2022/07/29

健康講座525 肥満の影響

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 肥満ではあるが検査値上の異常はない場合、「代謝的に問題のない肥満」と言われることがあるようです。しかし、「健康的な肥満などはない」とする論文が、英グラスゴー大学健康福祉研究所の研究によるものだそうです。


 肥満者の代謝関連検査値が基準値内にあるとしても、それはその人が実際に健康であることを意味するわけではないようです。なぜならば、糖尿病、心臓病、脳卒中、呼吸器疾患のリスクが高いからだそうです。

 英国の大規模ヘルスケア情報ベース「UKバイオバンク」の登録者から、解析に必要なデータがそろっている38万1,363人を抽出し、住民ベースの前向きコホート研究として行われたようです。ベースライン時のBMIが30以上で肥満に該当するものの、6つの代謝関連指標(中性脂肪、LDL-コレステロール、HDL-コレステロール、HbA1c、C反応性蛋白、血圧)のうち4つ以上が基準値内の人を「代謝的に健康な肥満」と定義したようです。11.2年(中央値)追跡して、2型糖尿病や心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患の発症、アテローム性動脈硬化症による非致死性/致死性心血管イベント、全死亡のリスクを検討しました。

 ベースライン時に肥満でなかった人(代謝的に健康な人と不健康な人の双方)に比較して、代謝的に健康な肥満者は、心不全1.60、呼吸器疾患HR1.20の発症、および全死亡HR1.12、心不全死HR1.44が有意に多かったようです。

 比較対照を、ベースライン時に肥満でなく、かつ代謝的に健康な人に限ると、2型糖尿病HR4.32、心不全HR1.76、呼吸器疾患HR1.28の発症、および全死亡HR1.22、心血管イベントHR1.18の発生率が有意に高かったようです。

 BMIと代謝関連指標の変化を縦断的に解析し得た8,521人のデータ(追跡期間中央値4.4年)から、ベースライン時に代謝的に健康な肥満者の4分の1強が、代謝的に不健康な肥満に移行していたことが分かりました。その他、約半数は変化がなく、約20%は非肥満になっていたようです。

 代謝的に健康とされる肥満者であっても、代謝的に健康な非肥満者と比較して、心臓発作や脳卒中、心不全、呼吸器疾患のリスクが高いことから、『健康』とは言えないと思われます。代謝関連指標が良好か否かにかかわらず、減量は全ての肥満者にとって有益な可能性があると思います。

 なお、世界の肥満人口は現在3億人以上とされており、最近の増加傾向が続くとすると、2030年までに肥満者が10億人を超えると予測されているようです。これは世界の成人人口の20%に相当するのです。


原著

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