2022/04/01

健康講座473 減量と大腸がんリスク軽減

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 米国では肥満者の増加とともに、大腸がんが特に若年世代で増加しており、体重と大腸がんリスクとの関連が示唆されております。その一方で、肥満者が減量した場合に大腸がんのリスクが低下する可能性のあることが分かった。ようでございます。

 この研究は、米メリーランド大学の研究であります。公衆衛生に関して、成人期の体重増加を抑えることが、大腸がんの前がん病変と考えられる、大腸腺腫のリスク抑制に役立つ可能性があるということでございます。そしてそれだけでなくは、大腸腺腫のリスク抑制によって、大腸がんのリスクを減らせる可能性もあるという点でございます。

 これまでの体重と大腸がんリスクの研究の大半は、ある一時点の体重か、もしくは体重の増加との関連のみを検討しており、体重減少の影響は考慮されていなかったようです。今回の研究結果を基に、特に肥満または過体重者の減量には、これまでに知られている多くの健康上のメリットに加えて、大腸腺腫のリスクを下げるというメリットもあるようでございます。

 この研究は、前立腺がん、肺がん、大腸がん、卵巣がんのスクリーニングの有効性を検証した「PLCO試験」のデータを用いて行われたものです。解析対象は、ベースライン時に大腸がんや大腸腺腫がない、55~74歳の成人1万8,588人。3年後または5年後に行ったフォローアップ検査で、1,053人に大腸腺腫が確認されていました。

 年齢や性別、人種/民族、食事・飲酒・喫煙・身体活動習慣、大腸がん家族歴、非ステロイド性抗炎症薬の使用、ホルモン補充療法の施行などの影響を調整後、体重の変化と大腸腺腫発生との間に、以下の関連が見つかったようです。

 まず、体重が20歳時点からベースライン検査にかけて0.5kg/5年以上減少していた群では、体重変化のない群に比較し大腸腺腫の発生が46%少なかった〔オッズ比(OR)0.54。その一方、同期間に体重が3kg/5年以上増加していた群では、体重変化のない群に比較し大腸腺腫の発生が30%多かったようです〔OR1.30〕。

 20歳から50歳にかけて0.5kg/5年以上減少していた群も、体重変化のない群に比較し大腸腺腫の発生が43%少なかったのです〔OR0.57〕。50歳以降の体重変化は減少した場合は増加した場合も、大腸腺腫の発生率との有意な関連がなかったようでございます。

 次に、20歳時点のBMI25以上/未満で層別化して検討があります。その結果、20歳時点でBMIが25以上だった人のうち、ベースライン検査にかけて体重が0.5kg/5年以上減少していた場合、体重変化のない群に比較し大腸腺腫の発生が61%少ないという、より強い関連が認められたのでございます〔OR0.39〕。反対に、20歳時点でBMIが25未満だった人では、体重減少と大腸腺腫の発生率との有意な関連がなかったようです〔OR0.79〕。

 一方、20歳時点でBMIが25未満だった人では、ベースライン検査にかけて体重が3kg/5年以上増加していた場合、体重変化のない群に比較し大腸腺腫の発生が27%多かったのです〔OR1.27〕。反対に、20歳時点でBMIが25以上だった人では、体重増加と大腸腺腫の発生率との有意な関連がなかったようです〔OR1.59〕。

 米国がん協会(ACS)によると、米国の2022年の結腸がん新規症例は10万6,000人以上、直腸がんは4万4,000人以上と予測されるというのです。そして、全体の新規発症者数は減少傾向にあるが、50歳未満では増加が続いているとのことでございます。これを背景に最近、大腸がんスクリーニング対象の推奨年齢が、以前の50歳から45歳に引き下げられたとのことです。

 BMI25以上の過体重または肥満者では、減量が大腸がんリスクを低下させる可能性が示されたことは、極めて興味深いことです。この結果は、大腸がん対策の新たなスタートにつながるかもしれないですし、是非大腸がん検診などを積極的に受けて頂ければ幸いです。


原著

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