”が問題になり得る。 (PubMed)

だから最適解はこう。

HIITだけで人生を変えようとしない。
Zone 2で土台を“毎日自動で積み立てる”。
その上で、週1〜2回だけレバレッジ(HIIT)を入れる。
これが、最も現実的で、科学とも矛盾しにくい「心肺機能のポートフォリオ」だ。


用語集(やさしく)

  • ミトコンドリア:細胞のエネルギー(ATP)を作る工場

  • 毛細血管:酸素と栄養を運ぶ超細い血管の網

  • VO₂max / VO₂peak:取り込める酸素の最大量(心肺の能力値)

  • ET:低〜中強度で続ける有酸素

  • HIT/HIIT:高強度インターバル(息が上がるやつ)

  • SIT:さらに短く、ほぼ全力スプリント反復

  • ポラライズド:ゆるい日が大半+追い込む日が少し、の二刀流


参考文献

  • Mølmen KS, et al. Sports Medicine(ミトコンドリア・毛細血管・効率の統合解析) (PubMed)

  • Stöggl T, Sperlich B. 2014(ポラライズドの介入研究) (PMC)

  • Oliveira PS, et al. 2024(ポラライズドのメタ解析) (PubMed)

  • Flockhart M, et al. 2021(高強度増量の“上限”問題) (PubMed)



2026/08/31

健康講座1049 【完全解説】セラミドの“長さ”が皮膚を決める 〜2026年最新研究で明らかになった皮膚バリアの本質〜

 


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■ はじめに

皆さんこんにちは。

皮膚の保湿やスキンケアにおいて、「セラミド」という言葉は非常に一般的になりました。
多くの製品が「セラミド配合」をうたい、臨床でも保湿の中心的な概念として扱われています。

しかし一方で、こうした疑問を持たれることも少なくありません。

  • セラミドとはそもそも何なのか

  • なぜ重要なのか

  • どのセラミドでも同じなのか

そして今回、2026年に発表された研究により、
これらの理解を大きく更新する重要な事実が明らかになりました。

それが

👉 「セラミドは長さで機能が変わる」

という概念です。

本記事では、この研究を軸に、
セラミドの本質から臨床的意義までを、体系的に整理します。


■ セラミドとは何か

▶ 皮膚の最前線:角層

皮膚の最外層には「角層(stratum corneum)」が存在します。
厚さはわずか約10〜20μm程度ですが、生命維持に不可欠な機能を担っています。

その役割は大きく2つです。

  • 外界から身体を守る

  • 体内の水分を保持する

この機能を担う構造が、いわゆる

👉 「角層バリア」

です。


▶ レンガとセメントモデル

角層はしばしば以下のように例えられます。

  • レンガ:角質細胞

  • セメント:細胞間脂質

この細胞間脂質の主成分こそが

👉 セラミド

です。


▶ セラミドの役割

セラミドは角層の約50%を占める脂質であり、以下の役割を担います。

  • 水分蒸散の防止(TEWL抑制)

  • 外的刺激の遮断

  • 皮膚構造の安定化

つまりセラミドは単なる「保湿成分」ではなく、

👉 皮膚構造そのものを形成する物質

です。


■ セラミドの構造

▶ 基本構造

セラミドは以下から構成されます。

  • スフィンゴシン(長鎖塩基)

  • 脂肪酸

このうち今回重要なのが

👉 脂肪酸の鎖長(acyl chain length)

です。


▶ 鎖長の違い

  • C16:短鎖

  • C18〜C24:中鎖〜長鎖

  • C24〜C30:超長鎖

この違いが、皮膚機能に大きな影響を与えます。


■ ラメラ構造とバリア機能

▶ ラメラ構造とは

角層の脂質は、ランダムに存在しているわけではなく、

👉 層状(ラメラ構造)

を形成しています。

これは脂質二重層が何層にも重なった構造であり、
水分保持とバリア機能の基盤です。


▶ 鎖長とラメラ構造

ここで鎖長が重要になります。


短鎖セラミド

  • 配列が不安定

  • 隙間が生じやすい

  • 水分が漏れる


長鎖セラミド

  • 密に配列

  • 強固な構造

  • 水分保持能力が高い


つまり、

👉 鎖長=構造安定性=バリア機能

という関係が成立します。


■ 2026年論文の詳細解説

ここから本題です。


▶ 研究目的

セラミドの脂肪酸鎖の長さが、
ヒト皮膚バリアにどのような影響を与えるかを検証。


▶ 方法

2種類のセラミドを比較:

  • C16〜C24

  • C24〜C30(超長鎖)

これを含むクリームをヒト皮膚に塗布し、

  • セラミド量

  • バリア回復

  • 保湿

  • 角層結合力

を評価。


▶ 結果

✔ 超長鎖(C24〜C30)

  • C24・C26セラミド増加

  • バリア機能回復↑

  • 保湿↑

  • 角層結合力↑


✔ 中鎖(C16〜C24)

  • 保湿は改善

  • バリア改善は限定的


▶ 結論

👉 セラミドは

長いほど優れている


■ この研究の重要性

▶ ① ヒトでの証明

これまでの研究は主に

  • in vitro

  • 動物

でしたが、

👉 今回はヒト皮膚で直接確認


▶ ② 外用で内部変化

塗布により

👉 皮膚内セラミド組成が変化


これは

👉 構造レベルの介入が可能

であることを意味します。


▶ ③ 保湿概念の変化

従来:

👉 水分を補う

現在:

👉 構造を修復する


■ 臨床的意義

▶ 乾燥肌

セラミド減少により

  • TEWL増加

  • バリア低下


▶ アトピー性皮膚炎

  • セラミド低下

  • ラメラ構造破綻


👉 長鎖セラミドの補充は

病態に直接作用する可能性


▶ 高齢者皮膚

  • セラミド減少

  • 脆弱化


👉 構造補強が重要


■ よくある誤解の整理


❌ 保湿=水分補給

👉 不十分


❌ セラミド入り=十分

👉 不十分


✔ 正しい理解

👉

  • 構造

  • 配列

  • 鎖長


■ 今後の展望

今回の研究は

👉 セラミド研究の転換点


今後は

  • 鎖長設計

  • 配列制御

  • 構造再現

が重要になります。


■ まとめ


👉 セラミドは

皮膚バリアの核心


👉 その機能は

鎖長で決まる


👉 特に

C24〜C30が最重要


👉 保湿とは

構造の修復である


■ 最後に

この研究は、

「スキンケア」の概念を超え、

👉 皮膚構造の再建

という新しい視点を提示しています。


今後、保湿という言葉は単なる感覚ではなく、
より科学的・構造的な概念へと進化していくでしょう。



2026/08/30

健康講座1048 「悩まない人」はメンタルが強いのではない 心理学・心療内科・脳科学から考える「悩みを増やさない思考法」

 


「どうして自分は、こんなに考えてしまうのだろう」

仕事、人間関係、お金、将来、失敗、他人からの評価。

何か問題が起きると、そのことが頭から離れない。何度も同じことを考え、答えを探しているつもりなのに、時間だけが過ぎていく。

一方で、同じような問題が起きても、それほど引きずらず、淡々と次の行動へ移れる人もいます。

この違いを見ると、つい、

「メンタルが強い人と弱い人がいる」
「生まれつき性格が違う」
「自分は悩みやすい人間だから仕方がない」

と考えてしまいがちです。

しかし、心理学や精神医学の研究を追っていくと、もう少し違った景色が見えてきます。

重要なのは、不安やネガティブ感情が発生するかどうかではありません。

人間である以上、不安になります。腹も立ちます。失敗すれば落ち込みます。他人から否定されれば傷つきます。

違いが生まれやすいのは、そのです。

不快な出来事が起きたあと、

  • その出来事をどう解釈するのか

  • 自分の思考をどこまで事実として扱うのか

  • 同じことを何度も反芻するのか

  • 具体的な課題へ変換できるのか

  • 自分では変えられないことを手放せるのか

  • 状況に応じて目標や手段を変更できるのか

こうした「心の処理方法」が、苦痛の大きさや持続時間に大きく関係します。

つまり、「悩まない人」とは何も感じない人ではありません。

悩みを必要以上に増幅させず、処理して、次へ進む方法を持っている人

と考えた方が、現代心理学には近いのです。

今回は、こうした考え方を、認知行動療法(CBT)、ACT、メタ認知、反芻研究、問題解決療法、マインドフルネス、そして脳科学の研究まで含めて整理してみます。

なお、「考え方を変えれば何でも解決する」という話ではありません。

病気、事故、暴力、経済的困窮、職場の不当な環境など、現実そのものへの対処が必要な問題は当然存在します。

そのうえで、

現実に加えて、自分の頭の中でさらに苦しみを増やしている部分はないか

を考えてみよう、という話です。


1.悩みは「出来事そのもの」だけから生まれるわけではない

認知行動療法、いわゆるCBT(Cognitive Behavioral Therapy)の基本には、

出来事と、その出来事についての考えを分ける

という発想があります。

たとえば、

「メールを送ったが、翌日になっても返事がない」

という状況を考えてみます。

ここまでは、かなり客観的な「事実」です。

ところが人間の頭は、その先を自動的に補います。

「怒らせたのかもしれない」
「嫌われたのではないか」
「交渉は失敗した」
「自分はまずいことを言ったのではないか」

いつの間にか、

返信がない

という事実が、

嫌われた

という現実に変換されています。

しかし、両者は同じではありません。

相手が忙しいだけかもしれない。
メールをまだ読んでいないかもしれない。
単純に返信を忘れているかもしれない。

つまり、

Situation(状況)
→ Appraisal(評価・解釈)
→ Emotion(感情)
→ Behavior(行動)

という過程が存在します。

同じ出来事でも、その出来事をどう評価したかによって、その後の感情や行動は変わります。

CBTは、この認知と行動の相互作用に介入する心理療法です。

2025年にJAMA Psychiatryに発表されたCuijpersらの大規模な統合メタ解析では、成人の主要な精神疾患に対するCBTのランダム化比較試験が統一した方法で解析されました。

対象には大うつ病、不安症、強迫症、PTSD、摂食障害などが含まれ、CBTは多くの精神疾患に対して第一選択級の心理療法であることが改めて確認されています。(PubMed)

ここで大切なのは、

「ポジティブに考えればいい」

という話ではないことです。

むしろ、

「自分が今考えていることは、本当に確認された事実なのか?」

と検討する。

これが重要です。


2.「事実」と「解釈」を分けるだけで、悩みは扱いやすくなる

たとえば、

「仕事で評価が低かった」

という出来事。

ここに、

「だから自分には能力がない」
「自分には価値がない」
「今までの努力は全部無駄だった」

という解釈が追加されることがあります。

しかし、客観的に確認できる事実は、

「今回、その組織の、その評価制度で、その評価を受けた」

までです。

もちろん、本当に改善すべき点があるかもしれません。

ならば、その部分は改善すればよい。

しかし、

仕事上の評価

人間としての価値

まで結びつける必要はありません。

このように、出来事に対する意味づけを変更することは、

cognitive reappraisal(認知的再評価)

として研究されています。

2024年のClinical Psychology Reviewに掲載されたメタ解析では、うつ病や不安症を持つ人でも、認知的再評価によってネガティブ感情を低下させる能力があることが確認されています。

一方で、うつ病では健康な対照群に比べて再評価能力が低い傾向も示されています。(PubMed)

つまり、

「意味づけを変えることで感情反応は変わり得る」

という考え方には、かなりしっかりした科学的背景があります。

ただし、現実を都合よくねじ曲げるという意味ではありません。

「失敗していない」と無理やり思い込むのではなく、

「何が失敗したのかを正確に限定する」

と考える方が近いでしょう。


3.「自分はダメだ」と「自分はダメだと考えている」は違う

次に重要なのが、メタ認知です。

メタ認知とは簡単に言えば、

自分の思考を、自分で観察する能力

です。

たとえば、

「自分はダメだ」

という思考が出てきたとします。

そこで、

「ああ、自分はいま『自分はダメだ』と考えているな」

と言い換えてみる。

一見するとほとんど同じ文章です。

しかし、心理学的には大きな違いがあります。

最初の状態では、

自分=思考

になっています。

後者では、

自分

自分の中に生じた思考

の間に少し距離が生まれています。

ACT(Acceptance and Commitment Therapy)では、これに近いプロセスを、

cognitive defusion
認知的脱フュージョン

と呼びます。

フュージョンとは「融合」です。

つまり、

「頭に浮かんだ考え」と「現実」が融合してしまう。

ACTでは、その融合を少し緩めます。

2024年のACTに関する包括的な系統的レビュー・メタ解析では、67研究、9,123人が解析されました。

ACTによって、

  • 認知的フュージョン

  • 体験回避

  • 行動停滞

などの心理的不柔軟性が減少し、

  • 受容

  • 脱フュージョン

  • 現在への注意

  • 価値に沿った行動

などが改善しました。

そして、こうした心理的柔軟性の変化は、心理的苦痛の改善とも関連していました。(PubMed)

ここから見えてくるのは、

考えの内容だけでなく、「その考えとどう付き合うか」が重要

ということです。


4.感情を「言葉にする」ことにも意味がある

同じような考え方として、

affect labeling(感情ラベリング)

があります。

これは、

「腹が立つ!」

と感情そのものに飲み込まれるのではなく、

「いま、かなり怒っているな」
「不安なんだな」
「焦っているな」

と、自分の感情に名前をつける方法です。

Liebermanらの有名なfMRI研究では、ネガティブな感情刺激を見た際に、その感情を言語化すると、扁桃体などの辺縁系領域の反応が低下することが示されました。(PubMed)

もちろん、

「怒っていると言えば、怒りが消える」

という意味ではありません。

重要なのは、

感情をなくす
のではなく、

感情を観察できる位置へ少し移動する

ことです。

怒りや不安が、

「自分そのもの」

から、

「自分の中で今起きている現象」

へ変わります。

これだけでも、その後に行動を選ぶ余地が生まれます。


5.「悩むこと」と「考えること」は違う

ここが、今回の話の非常に重要なポイントです。

私たちは悩んでいると、

「一生懸命問題を考えている」

ような感覚になります。

しかし実際には、

「どうしよう」
「なんでこうなった」
「また起きたらどうしよう」
「もっと悪くなったら」
「やっぱりあの人がおかしい」

と、同じ場所を何度も回っているだけのことがあります。

心理学では、

rumination(反芻)

や、

worry(心配)

という概念があります。

これらをより広くまとめたものが、

Repetitive Negative Thinking
反復性ネガティブ思考(RNT)

です。

RNTは、特定の一つの病気だけに見られる現象ではありません。

うつ病、不安症など複数の精神疾患に共通して認められる、いわば診断横断的な心理プロセスとして研究されています。

近年のメタ解析では、CBT系の介入がRNTを有意に低下させることが確認されています。(PubMed)

さらに重要なのが、

「心配すれば問題解決が良くなるわけではない」

ということです。

問題について考えること自体は必要です。

しかし、

「心配するモード」

と、

「客観的に問題を処理するモード」

は同じではありません。

反芻が長くなるほど、

「自分は問題に向き合っている」

という感覚だけは残ります。

しかし、実際には一歩も前へ進んでいない。

これが「悩み」の厄介なところです。


6.だから、悩みを「具体的な課題」に変える

ここで登場するのが、

Problem-Solving Therapy(問題解決療法:PST)

です。

PSTでは、漠然とした苦痛を、具体的に操作可能な問題へ変換していきます。

たとえば、

「仕事が嫌だ」

という状態。

このままでは、あまりに大きすぎます。

そこで、

「何が一番嫌なのか?」

と分ける。

仕事内容なのか。
勤務時間なのか。
特定の人との関係なのか。
責任が大きすぎるのか。
通勤なのか。

さらに、

「その中で、自分が変えられる部分はどれか?」

を考えます。

そして、

「次に何をする?」

まで小さくします。

つまり、

漠然とした悩み

問題の定義

選択肢を出す

一つ選ぶ

実行する

結果を見る

という流れです。

成人うつ病に対するPSTについて、30件のRCT、3,530人を含むメタ解析があります。

全研究をまとめると比較的大きな効果が出ていましたが、研究品質の高い試験だけに限定すると効果量はHedges' g=0.34程度でした。(PubMed)

つまり、

万能ではない。

しかし、

現実的な小〜中程度の効果を持つ、研究された心理療法

です。

ここから学べるのは、

悩みを解決しようとする前に、まず「解ける形」にする。

ということです。


7.すべての問題を、同じ方法で解決しようとしない

悩みを整理すると、実用上は大きく3種類に分けられます。

① 解釈によって大きくなっている問題

「失敗したから、自分には価値がない」

これは、事実に対して非常に大きな意味づけが加わっています。

こういう場合は、

認知再評価・CBT

が向いています。


② 自分の行動によって改善できる問題

「仕事内容が曖昧でストレス」

なら、

「担当範囲を確認する」

という具体的な行動へ落とせるかもしれません。

こういう場合は、

問題解決

です。


③ 現時点では自分では変えられない問題

過去。

他人の感情。

天気。

市場。

すでに発生した出来事。

こうしたものに対して、

「なんとかしなければ」

と考え続けても、操作できないものがあります。

ここで重要になるのが、

acceptance(受容)

です。

受容とは、

「良いことだと思う」

ことではありません。

「我慢する」

ことでもありません。

すでに存在している現実を、存在していないことにしようとしない

という意味です。

この区別は非常に重要です。


8.「諦める」と「投げ出す」は同じではない

「変えられないものを受け入れる」と言うと、

「諦めろということか」

と感じるかもしれません。

しかし、本来ここで重要なのは、

思考を放棄することではなく、境界線を引き直すこと

です。

すべてを、

「頑張る」

「全部やめる」

の二択で考える必要はありません。

現実には、

  • 頻度を減らす

  • 負荷を下げる

  • 人に任せる

  • 一時的に保留する

  • 条件を変更する

  • 目標を縮小する

  • 別の目標へ移る

  • 完全に撤退する

といった中間の選択肢があります。

ここで非常に興味深いのが、近年の**goal adjustment(目標調整)**研究です。

2025年に発表された大規模メタ解析では、235研究、1,421の効果量が統合されました。

研究では、

goal disengagement
=達成困難な目標から離れること

goal reengagement
=別の目標へ再び関与すること

goal-striving flexibility
=状況に応じて目標追求を柔軟に修正すること

が検討されています。

その結果、新しい目標への再関与はwell-beingと正に関連し、抑うつや不安とは負の関連を示しました。

一方で、「目標を手放せば何でも良くなる」という単純な話でもなく、研究全体のエビデンス品質は低〜中程度と評価されています。(Nature)

重要なのは、

執念深く頑張り続けることだけが適応ではない

ということです。

状況によっては、

手段を変える。
目標を縮小する。
目標そのものを変える。

ことも、立派な適応なのです。


9.「思い通りにいかない」と「うまくいかない」を分ける

人は、計画が崩れると、

「失敗した」

と考えがちです。

しかし、

予定していた方法でできなかった

ことと、

目的を達成できない

ことは別です。

たとえば、

方法Aがうまくいかなかった。

確認できた事実は、

「方法Aではうまくいかなかった」

だけです。

そこから、

「自分には無理だ」

まで一般化する必要はありません。

逆に、何度試しても現実的に難しい場合には、

目標そのものを再検討する

柔軟性も必要です。

このため、整理すると、

価値はコンパス。
目標は仮置き。
手段は変更可能。

くらいがちょうどよいと思います。

「家族を大切にする」

という価値は長く持ち続けてもよい。

でも、

「この会社で、この役職になる」

という目標は変えていい。

「この方法で達成する」

という手段は、さらに自由に変えていい。


10.メンタルが強い人は「傷つかない人」ではない

ここまでの研究をつなぐと、

「メンタルが強い人」

というイメージそのものも変わってきます。

一般には、

  • 落ち込まない

  • 怒らない

  • 不安にならない

  • 失敗しても平気

という人を「メンタルが強い」と考えがちです。

しかし、それはあまり現実的ではありません。

不安は危険を察知するための正常な感情です。

怒りにも機能があります。

失敗して落ち込むのも、人間として自然です。

重要なのは、

感情が出たあとに戻ってこられるか

です。

不安が出る。

「不安があるな」と気づく。

自分の考えを観察する。

事実と解釈を分ける。

必要なら行動する。

変えられないなら受容する。

再び、自分が大切にしたい方向へ戻る。

この回復の方が重要です。

だから、

強さより柔軟性

という言葉の方がしっくりきます。

鋼鉄のように「絶対に曲がらない心」ではなく、

しなっても戻れる心

です。


11.マインドフルネスは「何も考えない訓練」ではない

マインドフルネスも、この文脈で理解すると分かりやすくなります。

「雑念をなくす」

のではありません。

たとえば呼吸に注意を向けているとします。

途中で、

「明日の仕事どうしよう」

と考え始める。

そこで、

「あ、仕事のことを考えていた」

と気づく。

そして、もう一度呼吸へ注意を戻す。

この、

気づく → 戻す

という反復が重要です。

つまりマインドフルネスは、

思考に巻き込まれていることに気づく練習

とも言えます。

2024年のマインドフルネスアプリに関するメタ解析では、45件のRCTが解析されました。

対照群に比べて、

  • 抑うつ:g=0.24

  • 不安:g=0.28

と、小さいながら統計学的に有意な改善が認められています。

ただし、他の積極的な心理介入と比較した場合には明確な優越性は示されませんでした。(PubMed)

つまり、

効く可能性はあるが万能ではない。

これくらいが正確です。


12.「書く」ことの本当の意味

頭の中で同じことをぐるぐる考えている時には、書き出すことも役立ちます。

ただし、

「書けば悩みが消える」

というほど単純ではありません。

重要なのは、

頭の中から外へ出すこと

です。

頭の中だけで考えていると、

事実、推測、感情、未来予測が混ざります。

そこで紙に、

事実

何が確認できているか。

解釈

自分は何を意味づけしているか。

感情

何を感じているか。

変えられること

何を操作できるか。

次の一手

具体的に何をするか。

と分けて書く。

これだけで、漠然とした悩みが構造化されます。

書くことそのものより、

外在化 → 構造化 → 行動化

まで持っていくことが重要です。

逆に、

「嫌だった」
「腹が立つ」
「許せない」

と同じ内容を何ページも書き続ければ、それ自体が反芻になることもあります。


13.「最悪を考える」は、使い方を間違えると逆効果

不安が強い時、

「最悪の場合どうなる?」

と考える方法があります。

これは使い方次第です。

悪い使い方は、

「最悪になったらどうしよう」

「さらに悪くなったら」

「その先も……」

と際限なく想像すること。

これはただの心配になりやすい。

一方で、

最悪とは具体的に何か?

その確率はどの程度か?

起きた場合の損失は?

回復可能か?

Plan Bはあるか?

まで決めて、

そこで思考を終わらせる。

こうすると、

曖昧な恐怖

有限のリスク

へ変わります。

つまり、有効なのは、

最悪を想像すること

ではなく、

最悪を有限化すること

です。


14.「自分が悪い」「相手が悪い」より、構造を見る

人間は何か問題が起こると、すぐ人格へ原因を求めます。

「あの人はやる気がない」

「性格が悪い」

「自分には能力がない」

しかし人格に原因を置くと、打ち手が減ります。

一方、

「仕事内容が曖昧ではないか」

「情報が十分伝わっているか」

「負荷が大きすぎないか」

「役割と権限が一致しているか」

「接触頻度が多すぎないか」

と考えると、変更できるものが見つかります。

もちろん、

何でも仕組みのせい

ではありません。

個人の能力や動機にも差があります。

しかし実用上、

人格を評価する前に、構造を一度見る。

という順序は非常に有用です。

対人関係でも同じです。

「なぜあの人は変わってくれないのか」

と考え続けるより、

「連絡頻度を減らせないか」

「担当を分けられないか」

「距離を取れないか」

「ルールを明確にできないか」

と考える。

相手の人格は直接操作できません。

しかし、

相手との接点

は変えられることがあります。


15.「誰のせいか」と「これからどうするか」は別問題

ここも重要です。

何か悪いことが起きた時、

「誰の責任なのか」

を考えることは必要な場合があります。

しかし、

原因責任

対応責任

は別です。

たとえば、自分の責任ではない出来事が起きた。

その原因を自分が作ったわけではない。

それでも、

「ここから自分はどうするか」

については、自分に選択権がある場合があります。

この区別をすると、

何でも自分のせいにする自己責任論

にも、

全部他人のせいにして行動不能になる状態

にも陥りにくくなります。

問いを、

「誰が悪い?」

から、

「ここから、自分が選べるものは何だろう?」

へ移す。

これだけでも、かなり行動的になります。


16.最後に戻るのは「価値」

では、最終的に何を基準に行動を決めるのでしょうか。

ACTでは、

values(価値)

が重要になります。

ここでいう価値は、

「達成すべき目標」

とは違います。

たとえば、

「年収1000万円」

は目標です。

達成すれば終わります。

一方、

「家族を大切にする」

は価値です。

終点がありません。

同じように、

「旅行へ行く」

は目標。

「新しい経験を大切にする」

は価値。

「本を100冊読む」

は目標。

「好奇心を持って学び続ける」

は価値です。

だから、

価値=人生の方向

と考えると分かりやすい。

目標は変えていい。

方法も変えていい。

でも、

「自分はどちらの方向へ進みたいか」

というコンパスがあれば、何度でも方向を修正できます。


17.「価値」は名詞より、動詞や状態にすると分かりやすい

「自由」

と言っても、具体的にはよく分かりません。

そこで、

自分で時間や場所を選べている状態

と考える。

「安心」

なら、

失敗しても戻ってこられる余力がある状態

「家族」

なら、

家族と一緒に過ごす時間を大切にしている

「好奇心」

なら、

気になったことを自由に調べ、試している

という形にする。

価値観が、

きれいな言葉

から、

日常の判断基準

に変わります。

そして不安が出たときも、

「不安をなくしてから動く」

のではなく、

「不安はある。でも、自分が大切にしたい方向へ、今日できる小さな行動は何だろう?」

と考える。

これがACT的な心理的柔軟性です。


18.心理学的に整理した「悩み処理アルゴリズム」

ここまでを、日常で使える形にまとめてみます。

何かに悩んだら、まず、

① 「いま悩んでいる」と気づく

感情を消す必要はありません。

「不安だな」
「怒っているな」

と認識します。


② 事実と解釈を分ける

確認できる事実は何か。

自分が追加した意味づけは何か。


③ 自分の思考を仮説として扱う

「絶対こうだ」

ではなく、

「自分はいま、こう考えている」

へ変える。


④ 問題を3種類に分ける

解釈の問題
→見方を検討する。

行動可能な問題
→具体的な課題へ変える。

変えられない問題
→受容・保留する。


⑤ 人格ではなく、構造も見る

自分が悪いのか。

相手が悪いのか。

だけではなく、

「この摩擦を作っている条件は何か?」

と考える。


⑥ 次の一手を小さくする

「人生を変える」

ではなく、

「明日の午前中に一本電話する」

まで小さくする。


⑦ 結果を観察する

うまくいかなかったら、

「自分はダメ」

ではなく、

「この方法ではうまくいかなかった」

と情報に変える。


⑧ 必要なら手段や目標を変更する

続けること自体を目的にしない。

現実を見て更新する。


⑨ 最後は価値へ戻る

「結局、自分はどういう方向に生きたいのか?」

を確認する。


19.ここで「脳科学」をどう考えるか

こうした話になると、

「前頭前野を鍛えれば悩まなくなる」

「扁桃体を抑えれば不安が消える」

といった説明を目にすることがあります。

これは少し単純化しすぎです。

感情や思考には、

  • 前頭前野

  • 扁桃体

  • 前部帯状皮質

  • 島皮質

  • 頭頂領域

  • 注意ネットワーク

  • 自己参照的処理に関係するネットワーク

など、多数の領域やネットワークが関与しています。

感情調整も、一つの脳部位が一方的に別の脳部位を抑えているだけではありません。

認知的再評価の神経画像研究では、前頭・頭頂系の認知制御領域などが関与し、情動処理系との相互作用が認められます。

しかし、

「悩みを司る脳領域が一個ある」

わけではありません。

だからこそ、

「脳科学的に証明された究極の悩まない方法」

という表現には注意が必要です。

むしろ、

認知、感情、注意、行動を含む複数の心理プロセスを変えることで、脳活動も変化する

と考える方が正確でしょう。


20.「考え方を変えれば何でも治る」わけではない

最後に、医学的に非常に重要なことを書いておきます。

今回紹介した方法は、

  • 日常的な悩み

  • 仕事のストレス

  • 人間関係

  • 軽い不安

  • 反芻

  • 意思決定

などを整理する上では役立つ可能性があります。

しかし、

  • 強い抑うつが続く

  • ほとんど眠れない

  • 強い不安発作がある

  • 強迫症状で生活が制限されている

  • PTSD症状がある

  • 食事や体重の問題が深刻

  • 日常生活や仕事に明らかな支障が出ている

  • 死にたいという考えが繰り返し出る

といった場合には、

「考え方の問題だから自分で直そう」

と抱え込むべきではありません。

CBTやACT、メタ認知療法などは、単なる自己啓発テクニックではなく、精神疾患に対して専門家が用いる心理療法でもあります。

必要な場合には、心療内科・精神科などで専門的な評価や治療を受けることが大切です。


まとめ――「悩まない」とは、何も感じないことではない

ここまで心理学・精神医学・脳科学の研究を見てくると、

「悩まない人」

という言葉の意味が少し変わってきます。

何も感じない人ではありません。

メンタルが鋼鉄でできている人でもありません。

不安も感じる。

腹も立つ。

失敗すれば落ち込む。

それでも、

出来事と解釈を分ける。

思考と自分を分ける。

悩むことと問題解決を分ける。

変えられることは具体的な課題にする。

変えられないものは、そのまま置いておく。

人格を責める前に、構造を見る。

うまくいかなければ、手段や目標を柔軟に変える。

そして最後は、自分が大切にしたい価値の方向へ戻る。

そうやって、必要以上に苦しみを増やさない。

これが、かなり現代心理学に近い「悩まない」という状態なのだと思います。

目指すべきなのは、

悩みが一切ない人生

ではありません。

人生には、どうしても思い通りにならないことがあります。

どれだけ準備しても、予想外のことは起こります。

他人の心も、未来も、完全にはコントロールできません。

だからこそ大切なのは、

不安をなくしてから生きることではなく、不安があっても戻ってこられること。

そして、

正解を最初から知ることではなく、現実を見ながら自分の考え方と行動を更新できること。

なのではないでしょうか。

「もっと強いメンタルを手に入れなければ」

と頑張る必要はありません。

必要なのは、鋼鉄の心ではなく、

現実に合わせて、しなやかに形を変えられる心。

心理学では、それを表現する言葉の一つとして、

psychological flexibility――心理的柔軟性

があります。

悩みをゼロにするのではなく、

悩みが生じても、そこに住み続けない。

そして、自分が本当に大切にしたい方向へ、また戻っていく。

その繰り返しこそが、「悩みに振り回されない」ということなのかもしれません。


参考文献・主要研究

Cuijpers P, et al. Cognitive Behavior Therapy for Mental Disorders in Adults: A Unified Series of Meta-Analyses. JAMA Psychiatry. 2025. 成人の複数の精神疾患に対するCBTのRCTを統合した大規模メタ解析。(PubMed)

Cui X, et al. The deficit in cognitive reappraisal capacity in individuals with anxiety or depressive disorders: meta-analyses of behavioral and neuroimaging studies. Clinical Psychology Review. 2024. うつ・不安と認知的再評価に関する行動研究・神経画像研究のメタ解析。(PubMed)

Macri JA, Rogge RD. Examining domains of psychological flexibility and inflexibility as treatment mechanisms in acceptance and commitment therapy: A comprehensive systematic and meta-analytic review. Clinical Psychology Review. 2024. ACTと心理的柔軟性の治療メカニズムを検討した67研究・9,123人のメタ解析。(PubMed)

Andersson E, et al. Efficacy of metacognitive interventions for psychiatric disorders: a systematic review and meta-analysis. Cognitive Behaviour Therapy. 2025. メタ認知療法・メタ認知トレーニングのRCTを統合したレビュー。(PubMed)

Cuijpers P, et al. Problem-solving therapy for adult depression: An updated meta-analysis. European Psychiatry. 2018. 30 RCT・3,530人を対象とした問題解決療法のメタ解析。(PubMed)

Lieberman MD, et al. Putting feelings into words: affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science. 2007. 感情ラベリングと扁桃体反応についてのfMRI研究。(PubMed)

Linardon J, et al. The efficacy of mindfulness apps on symptoms of depression and anxiety: An updated meta-analysis of randomized controlled trials. Clinical Psychology Review. 2024. 45 RCTを統合し、抑うつ・不安に小さいながら有意な改善を報告。(PubMed)

Riddell H, et al. A meta-analytic review and conceptual model of the antecedents and outcomes of goal adjustment in response to striving difficulties. Nature Human Behaviour. Published 2025 / Vol.10, 2026. 235研究・1,421効果量を統合したgoal disengagement、reengagement、goal-striving flexibilityの大規模レビュー。(Nature)

健康講座1047 【医学的に検証】1食で腸と肝臓が整う 長芋キムチ和え “腸肝リセット” 朝活レシピ







はじめに

「腸活は大事」
これはもう常識になりつつあります。

しかし実は、

👉 腸を整えること=肝臓を整えること

である、という事実は、あまり知られていません。

なぜなら、

腸の血液はほぼすべて肝臓に流れ込む

からです。

これを医学的に
門脈循環(portal circulation)
と呼びます。

つまり、

腸内で吸収された栄養
腸内細菌が作った代謝産物
腸の炎症由来の毒素

これらはすべて、

👇
一度「必ず」肝臓を通過します。

この腸と肝臓の密接な関係を
腸肝相関(gut–liver axis)
と呼びます。

だから、

腸が荒れている=肝臓も確実に疲弊している
腸が整う=肝臓の負担が激減する

これは生理学的に“確定事項”です。


なぜ「長芋 × キムチ」が最強なのか?

理由は3つあります。


① 長芋は「粘る食物繊維」の宝庫

長芋のネバネバの正体は
ムチン(mucin様糖タンパク)

これは、

・胃粘膜を保護
・腸のバリア機能を強化
・炎症を抑制

という作用があります。

さらに長芋には、

✔ 水溶性食物繊維
✔ 不溶性食物繊維
✔ レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)

が同時に含まれています。

専門用語解説

レジスタントスターチ
→ 小腸で消化されず、大腸で腸内細菌のエサになるでんぷん。
結果として短鎖脂肪酸(酪酸など)が産生され、腸粘膜を修復します。

つまり長芋は、

「腸内細菌を育てながら腸壁も修復する」

非常に珍しい食材なのです。


② キムチは“生きた発酵食品”

キムチには、

・乳酸菌
・有機酸
・ポリフェノール

が豊富。

特に重要なのは
乳酸菌+食物繊維の同時摂取

これは

シンバイオティクス(synbiotics)

と呼ばれ、

「菌」と「エサ」を同時に入れる最強パターンです。

長芋=腸内細菌のエサ
キムチ=善玉菌そのもの

この組み合わせは、

腸内環境改善の“完成形”です。


③ 翌朝スッキリの正体は「胃結腸反射」

朝に長芋キムチを食べると、

胃が刺激され
👇
大腸が動き出す

これを
胃結腸反射(gastrocolic reflex)
といいます。

さらに、

・水溶性食物繊維
・発酵由来の有機酸

が腸蠕動を強化し、

自然な排便が誘導されます。


腸がきれいになると、なぜ肝臓も良くなる?

腸内で発生する

・アンモニア
・エンドトキシン(細菌毒素)
・炎症性サイトカイン

これらはすべて門脈経由で肝臓へ。

腸内環境が悪いと、

肝臓は毎日「毒の処理工場」になります。

これが

✔ 脂肪肝
✔ MASLD / MASH
✔ インスリン抵抗性

の土台になります。

逆に腸を整えると、

肝臓の炎症が低下
脂肪蓄積が減少
血糖コントロール改善

という連鎖が起きます。

実際、

腸内細菌改善で
ALT・ASTが下がる研究は多数報告されています。


長芋に含まれる主要栄養素

● カリウム

→ 余分な塩分排泄、むくみ改善

● ビタミンB群

→ 肝臓の解毒代謝を補助

● ポリフェノール

→ 酸化ストレス軽減

● ディオスコレイン

→ 脂質代謝改善作用(動物実験レベル)


朝に食べる意味(朝活 × 長芋)

朝は、

✔ コルチゾール高値
✔ 交感神経優位
✔ 消化管が最も反応しやすい時間帯

このタイミングで

長芋+発酵食品を入れると、

腸内細菌リズム
血糖日内変動
肝臓時計遺伝子

すべてが整いやすくなります。

これは
時間栄養学(chrononutrition)
という分野で証明されています。


注意点(とても重要)

❗ 尿酸値が高い人

長芋はプリン体は少なめですが、
「腸が動く→尿酸再吸収が変化」するため、

痛風体質の方は“少量から”。


❗ 腎機能が低下している人

カリウムが多いため、
eGFR低下例では量制限が必要。


❗ 甲状腺疾患

長芋は生で大量摂取すると
ヨウ素代謝に影響する可能性あり。
連日大量は避ける。


❗ 口がかゆくなる人

これは
口腔アレルギー症候群

加熱で軽減します。


神レシピ(超シンプル)

材料

・長芋 100g
・キムチ 適量
・ごま油 少々(任意)

作り方

切って和えるだけ。

完成。


まとめ

長芋キムチは単なる健康レシピではありません。

これは、

✔ 腸内細菌
✔ 腸粘膜
✔ 肝臓解毒
✔ 血糖代謝
✔ 炎症制御

すべてに同時アプローチする

医学的に極めて合理的な一皿

です。

腸が変われば
肝臓が変わる
肝臓が変われば
全身が変わる。

「腸活=肝活」

これは比喩ではなく、生理学的事実です。

ぜひ明日の朝から試してみてください。



ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...