2023/05/30

健康講座671 "新型コロナウイルス後遺症の新たな理解:新定義とその影響"

 みなさんどうもこんにちは。小川糖尿病内科クリニックでございます。

新型コロナウイルス感染後の長期的な症状、通称「long-COVID」(PASC: PostAcute Sequelae of SARS-CoV-2 infection)について、新たな定義と診断基準が提案されました。これは、感染後30日以上続く、再発する、または新たに出現する症状を指し、公衆衛生上の大きな問題となっています。ロングコロナは、患者の生活の質(QOL)、就労、収入、医療費に大きな影響を与えています。

これまでのlong-COVIDに関する研究は主に後ろ向きの観察研究で、症状の頻度に焦点を当てていました。しかし、非感染者を対照群とした研究は少なく、その結果、病気の有病率が研究ごとに大きく異なっていました。また、臨床現場では、症状の頻度に基づく既知の知見と除外診断に頼っている状況で、明確な診断基準が定められていませんでした。

そこで今回、約1万人規模での前向きの大規模観察研究が行われ、その結果をもとに新たなlong-COVIDの定義が提案されました。この研究は、NIHのRECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)Initiativeの一環として行われ、long-COVIDを理解し、治療し、予防することを目的としています。

この研究で特定された12の症状は、肉体的または精神的負荷後の疲労感、倦怠感、ブレインフォグ(思考の混乱)、めまい、消化器症状、動悸、性欲または性機能の変化、嗅覚や味覚の喪失または変化、喉の渇き、慢性的な咳嗽、胸痛、異常運動などです。各症状には推定係数に基づいてスコアが割り当てられ、参加者は報告された各症状のスコアを合計して総合スコアが割り当てられました。その結果、ロングコロナの診断基準として最適なスコアの閾値は12点以上とされました。

また、この新たなlong-COVID(PASC)スコアをもとにした解析結果では、感染から30日以上経過した場合のロングコロナの割合は、オミクロン株流行期の方がそれ以前よりも低く(17% vs 35%)、COVID-19ワクチン接種完了者の方が非完了者より低く(16% vs 22%)、初回感染者よりも再感染者の方が高い(16% vs 21%)という結果が得られました。これは、オミクロン株が以前の株よりも症状が軽い傾向があること、ワクチン接種がlong-COVIDのリスクを低減する可能性があること、再感染者が初回感染者よりもlong-COVIDのリスクが高いことを示しています。

さらに、入院患者の方が非入院患者よりlong-COVIDの割合が多く(39% vs 22%)、性別では女性の方が男性より多く(25% vs 19%)、年齢では46~65歳の方が18~45歳より多かった(28% vs 20%)。これは、重症化した患者、女性、中高年がlong-COVIDのリスクが高いことを示しています。

この新たなロングコロナの定義と診断基準は、臨床現場での診断や治療、研究者による研究、政策立案者による政策策定に役立つと期待されています。特に、この定義により、long-COVIDの症状が明確になり、患者の診断と治療が容易になるとともに、long-COVIDの有病率やリスク要因の研究が進むことが期待されます。

しかし、この定義と診断基準はまだ提案段階であり、その妥当性や有用性はさらなる研究によって検討される必要があります。また、ロングコロナの症状は個々の患者で異なるため、この定義がすべての患者をカバーしているわけではないことに注意が必要です。

今後、この新たな定義をもとにした研究が行われ、その妥当性が検討されることになるでしょう。また、long-COVIDの理解が深まるにつれて、新たな治療法や予防策が開発されることが期待されます。さらに、この定義が広く受け入れられることで、long-COVIDの社会的認知度が向上し、患者の支援や社会的な理解が進むことも期待されます。

long-COVIDは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックがもたらした新たな公衆衛生上の課題であり、その理解と対策は急務です。この新たな定義と診断基準が、その理解と対策に一歩前進するきっかけとなることを期待します。

なお、この情報は2023年5月現在のものであり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やロングコロナに関する情報は日々更新されています。最新の情報を得るためには、信頼性の高い情報源を定期的にチェックすることが重要です。また、自身がロングコロナの症状を感じた場合は、医療機関に相談することをお勧めします。 

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