2025/07/14

健康講座882 「日本食が心と体を守る:うつ病予防と糖尿病リスク低下を示した最新研究」

 みなさんこんにちは。

今回は、「日本食がうつ病や糖尿病などの健康リスクを減らす可能性がある」という非常に興味深い最新の研究報告についてご紹介していきます。対象となった研究は、日本国内の大規模な疫学調査「J-ECOHスタディ」や「JPHC研究」に基づくもので、信頼性の高い公的研究機関によるものです。


🍚 日本食がメンタルヘルスに与える効果とは?

まず注目すべきは、伝統的な日本食のパターンを守っている人ほど、うつ病の症状が少ない傾向にあるという結果です。

これは、国立健康危機管理研究機構(Japan Institute for Health Security, JIHS)が行った「J-ECOHスタディ(Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study)」の一環として行われました。対象となったのは、日本の企業に勤務する12,499人の勤労者です。

🧠「日本食パターン」とは?

調査で使われた「日本食パターンのスコア」とは、以下の食品群の摂取頻度を元に算出されています。

  • ご飯(白米)

  • 味噌汁

  • 大豆製品(納豆、豆腐、味噌など)

  • 緑黄色野菜(にんじん、小松菜、ピーマンなど)

  • 海藻類(ワカメ、昆布、のりなど)

  • キノコ類(しめじ、しいたけ、えのきなど)

  • 魚類(特に脂の多い青魚:サバ、イワシ、サンマなど)

  • 緑茶

  • イモ類(さつまいも、じゃがいもなど)

  • 漬物

これに加えて、果物や乳製品、生野菜などを取り入れたものは「改良型日本食パターン」と呼ばれました。

📉 うつ症状は約20%減

この調査では、スコアが高い(つまり日本食を多く取り入れている)人たちは、うつ症状の有症率が17〜20%低かったという結果が出ました。

特に以下のような栄養素や作用が、メンタルヘルスに良い影響を与えていると考えられています。

🔬 解説:メンタルに効く日本食の栄養素

成分・食品 働き
葉酸(海藻、大豆、野菜) 神経伝達物質(セロトニンやドーパミン)の合成に必要
n-3系脂肪酸(EPA/DHA) 魚に多く含まれ、抗炎症作用があり脳の機能を安定させる
抗酸化物質(緑茶、発酵食品) 脳の酸化ストレスを軽減し、神経細胞の保護に役立つ
食物繊維(野菜、海藻、キノコ) 腸内環境を整え、短鎖脂肪酸の産生を通じてセロトニンの分泌を促進
うま味(グルタミン酸など) 副交感神経を刺激し、リラックス効果があると考えられている

🍵 糖尿病のリスクも減らす日本食

同様に、日本食は**糖尿病(特に2型糖尿病)**のリスクを減らすことも明らかになっています。

こちらは「JPHC研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study)」によるもので、日本人のライフスタイルと病気の関係を追跡する目的で実施されました。

🧪 研究の中身を簡単に紹介

対象:

  • 中年期の日本人男女約10万人

  • 長期間にわたる生活習慣と病気の追跡

結果:

  • 日本食を取り入れている人は、2型糖尿病の発症リスクが有意に低い

  • 特に非喫煙者の男性で顕著に効果あり

  • 逆に、欧米型食事パターン(肉類・加工肉、清涼飲料、乳製品など)をとる人では、糖尿病リスクが上昇

なぜ糖尿病が減るのか?

栄養素 主な食品 作用
食物繊維 野菜、海藻、キノコ、大豆、イモ類 血糖値の上昇を抑える
抗酸化物質 緑茶、野菜、果物 インスリン抵抗性の改善
カリウム 野菜、果物、海藻 ナトリウム排泄を助け、血圧を下げることで心血管病リスクも軽減
EPA・DHA 青魚(サバ、サンマなど) 血糖コントロール、動脈硬化の予防

❤️ 循環器疾患のリスクも低下

さらに、同じくJPHC研究では以下のような心血管系疾患のリスクも、日本食により低下することが示されています。

  • 心筋梗塞

  • 脳卒中

  • 心不全

  • 全死亡率の低下

これは、食事の内容が総合的に動脈硬化の予防につながるからだとされています。


🧂「塩分が多い」という弱点への注意と対策

日本食は基本的に健康的ですが、「塩分が多い」という指摘もあります。例えば、味噌汁や漬物、醤油などです。しかし、野菜や海藻、イモ類などに豊富に含まれるカリウムが、塩分(ナトリウム)の排泄を助けて、血圧を安定させてくれます。

カリウムが多い食品例:

  • ほうれん草

  • 小松菜

  • ブロッコリー

  • トマト

  • さつまいも

  • バナナ

つまり、「野菜や果物をしっかりとる日本食スタイル」であれば、塩分のデメリットをカバーすることが可能です。


🧭 研究の信頼性と今後への期待

今回の結果は、いずれも観察研究(疫学調査)であり、因果関係を断定するものではありません。しかし、数千〜数万人規模のデータをもとにしたものであり、信頼性は高いといえます。

研究者たちは、次のようにコメントしています。

「日本食には心と体の健康を支える力があるという仮説を裏付ける結果が得られました。今後は前向き研究や介入研究により、より明確なエビデンスを積み重ねていくことが期待されます。」


📚 参考文献(原著)

  1. Association between the Japanese-style diet and low prevalence of depressive symptoms: J-ECOH Study
     (Psychiatry and Clinical Neurosciences, 2025年6月16日)

  2. Development and validation of prediction models for the 5-year risk of type 2 diabetes in a Japanese population: JPHC Diabetes Study
     (Journal of Epidemiology, 2023年5月20日)

  3. Dietary patterns and type 2 diabetes in Japanese men and women: JPHC Study
     (European Journal of Clinical Nutrition, 2012年10月24日)

  4. Association between adherence to the Japanese diet and all-cause and cause-specific mortality: JPHC Study
     (European Journal of Nutrition, 2020年7月16日)


✨ まとめ:日本食は「こころ」と「からだ」を守る食事

日本の伝統的な食事パターンは、ただの文化的な習慣ではなく、科学的にも健康への効果が裏付けられつつある食生活です。

  • 🍚 ご飯・味噌汁・大豆・魚・野菜・海藻・緑茶などの組み合わせが、うつ病を予防し、糖尿病や循環器疾患も防ぐ

  • 🧠 脳内の神経伝達物質や、腸内環境の改善に寄与する成分が多い

  • 💪 生活習慣病やメンタルヘルスの予防として、職域・地域単位での取り組みにも応用可能

ぜひ、日々の食生活に少しずつでも「和」の要素を取り入れてみてはいかがでしょうか。



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