2022/05/27

健康講座497 タンパク尿と7つの要因

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 心血管疾患リスク因子の該当数が、蛋白尿の出現と有意に関連していることが分かりました。東京大学医学部循環器内科の全国規模の健診データを解析した結果で明らかになりました。リスク因子を1年で1つ減らすと、蛋白尿出現リスクが1割低下するということでございます。

 蛋白尿は腎機能低下の指標であるだけでなく、心血管疾患(CVD)のリスクとも関連しており、CVDを防ぐには血糖や血圧などのコントロールに加えて、蛋白尿を陰性に保つことが重要と考えられています。他方、米国心臓協会(AHA)はCVDリスク抑制のために、7つの生活習慣関連因子をCardiovascular Health Metrics(Life’s Simple 7)としてまとめいるようです。ただし、この7因子が日本人の蛋白尿リスクと関連するかは不明でありました。

 そこで、健診受診者データを用いた観察コホート研究を実施したようです。検討対象は、2005~2016年に健診を受け、4年以内に再度健診を受けていた成人86万5,087人〔年齢中央値46歳(四分位範囲40~54)、男性60.7%〕。初回健診時に尿蛋白が陽性(1+以上)だった人や透析既往者などは除外されているようです。

 AHAが掲げる7因子に基づいて、以下のようにCardiovascular Health(CVH)Metricsをカウントしました。血圧120/80mmHg未満、総コレステロール200mg/dL未満、空腹時血糖値100mg/dL未満(いずれも未治療状態での測定値)、BMI25未満、非喫煙、習慣的運動(30分の運動を週に2回以上または1日あたり1時間以上の歩行)、健康的食習慣(朝食の欠食が週に3回未満)。これらをCVH metricsとして、その該当数と蛋白尿の出現リスクとの関連を検討した。

 4年間の追跡で、4万1,474人(4.8%)に蛋白尿が出現しました。年齢と性別の影響を調整後、前記のベースライン時のCVH該当数による3群で比較すると、該当数が多い群ほど、蛋白尿出現リスクが低かった。具体的には、2個未満の群を基準として3~4個の群はオッズ比(OR)0.61、5個以上の群はOR0.45だったようです(傾向性P<0.001)。

 7つのCVH因子を個別に検討すると、以下に記すように、総コレステロールを除く全てが蛋白尿出現リスクの低さと有意に関連していました。BMI25未満でOR0.70、空腹時血糖100mg/dL未満でOR0.74、非喫煙でOR0.80、血圧120/80mmHg未満でOR0.81、健康的食習慣でOR0.82、習慣的運動でOR0.95(いずれもP<0.001)。

 また、ベースライン時のCVH該当数が1つ多いごとに、蛋白尿出現リスクが2割低くなるという有意な関連の存在が明らかになったようです。さらに、ベースライン時から1年間でCVH該当数が1つ増えると蛋白尿出現リスクが1割低下するという、生活習慣改善の有意な効果も認められました。

 CVH metricsと蛋白尿出現の関係を示した初の研究だそうです。要するにですよ、ベースラインでのCVH metricsの該当数が多いほど蛋白尿出現リスクが低く、また、追跡期間中にCVH metrics該当数が増えることが蛋白尿出現リスクの低下と関連していたのです。この結果は、修正可能な生活習慣関連因子の重要性を示唆しており、蛋白尿抑制における生活療法の可能性を示すものと言えます。

原著

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