小川糖尿病内科クリニック院長小川義隆です。
糖尿病と診断されるほどではないが、血糖値が正常よりわずかに高い糖尿病予備群でも肥満があると糖尿病腎症を発症するリスクが高まる可能性があることが、大阪市立大学大学院代謝内分泌病態内科学講師の津田昌宏氏と同大学腎臓病態内科学特任教授の石村栄治氏らの研究グループの検討で分かった。インスリン抵抗性と糸球体内圧やアルブミン尿が関連することをヒトで初めて確認した点でも注目されるという。詳細は「Diabetes Care」9月13日オンライン版に掲載された。
糖尿病の重大な合併症の一つである腎症は、進行すると末期腎不全から透析導入に至るため、早期発見と早期治療が重視されている。糖尿病腎症の診断には糸球体濾過量とアルブミン尿の測定が必要とされる。しかし、これまでヒトにおいてアルブミン尿の原因とされる糸球体内圧を直接測定するのは難しく、特に2型糖尿病では高血圧や脂質代謝異常症などの糸球体内圧に影響を与える併存症が多いため、インスリン抵抗性と糸球体内圧やアルブミン尿との直接的な関連を検討することは困難であった。
そこで津田氏らは今回、糖尿病と診断されておらず、正常アルブミン尿で内服歴や喫煙歴がない腎移植ドナー候補の男女54人を対象に、肥満と糖代謝異常の有無で4つの群に分けて糸球体内圧と尿中アルブミン排泄量などの検査データを比較検討し、インスリン抵抗性指数との関連性を検討した。
その結果、糖尿病予備群と判定された肥満者11人では、他の3つの群に比べて糸球体内圧と尿中アルブミン排泄量がいずれも有意に高いことが分かった。また、肥満度(BMI)やインスリン抵抗性が高いほど糸球体内圧は高値であった。さらに、BMIとインスリン抵抗性、糸球体内圧はそれぞれが正常範囲内にある尿中アルブミン排泄量と関連することが明らかになった。年齢や性、血圧などで調整した解析でも同様の結果が得られたという。
これらの結果について、糖尿病を発症する前の段階でも肥満があると糸球体内圧が高く、アルブミン尿が多いことが明らかになった。糖尿病予備群であっても腎機能を正確に評価し、腎症のスクリーニングを行うことが望まれる。
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