2020/02/14

健康講座190~高尿酸血症と乳製品

こんにちは。

小川糖尿病内科です。


 高尿酸血症の治療には食生活を中心とした生活習慣改善が欠かせないが、無症状の場合も多く、継続的に取り組むことは容易ではない。




 尿酸値が7.0mg/dLを超える高尿酸血症患者のうち、痛風発作を起こすのは約1割。残り9割は無症候性だが、痛風以上に心配すべきは合併症で、高尿酸値は心血管代謝疾患発症のリスク因子となる。高尿酸値と各疾患の関連は数多く報告されているが、合併症のない日本人の無症候性高尿酸血症患者を対象とした5年間のコホート研究では、男女問わず高血圧、脂質異常症、CKDの発症リスクと関連したほか、男性の肥満、女性の糖尿病の発症リスクと関連したことが明らかになっている。症状のない場合でも、5年間でこれらの疾患発症リスクが増加してしまう。


 同時に、尿酸はヒトにとって必要不可欠な物質でもある。血中に存在し、生理的濃度(5.0mg/dL程度)で血管内皮機能の維持に働いているとされ、2.0mg/dL以下の低尿酸血症の状態は避けなければならない。しかし、尿酸が血中に溶けることができる限界濃度は7.0mg/dLで、それ以上に尿酸値が高まると関節だけでなく、全身の細胞内に取り込まれて臓器障害を引き起こす。その機序としては、細胞内に蓄積した尿酸により活性酸素が産生されるルート、体内での尿酸合成に伴いキサンチンオキシダーゼ(XO)が活性化されて活性酸素が増加するルートの2つが考えられるという。





 尿酸値改善のための具体的な生活指導としては、高プリン食(肉類・魚介類など)を極力控えること、十分な水分摂取(尿量2,000mL/日以上)、アルコール(特にビール)の制限、軽い有酸素運動などが推奨されている。自転車エルゴメーターと尿酸値の関連を調べた研究では、実施時間が長くなるほど尿酸値が上昇し、激しい運動は真逆の効果をもたらす。アルコール摂取に関しては、低プリン発砲酒でも尿酸値は上昇するものの、その幅は通常のものよりも低く抑えられる、サウナ+ビールの組み合わせは脱水とプリン体摂取とにより大きく尿酸値が上昇する

 逆に摂取が推奨されるものの1つが乳製品で、痛風の発症抑制に有効であることが報告されている。手軽に摂取できる牛乳は有用だが、豆乳では血中尿酸値の抑制効果が確認されなかった。牛乳にはプリン体が含まれないが、豆乳には含まれることが影響している。




 同じ乳製品でも、牛乳と乳酸菌による尿酸値抑制メカニズムが異なる。牛乳の場合は、摂取後の尿中の尿酸排泄量が増加するが、乳酸菌では尿中排泄量の変化はみられなかった。しかし血清尿酸値は抑制されていることから、乳酸菌は消化管からのプリン体吸収抑制に寄与し、腸管内でプリン体を取り込み、増殖のための栄養源として利用している可能性がある。


■参考
1)Kuwabara M, et al. Hypertension. 2017 Jun;69:1036-1044.
2)Cohen JD, et al. J Clin Lipidol. 2012 May-Jun;6:208-15.
3)日本痛風・核酸代謝学会. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版.診断と治療者;2018.
4)Yamamoto T, et al. Horm Metab Res. 1994 Aug;26:389-91.
5)Yamamoto T, et al. Metabolism. 2002 Oct;51:1317-23.
6)Yamamoto T, et al. Metabolism. 2004 Jun;53:772-6.
7)Choi HK, et al. N Engl J Med. 2004 Mar 11;350:1093-103.
8)Dalbeth N, et al. Ann Rheum Dis. 2010 Sep;69:1677-82.
9)Kurajoh M, et al. Gout and Nucleic Acid Metabolism. 2018;42:31-40.

0 件のコメント:

コメントを投稿

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...