2022/07/15

健康講座518 男性更年期と代謝疾患

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 テストステロン欠乏により生じる病態と言えば男性更年期(疲れやすい、肥満、うつ、性欲低下…)をまず思い浮かべるのですが、実は、加齢による骨格筋量の減少(サルコペニア)の原因の1つであり、脂肪肝の発症にも深いかかわりがあるということでございます。

 肝臓と筋肉には肝筋連関というつながりがあり、2型糖尿病を例にとると、高血糖はもちろんのこと、過栄養による脂肪肝や運動不足による筋肉量低下が引き金となり糖尿病を発症するというものです。肝筋連関のせいで肝臓と筋肉が互いに足を引っ張り合ってさらなる悪循環を来し、サルコペニアが脂肪肝を助長するようです。これを立証するものとして、『脂肪肝と肥満と糖尿病の関係性』に関する研究1)というものがあるそうで、肥満でなくても脂肪肝があればサルコペニアのリスクはある。そして、過体重を伴わない脂肪肝は、サルコペニアがあることで見掛け上の体重が減少していると考えられているようです。

 サルコペニアにも負の影響をもたらす脂肪肝。近年では単なる内臓脂肪ではなく、筋肉、心臓、肝臓、膵臓の4つの部位に主に発生し、さまざまな細胞に障害を及ぼす “異所性脂肪蓄積”の1種として重要視されているのです。さらに、脂肪肝は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)へ進展することもあるため、NASHのリスク因子である男性更年期(LOH症候群)やサルコペニアを早期に改善させる必要があります。実際に国内の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の年代別割合を見ると、男女ともに20代から増加し50~60代でピークを迎え、とくに男性の場合は50代をピークに逆U字を描く傾向にあり、肝筋連関に加えて、血清テストステロンの低下が脂肪肝に影響しているのではと言われております。また、海外データ3)で、脂肪肝指数はテストステロン高値群より低値群で高く、トリグリセリド/HDL-C比はテストステロン高値群より低値群で高いことが示唆されているようです。

 去勢モデルマウスとテストステロン補充に関する研究4)を示し、これによると去勢モデルにテストステロンを補充することで骨格筋量の回復、耐糖能異常の改善がみられたようです。さらにエストラジオールを補充することで最も高い改善が見られ、脂肪肝も抑制することが示されました。ただし、実臨床においてLOH症候群でサルコペニアと糖尿病を伴う受診者にエストラジオールを補充することの是非については議論があるようです。エストラジオールの代替として大豆イソフラボンおよびエクオールの可能性について検討がされているようです。

 テストステロンの補充で骨格筋量が回復しさらにエストラジオールの補充が脂肪肝の改善に効果を有することから、エストラジオールの代替として大豆イソフラボンを補充することは脂肪肝・サルコペニア・糖代謝改善に期待できるのではと思われます。
参考

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