2026/02/05

健康講座955 がんと血糖値が生存率を左右する――67万人・24がん種から見えた「糖代謝管理」の本当の重要性

 

がんと血糖値の深い関係

― 24種類・67万人データから見えた「糖代謝」と生存率の真実 ―


がん治療というと、手術・抗がん剤・放射線といった「がんそのもの」への対策に目が向きがちです。
しかし近年、「がん以外の体の状態」が、がん患者さんの生存率を大きく左右することが分かってきました。

今回ご紹介するのは、韓国全国規模・67万人以上という非常に大きなデータを用いて、

「血糖値の状態(正常・境界型・糖尿病)が、がん患者さんの死亡リスクにどう影響するのか」

を詳しく調べた研究です。

結論から言うと、
糖尿病や境界型高血糖(IFG)は、がんの予後を確実に悪くしていました。
しかもその影響は、早期がんほど強いという、臨床的にとても重要な結果でした。


研究の概要(まず全体像をつかむ)

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どんな研究?

  • 研究名:Glucose tolerance and mortality across 24 cancer types and stages

  • データベース:韓国の全国がん登録+健診+死亡統計を統合した K-CURE

  • 対象人数:671,366人

  • 対象がん:24種類(肺・胃・大腸・乳がんなど主要ながんをほぼ網羅)

  • 追跡期間:平均3.5年

血糖状態の分類

  • NGT:正常血糖

  • IFG:空腹時血糖がやや高い(いわゆる「糖尿病予備群」)

  • DM:糖尿病


まず結論を一言で

  • 糖尿病(DM)
    全死亡・がん死・心血管死・呼吸器死すべてが有意に増加

  • 境界型(IFG)
    死亡リスクは小さいが、確実に上昇

  • 影響が最も大きいのは「早期がん」

  • 進行がんでは影響は弱まる


結果を数字で見る(ここが一番大事)

糖尿病があると、どれくらい死亡リスクが上がる?

死因ハザード比(HR)意味
全死亡1.3434%高い
がん死亡1.3131%高い
心血管死亡1.4646%高い
呼吸器死亡1.4343%高い

👉 「がんで亡くなるリスク」だけでなく、心臓病や肺炎なども増えるのが特徴です。


境界型高血糖(IFG)は安全なの?

答えは NO です。

死因ハザード比
全死亡1.06
がん死亡1.07

数値としては小さく見えますが、
**67万人規模の集団では「確実な差」**として検出されています。


なぜ「早期がん」で影響が強いのか?

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この研究で特に重要なのは、がんの進行度(ステージ)別解析です。

ステージ別の特徴

  • 局所がん(早期)
    → 糖尿病の影響が最も強い

  • 進行がん
    → 糖代謝の影響は相対的に弱まる

理由を分かりやすく説明すると

① 早期がんは「長く生きる前提」

  • もともと治癒・長期生存が期待できる

  • 生活習慣病の影響が積み上がる

② 進行がんでは「がん自体」が強すぎる

  • がんの進行スピードが予後を決める

  • → 血糖の影響が相対的に目立たなくなる


なぜ血糖が高いと、がんの予後が悪くなるの?

ここからは、一般の方にも分かるように**仕組み(メカニズム)**を説明します。


① 高血糖は「がん細胞のエサ」になる

がん細胞は、ブドウ糖を大量に消費します。
血糖が高い状態は、いわば

がん細胞に常に食事を与えている状態

になってしまいます。


② インスリンとIGF-1が増える

糖尿病では、体内で

  • インスリン

  • IGF-1(インスリン様成長因子)

が高くなりやすく、これらは

  • 細胞増殖を促進

  • アポトーシス(自然死)を抑制

👉 がん細胞にとって都合が良い環境を作ります。


③ 慢性炎症が続く

糖尿病は「静かな炎症状態」です。

  • サイトカイン増加

  • 酸化ストレス増大

  • 免疫監視機構の低下

これらが組み合わさり、
がんの進展・再発を後押しします。


④ 心臓・血管・肺も同時に弱る

この研究では、

  • 心血管死亡

  • 呼吸器死亡

も増えていました。

つまり、

がん以外の合併症で命を落とすリスクも高い

という現実がはっきり示されたのです。


この研究の強み(信頼できる理由)

  • 全国規模・67万人

  • 24種類のがん

  • ステージ別解析

  • 1年・3年・5年のラグ解析
    → 「がんの影響で血糖が上がった」逆因果を排除

疫学研究として、非常に完成度が高い内容です。


一方での限界(正直に)

  • HbA1cや治療内容の詳細は不明

  • 食事・運動・体重変化までは追えない

  • 観察研究なので「因果関係の証明」ではない

ただし、それを補って余りある規模と一貫性があります。


臨床・生活へのメッセージ(ここが一番大事)

がん患者さん・ご家族へ

  • 「がん治療が終わったから安心」ではない

  • 血糖管理は、がん治療の延長線上

  • 境界型でも油断しない


医療者へ

  • サバイバーシップケアに代謝管理を組み込む

  • 早期がんほど介入価値が高い

  • 糖尿病治療は「寿命を守る治療」


まとめ(この研究が教えてくれたこと)

  • 糖尿病は、がん患者の生存率を確実に下げる

  • 境界型高血糖でも影響はある

  • 特に早期がんで重要

  • がん治療+血糖管理=真の予後改善


がんは「一つの病気」ではなく、
体全体の状態の中で進行する病気です。

この研究は、

「がんと共に生きる時代」に必要な視点

を、数字ではっきり示してくれました。

血糖管理は、
がん治療の脇役ではなく、主役の一部です。

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