2021/12/24

健康講座421 新型コロナウイルス感染症(COVID-19と維持透析患者

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した維持透析患者のレムデシビルによる予後改善効果が認められたということでございます。日本透析医会、日本透析医学会、日本腎臓学会によるCOVID-19対策合同委員会が実施した研究の結果であります。

 3学会のCOVID-19対策合同委員会は、全国規模で透析患者のCOVID-19罹患状況等を継続調査しているようです。今回報告された研究は、パンデミック第4波が収束した2021年6月19日までに登録されたCOVID-19透析患者1,948人から、転帰不明者などを除外した1,010人のデータを解析したもののようです。

 解析対象者のうち699人(69.2%)は回復し、311人(30.8%)は死亡していたようです。死亡した患者群は、高齢で透析歴が長いという点で有意差があったが、性別や原疾患には差がなかったようです。併存疾患については、心血管疾患と末梢動脈疾患の有病率が死亡群で有意に高く、高血圧や糖尿病、呼吸器疾患、がんの有病率は有意差がなかったとのことです。

 COVID-19に対して行われた治療内容を見ると、死亡群では呼吸管理(酸素投与、人工呼吸器や体外式膜型人工肺の使用)やデキサメタゾン投与が行われていた患者が多かった模様です。血液検査データを入手し得た311人での検討では、死亡群は回復群に比べクレアチニン(8.8±3.5対10.1±4.1mg/dL、P=0.004)とアルブミン(2.9±0.6対3.3±0.6g/dL、P<0.001)が有意に低く、CRPが有意に高値(中央値7.1対2.0mg/dL、P<0.001)だったようです。またBMIは死亡群の方が有意に低かったとのことでございます(22.0±4.6対23.5±5.3、P=0.01)。

 多変量解析の結果、死亡リスクの上昇と独立して関連する因子として、70歳以上〔60歳未満に対してハザード比(HR)4.92〕、透析歴の長さ〔1年未満に対して1~5年ではHR2.07、末梢動脈疾患〔HR1.49、およびデキサメタゾン投与〔HR1.36〕や種々の呼吸管理〔酸素投与ではHR3.44〕が抽出されました。

 一方、レムデシビルの投与は死亡リスクの低下と独立して関連していたとのことです〔HR0.60〕。そこで、年齢と呼吸管理の施行状況を傾向スコアで一致させ、レムデシビルが投与されていた患者と投与されていなかった患者を1対3の割合(98人と294人)で抽出し比較した結果、レムデシビル投与群は死亡リスクが有意に低く〔HR0.45〕、生存期間の有意な延長が認められたようです。また、在院日数もレムデシビル投与群の方が有意に短かったとのことです〔群間差4.7日(2.2~7.4)〕。

 このほか、アルブミンが1g/dL高いごとに死亡リスクが半減すること〔HR0.48〕、血液透析患者と腹膜透析患者では予後に差がないことなどが明らかになりました。

 これらの結果から、国内の透析患者のCOVID-19による死亡率は30.8%と高く、一般人口の20倍に上ります。これは海外からの報告と一致しており、日本に特異的なことではないものの、透析患者の感染対策の徹底が求められるようです。また、COVID-19透析患者へのレムデシビルによる治療は、入院期間の短縮と死亡リスクの抑制につながるようでございます。

原著

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