2019/09/10

健康講座101~新しい概念 DKD

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。

今回は自分の勉強を含めたメモ的な内容になります。

専門的な内容になりますので宜しくお願い致します。

第61回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:宇都宮 一典)において、日本腎臓学会・日本糖尿病対策推進会議合同シンポジウムが行われ、「糖尿病性腎臓病DKDの抑制を目指して」がテーマにあがっていた。

なぜ、DKD(糖尿病性腎臓病:Diabetic Kidney Disease)?
 日本糖尿病学会と日本腎臓学会の両理事長による“STOP-DKD宣言”の調印が行われた。しかし、現時点ではまだ十分に市民権を得た概念ではない。
 海外では2013年頃から“DKD”の概念が広まっており、現在、国際学会ではヒトの糖尿病関連腎症を示す病名としてDN(diabetic nephropathy:糖尿病性腎症)を使用していない。そのため、日本ではDN、海外ではDKDが使用される、いわばダブルスタンダードの状況である。国際間の情報収集・交換を考慮すると疾患概念を輸入する必要があるため、2学会の承認を得て決定された。

日本人の病態推移
 日本人の2型糖尿病患者の40%以上は微量アルブミン以上の所見を有する糖尿病腎症であり、その中で高血圧性腎症(HN)の病態に類似の、アルブミン尿が顕性化せずにeGFRが低下する非典型的な経過をたどる症例が増加している。また、透析導入率で見ると、1998年以降年々増加し、現在は横ばいの推移を示しているが、高血圧を原因とする腎硬化症による透析導入は徐々に増加傾向である。さらに、性別、年齢別の経年変化のによれば、女性は85歳未満のすべての年代において糖尿病による透析導入率は低下しており、85歳以上では横ばいである。一方、男性は80歳未満では低下傾向であるが、80歳以上は増加傾向というデータが報告されている。


DKD疾患とその対策法とは
 近年はRA系阻害薬の使用率が上昇し、それに伴う腎保護作用の恩恵を受けている。しかしその結果、アルブミン尿が検出されなくても腎機能が低下している症例が増えているのも事実である。アルブミン尿をしっかり下げているにもかかわらずGFRが低い人が増えていることを考えると、集約的治療の網の目をくぐり抜けて腎不全に陥る糖尿病患者がおり、しかも高齢化や罹病期間の延長も関与している可能性がある。
 このような症例を減らすためには現在の概念であるCKDやDNだけでは収まりきらないため、両学会は米国から広まったDKDの概念の国内普及に努めている。
 「CKD診療ガイドライン2018」に掲載予定のDKDの概念図を用い、「“DKD”とは典型的な糖尿病腎症+非典型的(顕性アルブミン尿を伴わずにGFRが落ちていく症例)で、その発症進展に糖尿病が関わっている腎症の包括的な疾患概念」と説明。また、「“CKD with DM(糖尿病合併CKD)”はさらに広い包括的な疾患概念として、海外では2014年頃から整理された疾患概念である。現在、これはDKD+非糖尿病関連CKD(多発嚢胞腎やIgA腎症のような独立したCKD)として理解されるようになった。

DKDによる診療意図拡大へ
 J-DOIT3試験の応用が、より良い臓器合併症抑制効果に結びつくことを踏まえ、多職種からなるチームでの介入が重要であり、そのためには、かかりつけ医から専門医への適切な紹介が必要となる。これを推進するため、両学会において紹介基準が作成された。この際、アルブミン尿とGFRを定期的に測定してもらうことが大前提となる。
 

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