2024/02/16

健康講座818 「メトホルミンによる2型糖尿病患者の脳小血管病に対する神経保護効果の研究:新潟大学と国立循環器病研究センターの共同研究成果」

 はじめに

2型糖尿病は、全世界で増加傾向にある重要な公衆衛生上の課題です。この病態は、脳梗塞や脳小血管病などの脳血管障害のリスクを高めることが知られています。新潟大学と国立循環器病研究センターによる最近の研究は、2型糖尿病を伴う脳小血管病におけるメトホルミンの神経保護効果に焦点を当てています。




研究の背景

脳小血管病は、脳の小さな血管の障害により起こります。この状態は、特に高齢者や糖尿病患者において重要です。これまでの治療法では、血管内治療の適応にならない脳小血管病患者の治療が難しいとされてきました。そこで、糖尿病患者における脳小血管病の新たな治療法の開発が求められています。

メトホルミンとは

メトホルミンは、2型糖尿病治療に広く使用される経口薬です。この薬は、血糖を下げる効果があり、近年では、脳神経に対する保護作用や、脳血管障害の予防に効果があることが示唆されています。

研究方法

新潟大学と国立循環器病研究センターの研究グループは、脳梗塞患者160人の臨床情報と画像データを収集し、解析しました。これらの患者は、脳梗塞発症前からメトホルミンを含めた糖尿病薬を内服していたグループと、そうでないグループに分けられました。

研究の結果

  • 神経症状の重症度の軽減:メトホルミンを内服していた患者は、脳小血管病発症時の神経症状の重症度が軽減されていました。
  • 退院時の機能予後の改善:メトホルミンを内服していた患者は、退院時に日常生活が自立している割合が非内服群よりも高いことが示されました。
  • 炎症反応の抑制:メトホルミン内服群では、血液中の炎症を反映する指標(好中球/リンパ球比や炎症性サイトカインIL-6値)が低く、炎症が抑えられていることが示されました。

研究の意義

この研究は、脳小血管病の予防と治療においてメトホルミンが有用である可能性を示しています。特に、血管内治療の適応にならない病態において、メトホルミンが重要な役割を果たすことが期待されます。

今後の展望

今後の研究では、メトホルミンの具体的な投与量や投与期間に関する前向き検証研究が必要です。これにより、メトホルミンの治療効果を最大化し、2型糖尿病患者の脳血管障害のリスクをさらに低減することが期待されます。

まとめ

新潟大学と国立循環器病研究センターの研究は、2型糖尿病を伴う脳小血管病の新たな治療法の可能性を示しています。メトホルミンは、神経症状の重症度を軽減し、退院時の機能予後を改善することが明らかになりました。この発見は、2型糖尿病患者の脳血管障害の管理に大きな影響を与える可能性があります。

この健康講座では、メトホルミンのこれまで知られていなかった効果を探求し、2型糖尿病患者の脳血管病に対する新たな治療法の開発に向けた一歩を踏み出すことを目指しています。患者さんや医療従事者の方々に、この重要な研究成果を広く知っていただくことを願っています。

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