2021/12/30

健康講座427 睡眠習慣と心疾患

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 夜10~11時の間に眠りに就く人は心疾患のリスクが低いというデータが報告されたようです。英エクセター大学の研究によるもので「European Heart Journal ― Digital Health」に論文が掲載されました。


 概日リズム、つまり体内時計の変化がキーワードになりそうです。概日リズムは毎日の生理学的活動リズムを制御しており、それが乱れた場合の影響は広範囲に及び、心血管系を含むさまざまな身体的・精神的疾患のリスクが高まるというものです。概日リズムは毎朝、光に当たることでリセットされ、入眠時刻が遅い人は起床時刻も遅く、そのリセットのタイミングを逃してしまう可能性があるようです。それが長期間続いた場合、健康への実害が生じるのではないかと推察されております。

 本研究のデザインは、入眠時刻が遅いことが心疾患のリスク因子であることを証明ではなく、その可能性を示したにとどまるようです。概日リズムの乱れが、肥満や糖尿病、高血圧、心血管疾患、さらにはがんなどの疾患リスクと関連していることを示した研究結果が増えてきているのも事実です。

 研究の対象は、英国の大規模ヘルスケア情報データベース「UKバイオバンク」の登録者のうち、7日間にわたる入眠・起床時間のデータのある8万8,026人(平均年齢61.43±7.8歳、男性41.6%)。入眠・起床時刻は手首に装着する加速度センサーで判定されたものです。

 平均5.7±0.49年の追跡期間中に3,172件の心血管疾患(CVD)イベントが記録されていた。年齢と性別を調整後、午後10時からの1時間に入眠していた群のCVDイベントリスクが最も低いことが分かったのです。調整因子として既知のCVDリスク因子、睡眠時間やその不規則性を追加してもこの関連の有意性は保たれていたのでございます。

 具体的には、入眠時刻が午後10時台の群を基準として、午後10時前の群のCVDイベントのハザード比(HR)は1.24(95%信頼区間1.10~1.39、P<0.005)、午後11時台の群はHR1.12(同1.01~1.25、P=0.04)、0時以降の群はHR1.25(同1.02~1.52、P=0.03)であり、いずれも有意にリスクが高かったのです。性別に見ると、男性では入眠時刻が午後11以降の場合のリスク上昇は有意でなく、午後10時前の場合のみ有意でした。女性では入眠時刻が午後11時台の場合は有意性が消失し、その他のカテゴリーは有意性が維持されていました。

 入眠時刻とCVDイベントリスクとの有意な関連の存在を示しているが、この結果のみに基づいて一般の人々に入眠時刻の推奨をすることは時期尚早かもしれません。その上で、朝の光に当たることで概日リズムがリセットされることに関してはエビデンスがあるため、睡眠習慣を整えることには健康上のメリットがあると考えられます。

 睡眠習慣を整える具体的な方法として、適切な時刻に入眠して朝の光を浴びることのできる時刻に起床すること、夜遅い時間帯にはカフェインやブルーライトを避けること、午後4時以降には昼寝をしないこと、寝室は睡眠を取るために利用し他の目的には使わないこと、眠たくなってから床に就くことなどが、エビデンスに基づく推奨となります。

 

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