2019/12/21

健康講座167~脂肪肝とインスリン抵抗性

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長の小川です。

 日本人男性は肥満でなくても、脂肪肝があると筋肉のインスリン抵抗性を来し、糖尿病になりやすい―。こんな研究結果を、順天堂大学大学院代謝内分泌内科学・スポートロジーセンター准教授の田村好史氏らが「Journal of the Endocrine Society」に発表した。

 一方で、内臓脂肪が蓄積していても、脂肪肝がなければインスリン抵抗性はみられないことも分かった。生活習慣病の予防対策では、脂肪肝に着目した取り組みも重要である。
 肥満の人では、過食や運動不足などにより脂質を蓄える皮下脂肪組織が限界量に達すると、遊離脂肪酸としてあふれ出し、肝臓や骨格筋に異所性脂肪として蓄積される。こうした「リピッドスピルオーバー」と呼ばれる現象は、糖尿病やメタボリックシンドロームの原因となるインスリン抵抗性を引き起こすと考えられている。しかし、アジア人では、体格指数(BMI)が25kg/m2未満の非肥満でも代謝異常になりやすいとされている。
 このようなインスリン抵抗性を引き起こすメカニズムには、「内臓脂肪の蓄積」と「脂肪肝」が指標として報告されている。しかし、内臓脂肪がたまった人は脂肪肝であることも多く、どちらがインスリン抵抗性とより強く関連するのかは明らかになっていなかった。今回、適正体重(BMIが21~25kg/m2)で、糖尿病を有さない男性87人を対象に、全身の代謝状態や脂肪分布を詳細に調べ、内臓脂肪の蓄積および脂肪肝とインスリン抵抗性の関連について検討した。
 研究では、脂肪、肝臓および骨格筋のインスリン抵抗性は「2-ステップ高インスリン正常血糖クランプ法」を用いて測定した。この検査法は一人の計測に約10時間を要する大がかりなもので、80人を超える規模で検討した研究は世界的にも珍しい。
 対象者全体の分析で、内臓脂肪面積と脂肪肝の量との間には正の関連が認められた。そこで、内臓脂肪面積(100cm2以上)および脂肪肝(肝内脂質量5%以上)の有無で、(1)内臓脂肪蓄積単独群(18人)(2)脂肪肝単独群(7人)(3)内臓脂肪蓄積+脂肪肝群(8人)(4)いずれもない対照群(54人)の4つのグループに分けて、インスリン感受性を比較した。
 その結果、内臓脂肪の蓄積がなくても、脂肪肝がある群では骨格筋のインスリン抵抗性が認められたのに対し、内臓脂肪が蓄積していても脂肪肝がなければ、インスリン感受性は良好であることが分かった。また、内臓脂肪蓄積+脂肪肝群と脂肪肝単独群のインスリン抵抗性には差がみられないことも明らかになった。さらに、脂肪組織のインスリン感受性についても同様の結果が得られたという。
 以上の結果から、肥満のない日本人男性では、内臓脂肪の蓄積よりも脂肪肝が筋肉の代謝障害と強く関連することが分かった。特定健診などではウエスト周囲長で評価した内臓脂肪の蓄積に注目した介入が行われている。しかし、内臓脂肪がそれほど蓄積していなくても、脂肪肝がある人には、インスリン抵抗性などの代謝障害を防ぐため、ウオーキングや体力の向上を目指したジョギングなどの運動のほか、体脂肪を減らすため減量するのがお勧めです。

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