2022/03/18

健康講座467 インスリン以外の血糖を下げるホルモン

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 膵臓からのインスリン分泌が血糖値を下げるための主要なメカニズムであることは、100年以上前から分かっていることでございます。しかし、血糖値を下げる仕組みはインスリン分泌ばかりでなく、FGF1というタンパク質も血糖降下作用を持つようです。そのFGF1の血糖降下メカニズムが明らかになりそうです。


 FGF1は、線維芽細胞成長因子1(fibroblast growth factor 1)の略です。脂肪組織で生成されるこのFGF1に、インスリンと同じような血糖降下作用があることはこれまでにも知られていたとのことです。今回の研究では、FGF1がどのように血糖値を下げるのか、実験用マウスを用いて検討されたのです。その結果、FGF1はインスリンと同様に、脂肪組織の分解と肝臓からの糖放出を抑制することで、血糖降下作用を発揮することが分かりました。ただしFGF1は、インスリンとは異なるシグナル伝達経路を介してこれを行っていたのです。

 インスリン抵抗性のある状態では、インスリンシグナル伝達が損なわれています。しかし、異なるシグナル伝達経路を機能させることで、脂肪分解の抑制と血糖制御の可能性があり、インスリン抵抗性のある実験用マウスにFGF1を注射すると、血糖値は著明に低下することも確認されたようです。

 しかし、動物実験で認められた効果がヒトでも認められるとは限りません。インスリン抵抗性のある人は、FGF1に対しても抵抗性を示す可能性は当然あると思います。また、2型糖尿病は、患者ごとに代謝状態が大きく異なる複雑な症候群です。FGF1を標的とする治療は、一部の2型糖尿病患者さんには有効かもしれないですが、他の患者に効果はあるのでしょうか。

 マニアックな話ですが、インスリンの脂肪分解抑制作用は、ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)と呼ばれる酵素が、シグナル伝達経路の重要な鍵を握っているようです。それに対して今回の研究により、FGF1ではPDE4という別の酵素が利用されていることが分かりました。

 今後のさらなる知見に興味がでます。

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