2019/09/13

健康講座103~高齢者糖尿病診療のポイント

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。


全糖尿病患者の約80%が60歳以上
 わが国の高齢者人口は、全人口の27%を超え、これに伴い60歳以上の糖尿病患者が全糖尿病患者の約80%を占める状況となりました。
 『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』(南江堂)、『高齢者糖尿病治療ガイド2018』(文光堂)では、高齢者糖尿病を認知機能やADLなどの条件で3つのカテゴリーに分け、血糖コントロール目標値をカテゴリー別に7.0~8.5%未満に設定するとともに、重症低血糖が危惧される糖尿病薬を使用している場合は目標値に下限値を設けるなどの指針を示すものとなっています。


高齢者糖尿病に特有な病態の理解が必要
 高齢者糖尿病は2型がそのほとんどを占め、発症原因として生活習慣の集積に加え、臓器の加齢変化が指摘されています。
 
 また、患者は糖尿病に加え、高血圧、虚血性心疾患、脳血管障害、閉塞性動脈硬化症腎機能障害、がんなど多彩な疾患を合併していることが多く、多剤を併用しているケースが多いです。

 多剤併用や糖尿病薬で起こる低血糖は、うつ、認知機能低下、QOLの低下、転倒・骨折など、さまざまな弊害をもたらします。低血糖に関し、高齢者では、無自覚、あるいは症状があっても非典型的な場合もあり、周囲からの注意も必要です。

 また、糖尿病自体が、要介護の原因となる認知症や転倒・骨折などの老年症候群の危険因子であることが明らかにされており、高齢者糖尿病の診療では、いかに老年症候群の発症・進展を予防するが肝要となります。


高齢者糖尿病の治療で大事なポイント
 高齢者糖尿病の治療では、大きな目標として成人糖尿病と同じく「血管合併症の予防」があるが、同時に、高齢者では「健康寿命の延伸」「老年症候群の予防」「重症低血糖の予防」が重要です。

 そのためには「患者背景に即した安全・妥当な治療」の実施が求められます。血糖に関しては、診療ガイドラインに記載されているとおり、年齢、認知機能、ADLの状況、併存疾患、使用薬剤を考慮に入れ、個々の症例に最適と考えられている血糖コントロール目標値を目安にコントロールします。
 
 食事療法は、75歳以上の後期高齢者ではタンパク質摂取量が少ないほど死亡率が上昇します。そして、高齢者ではタンパク質摂取量が低下すると筋肉量や筋力が減少し、フレイルやサルコペニアなどの老年症候群が惹起されやすくなるといったことから、タンパク質を含む食品、肉や魚、さらに大豆、ミルク・乳製品、豆類などの摂取が推奨される。また、大豆製品や野菜、海藻などの摂取は、認知機能維持に有用という報告もあるので、高齢者ではとくにこれらの食品の摂取が勧められます。

 運動療法は、定期的な身体活動が代謝異常の是正だけでなく、生命予後、ADLの維持、認知機能低下の抑制に有用であるとされます。歩行、水泳などに代表される有酸素運動、スクワット、ダンベルに代表されるレジスタンス運動のほかに、高齢者糖尿病では、片脚立ちなどのバランス運動が転倒予防に有効であり、これらを絡めて行う必要があります。

 薬物療法では、ガイドライン記載のとおり、「低血糖の防止」「多剤併用への注意」が重要となる。とくに低血糖を起こしやすいSU薬、グリニド薬、インスリンの使用は最新の注意を払う必要がある。使用する場合は、低血糖対策を立て、患者や介護者にその対処法を十分説明しておく必要がある。また、高齢者はシックデイになりやすいので、低血糖同様にそれへの対応・予防策の教育も大事です。

 高齢者糖尿病患者の診療は、患者のQOLの維持・向上、現在の生活の継続を支援するという視点から考えた治療を行い、患者の生活背景を考慮に入れ、起こりうる有害事象を避けながら治療を継続していくことが重要です。

0 件のコメント:

コメントを投稿

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...