こんにちは。
小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。
これまで米国の身体活動ガイドラインでは、運動は10分以上継続することが推奨されてきた。しかし、米国心臓協会年次集会(AHA 2018、11月10~12日、米シカゴ)で発表された最新版のガイドラインでは、たった2分程度の歩行であっても運動することは健康に有益とする見解が示された。このガイドラインの詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」11月12日オンライン版に掲載された。
米国保健福祉省(HHS)によると、米国では早期死亡の原因の10%を運動不足が占め、4人に1人が運動不足を解消すれば約7万5,000件の死亡を回避できるという。HHSの調べでは、週当たりの推奨運動量を実行しているのは男性では26%、女性では19%、10歳代の若者では20%に過ぎない。
身体活動ガイドラインの初版は2008年に発行された。今回の改訂版でも科学的エビデンスに基づき、身体活動は短期的にも長期的にも健康に有益であることが示されている。そのポイントは以下のとおり。
・短時間の運動でも頭がすっきりして不安感が軽減するほか、よく眠れるようになり、血圧値や血糖値が改善するといった効果が得られる。
・定期的な運動で脳の健康が向上し、8種類のがんの発症リスクが低減し、体重増加を抑えられる。
・運動をすると変形性膝関節症や高血圧、2型糖尿病、不安や抑うつなどの慢性疾患が改善される。
・運動するとさらに、認知症や多発性硬化症、注意欠陥多動症(ADHD)、パーキンソン病などの患者の脳機能の改善にも役立つ。
今回の改訂では、成人の週当たりの推奨運動量に変更はなく、これまでと同じく150~300分の中強度の有酸素運動または75~150分の高強度運動に加え、筋力トレーニングを週2日以上行うことが推奨されている。
また、成人だけでなく3~5歳の子どもは成長と発育のため活動的であるべきで、6~17歳になると中強度~高強度の運動を毎日60分以上行うことが勧められている。
さらに、妊婦や産後の女性は中強度の有酸素運動を週に150分以上行い、高齢者は有酸素運動と筋力トレーニングのほかにもバランストレーニングを行うことを推奨している。もちろん、慢性疾患がある患者であっても運動は必要だ。このガイドラインの対象とならない人はいない。
一度に長時間の運動をしたり、複雑な運動プログラムをこなしたりする必要はない。運動は週に1~2日まとめて行っても週に3日以上行った場合と同様の効果が得られる。
2019/11/14
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