2025/03/26

健康講座846 フィネレノンは、2型糖尿病で微量アルブミン尿のある人にも効果がある

 


このたび、2型糖尿病と初期の腎臓病(いわゆる「微量アルブミン尿」)を併せ持つ方に対して、新しいお薬「フィネレノン」がどれくらい効果があるかを調べた研究結果が発表されました。少しでも多くの方にこの内容をわかりやすくお伝えしたいと思い、ここにまとめてご紹介します。


【どんな人が対象?】

糖尿病が長く続くと、腎臓に負担がかかり、「尿にたんぱく(アルブミン)が出る」ことで初期の腎臓病が始まります。この段階は「微量アルブミン尿」と呼ばれ、まだ腎臓の働き自体は保たれていることが多いです。

今回の研究では、そういった「糖尿病と微量アルブミン尿がある患者さん」64人を対象に、北京大学第一病院で行われた実際の診療データ(2023年3月~2024年3月)をもとに検証されました。


【フィネレノンってどんな薬?】

「フィネレノン」は比較的新しいタイプの腎臓保護薬で、血圧や炎症、腎臓の線維化(固くなっていくこと)を抑える作用があります。すでに重めの腎臓病(尿たんぱくが多い方)に対しては有効性が証明されていましたが、「微量アルブミン尿」段階の人への効果は、これまで十分に分かっていませんでした。


【どんなことを調べたの?】

患者さんの尿中アルブミン(UACR)をはじめ、血糖(HbA1c)、腎機能、血圧、カリウム値などをフィネレノンを始める前、3か月後、6か月後で比べました。


【結果はどうだった?】

  • 尿中アルブミンが大きく減少しました!
    治療前の中央値が100.5mg/gだったのに対し、3か月後には61.3mg/g、6か月後でも62.5mg/gと、大きく下がりました。これは腎臓へのダメージが軽減されたことを示しています。

  • 他の項目(血糖・腎機能・カリウムなど)は大きな変化なし
    副作用の面でも比較的安全と考えられます。

  • フィネレノンだけでも、他の薬(SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬)との併用でも、効果はほぼ同じ
    他のお薬をすでに使っている方でも、フィネレノンを追加する意味は十分にありそうです。

  • 治療の効果が高かった人にはある共通点が
    特に、もともと血圧(上の血圧=収縮期血圧)が高めだった人ほど、フィネレノンによって尿たんぱくがしっかり減った傾向がありました。


【まとめ】

この研究から、フィネレノンは糖尿病と初期の腎臓病(微量アルブミン尿)を持つ人にも有効であることがわかりました。腎臓の悪化を早い段階で食い止めることができるかもしれません。特に血圧が高めの方には、より強い効果が期待できるという興味深い結果も得られました。

2025/03/18

健康講座845 【最新研究】肥満治療薬「セマグルチド vs. チルゼパチド」徹底比較!どちらが効果的?

 こんにちは!今日はこんな論文をご紹介します

こんにちは!今日は最近話題の**肥満治療薬「セマグルチド」と「チルゼパチド」**について、最新の研究結果をご紹介します。

どちらも肥満や糖尿病の治療に使われる新しい薬ですが、「実際のところ、どちらがより効果的なの?」と気になる人も多いはず。そこで、2025年3月に発表された論文 「Comparative efficacy and safety of semaglutide 2.4 mg and tirzepatide 5–15 mg in obesity with or without type 2 diabetes」(糖尿病の有無にかかわらず、肥満に対するセマグルチド2.4mgとチルゼパチド5~15mgの比較研究)をもとに、両者の効果と副作用を比較してみましょう!



今回の研究の目的

セマグルチド2.4mgとチルゼパチド(5~15mg)は、どちらも体重を減らす効果がある肥満治療薬として最近承認されました。特に糖尿病がある人にも使えるのが特徴です。

ただ、これまでの研究では両者を直接比較したデータがほとんどなく、「どっちがより効果的?」という疑問に明確な答えが出ていませんでした。そこで今回の研究では、これまで発表された第3相臨床試験(Phase 3 RCT)のデータをまとめて、両者の体重減少効果や副作用の違いを分析しました。


どんな方法で比較したの?

今回の研究では、以下のように糖尿病の有無で2つのグループに分けて比較しました。

  1. 糖尿病がない「肥満」患者のデータ

    • セマグルチド2.4mg → STEP-1試験
    • チルゼパチド(5mg、10mg、15mg)→ SURMOUNT-1試験
  2. 糖尿病がある「過体重」患者のデータ

    • セマグルチド2.4mg → STEP-2試験
    • チルゼパチド(10mg、15mg)→ SURMOUNT-2試験

いずれの試験でも、治療前の患者の特徴(年齢・BMI・糖尿病の有無など)がほぼ一致していたため、公平な比較が可能でした。

今回は、個別の患者データを直接比較するのではなく、各試験の結果をまとめて比較する**「間接比較(unadjusted analysis)」**という手法を用いて分析が行われました。


結果:どちらがより効果的?

1. 体重減少効果

チルゼパチド(10mg・15mg)の方が、セマグルチド2.4mgよりも体重減少効果が高かった!
具体的には、チルゼパチドの方が**4~5.4%**多く体重を減らせることがわかりました。

2. 血糖コントロール(HbA1cの改善)

HbA1cの低下幅も、チルゼパチドの方が大きかった!
セマグルチド2.4mgと比べて、チルゼパチド10mg・15mgの方が0.4%多くHbA1cを低下させました。

3. 副作用(消化器症状)

チルゼパチドの方が、消化器系の副作用が少なかった!
セマグルチド2.4mgの方が、吐き気・嘔吐・下痢などの副作用が多いことがわかりました。


結論:チルゼパチドの方が優秀?でも、まだ確定はできない

今回の研究結果から、チルゼパチド(特に10mg・15mg)は、セマグルチド2.4mgよりも体重を減らす効果が高く、血糖コントロールも優れていることが示唆されました。さらに、消化器症状の副作用も少ないという点もメリットですね。

ただし、今回の研究は異なる臨床試験のデータを間接的に比較したもので、実際に同じ条件で直接比較したわけではありません。そのため、本当にどちらが優れているかを確定させるには、今後「直接比較する大規模な試験(ヘッド・トゥ・ヘッドRCT)」が必要です。


今回の研究のポイントまとめ

チルゼパチド(10mg・15mg)は、セマグルチド2.4mgよりも体重減少効果が高い(4~5.4%多い)
HbA1cの低下もチルゼパチドの方が優れていた(0.4%多く低下)
チルゼパチドの方が消化器系の副作用が少なかった
ただし、両者を直接比較した研究がまだないため、今後の大規模試験が必要!


最後に

最近は、肥満や糖尿病の治療薬として、GLP-1受容体作動薬(セマグルチド)やGIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド)が注目を集めています。特に体重減少効果の高さが話題になっており、肥満治療の新たな選択肢として期待されています。

今回の研究を見る限り、「より効果が高く、副作用が少ない」のはチルゼパチドかもしれません。ただし、実際にどちらが良いかは医師と相談しながら選ぶことが大切です。

今後、セマグルチドとチルゼパチドを直接比較した研究が出てくるのが楽しみですね!また新しい情報があればご紹介します!

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...