2022/07/13

健康講座517 電子タバコと歯周病

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 タバコは歯周病のリスク因子として有名ですが、電子タバコもやはり歯周組織にダメージを与えるというエビデンスが報告されました。米ニューヨーク大学(NYU)によるもので、電子タバコ利用者の口内細菌叢は、非喫煙者よりも喫煙者に近い特徴を有しているとのことです。

 口の中に生息する細菌は、バイオフィルムという粘着性の膜を形成して繁殖します。歯の表面のバイオフィルムは、毎日の歯磨きと定期的な歯科受診によってコントロール可能です。しかし、歯と歯茎の間に深い歯周ポケットがあると十分にクリーニングできず、細菌が産生する毒素が組織を刺激し、慢性的な炎症反応が引き起こされるのです。これが歯周病と呼ばれる状態です。米国歯周病学会によると、喫煙は歯茎を脆弱にして歯周病のリスクを高めるそうです。従来型タバコだけでなく、電子タバコも口内細菌叢のバランスを乱し、炎症や感染を起こしやすくする可能性が示されました。

 成人84人の口内細菌叢の変化を6カ月間にわたり観察するという研究を行いました。研究対象者のうち、従来型タバコの喫煙者が27人、電子タバコ利用者が28人、非喫煙者が29人だったようです。6カ月間で全ての群の口内細菌叢の組成に変化が見られたが、全体的に前二者は非喫煙者に比較して、Selenomonas、Leptotrichia、Saccharibacteriaという細菌の割合が高かったようです。電子タバコ利用者の口内には、歯周病を進行させることが明らかになっている、FusobacteriumやBacteroidalesという細菌が多いことも明らかになったようでございます。

 また、研究参加者全員に何らかの歯周病の所見が認められました。ただしその重症度が異なり、従来型タバコ喫煙者は約80%が重症と判定された一方、非喫煙者の多くは軽症または中等症にとどまっていたようです。電子タバコ利用者はそれら両者の中間に当たり、約40%が重症と判定されました。

 従来型タバコの喫煙によって生じる白板症(口腔粘膜や舌にできる白い斑点のことで前がん病変とされる)に関しては、電子タバコがまだ比較的新しい製品であるため、利用した場合にそのリスクが上昇するのかは不明だそうです。ただし、「電子タバコはタバコの葉を燃焼はさせないものの、それ自体に問題のある成分が含まれている」とのことです。具体的には、プロピレングリコール、グリセロール、香料などや、製品によってはニコチンも含む液体が加熱されたとき、蒸気とともに有毒化学物質が生成されると解説されていました。

 電子タバコの蒸気は多くの人々が信じているような無害な存在ではなく、発がんを促すことが知られている重金属や化学物質が含まれているようです。ただし、長期間の喫煙で問題になる肺気腫や慢性気管支炎などの疾患リスクが、電子タバコの利用でも上昇するのかは、電子タバコの歴史がまだ浅いために明らかでないとのことです。

 とは言え今回発表された研究のように、短期的な悪影響の存在を示唆するエビデンスの蓄積が進んでいます。電子タバコが十代の若者や若年成人に人気であることを考慮すると、この問題は深刻かもしれません。短期的な悪影響を示すエビデンスの一つとして、電子タバコの利用を始めた若年成人は、1年以内に喘鳴と空咳を発症しやすいことが分かったということでございます。

 このような電子タバコの潜在的な危険性について、成人の喫煙者に対して、電子タバコが禁煙の助けになるという宣伝に使われているようです。しかし、電子タバコで禁煙成功率が高まるという確固たるエビデンスはないです。どうぞ、ご参考に。


原著

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