こんにちは。
小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。
肥満の人はインフルエンザウイルスに感染すると、肥満のない人に比べて合併症リスクが高いことが知られているが、肥満はウイルスの感染力にも影響を及ぼすようだ。
「Journal of Infectious Diseases」8月2日オンライン版に掲載された研究から、インフルエンザに罹患した肥満のある患者は、肥満のない患者に比べてウイルスを排出する期間が長い可能性のあることが示された。
これまでの疫学研究で、肥満者がインフルエンザウイルスに感染すると重症化しやすく、特に高齢者では死亡リスクが上昇することが報告されている。米ミシガン大学公衆衛生学部のAubree Gordon氏らは今回、中米ニカラグアの320世帯、約1,800人の住民を対象に、2015年から2017年にわたるインフルエンザ流行シーズンの家族内伝播に関するデータを収集し、分析した。
その結果、インフルエンザに罹患した肥満の成人患者では、肥満のない患者に比べてA型インフルエンザウイルスを排出する期間が42%長いことが分かった。肥満の有無によるウイルス排出期間の差は、軽症あるいは症状がない場合にはさらに広がり、肥満患者では肥満のない患者に比べてA型インフルエンザウイルスを排出する期間は約2倍であった。
一方で、症状が比較的軽く、大流行(パンデミック)を起こしにくいB型インフルエンザウイルスでは、こうした関連は認められなかった。さらに、5~17歳の小児から思春期の若者では、肥満とインフルエンザウイルスを排出する期間の長さは関連しなかった。
今回の結果は、肥満はインフルエンザの重症度だけでなく、その感染力にも影響することを示したエビデンスとして初めてのものだ。また、肥満がインフルエンザの感染リスクや重症度、感染性を増大させる背景には、肥満による慢性的な炎症が亢進すると呼吸困難を引き起こし、必要とする酸素量が増えるといった要因が考えられるという。
今回の研究から、特に過体重や肥満の人ではインフルエンザの感染予防や新たな治療法の開発が重要であることが示唆された。しかし、肥満者はインフルエンザワクチンが効きにくいとする報告もあり、予防や治療の強化には困難を伴うとも指摘される。
2019/10/13
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