みなさんどうもこんにちは。小川糖尿病内科クリニックでございます。
果糖とは、果物や野菜、はちみつ、ジュースなどに含まれる天然の単糖類です。グルコースと比べて甘みが強く、加糖飲料や砂糖、加工食品などに広く使われています。しかし、過剰な摂取は、肝臓の負担を増やし、肥満、糖尿病、脂肪肝などの生活習慣病のリスクを高めることが知られています。本記事では、果糖の基礎知識から、果糖の代謝、健康への影響、果糖を摂取する際の注意点まで詳しく解説します。
【果糖の代謝】
果糖は、小腸で酵素によって分解され、ブドウ糖として吸収されます。ブドウ糖は、体内の細胞でエネルギー源として利用されますが、果糖はそのまま肝臓に向かいます。肝臓では、果糖がブドウ糖に変換され、体内にエネルギーを供給します。しかし、果糖が多量に摂取されると、肝臓の酵素の働きが追いつかず、果糖が肝臓で代謝されないまま貯蔵され、脂肪として蓄積されます。このような脂肪蓄積が繰り返されると、脂肪肝や肥満、糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まることが知られています。
また、果糖は、ブドウ糖と比べて血糖値を上昇させる速度が遅く、インスリンの分泌が抑制されるため、血糖値の急激な上昇を抑える効果があります。そのため、糖尿病患者や糖質制限中の人にも、果糖が利用されます。しかし、果糖の摂取量が多い場合、肝臓で代謝される過程で発生する乳酸や尿酸の蓄積が生じ、糖尿病、高尿酸血症などのリスクが高まることが報告されています。
【果糖の健康へそれでは、果糖が肝臓に与える影響について詳しく解説していきましょう。
まず、果糖を摂取した場合、腸管から吸収されると、肝臓で代謝されます。果糖は、肝臓の細胞内でリン酸化され、フルクトース-1-リン酸となります。その後、アデノシン三リン酸(ATP)やグリセロール-3-リン酸に変換され、エネルギー源として利用されます。
しかし、果糖を大量に摂取すると、肝臓の細胞内でフルクトース-1-リン酸が過剰になり、その一部がフルクトース-1,6-ビスリン酸に代謝されます。フルクトース-1,6-ビスリン酸は、グリコーゲン合成に関わる酵素の一つであるフルクトキナーゼによって生成されますが、この酵素が過剰に働くことで、グリコーゲン合成が亢進します。
このように、果糖の過剰摂取によって、肝臓内でグリコーゲンが蓄積されます。一時的にグリコーゲンが増加することは問題ありませんが、長期的に摂取し続けると、肝臓のグリコーゲン蓄積量が増加しすぎ、脂肪酸合成が亢進することが報告されています。
さらに、果糖の摂取によって、血糖値を上昇させることがないため、膵臓からのインスリン分泌が抑制されます。インスリンは、血糖値を下げる作用がありますが、インスリン分泌が抑制されると、血糖値が上昇したままになります。これによって、糖尿病や肥満などのリスクが高まることが報告されています。
また、果糖は、グルコースと比較して、脂肪の合成や脂肪蓄積を促進する作用があります。具体的には、果糖は、肝臓の細胞内でアセチルCoAに変換され、トリグリセリドの合成を促進します。そのため、果糖の過剰摂取は、脂肪肝や肥また、高血糖状態が持続することによって、慢性的な低度炎症が生じることが知られています。この炎症は、血管内皮細胞の損傷や慢性的な酸化ストレスを引き起こし、徐々に血管内皮細胞の機能低下や動脈硬化を招くことがあります。
また、研究によれば、フルクトースを多く含む飲料を長期間摂取すると、肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病、脂肪肝、心血管疾患などのリスクが増加することが示されています。
さらに、果糖を多く含む飲料を摂取すると、肝臓において果糖がグリコーゲンとして蓄積されます。グリコーゲンは、肝臓が必要とするときに、簡単にブドウ糖に変換されますが、大量のグリコーゲンを蓄積すると、肝臓の脂肪酸の代謝が妨げられ、脂肪肝のリスクが高まることがあります。
以上のように、果糖を多く含む飲料の過剰摂取は、肥満、糖尿病、心血管疾患、脂肪肝などのリスクを増加させることがあります。また、果糖は肝臓に負担をかけ、脂肪酸の代謝を妨げることがあるため、適切な量を摂取することが重要です。
【果糖の適切な摂取量と摂取方法】
果糖の適切な摂取量は、日本人成人男性で1日当たり約50g、女性で約40g程度とされています。ただし、果糖の含有量は果物や野菜によって異なるため、一律に制限することはできません。また、果糖を多く含む飲料は適量を摂取するように注意しましょう。
果糖を摂取する際には、フルーツとしてそのまま食べる、または食物繊維と一緒に摂取することが推奨されます。フルーツには、また、一般的に果糖を多く含む飲料は、添加糖分や人工甘味料が含まれていることも多く、これらの成分自体が健康に悪影響を与えることが知られています。例えば、添加糖分が含まれる飲料の過剰摂取は、肥満や糖尿病、心臓病、高血圧などのリスクを高めることが報告されています。
一方で、果物に含まれる果糖は、そのまま果物として食べる場合、食物繊維と一緒に摂取されるため、ゆっくりと吸収されます。また、果糖自体も、ブドウ糖に変換される過程で消化器官や肝臓に負担をかけることが少ないため、肝臓に対する悪影響も少ないとされています。
さらに、果物には、ビタミンやミネラル、抗酸化物質などの栄養素が豊富に含まれており、健康にも良いとされています。果物の摂取量が多い人ほど、がんや心臓病、糖尿病などのリスクが低いという研究結果が報告されています。
ただし、果物を食べる際にも、適量や種類を選ぶことが重要です。果物にも糖分が含まれており、過剰摂取は肥満や糖尿病などのリスクを高めることがあります。また、果物の種類によっては、グリコーゲン貯蔵症やフルクトース不耐症などの疾患を持つ人には適さないものもあります。
以上のことから、果糖は、その摂取方法や量、種類によって、肝臓や健康に影響を与えることがあるということが分かります。果糖を含む飲料や加工食品の過剰摂取は、健康に悪影響を与えるリスクが高く、適量や種類を選んで摂取することが重要です。また、果物に含まれる果糖は、そのまま摂取することで健康に良い影響を与えることができますが、一方で、加工食品や砂糖添加飲料などの場合は、果糖の摂取量が過剰になりやすく、肝臓に負荷がかかりやすくなります。加工食品や砂糖添加飲料は、甘みを出すために果糖を多く使われており、1回の摂取量が多くなりやすいためです。
特に砂糖添加飲料には、果糖の含有量が非常に高く、1本あたり多くの果糖が含まれます。また、砂糖添加飲料には、飲料以外にも甘味料が多く含まれており、これらの甘味料は肝臓に負荷をかけることが知られています。
さらに、加工食品や砂糖添加飲料は、消化が早く、急激に血糖値を上昇させることがあります。これに対して、果物は消化がゆっくりと進み、血糖値の急激な上昇を抑える効果があるため、血糖値のコントロールにも役立ちます。
以上のように、果糖には肝臓に負荷をかける可能性があるという一面もありますが、果物として摂取する場合は、健康に対する利益が大きく、摂取量に気をつけることで健康を維持することができます。一方で、加工食品や砂糖添加飲料などの場合は、果糖の含有量が多いため、摂取量には注意が必要です。
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