2020/02/08

健康講座187~重症低血糖の現状

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニックです。


 低血糖は食事摂取量の低下や摂取時間の遅れ、エネルギー消費の増大、インスリン感受性の改善、薬剤の影響などが原因で生じる。これに対する生理反応として、血糖値がおおよそ70mg/dL以下になると交感神経や中枢神経症状などが起こりやすい。

 一般的に重症低血糖は、非糖尿病者では生理的に来しえない54mg/dL未満の場合と、低血糖の回復に際し“他者による介助が必要な重度認知機能障害に関連する低血糖”に定義される。この状態に陥ると、糖尿病患者の脳や筋骨格系、心血管系に影響し、急性期では認知機能や作業パフォーマンスの低下、慢性期ではQOL低下や運転・雇用の制限などの問題を抱えてしまう。重症低血糖は短期的かつ長期的に悪影響を与え、生命を脅かす危険性がある。とくに認知機能における記憶や言語処理などに影響を及ぼす。まずは、低血糖に対する本人の自覚が大切。しかし、運動後6~15時間後の低血糖発生は夜間睡眠時に及ぶ場合もある。このような場合を踏まえ、本人だけではなく周囲の理解も必要です。


 日本糖尿病学会による糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会報告(1型糖尿病[T1D]:240例、2型糖尿病[T2D]:480例)では発症者の傾向を病型別に分けて調査している。この調査報告によると、T1DとT2Dの平均HbA1c値はそれぞれ、7.5%、6.8%であった。前駆症状(交感神経系刺激症状)の発現率は、T1Dで41%、T2Dで56.9%の患者に見られ、重症低血糖の発症年齢の中央値はT1Dが54歳、T2Dの中央値は77歳、とくにT2D患者は65歳以上が83%を占めていた。過去に重症低血糖を起こし受診歴がある患者はそれぞれ67.8%、33.1%であった。また、重症低血糖に影響した要因について、医師への調査によると、食事の内容・タイミングの不適合が最も多く、全体の40%を占めた。次いで、薬剤の過量もしくは誤投与が27%と続いた。T2Dに限定して症低血糖の原因薬剤を抽出したところ、インスリン群で61%、SU薬群で33%であった。

 
 また、重症低血糖の発症患者として高齢者が問題視されている。とくに75歳以上の2型糖尿病のSU治療群での低血糖割合が多い。熊本宣言2013を受け、75歳以上の高齢者に対するHbA1c値のあり方が厳格化されつつある中で、75歳以上のSU薬使用においてHbA1cの下限値7.0%を設けたことは世界で初の試みだった。



 重症低血糖による意識障害に陥った場合、第三者(家族、友人、介護者…)によるフォローが患者の生命予後の鍵となる。低血糖の認知度の高さに(糖尿病患者:77%、糖尿病患者の同居家族:76%)比して、重症低血糖の認知はそれぞれ25%、40%にとどまった。
 
 重症低血糖を経験した患者では予防策に対する意識が高く、「ブドウ糖を含む飲食物を摂取」「血糖測定の実施」のほか、「食事の量」や「運動」に注意を払っていた。しかし、重症低血糖に関する相談や情報共有を医療者と共有している患者はたったの37%しかいないことが明らかになった。なお、相談される医療者は、医師、薬剤師、看護師の順であった。


 低血糖の有無を聞かれても、自覚症状がないこともある。さらに、加齢に伴い低血糖症状にも変化が表れているので、患者自身が身体変化について医療者と共有する意識を持つことが大切。まずは血糖値を知って不安を払拭することが何よりも大切です。

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