2023/03/31

健康講座571 老化と健康と受容

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 エイジング(老化)に対する考え方が、健康に影響を及ぼす可能性を示唆する研究報告が増えてきております。老化を肯定的に捉えている人は否定的に捉えている人よりも、健康で長生きするのではないかとする論文が、過去20年間で複数発表されているのでございます。


 全米の50歳以上の約1万4,000人を対象として、老化を前向きに考えることと身体的な健康、健康につながる行動、心理的幸福との関係を調査したものがあります。その結果は、老化に対する満足度が最も高い人は、満足度が最も低い人に比べて、4年間の追跡期間中の全死亡リスクが43%低いというものだったのです。また、老化に対する満足度が高い人は、糖尿病、脳卒中、がん、心臓病などの慢性疾患のリスクが低く、認知機能も優れていて、身体活動量が多い傾向にあり、睡眠障害は少なかった。さらに、そのような人は仲間が多く、楽観的で、より強い目的意識を持っていたとのことです。

 この論文では、老化の捉え方と健康行動は両方向性の関係にあると説明します。例えば、50歳以上で自分の老化に満足している人は健診受診率が高いことが示されたということです。それとは反対に、老化によって健康が害されることは避けられないと考えている人は、老化を抑制する行動を取ろうとしない傾向も浮かび上がったとのことです。


 「退職後に何をしたら良いか分からない」という人がいるが、そのような場合には、価値観に合った何らかの計画を立てることを提案されています。「人生の目的は人それぞれだ。家族の優先度が高い人は孫の世話を手伝うなど、家族に貢献できることを見つけてほしいとのことです。環境問題に関心があるのなら、環境保全活動に参加すると良いし、ボランティア活動は、目的意識を持ち続けるという点でも素晴らしい方法であります。


 老化に対する否定的な観念は、人の生涯にわたって内面化され、歳をとるにつれて身体的、精神的な健康に害を及ぼす可能性が高まります。そのようなネガティブな考え方の潜在的リスクを理解して、それを取り払う必要があります。「高齢になったら身体的不調は避けられないから、アクティブな生活を送ろうとしても無駄だ」と考える人がいるかもしれないです。しかし、米国立老化研究所によると、運動は心血管疾患、高血圧、2型糖尿病のリスクを低下させ、睡眠を改善し、転倒のリスクを抑制する可能性があるのです。健康的な行動を実践することは、何歳であっても健康増進に役立つということを認識してほしいところです。


 歳を重ねるにつれて、配偶者、家族、友人などの愛する人を失う可能性が増す。その結果、社会的に孤立してしまうと、身体的および精神的健康が損なわれ、心臓発作や脳卒中のリスクが高まり、さらに人生の満足度が低下したり、日常生活が困難になることがある。それに対して、社会的なつながりを維持することが、健康に良い影響を与える可能性が示されている。そのための具体的な方法として、失ったものを、何か新しいものに置き換えることが重要で、地域のコミュニティーに参加して友人を増やしたり、かつての仲間に会いに行くといったことも一考です。


 人は齢とともに運動能力が低下し、若い頃に喜びを感じていた活動に参加できなくなることがある。そのような加齢による変化への対処として、「身体的な負担の少ない新しいことを学ぶと良い」と提案されています。ある研究によると、新しいスキルを習得した高齢者は、記憶力、自尊心、そして生活の質(QOL)が向上することが示されました。「新しいことに挑戦するのに遅すぎるということはない。また、新しい興味の対象を追求するのにも年齢は関係ない」とのことです。

[2022年8月19日/American Heart Association] 

2023/03/17

健康講座570 健康のための一日の歩数

 みなさんどうもこんにちは。

 小川糖尿病内科クリニックでございます。

 健康のためには「1日1万歩」歩くと良いとよく言われますが、それよりやや少ない歩数でも、健康の維持・増進につながる可能性が報告されました。米ヴァンダービルト大学の研究によるものです。


 報告された新たな研究では、6,000人以上の中高年米国人を最長7年間にわたって追跡。1日の歩数が8,000~9,000歩以上の人は、肥満、高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、胃食道逆流症、うつ病などの発症が少ないことが明らかになったのです。なお、歩幅にもよるが、1日8,000~9,000歩は、約4マイル(6.4km)の歩行に相当する。

 これはシンプルな目安となりそうです。歩くことの目標が体重管理である場合、歩数が多ければ多いほど、より多くのカロリーを消費する。一般的に1マイル(約1.6km)の歩行で100kcal消費すると言われているようです。

 この研究では、米国で行われている「All of Us Research Program(AoURP)」という研究のデータが解析に用いられました。AoURPには、ウェアラブルデバイスにより把握した身体活動量や、受療行動・検査の結果、遺伝子情報など、個人の健康に関する詳細なデータが記録されています。この中から、活動量計の記録のある6,042人〔年齢中央値56.7歳(四分位範囲41.5~67.6)、女性73%、BMI中央値28.1〕を抽出して解析。観察期間中央値4.0年(同2.2~5.6)での平均歩数は1日7,731.3歩だったようです。

 解析の結果、1日平均8,200歩以上歩く人は、肥満になる可能性が低く、胃食道逆流症や大うつ病と診断される頻度も低かったようです。また、歩数がより多い人の方が、健康状態がより良好だった。例えば、1日の歩数の多い上位25%の人(1日1万1,000歩近く歩く人)は、下位25%の人(1日6,000歩前後の人)に比べて、肥満は4割強少なく、胃食道逆流症は約3割少なかった。過体重の人が毎日の歩数を6,000歩から1万1,000歩に増やした場合、肥満になる確率が64%低下する可能性も示されました。

 一方、糖尿病と高血圧に関しては、効果が頭打ちになることが分かりました。つまり、1日の歩数が8,000~9,000歩までは、歩数が多いほどリスクが低下するものの、それ以上歩いてもリスクは変わらないという結果だったようです。ただし、本研究のみを根拠に1日9,000歩でメリットは最大化すると考えるのは早計とも思えます。健康維持のための歩行目標の「絶対的な数字」などはないと思われます。その一つの理由として、車が登場する前、人々は毎日ふつうに10マイル(約16km)も歩いていました。また、運動は健康維持のための1要素に過ぎず、植物性食品ベースの食事、十分な睡眠、他者との社会的なつながりなども重要です。

原著

2023/03/03

健康講座569 経口抗凝固薬を服用している非弁膜症性心房細動患者において、スタチン服用のメリット

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 経口抗凝固薬を服用している非弁膜症性心房細動患者において、スタチン服用で大出血、全死亡、虚血性イベントのリスクが有意に低下したことが、多施設後ろ向きレジストリ研究で示唆されたようです。兵庫医科大学の報告した。


 本研究は、心臓機械弁もしくは肺/深部静脈血栓症の既往歴のある患者を除外した経口抗凝固薬を服用している非弁膜症性心房細動患者を対象とした。2013年2月26日に7,826例を登録し、2017年2月25日まで追跡した。主要評価項目は大出血、副次評価項目は全死亡、虚血性イベント、出血性脳卒中、虚血性脳卒中で、スタチン投与群と非投与群で比較した。

 主な結果は以下のとおりでございます。

・スタチン投与群(2,599例、33%)は非投与群に比べ、発作性心房細動(37% vs.33%、p=0.0003)、高血圧(84% vs.76%、p<0.0001)、糖尿病(41% vs.27%、p<0.0001)、脂質異常症(91% vs.30%、p<0.0001)を有している患者が多かった。
・大出血の累積発生率は、スタチン投与群6.9%、非投与群8.1%であった(p=0.06)。
・スタチン投与群の非投与群に対する各評価項目の調整ハザード比(95%信頼区間)は、大出血が0.77(0.63~0.94)、全死亡が0.58(0.47~0.71)、虚血性イベントが0.77(0.59~0.999)、出血性脳卒中が0.85(0.48~1.50)、虚血性脳卒中が0.79(0.60~1.05)だった。

参考までに。

原著

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...