2022/09/16

健康講座543 糖尿病患者さんの果物との付き合い

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 日本の糖尿病患者さんのBMIに着目した推移を調べると、1型も2型も体重が増加し、徐々に肥満傾向が強くなってきているそうです。こうした現状を考えると、エネルギー管理に加えて、炭水化物や糖質管理の必要性を、糖尿病患者にしっかりと伝える必要があると感じます。

食事療法は、糖尿病患者にとって治療の根幹となるものでございます。

血糖の状態を改善するためには、患者さんが長期間続けてきた食生活や嗜好を十分にヒアリングした上で、アドバイスをする必要があります。

食後の高血糖は、心血管疾患の進行に悪影響を及ぼします。

糖尿病による合併症を予防するためには、「食後血糖値」の管理がとても重要になり、「食後血糖値」を管理する事で、血糖値の急激な上昇を予防しながら、合併症を出さずに病状を維持できるのでございます。


食品交換表では、従来までのエネルギー管理のほかに、血糖管理を意識した説明が各所に追加さてきてます。また炭水化物のエネルギー比が50〜60%となっているように、さまざまな症例に合わせて柔軟に対応できるようになってます。

さらに低炭水化物食が話題になっていることから、極端な低炭水化物食への注意喚起も行われています。炭水化物を減らせば血糖値は下がるものの、極端な低炭水化物状態は、患者自身の食習慣に馴染まないため長続きしないなどの弊害もあるのでございます。

糖尿病治療においては、食事療法と運動療法を行い、血糖値の山と谷を平にし、必要に応じて薬物療法を追加することで、血糖管理が上手くいくように戦略を組みます。血糖値には、朝・昼・夜の3つの山があり、この山の高さをできるだけ小さくすることが、合併症の予防につながるのでございます。これからの食事指導は、エネルギー量をチェックするだけではなく、食後の血糖値に直結する糖質量もチェックする視点が重要です。

食品交換保表では、表1、表2、表4、調味料に炭水化物・糖質・食物繊維含有量の表が入ってきてます。これを使えば、もう患者さんに「お菓子はダメ」という指導ではなくなる。食品交換表を利用して「今食べているお菓子の糖質量は**だから、こちらのお菓子に変えると血糖値が僅かでも良くなる」と具体的に指導することができるのです。


※極端な低炭水化物食への注意喚起:

米国や欧州などのガイドラインにおいては、炭水化物の摂取量をエネルギー比で50~60%としており、RCTを解析したEBMに基づく勧告では55~65%が提案されています。また、米国糖尿病協会(ADA)は炭水化物を少なくとも1日130gは摂取するように勧めています。

「果物=フルクトース」というイメージで思われがちだが、果物により含まれる糖の量や種類もさまざま。糖質の種類という観点から、きちんとその組成を知って、患者さんにも紹介したいものであります。

果物を多く食べる人は、あまり食べない人と比べ、脳卒中や心筋梗塞の発症リスクが最大19%減少することが、厚生労働省研究班の調査でわかっています。

また、米国の調査では、果物は糖尿病発症を減少させるという成績もあるようです。

※BazaanoLA, JoshipuraKJ, Tricia YLet al : Diabetes Care 31 : 1331-1317, 2008

ただし、糖尿病患者の中には、果物は太らないと思っている人もいて、過剰摂取につながることもケアする必要があります。特に果物に含まれている果糖は、ショ糖の1.1〜1.7倍ほど甘味度が高いので、果糖の甘味についてしっかり説明した上で、患者の状態にあった果物のアドバイスをしたいところです。


その際に、もう1つ参考にしたいのが、果物に含まれる食物繊維の含有量。

果物の食物繊維含有量を見ると、ブルーベリーやキウイは食物繊維が多く含まれているが、バナナやぶどうの食物繊維含有量は決して多くはないです。

また、例えば、りんごを丸かじりする欧米人と比べて、日本人は皮をむいて食べる習慣があります。果物の皮には食物繊維が豊富に含まれており、食物繊維は血糖値の急激な上昇を抑制する効果もあります。咀嚼や栄養の面から考えれば、皮をむかずに食べることができる果物はできるだけ皮をむかずに食べる方が良いでしょう。

糖尿病患者の果物の摂取は、食品交換表にもあるように1日1単位が目安。

ただし、糖尿病患者の場合、空腹時に同じものを食べても、健常者よりも血糖値が変動しやすく、食後血糖値にも大きな個人差があることは考慮する必要があるのです。

果物をつい食べ過ぎてしまう場合は、

  • 果物を食直後のデザートとして提案する。
  • 一人分ずつ小皿に適量を盛り付ける。

このような工夫で、果物の摂取量を抑制することがポイントとなるのです。

果物は低GI食品であることに加え、果物そのものが持つ本来の甘味で、糖尿病患者の「甘さ」の欲求に応えることもできる優秀な食材ではあります。


果物の重要性及び適量摂取に加え、個人の嗜好に合わせた食の楽しみを栄養指導の中でも伝えていきたいです。


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