2019/11/19

健康講座149~健康的減量のペース

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。

 体重を急激に落とすことは、徐々に体重を減らした場合に比べて、減量幅やウエスト周囲長、血圧などに良い影響を与えるわけではないことが、ヨーク大学(カナダ)のJennifer Kuk氏らの研究で明らかになった。同氏らは、減量に伴う代謝の改善に重要なのは、減らした体重の絶対量だとしている。
 これまでの研究で、急激な減量は胆石リスクのわずかな上昇と関連することが示されており、一般的に減量率は週当たり0.5~1kg程度とすることが推奨されている。一方で、徐々に体重を減らすよりも急激に減量した方が、心疾患や糖尿病のリスク因子の低減に有用である可能性も示唆されていた。
 今回、減量率と心疾患や糖尿病のリスク因子とされる代謝面の変化との関連に着目。公的資金による体重管理プログラム(治療期間は12.7カ月)に参加した成人男女1万1,281人を対象に、治療開始早期と期間全体別に、(1)急激に減量した群(週当たり1kg以上)、(2)減量率が推奨範囲内の群(同0.5~0.9kg)、(3)徐々に減量した群(同0.5kg未満)に分けて分析した。
 その結果、治療開始後早期において、急激に減量した群では、減量率が推奨範囲内だった群や徐々に減量した群に比べて全体的に減量幅が大きかった(-24.7kg対-13.3kgおよび-5.0kg)。また、急激に減量した群では、他の2つの群に比べてウエスト周囲長や血圧が大きく改善し、心疾患や糖尿病のリスク因子の低減に有用であることが示唆された。
 ただし、減らした体重の絶対量で調整すると、治療開始後早期でも期間全体でも、急激に体重を減らした群と減量率が推奨範囲内だった群との間で代謝マーカーの値に差はみられないことも明らかになった。一方、減らした体重の絶対量は、減量率とは関係なく代謝面の変化と有意に関連することが示された。
 急激な減量による胆石リスクの上昇を考慮すると、減量する場合には、1週間に0.5~1kg程度の減量を目指すのが安全な選択肢ではないかとの見方を示している。
 これらの結果を踏まえ、減量開始後早期では、急激に減量すると減量効果が期待でき、ウエスト周囲長や血圧の改善と関連する可能性がある。しかし、減らした体重の絶対量で調整すると、こうした関連はみられなくなったことから、代謝面の改善には、減量した体重の絶対量が最も重要な因子である可能性が示唆された。この結果から、週当たり0.5~1kg程度の減量を長期にわたり維持する体重管理法について検討する必要がある。

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