2022/05/04

健康講座487 脳腸相関のトピックス

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 今まで便秘や下痢、免疫対策として注目されていた“腸”には、“脳”との関係性「脳腸相関」もあると明らかになってきているのです。このことから、両者の関係が認知症研究においても注目されるようになってきております。近年、腸内細菌やそれらが作り出す成分による脳の健康状態への影響に関する研究が多数行われています。 

 

 認知症のリスク低減のための対策について、アルツハイマー型認知症(AD)の進行の原因として考えられているアミロイドβは、40代から徐々に脳に蓄積し、SCD(主観的認知機能低下)やMCI(軽度認知障害)といった未病の段階からADへ進行させると考えられています。ADの発症を止めることはできないことから、未病段階から発症を予測して遅らせるという「先制医療」が注目されてきているということでございます。


 脳の老化を予防するには生活習慣病の改善のほか、囲碁や将棋といった対人ゲーム、運動をしながら歌うといった体と脳を同時に使うデュアルタスク、睡眠の質の向上といったことが効果的であるようです。とくに、近年では食事による脳機能への影響が研究されており、脳機能の改善を目指した食品の成分・素材に関する研究、商品化が進んでいるのです。先制医療の観点からも、認知症を発症する前の段階で、普段の食事に気を使って発症予防に努めることが重要であると考えられますね。

 腸内細菌が与える脳への影響について、脳と腸が自律神経などを介して互いに影響しあう「脳腸相関」という言葉が知名度を上げてきてきております。近年では腸内細菌叢がADやパーキンソン病などの神経疾患の発症の因子であることが示唆されているのです。認知症においては、発症している人では発症していない人と比較して、常在菌であるバクテロイデスの数が少なく腸内細菌叢の構成が異なっていることが明らかになっているのです。さらに、アンモニアや有機酸といった腸内細菌による代謝産物が認知症リスクを高めることも明らかになったということでございます。

 また、食事が認知機能に与える影響を調査した研究についても、認知機能と食事内容の関係を調べた結果、認知機能の高い患者では魚介やキノコ類、大豆類、コーヒーの摂取率が高かったことが明らかになったようです。この結果から、食事の内容が認知機能に影響を与えることが示唆されております。

 最後に、ビフィズス菌MCC1274の臨床試験の結果について紹介します。MCC1274は、森永乳業が保有するビフィズス菌株の中から、アルツハイマー型認知症の発症を抑制する可能性がある菌株として特定されたようです。

 プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間試験では、50歳以上80歳未満でMMSEスコアが22点以上でありMCIの疑いがある80例をMCC1274カプセル(生菌200億/日)群またはプラセボ群に割り付け、16週間摂取後のアーバンス(RBANS)神経心理テストの結果を比較しました。その結果、主要評価項目であるRBANSスコア合計の摂取後の実測値、そして前後の変動値とも有意な改善が認められました。また、認知機能の中でも、即時記憶、視空間・構成、遅延記憶に関する項目のスコアが有意に改善したのです。

 本試験の結果は、臨床試験において単一のビフィズス菌生菌体のみで加齢に伴い低下する認知機能を維持することが報告された世界で初めての報告であるということです。また本試験の結果を受け、ビフィズス菌MCC1274を用いた商品の機能性表示食品の届出が消費者庁に受理されたようです。機能性表示食品の届出がされた商品のうち認知機能の改善に関連するものは350件以上存在するが、菌体を成分として受理されたものはビフィズス菌MCC1274が初だということです。

以上、参考になれば幸いです。

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