こんにちは。
小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。
妊娠高血圧や妊娠高血圧腎症(子癇前症)といった妊娠高血圧症候群になると、出産後の数十年間に高血圧や2型糖尿病、脂質異常症を発症するリスクが高まる可能性のあることが、新たな研究で示された。今回の結果は、妊娠高血圧症候群の既往がある女性では心筋梗塞リスクが高いことの理由になるかもしれない。研究の詳細は「Annals of Internal Medicine」7月3日オンライン版に掲載された。
妊娠高血圧症候群財団(Preeclampsia Foundation)によると、妊娠中に高血圧がみられると妊娠高血圧、高血圧に加えて蛋白尿が認められると、妊娠高血圧腎症と呼び、重症になると腎臓や肝臓の機能障害や肺水腫などを引き起こすことがあるという。
この研究は、米国の女性看護師を対象としたコホート研究(Nurses' Health Study II;NHS II)に参加し、ベースライン時に心血管疾患またはそのリスク因子がなかった参加者5万8,671人を対象としたもの。対象女性は18~45歳で出産経験が1回以上あり、初回の出産時から2013年まで平均で25~32年間追跡し、高血圧と2型糖尿病、脂質異常症の診断歴の有無を調べた。
その結果、初回妊娠時には女性の2.9%に妊娠高血圧が、6.3%には妊娠高血圧腎症が認められた。これらの女性は、妊娠中に正常血圧だった女性に比べて、出産後に高血圧を発症するリスクが2.2~2.8倍、2型糖尿病リスクは1.7~1.8倍、脂質異常症リスクは1.3~1.4倍であることが分かった。特に、高血圧の発症リスクは、初めての出産から5年間が最も高いことも明らかになった。
以上の結果を踏まえて、妊娠は心臓病の負荷テストとしての役割を果たし、高血圧やその他の心血管リスク因子を来す可能性が高い女性を事前に特定する機会になると考えられる。妊娠中の高血圧や蛋白尿が産後の心血管リスクを高めることを早くから知っていれば、これらの予防に早期から取り組めるようになるだろう。健康的な食生活や運動といった生活習慣の改善を開始するのに遅すぎるということはない。
プライマリケア医は、妊婦が高血圧や蛋白尿を来すリスクは妊娠直後から高まることを知り、妊婦検診時にはこれらのリスク因子を念頭に置く必要がある。
2019/09/21
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