2022/06/22

健康講座508 セマグルチドの体重減少効果

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 わが国では2010年からGLP-1受容体作動薬を糖尿病治療薬として使用しており、血糖降下作用以外の、食欲抑制効果、胃内容物排出遅延効果により、体重の減少効果も期待できる薬剤であります。2020年からわが国でも使用できるようになった週1回注射製剤のセマグルチド(Sema)(商品名:オゼンピック)は、26位アミノ酸のリジンに脂肪酸を結合させることでアルブミンへの結合が増強されて分解が遅延するため、血中半減期が約1週間のGLP-1アナログです。


 これまでにSemaの2型糖尿病患者への臨床試験は「SUSTAINプログラム」として、多くの試験が実施され、Sema 0.5mgおよび1.0mgの血糖降下作用、および体重減少作用が報告されてきました。わが国でのSema 1.0mg単独療法での30週における体重減少効果は-3.87kgであったようです1)。さらにSUSTAIN-6では心血管イベントの有意な抑制効果が認められているのです2)

 今回Lancet誌で紹介された「STEP 2試験」は、BMI 27kg/m2以上の肥満または過体重である2型糖尿病患者に対して、高用量2.4mgのSemaの効果を、糖尿病治療薬として使用されている1.0mg Semaおよびプラセボと比較した第III相臨床試験であります。12ヵ国、149施設の患者、計1,210名が参加しており、アジア人種も26.2%含まれています。参加者の治療介入前平均体重は99.8kg、平均BMIは35.7kg/m2であり、わが国の2型糖尿病患者の平均BMIに比較するとかなり高値であるものです。

 68週の治療で、本試験の主要評価項目である体重の減少率は、Sema 2.4mgでは-9.6%であり、プラセボの-3.4%に比較して6.2%減少に差が認められました。Sema 1.0mgでは-7.0%であり、Semaの投与用量を多くすることでさらなる体重減少効果が認められたこととなりました。実際の体重減少で見るとSema 2.4mgでは-9.7kg、Sema 1.0mg で-6.9kg、プラセボ-3.5kgであり、これまでのSema治療用量に比較してその体重減少効果が大きいことが示されています。

 そのほか、HbA1c、収縮期血圧、脂質パラメーターなど、すべてプラセボに比較して改善効果が認められているが、とくに興味深かった結果は、HbA1cはSema 2.4mgと1.0mgでともに-1.6%、-1.5%と同等の低下作用であり、糖尿病薬としてのGLP-1の効果は1.0mgでほぼ十分であることがわかります。ちなみに低血糖の発現はSema 2.4mgで5.7%、Sema 1.0mgで5.5%と同等であり、高用量のSemaで低血糖が誘発されるわけではないことも理解できるのです。

 副作用に関しては、既存のGLP-1受容体作動薬同様に吐き気や嘔吐、下痢、便秘といった消化器症状が最も多く、Sema 2.4mgとSema 1.0mgでほぼ同程度でありました。そのほか、高用量Semaによる特異的な副作用は認められていないです。

 肥満によって患者のQOLが低下することが多いが、本試験ではSF-36v2とIWQOL-Lite-CTといった2つの方法で治療によるQOL変化の評価を行っています。その結果、Sema 2.4mgではプラセボに比較して身体的活動が改善していることが示されている。週に1回の注射で、これだけの体重減少効果と各種代謝パラメーターの改善が認められることは、これまでの抗肥満薬や肥満手術に比較してもQOLを向上させる効果が期待できると考えられます。

 今回のSTEP 2試験の結果から、高用量のSemaにより、長期的にどれくらいの心血管イベント抑制効果が認められるかどうかに今後注目したいところです。今後、肥満糖尿病患者の治療の主軸としてGLP-1受容体作動薬が位置付けられことが予想されます。現在、数々のSTEP試験によって糖尿病のない肥満者においてもその有効性が示されており、さらに幅広い患者での使用機会が期待されます。


 現在、日本では体重減少目的での保険適応はありませんのでご注意ください。

参考

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