2022/05/02

健康講座486 SGLT2阻害薬

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 今回はSGLT2阻害薬について。この薬剤もまた、生誕7年と新しい経口糖尿病治療薬でございます。当初は「尿に糖を捨てるだけの単純な薬」と認識され、糖尿病専門医の間でも、本質的ではないとあまり評価はされず、期待もされていない薬剤でした。

現在は経口薬として、α-GI薬に続いてSGLT2阻害薬の一部が1型糖尿病に適応追加を取得し、予想以上にいい効果が発揮されている。さらに、心不全に対する適応も加わり、それどころか慢性腎臓病(以下、CKDと略す)の適応まで追加になったのです。

まさに、マルチな効能を兼ね備えた薬剤で、合併症を見据えた治療が可能になり、もはや血糖降下薬の域を出ております。


さて、そんな同薬剤ですが、どんな方に適切なのでしょうか?まず分類・作用機序から簡単に知る必要があります。SGLT2阻害薬は、糖尿病治療ガイド2020-20211)の中でインスリン分泌非促進系に分類され、主な作用としては腎臓でのブドウ糖再吸収阻害による尿中ブドウ糖排泄促進であります。そして特徴として、単剤では低血糖を起こしにくく、体重減少効果があり(なお食欲増進に注意)、主な副作用として、性器・尿路感染症、脱水、皮疹、ケトーシスが知られています。

使用上の注意として、「1型糖尿病患者において、一部製剤はインスリンと併用可能」「eGFR30未満の重度腎機能障害の患者では、血糖降下作用は期待できない」と記載され、さらには、主なエビデンスとして「心・腎の保護効果」「心不全の抑制効果」が示されているものです。

上記からも適応症例は、「低血糖を起こしたくない肥満(とくに内臓肥満、いわゆるメタボリックシンドローム)で、尿路感染症がなく、腎機能が比較的保たれ脱水を引き起こしにくい患者」すなわち、(食事時間の不規則な)メタボ型の若年~中高年糖尿病患者ということになります。

なお、それ以外の患者さんには使用できないわけでもないです。ただし、絶対に使用してはいけないのは、寝たきりの高齢者で水分もあまり摂れず、食事量も少ないインスリン分泌の落ち込んだ血糖コントロール不良の患者であります。同様に、下痢や嘔吐で食事が摂れないシックデイや、脱水のときに服薬継続した場合は危険なため、処方する際はあらかじめ、休薬する必要があります。

なぜならば、正常血糖ケトアシドーシスを起こすリスクがあるからです。日本糖尿病協会から「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」として出されています。また、本薬剤は、膵臓からのグルカゴン分泌を促進し、腎臓からの3-hydroxybutyrateとアセトアセテートの分泌を減少させることによりケトーシスのリスクを増大させるともいわれています2)

また、体重減少が期待できるこの薬ですが、薬の効果があっても、生活改善なくして体重は減らないです。また、1年あまりで下げ止まってしまうこともしばしばあります。よくあるミスとして、薬で痩せるならいくらでも食べられると勘違いして過食に走り、体重が落ちるどころかさらに増えてしまい、血糖コントロールが悪化することもあります。そうなってしまうと、この薬剤に期待する効果が十分に得られないだけでなく、中止後のさらなる体重増加、血糖コントロール悪化につながる恐れまであるのです。処方時には、食欲増進作用を併せ持つことを注意頂きたいです。

薬の間に差異はあるか?個人的見解は、ほぼ大差なしです。

敢えて申しあがるならば、例えばですが、入院中の2型糖尿病患者36例を対象に、トホグリフロジン20mg(商品名:アプルウェイ、デベルザ)を朝1回追加投与することで、日中の尿量は増加するものの、夜間の尿量増加はわずかにとどまり、夜間就寝中のQOLを損なうことは少ないことが示唆されました3)。トホグリフロジンはSGLT2阻害薬のなかでは半減期が5.4時間と最も短く、健康成人に対する朝1回単回投与試験でも、夜間の尿糖排泄は少ないことが示されています4)。このような結果から、日中に比し、夜間の尿量増加が少なかったことは、トホグリフロジンの半減期が短いことによると推察されます。夜間の尿意で眠れない場合などは本剤の選択がいいかもしれないです。


話は変わりますが、ダパグリフロジンが慢性心不全の標準治療に対する効能・効果の追加承認を取得されました。この承認は、2型糖尿病合併の有無にかかわらず左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)を対象とした第III相DAPA-HF試験5)の良好な結果に基づいています。

さらには、糖尿病患者に多いといわれている左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)に対するエンパグリフロジンの有効性を検討した、EMPEROR-Preserved試験において、主要評価項目(心血管死亡または心不全による入院の初回イベント)の発生リスクは、エンパグリフロジン投与群で有意に抑制されたということでございます。

SGLT2阻害薬はもはや、血糖降下作用を持つ糖尿病治療薬としてのみならず、心不全・CKDの治療薬として君臨しております。いずれの病態も糖尿病の重大な合併症であり、動脈硬化性心血管疾患やCKDの合併または高リスクの場合は、メトホルミンとは独立して検討すると記載されており、とても気たちの高い薬剤であります。

0 件のコメント:

コメントを投稿

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...