小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。
定期的に運動しても思ったほど体重が減らないことはよくある。しかし、痩せなくても運動を続けていれば心臓の健康は向上し、余命も延長する可能性があることが、米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのGrace Liu氏らが実施した新たな研究で示された。太っていても心肺機能が高い人は、肥満で運動しない人と比べて安静時の脈拍数や体脂肪、除脂肪体重、心機能の数値が良好だったという。研究の詳細は米国心臓協会年次集会(AHA 2018、11月10~12日、米シカゴ)で発表された。
これまでの研究から、たとえ肥満であっても健康状態が良好な人は心疾患による死亡リスクが低く、余命は適正体重の人と変わらないことが示されている。今回、心疾患の診断や予防、治療の向上を目的とした長期の観察研究であるダラス心臓研究(Dallas Heart Study)のデータを用いて、肥満の有無や心肺機能の程度と脈拍数や体脂肪、心機能などの指標との関連を調べた。
研究では、ダラス心臓研究の参加者2,351人を肥満の有無(BMI 30未満または30以上)および最大酸素摂取量を判定する心肺運動負荷試験に基づく心肺機能の程度(高いまたは低い)で4つの群に分けた。その結果、参加者のうち716人は肥満だが心肺機能が高く、356人は肥満で心肺機能が低いと判定された。
解析の結果、性や人種、BMIなどを調整しても肥満でも心肺機能が高い人は、肥満で心肺機能が低い人に比べて脈拍数が44%低く、左室拡張末期容積で評価した心機能が37%高く、体脂肪が43%少なかったほか、BMIが37%低かった。
この結果を受け、多くの人は減量のために運動を続けても、体重が減らなくなる停滞期を迎えるが、その後も運動を続ければ健康には有益であることが明らかになった。
体重にばかり気を取られるのではなく、一定の運動量を保って運動を続けることが重要だと認識する必要がある。運動を続けて心肺機能を高めれば、より長く走れたり、階段を登れたりするようになる。そうすれば体重が減らなくても運動機能と心臓の健康は向上し、寿命が延びる可能性がある。
運動を続けることの健康へのベネフィットの多くは除脂肪体重の増加によるものと推測される。筋肉は脂肪よりも重量があり基礎代謝を上げるほか、筋肉量を増やせば血糖値の上昇を抑えられることから糖尿病や心疾患リスクも低減する。また、肥満の人は心肺機能を高めるとよい。ほんの少し身体を動かすだけでも心血管の健康に良い影響を与えることは明らかで、体重だけが問題なのではなく運動すること自体に意味がある。
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