2025/04/29

健康講座852 「うさぎ先生と学ぶ!心臓・腎臓を守る最新糖尿病治療」

 

皆さんこんにちは。小川糖尿病内科クリニックです。

今日は、「2型糖尿病の患者さんに、新しいタイプのGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)を、SGLT2阻害薬(SGLT2i)に追加したときの実際の効果」について、最新の研究をわかりやすく解説します。

この研究は、Nathorn Chaiyakunapruk先生たちが行い、Cardiovascular Diabetologyという医学雑誌に2025年に発表されました。


【背景】

最近の糖尿病の治療ガイドラインでは、糖尿病だけでなく、心臓や腎臓の病気のリスクを減らすために、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)SGLT2阻害薬(SGLT2i)を組み合わせて使うことが推奨されています。

しかし、実際の診療現場(リアルワールド)では、この組み合わせがどれくらい効果があるのかを長期間にわたって調べたデータはまだ限られていました。

そこで今回の研究では、

  • 心臓病や脳卒中(脳の血管が詰まる病気)の予防

  • 血糖コントロール(HbA1c)や体重の変化

  • 腎臓の健康状態

などがどう変わるかを、詳しく比較して調べたのです。


【研究方法】

この研究は「後ろ向きコホート研究」と呼ばれるタイプの研究です。つまり、すでに存在している患者さんたちの診療データをさかのぼって分析する方法です。

データはアメリカにあるKomodo's Healthcare Mapという、大規模な医療データベースを使いました。

対象期間
2017年1月1日~2023年6月30日まで。

対象となった患者さん

  • SGLT2阻害薬を使っていた2型糖尿病の大人の患者さん

  • その中でさらに、新しいタイプのGLP-1RA(例:週1回タイプ、1日1回飲むオーラルセマグルチド、GLP-1とGIPの2つに働くデュアルアゴニスト)を追加で使っていたグループ

患者さんの数

  • SGLT2i+GLP-1RA併用グループ:100,455人

  • SGLT2iのみ使用グループ:339,540人

これらの人たちはさらに次の3つのグループに分けられました。

  1. 心血管疾患(ASCVD)を持つ2型糖尿病の患者さん

  2. 一般的な2型糖尿病の患者さん

  3. 慢性腎臓病(CKD)を持つ2型糖尿病の患者さん

それぞれのグループで、患者さんの年齢や性別、病気の状態などが均等になるように、「エントロピーバランシング」という統計技術を使って調整しました。

調べたこと(アウトカム)

  • 脳梗塞(ischemic stroke)が起きるまでの期間

  • 心筋梗塞(MI)が起きるまでの期間

  • 主要心血管イベント(3点MACE:心筋梗塞、脳卒中、心血管死)

  • さらに、心不全による入院と不安定狭心症も加えた5点MACE

  • 血糖コントロール(HbA1c)の変化

  • 体重の減少

  • HbA1cを7%未満、または8%未満に下げられたかどうか

  • 体重を5%、10%、15%以上減らせたかどうか


【結果】

患者数の詳細

  • ASCVDありのグループ:併用 34,690人、SGLT2iのみ 130,220人

  • 一般T2Dグループ:併用 8,220人、SGLT2iのみ 22,891人

  • CKDありのグループ:併用 8,783人、SGLT2iのみ 35,532人

心血管イベントに関する結果(T2D+ASCVDグループ)

SGLT2iだけを使っているグループと比べると、

  • 脳梗塞のリスクが42%も低下

  • 心筋梗塞のリスクが37%も低下

  • 3点MACEのリスクが46%も低下

  • 5点MACEのリスクが45%も低下

という結果でした。

つまり、心臓や脳の大きな病気を防ぐ力が、SGLT2i単独よりもGLP-1RAを加えた方が、はるかに強かったのです。

血糖と体重に関する結果(一般T2Dグループ)

さらに、血糖値(HbA1c)と体重についても、併用グループのほうが良い結果を出していました。

具体的には、

  • HbA1cを7%未満または8%未満に下げられる確率が高かった

  • 体重も5%、10%、15%以上減らせる確率が高かった

ということがわかりました。

どのGLP-1RAが一番効果的だった?

さまざまなGLP-1RAの中でも、週1回注射タイプのセマグルチド(Ozempicなど)を併用した場合に、

  • 心血管リスクの低下

  • HbA1cの改善

  • 体重減少

これらの効果が一番大きかったことがわかりました。


【まとめ(結論)】

この研究からわかったことは、

  • SGLT2阻害薬だけを使うよりも、そこに新しいGLP-1受容体作動薬を追加すると、心臓病や脳卒中を大きく減らせる

  • 血糖コントロールも良くなり、体重も減らしやすくなる

  • 心臓や腎臓を守る効果は、GLP-1RAとSGLT2iが「足し算」のように重なって、より強くなる可能性がある

ということでした。

つまり、GLP-1RAとSGLT2iの「いいとこ取り」ができるということですね。


【使われた専門用語の説明】

用語説明
2型糖尿病(T2D)インスリンの効き目が悪くなったり、出る量が足りなくなって血糖が高くなる病気
GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)食事の後に血糖値を下げるホルモン「GLP-1」と似た働きをする薬。食欲も抑える効果あり
SGLT2阻害薬(SGLT2i)腎臓で糖を尿に出すのを助けて、血糖を下げる薬
心血管疾患(ASCVD)動脈硬化が原因で起きる心臓や脳の病気(例:心筋梗塞、脳梗塞)
慢性腎臓病(CKD)腎臓の働きが少しずつ悪くなる病気
HbA1c過去1~2か月の血糖値の平均を表す指標
MACE(メイス)心筋梗塞、脳卒中、心血管死などの重大な心臓や脳の病気をまとめたもの

おわりに

今回の研究は、糖尿病の患者さんが将来の心臓病や脳卒中を防ぐために、どのような薬を使えばより効果的か、重要なヒントを与えてくれました。

もし今、SGLT2阻害薬だけを使っている方がいて、心臓や腎臓に不安があるなら、GLP-1RAを追加することが大きな助けになるかもしれません

もちろん、薬の追加には副作用やコストもありますので、主治医の先生とよく相談しながら、自分にあった治療を考えていきましょう!

2025/04/24

健康講座851 「妊娠糖尿病の味方!ホエイプロテインの力」

 

皆さんこんにちは。今日は、妊娠中の血糖管理に関わるとても興味深い研究をご紹介します。

この研究のタイトルは「Premeal Whey Protein Lowers Postprandial Blood Glucose in Women With Gestational Diabetes Mellitus(食前のホエイプロテイン摂取は妊娠糖尿病の女性の食後血糖を低下させる)」というものです。研究は2025年に『Diabetes Care』という糖尿病に関する有名な医学雑誌に掲載されました。

そもそも「妊娠糖尿病」ってなに?

妊娠糖尿病(GDM:Gestational Diabetes Mellitus)とは、妊娠中に初めて発見された高血糖状態のことをいいます。妊娠中はホルモンバランスの変化によって血糖値が上がりやすくなるのですが、それが過度になると胎児や母体に悪影響を及ぼす可能性があります。

食後の血糖値が高くなりすぎると、胎児が大きく育ちすぎたり(巨大児)、出産時にリスクが高まったり、さらには将来的な糖尿病発症リスクも上がるとされています。ですから、食後の血糖値(食後血糖)をうまくコントロールすることは非常に重要です。


今回の研究は何を調べたの?

この研究では、「ホエイプロテイン(Whey Protein)を食前に摂ると、食後の血糖値が下がるのか?」ということを、妊娠糖尿病の女性を対象に詳しく調べました。

研究方法について簡単に説明します

  • 研究デザイン: ランダム化、クロスオーバー、単盲検、プラセボ対照試験

  • 対象者: 妊娠20〜36週の女性24名(GDM 12名、正常耐糖能 12名)

  • 実験内容:

    • 実験室で、ホエイプロテイン20gまたはプラセボを摂取し、30分後に75gの糖負荷(OGTT)を実施。

    • その後3時間にわたって血液を採取し、血糖値などを測定。

    • 自宅でも連続血糖測定器を装着し、異なる量(0, 10, 15, 20, 30g)のホエイを食前に摂って朝食後の血糖変化を観察。


ホエイプロテインって何?

ホエイプロテインとは、「乳清タンパク」とも呼ばれ、牛乳からチーズやヨーグルトを作る過程で出てくる液体部分に含まれる高品質なタンパク質です。

特徴:

  • 吸収がとても速い

  • 必須アミノ酸が豊富(特にBCAA)

  • 筋肉の合成を促進

  • インスリン分泌を刺激する作用もある

どんな食品に含まれる?

  • 牛乳

  • ヨーグルト(特にギリシャヨーグルトや水切りヨーグルト)

  • チーズを作った時のホエイ

  • サプリメント(プロテインパウダー)としても市販されています


タンパク質とは何か?

タンパク質は、私たちの体の筋肉、皮膚、酵素、ホルモンなどを構成する非常に重要な栄養素です。三大栄養素の1つで、炭水化物、脂質と並び、身体の維持や修復に欠かせません。

タンパク質を多く含む食品:

  • 肉類(鶏むね肉、牛赤身、豚ヒレなど)

  • 魚介類(鮭、マグロ、イワシなど)

  • 大豆製品(豆腐、納豆、豆乳)

  • 乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)


実験結果はどうだったの?

研究では、ホエイプロテインを食前に摂ったことで、以下のような効果が見られました。

実験室での結果:

  • 妊娠糖尿病の女性では、ピーク血糖値が平均で1.0 mmol/L(約18mg/dL)低下

  • 正常耐糖能の女性でも、0.7 mmol/L(約13mg/dL)低下

  • インスリン、GIP(胃抑制ペプチド)、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)が、ホエイ摂取後すぐに上昇。

    • → これは、食後の血糖上昇を抑えるメカニズムの1つです。

自宅での結果:

  • ホエイプロテインの摂取量が多くなるほど、食後の血糖値の上昇が抑えられました(用量依存性)。

  • 特に30g摂取したときは、最大で2.0 mmol/L(約36mg/dL)の血糖抑制効果


なぜホエイが効くの?

ホエイプロテインには、次のような血糖コントロールに役立つ特性があります。

  1. インスリンの分泌を促進

    • 食前にホエイを摂ることで、インスリンが早めに分泌され、食後の血糖上昇を抑制します。

  2. インクレチン(GIP、GLP-1)を活性化

    • これらのホルモンはインスリン分泌を助け、胃の排出を遅らせ、血糖の急上昇を防ぎます。

  3. 胃排出の遅延

    • ホエイを先に摂ることで胃の内容物の移動がゆっくりになり、血糖がゆっくり吸収されるため、血糖スパイクを防げます。


どれくらいの量を摂ればいい?

研究では、15g〜30gのホエイプロテインが有効とされました。日常生活に取り入れるなら、以下のような形がおすすめです:

  • 朝食30分前に、ホエイプロテインパウダーを水または低脂肪乳で溶かして飲む

  • ヨーグルト(ホエイ入り)を小鉢で先に食べる

  • 水切りヨーグルトやギリシャヨーグルトでも代用可(ただしホエイ含有量は市販品によって差があります)


今後の課題と期待されること

この研究は短期的な効果を示したものであり、「長期間の影響(母体と胎児への安全性を含む)を確認するためのさらなる研究が必要」とされています。

しかし、現時点でも「簡単に取り入れられる」「副作用の少ない」「サプリメント的にも活用できる」対策として、妊娠中の血糖コントロールに役立つ可能性が高いことが示唆されました。


まとめ

  • 妊娠糖尿病は妊娠中に発症する高血糖状態で、食後血糖の管理が大切。

  • 食前にホエイプロテイン(15〜30g)を摂ることで、食後血糖の上昇を抑えることができる。

  • ホエイプロテインは牛乳由来の高品質なタンパク質で、インスリンやインクレチンの分泌を促進し、血糖の急上昇を抑える。

  • 自宅でも実践可能な食事療法の一つとして、特に妊娠糖尿病の方には有益。

  • 長期的な安全性や効果については、今後の研究に期待。

2025/04/15

臨床検査技師(正社員さん)臨床検査技師募集中!




現在、当院では人員強化のため、

臨床検査技師(正社員さん)を募集しております。


 当院の診療科の特性上、採血の数が比較的多い傾向にあります。採血が上手な方は大歓迎です。また、脂質異常症などの生活習慣病の方は、動脈硬化の進行評価が治療のカギとなります。頸動脈プラークの評価やABIなどで精度の高い治療へ寄与するため、チカラを貸して頂けると嬉しいです。

 甲状腺の診療もしており、甲状腺腫瘤、バセドウ病、橋本病などのエコー評価を行っております。

 腹部エコーは肝胆の評価、腎臓、膀胱などをみています。

 クリニックに長く勤めて頂ける方、成長したい方、できる限り正当な評価をしていく様務めております。

【募集職種】臨床検査技師(正社員)


【募集人数】1名


【仕事内容】 

・外来診察における業務

(診察補助、採血、問診、検体検査、心電図、ABI、レントゲン準備など)

・超音波検査(頸動脈・甲状腺・腹部)

・インスリン導入・自己血糖測定指導

(指導の仕方はレクチャーしますので未経験でも大丈夫です)

・在庫管理

・院内清掃 等


【給  与】 月給240,000円〜(週40時間)

       賞与あり(ただし、業績に連動します)

       勤続年数・スキル・クリニック及び患者さんへの貢献度により昇給あり

【勤務時間】 8:30 ~ 19:15

       月・火・水・金  午前 8:30~12:45  午後 15:30~19:15
       木・土      午前 8:30~12:30
       残業はほとんどありません(月に数日、30分程度)
       8割常勤、週32時間 週休3日など相談可

【休日休暇】 木曜日・土曜日午後
       祝日・日曜日
       夏季休暇・年末年始   
       
【応募要件】 臨床検査技師資格保持
       採血、検体検査の経験がある方

【試用期間】 就業から3ヶ月は試用期間になります。

【福利厚生】 インフルエンザワクチン予防接種
       交通費支給(上限あり)
       マイカー通勤OK(駐車場完備)
       社会保険・厚生年金加入
       雇用保険
       資格取得支援・手当あり
       ユニフォーム貸与
              

【勤務地】  愛知県富木島町新石根84-1 小川糖尿病内科クリニック

【アクセス】 名鉄常滑線太田川駅から知多バスで9分

【応募方法】

アンケートに回答                
②通過した場合は、採用担当よりお電話かメールにてご連絡いたします。                
③面接実施
④採用決定のご連絡


※採用が決定次第、予告なく募集を終了いたします。


【当院にご興味がある方へ】  

◆糖尿病の患者様に対する指導や処置の経験がある方、
 また、患者様への接遇に自信のある方も歓迎いたします。

◆糖尿病、甲状腺など内分泌疾患について学びたい方、臨床検査技師としてスキルアップしたいという意欲をお持ちの方もぜひご応募ください。糖尿病・内分泌未経験でも、働きながら学べるので歓迎します。

◆糖尿病療養指導士などに興味がある方は最大限バックアップいたします。

◆残業はほとんど無く、家庭との両立が可能です。


【クリニックとして地域貢献に努めております】

  • 働き甲斐と地域への貢献:当院は、忙しい中でも充実感を持ちつつ、患者さん、スタッフ、そしてクリニック全体の三方良しを追求するWIN×WIN×WINの環境を築いています。チーム一丸となって地域に貢献し、患者さんの信頼を心から得ています。


  • 自律と報奨の組織:頑張る人が報われる組織体制を実現することを目指し、当院はスタッフ一人ひとりの自律性を重視しています。個々の力を尊重しながら、全体としての力を最大化し、共に成長する文化を築き上げています。


  • 未来を築く場所:オープンなコミュニケーションと効率的な運営を持ち合わせている当院は、患者さんとスタッフ、クリニック全体が共に成長し、地域に深く根ざす未来を築く場所として、新たな仲間の参加をお待ちしています。


健康を紡ぐ、技術で支える。
私たちと共に未来を診る検査技師として皆様のご応募をお待ちしております!


看護師(正社員)を募集中!



こんにちは。

小川糖尿病内科クリニック院長の小川義隆です。

現在、当院では人員強化のため、

看護師(正社員さん)を募集しております。


【募集職種】看護師(正・准)

【募集人数】1名

【仕事内容】

・外来業務における看護業務

・診察補助、採血、問診、検体検査、ワクチン準備および接種

・糖尿病管理および患者指導

・インスリン導入や自己血糖測定の指導(未経験でも指導方法は丁寧にレクチャーいたします)

・在庫管理

・医療用品や備品の在庫管理

・院内清掃

【給  与】 月給250,000円〜

       賞与あり(ただし、業績により連動します)

       毎年昇給実績あります

【勤務時間】 8:30 ~ 19:15
       月・火・水・金  午前 8:30~12:45  午後 15:30~19:15
       木・土      午前 8:30~12:30
       
残業はほとんどありません(月に数日、30分程度)

       8割常勤、週32時間 週休3日など相談可


【休日休暇】 木曜日・土曜日午後
       祝日・日曜日
       夏季休暇・年末年始   
       
【応募要件】 看護師、または准看護師資格保持
       採血、検体検査の経験がある方

【試用期間】 就業から3ヶ月は試用期間になります。

【福利厚生】 インフルエンザワクチン予防接種
       交通費支給(上限あり)
       マイカー通勤OK(駐車場完備)
       雇用保険
       資格取得支援・手当あり

【勤務地】  愛知県富木島町新石根84-1 小川糖尿病内科クリニック

【アクセス】 名鉄常滑線太田川駅から知多バスで9分

【応募方法】

アンケートに回答                
②通過した場合は、採用担当よりお電話かメールにてご連絡いたします。                
③面接実施
④採用決定のご連絡


※採用が決定次第、予告なく募集を終了いたします。


【看護師さんの1日の流れ】

08:20 打刻・着替え

出勤したら打刻して、制服に着替えます。


08:30 朝礼

スタッフ全員が集まって、院長や事務長から必要事項を伝達します。朝礼内容はLINEWORKSに投稿されており、不在の場合でもいつでも確認することができます。


08:45 午前診療開始

診療の開始です!指示箋に沿って、採血や検尿、心電図、ABI、体組成、レントゲン準備など行います。午前は採血が多い診療科(20~30名)ですので、効率よく業務をこなしていきます。看護師さんの場合は、プラセンタ注射やにんにく注射、インフルエンザ注射を必要に応じで行っていただきます。検査技師さんの場合は、経験のある方のみ甲状腺・腹部・頸動脈エコーを行っていただきます。

12:15 午前診療終わり

ほぼ毎日時間通りに終了するため、終わり次第休憩に入ります。(木・土曜日は午前診療のみのため、そのまま退勤)


15:45 午後診療開始

午後は比較的落ち着いている日が多く、採血人数も10~20人程度です。


18:45 午後診療終了

ほぼ残業はございませんので、診療終了後は必要な締め作業を行いすぐ退勤します。協力して早く帰れるような環境が整っておりますので、ご安心ください。


【医院方針】

当院は、患者様・スタッフ・クリニック全体の三方良しを目指しています。

努力する方がきちんと評価される組織作りに特に力を入れています。

地域に根ざし、患者様の信頼を得ながら共に成長できるクリニックでありたいと考えております。


【当院の魅力】

・糖尿病や内分泌疾患について学びたい方、看護師としてスキルアップしたい方も歓迎です。未経験でも働きながら学べる環境を整えております。

・糖尿病療養指導士などの資格取得に興味のある方には、最大限サポートいたします。

・残業がほとんどなく、家庭との両立が可能な職場です。


【このような方はぜひご応募を】

・笑顔でコミュニケーションができる方

・向上心があり、新しい業務に積極的に挑戦できる方

・チームと協力して働ける方


皆様のご応募を心よりお待ちしております!

2025/04/04

健康講座850 「眠りと食欲の関係って?レプチンとグレリンがカギだった!」

 皆さん、こんにちは。



日々の生活の中で、睡眠不足が続くと、なぜか食欲が増してしまうと感じたことはありませんか?実は、睡眠と食欲は密接に関連しており、その背後には「レプチン」と「グレリン」という2つのホルモンが関与しています。今回は、これらのホルモンと睡眠の関係について、最新の研究を交えながら、わかりやすく解説していきます。

レプチンとグレリンとは?

まず、レプチンとグレリンについて簡単にご紹介します。レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、脳の視床下部に作用して食欲を抑制し、エネルギー消費を促進します。一方、グレリンは胃から分泌されるホルモンで、食欲を増進させる働きがあります。これら2つのホルモンは、食欲のバランスを保つ上で重要な役割を果たしています。

睡眠不足がホルモンバランスに与える影響

睡眠時間の短縮は、これらのホルモンのバランスを崩すことが明らかになっています。具体的には、睡眠不足によりレプチンの分泌が減少し、グレリンの分泌が増加します。これにより、食欲が増進し、特に高カロリーな食べ物への欲求が高まるとされています。

例えば、ある研究では、健康な若年男性を対象に、2日間の睡眠制限(1日4時間睡眠)を行ったところ、レプチンが18%減少し、グレリンが28%増加しました。さらに、空腹感が24%増加し、特に高炭水化物食への欲求が33~45%増加したと報告されています。 

睡眠不足と肥満の関連性

このようなホルモンバランスの変化は、食欲の増加を通じて、体重増加や肥満のリスクを高める可能性があります。実際に、睡眠時間が短い人ほど、肥満度を示す指標であるBMI(ボディマス指数)が高い傾向があることが、多くの研究で示されています。

例えば、ウィスコンシン睡眠コホート研究では、1,024人の参加者を対象に調査を行い、睡眠時間が短い人ほど、レプチンが低下し、グレリンが上昇していることが確認されました。これらのホルモン変化は、食欲の増加を引き起こし、結果としてBMIの増加に寄与すると考えられています。 

睡眠の質とホルモンバランス

睡眠の質も、これらのホルモンに影響を与えることが示唆されています。睡眠の質が低下すると、レプチンの分泌が減少し、グレリンの分泌が増加する傾向があります。これにより、食欲が増進し、過食につながる可能性があります。

弘前大学の研究では、一般住民を対象に、睡眠時間や睡眠の質と食欲調整ホルモンの関係を調査しました。その結果、睡眠時間が短い人や睡眠の質が低い人ほど、レプチン濃度が低く、グレリン濃度が高い傾向が見られました。 

睡眠不足がもたらす他の影響

睡眠不足は、ホルモンバランスの乱れや食欲の増加だけでなく、耐糖能の低下やインスリン感受性の低下など、糖代謝にも悪影響を及ぼすことが報告されています。これらの変化は、糖尿病やメタボリックシンドロームのリスクを高める要因となります。

例えば、健康な成人を対象に、4日間連続して睡眠時間を4時間に制限した研究では、耐糖能の低下やインスリン感受性の低下が観察されました。 

まとめ

以上のように、睡眠不足はレプチンとグレリンという食欲調整ホルモンのバランスを崩し、食欲の増加や体重増加、さらには糖代謝の異常を引き起こす可能性があります。健康的な生活を維持するためには、十分な睡眠時間を確保し、睡眠の質を向上させることが重要です。日々の生活習慣を見直し、良質な睡眠を心がけることで、これらのホルモンバランスを整え、健康維持に努めましょう。

2025/04/03

健康講座849 「科学的に正しい睡眠調整法:3つのシステムと快眠のための実践ガイド」

 

皆さん、こんにちは。

日々の生活の中で、質の良い睡眠をとることは、心身の健康を維持する上で非常に重要です。しかし、忙しい現代社会では、十分な睡眠時間を確保することが難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。今回は、睡眠の質を向上させるための具体的な方法と、その科学的根拠について、詳しくご紹介いたします。

1. 規則正しい生活リズムの維持

毎日同じ時間に就寝し、同じ時間に起床することで、体内時計が整い、自然な眠気が訪れやすくなります。特に、朝起きたらすぐに太陽の光を浴びることで、体内時計のリセットが促されます。朝の光は、睡眠と覚醒のリズムを整える上で非常に効果的です。夜間の照明は控えめにし、朝はカーテンを開けて自然光を取り入れることを心がけましょう。 

2. 就寝前のリラクゼーション

寝る前にリラックスすることで、入眠がスムーズになります。具体的には、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる、軽いストレッチやヨガを行う、深呼吸をするなどが効果的です。これらの行動は、副交感神経を優位にし、心身の緊張を和らげます。ただし、就寝直前の激しい運動は避け、リラックスできる環境を整えることが大切です。 

3. 就寝前の入浴のタイミングと方法

入浴は体温を一時的に上げ、その後の体温低下が入眠を促進します。40~42度のお風呂に15~20分入ると、脳の温度が約0.6~1.0度上がります。この効果を最大限に引き出すためには、就寝の2~3時間前に入浴することが推奨されています。ただし、心臓の病気など循環器系の持病がある方は、急激な体温上昇を避け、ゆっくりと温まるよう注意が必要です。 

4. 適度な運動習慣の取り入れ

日中に適度な運動を行うことで、夜間の睡眠の質が向上します。特に、速歩や軽いランニングなどの有酸素運動は、寝つきを良くし、深い睡眠を促します。運動は夕方から夜にかけて行うと効果的ですが、就寝直前の激しい運動は避け、寝る3時間くらい前に行うことが望ましいです。

5. 食生活の見直し

バランスの良い食事は、睡眠の質に直結します。特に、就寝前のカフェイン摂取や喫煙は覚醒作用があり、アルコール摂取は眠りを浅くするため、控えることが推奨されます。また、寝る前の重い食事は消化に時間がかかり、睡眠を妨げる原因となります。規則正しい食生活を心がけ、就寝前の食事は軽めに済ませるようにしましょう。 

6. 昼寝の活用

日中に強い眠気を感じる場合、15分程度の昼寝が効果的です。高齢者の場合は30分程度の昼寝が推奨されています。ただし、長時間の昼寝は夜間の睡眠に影響を及ぼす可能性があるため、短時間にとどめることが重要です。 

7. 睡眠環境の整備

寝室の環境も、睡眠の質に大きく影響します。室内は暗く、静かで、適切な温度と湿度を保つことが理想的です。また、快適な寝具を選ぶことで、より良い睡眠を得ることができます。寝室の環境を整えることで、リラックスした状態で眠りにつくことが可能となります。 

8. 睡眠時間の確保と個人差の理解

一般的には、一晩7時間以上の睡眠が推奨されていますが、必要な睡眠時間には個人差があります。大切なのは、日中に眠気を感じず、活動的に過ごせるだけの睡眠を確保することです。自分にとって満足できる睡眠時間を見つけ、習慣化することが重要です。 

9. ストレスの管理

ストレスは睡眠の大敵です。日中に感じたストレスを軽減するために、趣味の時間を持つ、リラクゼーション法を取り入れるなど、自分に合った方法でストレスを管理しましょう。

2025/04/02

健康講座848 「血糖値にやさしい食事って?グリセミック・インデックスを学ぼう」

 



🍚 みなさんこんにちは!

今日は「グリセミック・インデックス(GI)」という言葉について、
なるべくやさしく、ていねいに説明していきます。

「なんだかむずかしそう…」と思った方も大丈夫。
これは、普段の食事や健康にすごく役立つ考え方なんです。


🟡 グリセミック・インデックス(GI)ってなに?

まず、「GIって何のこと?」というところから説明しますね。

**グリセミック・インデックス(Glycemic Index, GI)**とは、
**「食べた後に血糖値がどれくらい上がるか」**をあらわした数値のことです。

たとえば、同じ「50gの糖質」を含んでいる食べ物でも、
すぐに血糖値が上がるものと、ゆっくり上がるものがあるんです。

GIはそれを数字で表してくれていて、

  • 100に近いほど、血糖値が急に上がりやすい(高GI)

  • 数値が低いほど、血糖値の上がり方がゆるやか(低GI)

ということになります。


🟡 どうしてGIが大事なの?

血糖値が急に上がると、体の中ではインスリンというホルモンがたくさん出て、
「血糖を下げよう!」とがんばります。

でも、この急な変動がくり返されると、

  • 疲れやすくなる

  • 空腹感がすぐにくる

  • 脂肪がたまりやすくなる

  • 糖尿病になりやすくなる

といった悪い影響が出てくるんです。

つまり、GIの低い食べ物を選べば、

  • お腹がすきにくくなり

  • 血糖値の変動がゆるやかになり

  • ダイエットや健康にとても良い!

というわけなんです 😊


🟡 食べ物のGI値、どれくらい?

GIは以下のように3つに分けられています:

GIの値 分類
70以上 高GI 白パン、白ごはん、じゃがいも、スイカなど
56〜69 中GI 玄米、全粒粉パン、バナナなど
55以下 低GI 大豆、ヨーグルト、りんご、オートミールなど

🟡 どんな食べ物を選べばいいの?

日常生活で取り入れやすい、おすすめの低GI食品はこちら:

  • 🍚 白米より→ 玄米・雑穀米・麦ごはん

  • 🍞 白パンより→ 全粒粉パン・ライ麦パン

  • 🥣 コーンフレークより→ オートミール

  • 🍌 バナナより→ りんご・ベリー類

  • 🥤 ジュースより→ 果物をそのまま

  • 🍟 ポテトより→ 冷やしじゃがいも(サラダなど)

そして、よく噛んでゆっくり食べることも、GIを下げるコツですよ!


🟡 GIのすごい効果(エビデンスもあります!)

「GIが大事」と言われているのは、きちんとした**医学的な根拠(エビデンス)**があるからです。

🔬 たとえば…

  • 糖尿病の方が低GIの食事をすると、HbA1c(へもぐろびん・えーわんしー)という数値が下がる
    (2013年:Ajala博士たちの研究)

  • 心臓病や肥満のリスクも下がるという報告
    (2008年:Livesey博士たちの分析)

つまり、血糖値の乱れを防ぐ=体をいたわることになるんですね✨


🟡 気をつけたいポイントも!

GIは便利な考え方ですが、少し注意点もあります。

✅ 調理方法によって変わる

同じ食材でも、調理のしかたでGIは変わってきます。

たとえば:

  • パスタ → アルデンテだと低GI、やわらかいと高GI

  • じゃがいも → ゆでてすぐ食べると高GI、冷やしてから食べると低GI

✅ 食事は「組み合わせ」も大切

たとえば、ごはん単品だと高GIですが、

  • 野菜やお肉、油と一緒に食べると、GIの上昇をゆるやかにできます。

このように、食事全体のバランスが大事です。


🟡 「GIだけじゃない」もうひとつの指標:GL(グリセミック負荷)

GIが「血糖値の上がりやすさ」を示すのに対して、
**GL(Glycemic Load)**は「実際にどれくらい血糖が上がるか」をあらわします。

GL = GI × 含まれる糖質量 ÷ 100

つまり、GIが高くても、量が少なければ問題ないこともあるというわけです!


🟡 まとめ:グリセミック・インデックスを味方にしよう!

  • GIは、「血糖値の上がりやすさ」を示す数値

  • 低GIの食品を選べば、血糖値の乱れを防げて、健康に◎

  • 糖尿病・肥満・老化・疲れやすさの予防に役立つ

  • 実際の食生活では、組み合わせ・調理・量もポイント


🟡 最後にひとこと 😊

健康のための食事って、「がまん」とか「しんどいこと」と思われがちですが、
GIを知っておくだけで、ムリなくできる工夫がたくさんあります。

「今日のごはん、ちょっとGIを意識してみようかな」
そんな気持ちで始めてみるだけで、体が少しずつ変わっていきますよ。



2025/04/01

健康講座847 「糖尿病と高血圧:血管年齢の評価と総合的な治療戦略」

 こんにちは、小川糖尿病内科クリニックです。今日は「糖尿病がある場合の血圧目標」について詳しくお話しします。糖尿病治療における血圧管理の重要性と、具体的な目標値、治療開始の目安について科学的根拠に基づいて説明します。また、家庭血圧の重要性や心電図、ABI(足関節上腕血圧比)、CAVI(心臓足首血管指数)との関連についても詳しく解説します。さらに、CAVIを用いた血管年齢の測定と、高血圧との関連についても詳細にご説明します。




目次

  1. なぜ血圧も管理しないといけないの?
  2. 血圧の目標値/治療開始の目安は?
  3. 小川糖尿病クリニックのアプローチ
  4. 実践的な血圧管理方法
  5. 血圧手帳と家庭血圧の重要性
  6. 心電図、ABI、CAVIと高血圧の関連性
  7. CAVIを用いた血管年齢の測定と高血圧との関連
  8. まとめ

1. なぜ血圧も管理しないといけないの?

糖尿病内科なのに、なんで血圧の話をするの?と思った方もいるかもしれません。しかし、糖尿病がある方こそ血圧管理が重要なんです。

高血圧も糖尿病と同様、自覚症状がほとんど出ないけれども影でじわじわと身体を蝕む病気です。血圧が高い状態が続くと何が起こるのでしょうか?

みなさんもよくご存じかと思いますが、一番有名なのは『動脈硬化』ですよね。動脈硬化は糖尿病の『大血管障害』としても知られています。

高血圧が動脈硬化の進行を促進することは多くの研究で示されています。例えば、Framingham心臓研究では、高血圧が冠動脈疾患や脳卒中の主要なリスク要因であることが明らかにされています。この研究は長期間にわたり、多くの被験者を追跡し、血圧と心血管疾患との関連を示した信頼性の高い研究です【1】。

高血圧が続くと、血管の内壁に傷がつきやすくなり、その傷にコレステロールが付着し、プラークが形成されます。これが動脈硬化の始まりです。動脈硬化が進行すると、血管が狭くなり、血流が悪くなります。これが心筋梗塞や脳梗塞などの深刻な心血管イベントの原因となります。

さらに、糖尿病と高血圧の両方を持つ方は、動脈硬化のリスクがさらに高くなります。糖尿病では、血糖値が高い状態が続くことで血管が損傷を受けやすくなり、その結果、動脈硬化が進行しやすくなります。このため、糖尿病患者にとって血圧管理は非常に重要です。

また、高血圧は腎臓にも悪影響を与えます。高血圧が続くと、腎臓の血管が損傷し、腎機能が低下します。これを腎硬化症と呼びます。糖尿病患者はすでに腎臓の合併症(糖尿病腎症)のリスクが高いため、高血圧の管理はさらに重要です。腎臓の機能が低下すると、体内の老廃物が排出されにくくなり、最終的には腎不全に至る可能性があります。

糖尿病と高血圧が同時に存在する場合、心血管疾患や腎臓病のリスクが相乗的に増加します。したがって、血糖値と同様に血圧の管理も糖尿病治療の重要な一環となります。

2. 血圧の目標値/治療開始の目安は?

それでは、実際にどれくらいの血圧を目指せば良いのでしょうか。

『高血圧治療ガイドライン2019』によれば、糖尿病を合併した高血圧の場合、血圧の目標値は130/80mmHgとされています【2】。これは糖尿病診療ガイドラインでも同様に採用されています。ちなみにこれは病院での血圧(診察室血圧)で、ご家庭での測定の場合、目標値は125/75mmHgになります。

この目標値は、血圧が高い状態が続くことで心血管疾患や腎臓病のリスクが増加することを防ぐために設定されています。高血圧が動脈硬化の進行を促進し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めることは広く認識されています。特に糖尿病患者では、これらのリスクがさらに高くなるため、より厳しい血圧管理が求められます。

治療開始の基準については、140/90mmHg以上であればすぐにお薬(降圧薬)で治療開始することが推奨されています。130〜139/80〜89mmHgの場合、1ヵ月までは生活習慣の修正で目標を達成できないか試して、厳しければお薬を使うことが推奨されています【2】。

これらの基準は、科学的根拠に基づいて設定されています。多くの臨床試験が、高血圧治療の重要性とその効果を示しています。例えば、SPRINT試験では、血圧を120mmHg未満に下げることで心血管イベントのリスクが有意に低下することが示されています【3】。

3. 小川糖尿病クリニックのアプローチ

小川糖尿病クリニックでは、患者さん一人ひとりのリスク要因を詳しく評価し、最適な治療目標を設定しています。また、以下のアプローチを採用しています。

パーソナライズドプランの作成

各患者さんの生活習慣、食事内容、運動量などを考慮し、個別に最適な血圧管理プランを作成します。例えば、食事療法では、塩分の摂取を控えることが推奨されます。これは、塩分が血圧を上昇させる主要な要因だからです。また、カリウムを多く含む食品(バナナ、ほうれん草、サツマイモなど)を積極的に摂取することも推奨されます。カリウムは塩分の排出を促し、血圧を下げる効果があります。

定期的なフォローアップ

定期的に血圧測定を行い、変動をモニタリングします。必要に応じて、治療プランの調整を行います。これにより、患者さんの状態に応じた最適な治療が継続的に提供されます。

生活習慣改善のサポート

食事療法や運動療法のアドバイスを行い、患者さんが自分自身の健康管理に積極的に取り組めるようサポートします。運動療法では、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動が推奨されます。これらの運動は、心肺機能を向上させ、血圧を下げる効果があります。

4. 実践的な血圧管理方法

食事療法

血圧を下げるためには、食事の見直しが欠かせません。以下のポイントを参考にしてください。

  • 塩分の摂取を控える: 日本人の平均的な塩分摂取量は1日約10gですが、血圧管理のためにはこれを6g以下に抑えることが推奨されます【4】。塩分が多い食品(漬物、みそ汁、加工食品など)を避けるようにしましょう。
    • カリウムを積極的に摂る: カリウムは塩分の排出を促し、血圧を下げる効果があります。バナナ、ほうれん草、サツマイモ、アボカドなど、カリウムを多く含む食品を積極的に摂取しましょう。
    • バランスの良い食事: 野菜、タンパク質、全粒穀物をバランスよく摂ることで、血圧管理がしやすくなります。特に、DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食事法は、血圧を下げるための効果的な方法として広く推奨されています【5】。

    運動療法

    定期的な運動も血圧を下げるのに効果的です。

    • 有酸素運動: ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどの有酸素運動を週に150分以上行うことが推奨されています。これにより、心肺機能が向上し、血圧が低下します【6】。
    • 筋力トレーニング: 筋力トレーニングは、基礎代謝を上げることで血圧の管理にも貢献します。週に2回程度、全身の筋肉を使う運動を取り入れましょう。

    薬物療法

    血圧が目標値に達しない場合や、特に高い場合は薬物療法が必要です。医師と相談しながら、最適な薬を選びましょう。降圧薬には、ACE阻害薬、ARB、カルシウム拮抗薬、利尿薬などがあります。これらの薬は、血圧を効果的に下げるために使用されます【7】。

    5. 血圧手帳と家庭血圧の重要性

    血圧手帳

    血圧管理には、日々の血圧測定結果を記録することが重要です。血圧手帳を使って、毎日の測定結果を記録しましょう。これにより、自分の血圧の傾向を把握し、医師との診察時に正確な情報を提供することができます。

    家庭血圧の重要性

    家庭での血圧測定は、診察室での血圧測定よりも正確な日常の血圧を反映することができます。家庭血圧を測定することで、白衣高血圧(診察室でのみ血圧が高い状態)や隠れ高血圧(家庭でのみ血圧が高い状態)の診断が可能となります【8】。家庭血圧を定期的に測定し、血圧手帳に記録することで、より正確な血圧管理が可能になります。

    6. 心電図、ABI、CAVIと高血圧の関連性

    心電図

    高血圧は心臓に負担をかけ、心肥大や心筋症を引き起こすことがあります。心電図は、心臓の電気的活動を記録し、心臓の状態を評価するために使用されます。高血圧による心肥大の早期発見や、心筋梗塞のリスク評価に役立ちます【9】。

    ABI(足関節上腕血圧比)

    ABIは、足関節と上腕の血圧を比較することで、下肢の血流状態を評価する検査です。ABIが低い場合、下肢の動脈硬化が進行している可能性があります。高血圧患者では、動脈硬化のリスクが高いため、ABIの測定は重要です【10】。

    CAVI(心臓足首血管指数)

    CAVIは、動脈の硬さを評価する検査です。動脈硬化が進行すると動脈が硬くなり、CAVIの値が高くなります。高血圧は動脈硬化の進行を促進するため、CAVIの測定は高血圧患者における動脈硬化の評価に有用です【11】。

    7. CAVIを用いた血管年齢の測定と高血圧との関連

    CAVIと血管年齢の測定

    CAVI(Cardio-Ankle Vascular Index)は、動脈の硬さを評価するための指標であり、血管年齢を測定するために使用されます。血管年齢とは、血管の硬さや柔軟性を基にした年齢の指標で、実際の年齢とは異なる場合があります。CAVIは、動脈硬化の進行度を評価し、心血管リスクを予測するために非常に有用です。

    CAVIの測定は、患者が仰向けに寝た状態で、心電図、血圧計、心音計などを使用して行います。この測定により、動脈の硬さを数値化し、血管年齢を算出することができます。血管年齢が実年齢よりも高い場合、動脈硬化が進行している可能性が高く、心血管疾患のリスクが増加しています【12】。

    高血圧と血管年齢の関連

    高血圧は動脈硬化を進行させる主要な要因であり、その結果として血管年齢が実年齢よりも高くなることがあります。高血圧が続くと、動脈の内壁に圧力がかかり、動脈が硬くなる(動脈硬化)傾向があります。これにより、CAVIの値が上昇し、血管年齢が高くなることが示されています。

    複数の研究により、高血圧が動脈硬化を進行させ、CAVIの値を高めることが確認されています。例えば、ある研究では、高血圧患者のCAVI値が正常血圧の患者よりも有意に高いことが示されました【13】。このため、高血圧の管理は動脈硬化の進行を防ぎ、血管年齢を正常範囲内に保つために重要です。

    小川糖尿病クリニックの特別な検査

    当院では、心電図、ABI、CAVI、血管年齢測定を行うことができます。これらの検査を通じて、患者さんの心血管リスクを総合的に評価し、最適な治療プランを提供します。

    • 心電図: 心臓の電気的活動を評価し、心肥大や心筋梗塞のリスクを評価します。
    • ABI: 下肢の動脈硬化の状態を評価し、血流障害を早期に発見します。
    • CAVI: 動脈の硬さを評価し、動脈硬化の進行度を測定します。これにより、血管年齢を算出し、患者さんの動脈硬化リスクを評価します。
    • 血管年齢: 血管の健康状態を評価し、実年齢と比較することで動脈硬化のリスクを評価します。

    まとめ

    糖尿病患者にとって、血圧管理は血糖値管理と同様に重要です。動脈硬化のリスクを低減し、腎機能の悪化を防ぐためには、血圧の適切な管理が欠かせません。

    小川糖尿病クリニックでは、科学的根拠に基づいたアプローチで、患者さん一人ひとりの健康管理をサポートしています。血圧手帳を活用し、家庭血圧を定期的に測定することで、より正確な血圧管理が可能になります。また、心電図、ABI、CAVI、血管年齢測定などの検査を通じて、心血管リスクを総合的に評価し、最適な治療プランを提供します。

    最後に、ご質問やご不明点がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。糖尿病と共に健康な生活を目指して、私たちと一緒に頑張りましょう。


    参考文献

    1. Kannel WB, et al. "Blood pressure and risk of coronary heart disease: the Framingham study." Ann Intern Med. 1971.
    2. 日本高血圧学会編. 高血圧治療ガイドライン2019年版. 日本高血圧学会, 2019.
    3. SPRINT Research Group. "A randomized trial of intensive versus standard blood-pressure control." N Engl J Med. 2015.
    4. He FJ, MacGregor GA. "Reducing population salt intake worldwide: from evidence to implementation." Prog Cardiovasc Dis. 2010.
    5. Appel LJ, et al. "A clinical trial of the effects of dietary patterns on blood pressure." N Engl J Med. 1997.
    6. Pescatello LS, et al. "Exercise and hypertension: recent advances in exercise prescription." Curr Hypertens Rep. 2015.
    7. Chobanian AV, et al. "Seventh report of the Joint National Committee on Prevention, Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Pressure." Hypertension. 2003.
    8. Stergiou GS, et al. "Home blood pressure monitoring: primary role in hypertension management." Curr Hypertens Rep. 2018.
    9. Levy D, et al. "Prognostic implications of echocardiographically determined left ventricular mass in the Framingham Heart Study." N Engl J Med. 1990.
    10. Aboyans V, et al. "Measurement and interpretation of the ankle-brachial index: a scientific statement from the American Heart Association." Circulation. 2012.
    11. Shirai K, et al. "The role of arterial stiffness in cardiovascular disease and its evaluation by the cardio-ankle vascular index." J Atheroscler Thromb. 2011.
    12. Okura T, et al. "Relationship between cardio-ankle vascular index (CAVI) and carotid atherosclerosis in patients with essential hypertension." Hypertens Res. 2007.
    13. Takaki A, et al. "Cardio-ankle vascular index is a new noninvasive parameter of arterial stiffness." Circ J. 2007.

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...