みなさんこんにちは。小川糖尿病内科クリニックです。
今日は、2025年6月に発表された中国の最新の大規模研究をご紹介します。
🩺 論文タイトル
「推定グルコース処理能(eGDR)と2型糖尿病における下肢動脈疾患(LEAD)の関連」
(全国規模の横断研究)
📘 この研究のポイント(ざっくり)
インスリンの効きが悪い(eGDRが低い)人は、足の動脈硬化(LEAD)になりやすいことが明らかにされました。
🔍 「eGDR」と「eGFR」は別モノです!
この研究で出てくるeGDRは、腎臓の機能を見る**eGFR(推算糸球体濾過量)**とは別の指標です。
名前が似ていて紛らわしいですが、意味も役割もまったく違います。
指標 | 正式名称 | 意味 | 使い方 |
---|---|---|---|
eGFR | estimated Glomerular Filtration Rate | 腎臓のろ過機能の推定値 | 慢性腎臓病の管理に使います |
eGDR | estimated Glucose Disposal Rate | インスリンがどれだけ効いているか(=インスリン抵抗性の指標) | 糖尿病患者の合併症リスク評価に使えます |
🧠 用語の解説
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LEAD:Lower Extremity Arterial Disease(下肢動脈疾患)
足の動脈が詰まったり狭くなったりする動脈硬化の一種です。**ABI(足首と腕の血圧比)**で診断され、ABI<0.9または>1.3でLEADと判断されます。 -
eGDR:estimated Glucose Disposal Rate(推定グルコース処理能)
インスリンが体内でどの程度効いているかを示す指標。
**値が低い=インスリン抵抗性が強い(効きにくい)**という意味です。
📊 研究の概要と結果
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対象:
50歳以上の2型糖尿病患者 7,482人 -
eGDRを4つのグループに分けてLEADとの関連を調査
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結果:
- eGDRが低い(Q1)グループではLEADの有病率が31.4%
- **eGDRが高い(Q4)グループでは12.8%**と低率
- eGDRが1単位高くなるごとにLEADのリスクは24%低下
- eGDRが8未満になるとLEADリスクが急上昇する(L字型の関係)
💡 まとめと臨床での意義
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eGDRは、LEADのリスクを簡易的に予測する指標として非常に有用
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eGDRが低い方(=インスリン抵抗性が強い方)には、
メトホルミン・SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬など、
インスリン感受性を高める治療が効果的かもしれません。 -
**生活習慣(運動・食事・減量)**による抵抗性改善も大切です。
🏥 小川糖尿病内科クリニックからのメッセージ
LEAD(下肢動脈疾患)は、初期には症状がほとんどなく見逃されがちですが、進行すると歩行障害や足の壊疽、切断につながることもあります。
血糖コントロールだけでなく、インスリンの効き具合(eGDR)にも注目し、合併症のリスクを早期に見つけて対策することがこれからの糖尿病医療に求められています。
当院では、ABI検査やインスリン抵抗性の評価も対応可能です。
気になる方はお気軽にご相談ください。
※eGDRは、HbA1c・腹囲・血圧などから計算されます。保険診療では自動算出されません
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