2022/04/20

健康講座481 the GLP1製剤

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 GLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1 RA)、その登場は10年前にさかのぼります。生誕10年ではあるものの、これまでに数多くのGLP-1 RA製剤が登場し、エビデンスもそろってきております。

非常に多彩ですが、GLP-1 RAは、主に膵臓において血糖依存的にインスリン分泌を促進・グルカゴン分泌を抑制、肝臓においてグルコース産生を抑制、胃においては胃内容物排出の遅延により、血糖コントロールを行うという作用機序があります

分類としては、まずヒトGLP-1由来かExendin-4由来かに大別され、各々1日1~2回もしくは週1回の投与方法があり、それに対応する製剤が存在します。さらに、2021年に経口薬も加わっております。

GLP-1 RAを使用するに当たって、重要なポイントが3つあります。

(1)作用機序から考えた適応と早期導入

この薬剤の作用機序は、「インスリン分泌促進系」の中でも「血糖依存性」に分類1)されるため、膵機能が保たれているインスリン非依存状態であることが必須であります。要するにですよ、この薬剤は、罹病歴が比較的短く、内因性インスリン分泌能が保たれている、SU薬を多量に服用していない患者さんです。

一方、血糖依存性といえども万能ではなく、高血糖毒性を伴いインスリンの絶対的適応となるようなケースには不向きであります。こういった場合は、糖毒性解除後に使用するとうまくいくことが多いです。

例えば、こちらはあくまで例ですが(架空の症例です)、

67歳男性。脳梗塞で脳神経外科入院となり、救急外来時の随時血糖値303mg/dL、HbA1c 10.9%とコントロール不良の糖尿病を認め、当院受診となった。未治療の患者で、体重85.0kg、BMI 31.2で、肥満を認めた。まずは、強化インスリン療法を開始、、3ヵ月後、随時血糖値141mg/dL、HbA1c 6.9%まで改善しており、体重79.0kg、BMI 29.0の1度肥満まで改善。総インスリン量は、22単位から12単位まで減量となっており、軽度の右不全マヒがあるものの、インスリン自己注射は問題なくできた。

そこで、患者負担を少しでも軽くしようと、インスリン分泌能も保たれていたため、週1回のGLP-1 RAへの切り替えを選択しました。その後、3ヵ月間単剤での管理で3.1kgの減量に成功し、HbA1cも5.9%まで改善、患者さんも減量の成功を大変喜び、そのまま継続となりました。

この例は、GLP-1 RAの早期導入が功を奏したと考えられます。実際のところ、JDDM(糖尿病データマネジメント研究会)のデータを見ると、GLP-1 RAの処方は年々増加しているもようです。

(2)合併症抑制を考慮した治療選択

治療選択の際、合併症(大血管症、細小血管症)を考慮することは、本質であり重要です。ただ単に血糖を下げればよいわけではありません。血糖改善は、合併症予防の手段であり最終目標ではありません。 2008年から米国FDA(食品医薬品庁)で、新規の血糖降下薬は心血管合併症を増やさないことの証明が必須になっているのですが、最近はむしろ血糖コントロール改善とは異なる機序で、糖尿病合併症を抑制する薬剤が注目を集めてます。

実際、GLP-1 RAは2021年ADAのStandards of Medical Care in Diabetes2)にも記載されているように、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)やCKDの合併、または高リスクがある場合は、メトホルミン使用とは無関係に優先的に使用すべき薬剤の1つになっています。わが国において薬剤の使用優先順位までは決められていないですが、エビデンスのある薬剤の1つとして位置付けられているため、処方するベネフィットは大です。

(3)体重減少、食欲抑制に対する効果

GLP-1 RAの生理作用は、糖代謝改善作用以外に、胃内容物排出の遅延作用と中枢における食欲抑制作用があり、それには消化管で産生されたGLP-1が主に迷走神経を介して中枢へ作用する系、および中枢で産生されたGLP-1が作用する系の2つが関与するといわれています3)

いずれにせよ体重減少効果は大きく、米国では抗肥満薬としても発売されています(糖尿病薬の用量とは異なる)。セマグルチドの最近のエビデンスとして、太り過ぎまたは肥満成人に対する集中的行動療法の補助として有意な体重減少をもたらし4)、また従来の薬剤の約2倍の減量効果があり5)、肥満外科手術に匹敵するといわれております。

近年、高齢化が進むにつれ高齢者糖尿病患者も増加し、サルコペニアの問題も大きくなってます。体重減少効果が筋肉量の減少を誘発していないかの問題も言われる中、経口セマグルチドにおける2型糖尿病患者のエネルギー摂取量、食事の嗜好、食欲、体重の効果についての論文が発表されているようです6)

12週で体重2.7kg、ウエスト2.4cmが減少しており、脂肪量は-2.6kg、除脂肪量-0.1kgと、減量のほとんどを脂肪量の減少が占めたとのことです。さらに、摂取エネルギーが減少するのはもちろんのこと、高脂肪食や甘味が有意に減少していたという嗜好の変化が非常に特徴的な結果でありました。

また、GLP-1 RAの効果について、さらに細かい話にはなりますが、ショートアクティングとロングアクティングでは、作用時間だけでなく血糖降下作用も異なるといわれています。まずロングアクティングは、主にインスリン分泌促進およびグルカゴン分泌抑制を介して血糖改善効果を発揮し、ショートアクティングに比べて空腹時血糖値やHbA1cの改善効果が大きいとされます。一方、ショートアクティングは主に胃内容物排出遅延作用やグルカゴン分泌抑制を介して血糖改善効果を発揮するとされております。

実際、ロングアクティングの血糖改善効果は残存膵β細胞機能に依存するのに対し、ショートアクティングでは血糖改善効果と残存β細胞機能に明確な関連性を認めないようです。


さまざまな製品がでており、初期投与量・維持量・コントロール困難例とあるものの、消化器系症状が出やすい人や体重をあまり落としたくない高齢者など、人によっては初期投与量が維持量になるなど、使用範囲が広がっております。また、過体重でとにかく減量させたい人やインスリンを減量したい人に高用量を使用するといった方法もあるかと思います。

さらには、注射製剤をかたくなに拒否する患者さんには経口薬を選ぶこともでき、こちらも同様に3つの規格が使用できるのです。

参考にしてください。

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