2022/10/24

健康講座554 運動と長寿

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 座っている時間を減らして毎日散歩をするだけで、何年間も寿命を延ばせるかもしれないようですよ。米ハーバード大学院が、中年期の成人11万人以上を30年間追跡した研究からその可能性が示されました。

 米国の身体活動に関するガイドラインでは、ウォーキングなどの中強度の運動を週に150〜300分行うか、ジョギングなどの高強度運動を週に75〜150分行うことを推奨しているようです。研究では、これらの目標を達成した人は、向こう30年間で死亡する確率が20%前後低いことが分かったのです。また、ガイドライン推奨量の2〜4倍の運動を続けている人は、死亡リスクがさらに数ポイント低かったようです。軽度の運動でも全く運動をしないより健康に良く、重要なことは習慣的に体を動かすことであり、それによって大半の人は大きなメリットを得られるのです。ただし、効果の最大化のために、さらに運動時間を増やして長寿を目指すのも良いでしょう。

 二つの大規模コホート研究のデータを用いて、身体活動量と死亡リスクとの関連を検討した。30〜76歳で身体活動に関する情報のある11万6,221人を解析対象とした。なお、身体活動量は追跡期間中2年ごとに最大15回評価されたものです。

 30年間(中央値26)の追跡中に、4万7,596人が死亡、以下のように運動時間と全死亡リスクとの間に有意な関連が認められた。中強度運動が週に0~19分の人に比較し150~224分の人はハザード比(HR)0.80(95%信頼区間0.77~0.83)、225~299分の人はHR0.79(同0.76~0.82)であり、高強度運動が週に0分の人に比較し75~149分の人はHR0.81(0.76~0.87)だった。心血管死と非心血管死に分けて解析した場合も、両者ともに運動による死亡リスクの有意な低下が認められた。

 さらに多くの運動をしていた人は、死亡リスクの低下幅が若干大きかった。例えば中強度運動を週に600分以上行っていた人はHR0.68(0.64~0.73)、高強度運動を週に600分以上行っていた人はHR0.74(0.65~0.85)だった。反対に、中強度運動を週に20~74分でもHR0.91(0.88~0.94)、高強度運動1~74分でHR0.87(0.82~0.93)と、運動時間がわずかであっても有意なリスク低下が認められた。

 この報告によって、健康のために毎日のジョギングが必要というわけではないことが明らかにされた。散歩、階段昇降、家事などのあらゆる活動が身体活動としてカウントされる。身体活動が習慣として身に付くように、自分が楽しいと思うことを見つけると良い。既に推奨量の運動を行っている場合は、もう少しプラスするとさらなるメリットを得られるのではないかと思われます。

 習慣的な身体活動には多くの健康上のメリットがあり、例えば血圧や血糖値を下げ、HDL(善玉)コレステロールを上げてくれる。減量のために身体活動を始める人がいるが、身体活動は体重を減らす過程よりも、むしろその後のリバウンドを防ぐ手段として有用です。

 なお、本研究からは、身体活動に充てる時間が最も長い群の寿命延伸効果は、標準的な身体活動量の群と比べて、それほど大きく変わらなかった。一方で、身体活動時間が長いことによるデメリットも認められなかった。長時間の高強度運動が心疾患のリスクとなるのではないかとの懸念もあったが、その懸念を払拭するデータが示された。ただ、大半の人には身体活動が多すぎる心配はなく、少なすぎることが問題であるといえるでしょう。


原著論文はこちら

0 件のコメント:

コメントを投稿

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...