2022/05/25

健康講座496 肥満と認知症の関連

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 過体重や肥満は心臓の健康を損ないます。では、認知機能への影響はどうでしょうか?

 マクマスター大学(カナダ)の研究によると、認知機能への影響も存在するようです。
 カナダで行われている2件の大規模疫学研究のデータを統合して、内臓脂肪容積や体脂肪率と認知機能との関連を検討しました。解析対象者は、心血管疾患のない30~75歳の成人9,189人(平均年齢57.8±8.8歳、女性56.4%、白人83.8%)。認知機能は、デジタルシンボル置換テスト(DSST)、モントリオール認知評価(MoCA)という2種類の指標で評価しました。DSSTは0~133の範囲、MoCAは0~30の範囲でスコア化したようです。いずれもスコアが低いほど認知機能が低いことを表すようです。

 内臓脂肪容積および体脂肪率をそれぞれ四分位で4群に分けた上で、年齢や性別、教育歴、民族性などの解析結果に影響を及ぼし得る因子を調整後、認知機能との関連を検討しました。その結果、以下に記すように、内臓脂肪容積が大きく体脂肪率が高いほど、認知機能が低いという関連が明らかになりました。

 まず、内臓脂肪容積については、第1四分位群(内臓脂肪容積が少ない下位4分の1)のDSSTスコアが73.9に対して、第4四分位群は70.9だったようです(傾向性P<0.001)。また、MoCAスコアは内臓脂肪容積の第1四分位群が27.1に対して、第4四分位群は26.8だったとのことです(傾向性P=0.003)。

 次に、体脂肪率については、第1四分位群のDSSTスコアが75.3に対して、第4四分位群は72.8だったようです(傾向性P<0.001)。MoCAスコアと体脂肪率との間には有意な関連が見られなかったようです。

 肥満の程度が1標準偏差増加するごとに(内臓脂肪容積では36mL増、体脂肪率では9.2%増)、DSSTスコアが0.8低下するという関係も明らかになりました。このDSSTスコア0.8という認知機能の低下は、約1年の加齢変化に相当するということでございます。

 肥満が糖尿病や高血圧などの心血管疾患リスク因子を増やすだけでなく、認知機能とも関連のあることが明らかになりました。ただし、認知機能の全ての側面と関連が認められたわけではないようです。具体的には、内臓脂肪容積や体脂肪率と、記憶力や語彙力との間には関連がなく、有意な関連が認められたのは認知処理速度だったとのことだったことです。認知処理速度とは、視覚や聴覚などで感知した情報を処理して反応するのに要する時間を意味するとのことです。

 本研究で示された肥満と認知処理速度の低下との関連が永続的なものなのか、減量によって回復可能なのかは不明だそうです。ただし、いずれにしても、肥満を回避することが鍵となると思います。体重増加を防ぐために、健康的な食事を取り、活動的な生活を送った方が良いのは間違いないでしょう。

 肥満と認知機能との間に関連があるとしても、この研究のみでは、因果関係の有無は判断わかりません。しかし、食事と運動の習慣の改善は、認知機能低下に対するライフスタイル要因の重要性を示唆しております。

原著

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