2023/04/18

健康講座579 メトホルミンと大腸がん予防

みなさんどうもこんにちは。小川糖尿病内科クリニックでございます。

 メトホルミンは、2型糖尿病治療薬としてよく知られていますが、近年の研究では、がん予防や治療にも有効であることが示唆されています。大腸がんについても、メトホルミンががん予防や治療に有効である可能性があります。以下では、その関連性について具体的に説明します。

  1. メトホルミンと大腸がんのリスク メトホルミンが大腸がんのリスクを低下させる可能性があることが、多くの研究で示されています。例えば、2013年に発表されたメタ解析によると、メトホルミン使用者は、非使用者に比べて大腸がんの発症リスクが低かったと報告されています。また、2019年には、メトホルミンが大腸がんの発症率を低下させる可能性があることが報告されました。これらの研究から、メトホルミンが大腸がんのリスク低減に有効であることが示唆されています。

  2. メトホルミンと大腸がん治療 メトホルミンが大腸がんの治療に有効である可能性があることも、いくつかの研究から示されています。例えば、2016年に発表された研究では、メトホルミン使用者は、非使用者に比べて大腸がんの再発リスクが低かったと報告されました。また、2020年には、大腸がん患者に対するメトホルミンの投与が、化学療法の効果を増強することが報告されました。これらの研究から、メトホルミンが大腸がん治療に有用であることが示唆されています。

  3. メトホルミンと大腸がん予防のメカニズム メトホルミンが大腸がん予防に有効であるメカニズムについては、いくつかの仮説が存在します。まず、メトホルミンは、血糖値を下げる作用があるため、2型糖尿病を引き起こすリスクを低下させることができます。2型糖尿病は、大腸がんのリスク因子の1つであるため、メトホルミンによる血糖値の下降によって、大腸がんの発症リスクが低下する可能性があります。

    また、メトホルミンには、腫瘍細胞の増殖を抑制する作用があるとされています。これは、メトホルミンが、アンプキナーゼ活性化プロテインキナーゼ(AMPK)という酵素を活性化することによって実現されます。AMPKは、エネルギー代謝を調節する酵素であり、細胞増殖に必要なエネルギーを抑制することができます。したがって、メトホルミンによってAMPKが活性化されると、腫瘍細胞の増殖が抑制される可能性があります。

    さらに、メトホルミンは、炎症反応を抑制することが知られています。大腸がんは、慢性的な炎症反応が原因で発生する場合があります。メトホルミンの炎症抑制作用によって、大腸がんの発症リスクが低下する可能性があります。

    1. まとめ 以上のように、メトホルミンは大腸がんの予防や治療に有用である可能性があることが、いくつかの研究から示されています。しかし、メトホルミンが大腸がんに対して完全に有効であるかどうかは、まだ十分に検証されていません。今後、さらに多くの研究が必要とされます。

    また、メトホルミンは2型糖尿病治療薬であるため、副作用があることもあります。適切な投与量や期間、副作用の注意喚起が必要です。大腸がんの予防や治療については、医師の指導のもと、適切な治療法を選択することが重要です。

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