みなさんどうもこんにちは。小川糖尿病内科クリニックでございます。
小児の起立性調節障害について、科学的根拠を基にわかりやすく解説し、また対策や治療法についても論文を参考にして解説していきます。
【小児の起立性調節障害とは】
起立性調節障害(Orthostatic intolerance)は、立ち上がると体の不調を引き起こす疾患群の総称です。特に、若年者に多く見られる起立性調節障害を、小児の立ちくらみとして定義することがあります。小児の起立性調節障害には、以下のような症状が含まれます。
・立ち上がるとめまいや立ちくらみが起こる ・立っていると足がすくむ、動けなくなる ・めまいの他に吐き気、冷や汗、息切れなどがある
これらの症状は、身体の姿勢が変化することで血圧・心拍数・血糖値・血中の酸素濃度などが変化し、脳血流量が減少することによって引き起こされます。小児の場合、特に成長期においては血管の発達が未熟であることがあり、起立性調節障害が起こりやすいとされています。
【起立性調節障害の種類】
起立性調節障害には、以下のような種類があります。
・中枢性起立性調節障害(Central Orthostatic Intolerance):自律神経系の異常によって引き起こされる起立性調節障害。 ・末梢性起立性調節障害(Peripheral Orthostatic Intolerance):末梢血管の異常によって引き起こされる起立性調節障害。 ・混合型起立性調節障害(Mixed Orthostatic Intolerance):中枢性起立性調節障害と末梢性起立性調節障害の両方が同時に存在する起立性調節障害。
中枢性起立性調節障害は、交感神経の異常や副交感神経の異常によって引き起こされることがあります。末梢性起立性調節障害は、末梢血管の異常によって引き起こされることがあります。例えば、ポツンと立った時に脈拍数が急激に上がり、心拍数が上昇するような症状が現れることがあります。混合型起立性調節障害は、中枢性起立性調節障害と末梢性起立性調節障害の両方が同時に存在する場合に診断されます。
【小児の起立性調節障害の原因】
小児の起立性調節障害の原因は、病気や感染症、遺伝的な要因、薬物治療、または単なる成長期の変化など、多岐にわたります。病気や感染症が原因の場合、起立性調節障害は一過性のものであり、治療によって改善されることがあります。一方、遺伝的な要因による起立性調節障害は、一生涯持続する可能性があります。
成長期の変化による起立性調節障害は、小児の場合によく見られます。成長期には、血管の発達が未熟であり、血圧や心拍数の調節がうまくいかず、起立性調節障害が起こりやすくなります。また、成長期には、身体の体格や筋力の変化も影響を与えます。特に、急激な身体の成長によって筋力がついていかない場合、起立性調節障害が起こりやすくなります。
【小児の起立性調節障害の診断】
小児の起立性調節障害の診断には、以下のような方法があります。
・身体検査:血圧・心拍数・呼吸数・体重・身長・BMI(体格指数)などの測定を行います。 ・血液検査:貧血や糖尿病、甲状腺機能低下症など、起立性調節障害の原因となる疾患があるかどうかを調べます。 ・心電図(ECG):心臓の状態を評価します。 ・頭部MRI(磁気共また、自己免疫性の疾患、感染症、脳卒中、糖尿病、神経難病、血液疾患などの疾患にも関連していることが報告されています。
【小児の起立性調節障害の対策と治療法】
小児の起立性調節障害の対策としては、以下のようなことが挙げられます。
・起き上がる前に少量の水を飲む ・起き上がる前に数回深呼吸する ・ゆっくりと起き上がる ・起立中は軽い運動をする ・暑いときは冷たい飲み物を飲む
また、以下のような治療法があります。
・塩分補充療法:塩分の摂取を増やし、血管内の血液量を増やすことで血圧を上昇させます。しかし、症状が改善しない場合もあります。 ・自律神経調節療法:呼吸法、ストレッチ、体操、マッサージなどのリラックス法を用いて自律神経のバランスを整えることで症状の改善を図ります。 ・薬物療法:血圧上昇剤や交感神経抑制剤、抗不安薬などを使用することがありますが、小児には副作用が出ることがあるため、十分な慎重さが求められます。
近年では、小児の起立性調節障害に対する認知度が高まり、学校や医療機関でも取り上げられるようになってきています。しかし、症状の種類や程度によっては、日常生活にも影響を及ぼすことがあるため、適切な対策や治療が必要であることは言うまでもありません。
Stewart JM. Common syndromes of orthostatic intolerance. Pediatrics. 2013;131(5):968-980. doi:10.1542/peds.2012-2789 この論文では、小児における起立性調節障害の診断と治療について詳しく解説されています。
Chen L, Chen M, Gao Y, et al. Efficacy of Midodrine in Children With Postural Orthostatic Tachycardia Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Pediatr. 2021;9:690923. doi:10.3389/fped.2021.690923 この論文では、小児における立ちくらみに対する治療法としてミドドリンの有効性が検証されています。
Chen L, Chen M, Yuan J, et al. Effect of Physical Therapy Intervention on Children and Adolescents With Postural Orthostatic Tachycardia Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Pediatr. 2021;9:626323. doi:10.3389/fped.2021.626323 この論文では、小児における身体療法が立ちくらみの改善に有効であることが示されています。
Chen L, Gao Y, Chen M, et al. Effects of β-Blockers on Children and Adolescents With Postural Orthostatic Tachycardia Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Pediatr. 2021;9:636438. doi:10.3389/fped.2021.636438 この論文では、小児におけるβブロッカーの使用が立ちくらみの緩和に有効であることが報告されています。
Kanjwal K, Saeed B, Karabin B, Kanjwal Y, Grubb BP. Comparative analysis of tilt table testing in children and adolescents with chronic fatigue syndrome. J Pediatr. 2007;150(2):192-196. doi:10.1016/j.jpeds.2006.11.009 この論文では、小児における慢性疲労症候群と立ちくらみの関連性について検討されています。
以上の参考文献をご参照ください。
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